過払金を弁護士の僕ならどうするか-6(今となっては昔の話) | サラリーマン弁護士がたまに書くブログ

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2019年7月にうつ病を発症したことをきっかけにブログを始めたサラリーマン弁護士が、書きたいことをたまに書いています。

 

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このブログでは、弁護士である僕が、もし仮に自分が紛争・トラブルの「当事者」となった場合に、「自分だったこうするだろうな」ということをお伝えしてしています。

 

僕自身、これまでの人生で大きな紛争・トラブルの当事者となったことがなく、今この瞬間、紛争・トラブルに直面されている方の苦しみや不安を代弁できるような立場にはないのかもしれません。

 

ただ、自分が紛争の当事者となった際の対処法を弁護士目線でお伝えできれば、それが、ご覧になった皆様のお役に立てるかもしれないと考えています。

 

あくまで、「僕だったらこうするだろうな」ということですから、ご覧になっている方々に必ずしも当てはまらないとは思いますが、僕のやり方をヒントに、自分なりに応用していただけたら、とても嬉しいです。

 

ご覧になっている皆様のお顔も名前も残念ながら知ることができませんが、アクセスしてくださり、ありがとうございます。本当に励みになっています。

 

【 今日のトピック:過払金 】

 

今日も引き続き、過払金について書いていきます。

 

「弁護士の僕だったらどうするか」というブログタイトルでお送りしているにもかかわらず、ここ数日、過払金の歴史についてばかり書いてしまっています。

 

全然関係がないように思えますが、後から関係してきます。

 

というのも、過払金請求も時効になるからです。

 

過払金請求が時効になっているかどうかということと、過払金請求が(とても簡単に)認められるようになったのがいつなのかということ、この2つが大きく関係するので、もう少し歴史について書いていきます。

 

さて、1968年の最高裁判決によって、「任意に返済した」場合であっても、過払金を請求できることになりました。

 

利息制限法には、「任意に返済した」場合には、過払金が請求できなくなると書かれているんですが、この条文を、いわば「亡き者にした」のです。

 

この最高裁判決によって、利息制限法の上限利率を超えて返済しても、「任意に返済した」かどうかを気にする必要はなくなりました。

 

条文上は、「任意に返済した」場合には過払金を請求できなくなるんですが、この条文を、最高裁判決が「亡き者に」してくれたので、任意に返済したとしても、後から過払金(利息制限法の上限利率よりも払いすぎた利息)を返してもらうことができるようになりました。

 

しかし、昨日のブログでも書いたように、この最高裁判決を国会が打ち消してしまいました。

 

法改正によって、「みなし弁済」の規定が新設され、その結果、要件を満たすと、「任意に返済した」ことになり、過払金が請求できなくなるようになってしまったのです。

 

この法改正に対し、解釈を下したのが、有名な2006年1月13日の最高裁判決です。

 

この最高裁判決は、ざっくり言えば、「みなし弁済」はほぼ成立しない、という解釈を採用しました。

 

「みなし弁済」が成立する要件の1つとして、「利息として任意に支払った」というものがあるんですが、この「利息として任意に支払った」という要件は、「期限の利益喪失約款」がある場合には満たされない、と明言したのです。

 

はい、「期限の利益喪失約款」について説明します。これ、よく出てきますが、めちゃくちゃ簡単な話です。

 

ざっくり言えば、「返済を滞納したら残金を一括返済してね」ということです。

 

これで説明を終えてもいいんですが、「滞納したら残金を一括返済してね」が、どうして「期限の利益」を「喪失する約款」になるのか、もう少し説明します。

 

さて、借金というのは、例えば、100万円を借りたのであれば、普通は、分割で返済します。

 

100万円借りて、そっくり100万円返せる人は、そもそも借金しなくていいです。お金があるんですからね(笑)。

 

お金がないけどお金が必要な人が借金するわけで、そんな人たちは、借りた金額をそのまま返済することができません。だから、分割で返済します。

 

例えば、100万円を借りて、借りた翌月から10万円ずつ、10ヶ月に渡って返済する、とかです。もちろん、これは元金だけの話で、元金とは別に利息がつくのが普通です。

 

この分割払いは、「期限の利益を与えた」とも表現します。「期限の利益」ってどういうことかというと、返済期限までは返済しなくていい、ということです。

 

↑の100万円の10回分割返済の例でいうと、初月は、10万円だけ返済すればよくて、それ以上を返済する必要はありません。10万円だけが返済期限を迎えていて、残りの返済期限はまだです。だから、残りは返済しなくていいです。

 

「返済期限までは返済しなくていい」という、めちゃくちゃ当たり前の話を、「期限の利益」と僕ら法律業界では呼んでいるんです。

 

「返済しなくていい」という状態が「利益」なんです。だから、「期限の利益」と呼びます。

 

で、この「期限の利益」が「喪失する」というのは、これまでの説明を踏まえれば、「返済期限まで返済しなくていい状態」の「喪失」なので、つまり、「今すぐ残金を一括返済してね」ということになります。

 

「返済期限まで返済しなくていい状態」の「喪失」ということは、返済期限が「即時(今すぐ)」に変わってしまっています。

 

だから、「期限の利益喪失」=「今すぐ残金を一括返済してね」なのです。

 

最後に、「約款」ですが、これは、「契約条項」とほぼ同じ意味です。

 

「約款」とは、まあ、「定型文」みたいな感じで、契約相手が誰であっても、契約書にも印字されていて契約内容になっている条項のことです。

 

例えば、賃貸物件を借りている人は、賃貸借契約書を見てみてください。なんか、小さい字でいろいろと印字されていると思いますが、あれが「約款」です。

 

「約款」は、契約相手が誰であっても印字されていることが特徴です。つまり、どの契約でも、共通して契約内容になっている、ということです。

 

さて、ここまで説明してきた「期限の利益喪失約款」がある場合に、「みなし弁済」は成立し得ない、と2006年1月13日に最高裁は明言しました。

 

その理由として、最高裁は、期限の利益喪失約款がある場合は、返済を滞納したら一括返済になるわけで、だとすれば、返済を事実上強制されているので、「利息として任意に支払った」というみなし弁済の要件を満たすことはあり得ない、と示しました。

 

この最高裁判決によって、「みなし弁済」が認められることはなくなりました。

 

というのも、どの貸金業者も、必ず「期限の利益喪失約款」を契約書に記載していたからです。

 

というか、「滞納しても一括返済になりません」なんて条件で貸すわけありません(笑)。滞納してもそのままの条件で返済を続けられるとしたら、誰も返済しなくなりますよね(笑)。

 

この2006年の最高裁判決によって、みなし弁済は認められなくなり、1968年の最高裁判決のとおり、利息制限法の上限利率を超えて返済した場合には、払いすぎた利息を「過払金」として返金してもらえるようになりました。

 

この2006年から、いわゆる「過払金ブーム」が巻き起こります。

 

というのも、2006年まで、どの貸金業者も、「みなし弁済」を盾にして、利息制限法の上限利率を超える利率で貸付けを行っていたからです。

 

「みなし弁済」が成立することを前提に、利息制限法の上限以上の利率で貸し付けていたのに、最高裁が「みなし弁済は成立しないよ」と結論づけてしまいました。

 

しかも、みなし弁済の不成立は過去にさかのぼる、とも最高裁は認めました。

 

その結果、何が起きたかというと、それまでの貸付けほぼすべてが「返済しすぎ」となったのです。

 

・2006年の最高裁判決によって、利息制限法の上限利率を超えた返済が、過去にさかのぼってすべて「返済しすぎ」となった

・2006年まで、どの貸金業者も利息制限法の上限利率を超えて貸付けを行っていた

 

この2つが合わさった結果、日本全国ほぼすべてのサラ金業者からの借金が、過払金に変わりました。

 

それまで「返済しなきゃいけない」だったのが、逆に「過払金を返金してもらう」に、変わったのです。

 

日本全国、ほぼすべての貸金業者の借金が、こういうふうに「返済」から「返金」に変わりました。

 

だからこそ、「一大ブーム」となったんです。これが、2006年から、少なくとも5年ほどは続きました。

 

ただ、2006年の最高裁判決も、今となっては15年も前の話です。

 

最高裁判決から時間が経ったせいで、今の過払金は、時効の問題を抱えています。

 

時効については、また明日書こうと思います。

 

それではまた明日!・・・↓

 

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