dip のライヴが終わり、
セットチェンジの時間となる。
しかし、まだフロアには
先程の熱気とざわめきが
燻り続けていました。
そんな中、
私はバーカウンター周辺の
人いきれを抜け、
ステージ下手側の最前に陣取る。
そこでライヴの余韻と満足感に
浸りつつ、酒を飲っていました。
一人ニヤニヤとw
そんな幸せな気分と酒で、
気持ち良く過ごしていた私。
だが、そんなシチュエーションに
冷や水をぶっ掛ける不届き者が
居ました。
それは「EXTRUDERS」。
dip のステージが炎熱なら、
EXTRUDERSは酷寒の氷柱。
彼等は、
dip とは対照的なステージを
披露したのです。
それは静かにゆらめく、
「蒼き情熱」でした。
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〈EXTRUDERS〉
鳥山陽平(B&Vo)
岩科徹(Dr)
岡田了(G)
以上のメンバーを擁する、
3ピースのバンド「EXTRUDERS」
そのライヴの始まりは、
きわめて穏やかでした。
仄暗い水底から聴こえてくるような
ベースラインと歌唱。
それはこのバンドの基軸となり、
これ以降にも通低する基調となる。
そして、ステージとは正対せずに
あえて横を向いたまま
黙々と叩き続けるドラムス。
その音と姿は、職能的というより、
常軌を逸した風にも見て取れました。
ギターには余白がありました。
常に音を出すのではなく、
時に激しく、空間を切り裂くように
轟音を挙げる。
その姿はプレイヤーというより、
アクション・ペインティングに近い
印象でした。
とても個性的な3つの「彩り」。
他に類を見ない形の
3ピースバンドでしたよ、
「EXTRUDERS」は。

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寡聞にして、
EXTRUDERSのライヴや
音に触れるのは、
この日が初めてでした。
細かい楽曲の事などは
当然分かりません。
しかし、それでも全編を通し、
目を離すことが出来ない
魅力を感じました。
張り詰めた緊張感。
その上で彼等は
「侘び寂び」の世界を
現出させていた。
そういった意味では、
凄く日本的なのかもしれない。
そしてこの日の彼等ですが、
何がしかの覚悟を持って
ステージに立っていたのでは
ないでしょうか?
ライヴ中の鳥山陽平氏の
目の座り具合。
中空を見つめる眼差し。
ちょっと尋常ならざるものが
あったのですけどね。
気のせいかな。
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最後に、この日の
全ての映像を担当された
仙石彬人氏について。
彼は「Time Painting」と称する
ヴィジュアル・イフェクトを
駆使していた訳ですが、
それは何と、
「OHP」と呼ばれる旧式の機械を
駆使したものだったのです!

〈仙石氏使用のO.H.P.〉
Overhead Projector
略してO.H.P.
40代以上の方なら、
学生時代の思い出として
御存知のはずでしょう。
かつては
学校教育や会議の場で使われていた
旧型のプロジェクター「OHP」。
透明なセルシートに
グラフや図版を描き、それを
OHP本体のガラスの盤面に載せ、
光の透過、
レンズによる縮尺の変更、
それらの反射/投射によって
スクリーンに映像を映し出す。
そんな懐かしい機材。
もう使われなくなった古き道具を
駆使されていたのです。
「Time Painting」に於いては、
OHPのガラスの盤面には
水を湛えた透明のアクリルケースが
載せられ、
そこに水性のカラーインクやオイルで
彩りを加えます。
時々刻々と、瞬間ごとに。
それによって描かれる映像は、
水泡であるような、細胞のような。
そんな、
液体にも固体にも見える
「ミディアム」な
ヴィジュアルでしたね、
Time Painting は。
仙石氏の映像は dip のライヴにも
似合ってはいましたが、
親和性に関しては
EXTRUDERSの時の方が
上だったかも。
終曲での
血しぶきのような映像効果は、
非常にマッチしていましたから。

血飛沫プロジェクション・マッピング!
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「EXTRUDERS, dip with 仙石彬人」
目も耳も満足な、
素晴らしいイヴェントでした。
因みにですが、
Mediumって「霊媒」という意味も
あるらしいですよ。
「常世」に触れた、
そんな夜だったのかな。