取り戻すのは人間の尊厳
120年前、リースロット大陸にデーモンが現れた。
ルナード帝国が誇る精鋭、”ウィルソン部隊” がデーモンに挑んだ。
隊長ビリー・ウィルソン、出生・生い立ちともに不明の剣豪リューゲン・ソコロヴァ、元剣闘士ターシル・ウィットマー、神に絶望しその信仰を捨てた高僧マリア・ブランドル、メレフ国ウェルチ領の皇子マーティン・リヒター・ウェルチ、”空飛ぶ絨毯”を自在に操る魔術師ハ・ティム、寡黙な青年にしてやがて誰もが「あいつにだけは勝てない」と言わしめた天才剣士フェルナンド・J・ロペス。
彼らはあと一歩のところまでデーモンを追いつめるも、隙を突かれて異次元に逃がしてしまう。
そのときデーモンは彼らの”寿命”を奪って逃げた。
復活までの120年、孤独と不安の日々を送りながらも彼らは各々の腕を磨く。
デーモンを倒さなければリースロット大陸は滅亡する。そして元の人間に戻らなくては永遠に孤独な世界を彷徨うことになるのだから。
最後の人類
彼は読み書きができる
計算もできる
いつもシンプルに暮らしている
ときどき、ほかのなにかが目につくと、人が話しているあいだにそちらに気持ちがいってしまう
そうやって関心をもったほかのなにかに向かい合うと、彼は失礼だと咎められ、とても焦った
彼には悪気は無く、それは彼のシンプルな行動と生活の一部だったし
ときどきいじめられた
そのシンプルな生活が他者には奇怪なものに見えていた
読み書きをしているうちに、さまざまな考えに触れて、やはり混乱した
彼の疑問のひとつは、なぜ自分が人と異なる行動をとってしまうかだったけれども
それ以上を考えることが難しかった
シンプルに生き、考える
疑うことがわからない
人の笑顔の裏にある怒りや蔑みを理解できない
自分がそれらを理解できないことがなぜなのかを理解できない
彼を受けとめたのは天の神
彼の想いは神だけが理解した
最後の人類に選ばれたのは
裏をかかない
騙さない
疑わない
ただシンプルな魂
選ばれたただひとつの心
計算もできる
いつもシンプルに暮らしている
ときどき、ほかのなにかが目につくと、人が話しているあいだにそちらに気持ちがいってしまう
そうやって関心をもったほかのなにかに向かい合うと、彼は失礼だと咎められ、とても焦った
彼には悪気は無く、それは彼のシンプルな行動と生活の一部だったし
ときどきいじめられた
そのシンプルな生活が他者には奇怪なものに見えていた
読み書きをしているうちに、さまざまな考えに触れて、やはり混乱した
彼の疑問のひとつは、なぜ自分が人と異なる行動をとってしまうかだったけれども
それ以上を考えることが難しかった
シンプルに生き、考える
疑うことがわからない
人の笑顔の裏にある怒りや蔑みを理解できない
自分がそれらを理解できないことがなぜなのかを理解できない
彼を受けとめたのは天の神
彼の想いは神だけが理解した
最後の人類に選ばれたのは
裏をかかない
騙さない
疑わない
ただシンプルな魂
選ばれたただひとつの心
天の怒り
怒りの刃は焰を纏って海を横切る
復讐の矛は氷の棺から静かに甦る
人間の、その男は初めて天の怒りを知る
驕れる人の子を追う天空の武具
行く手を阻む、海の壁に風のカーテン
巻き上がる炎、火の粉を散らして視界を奪う
やがて辿り着いた砂地で息をつき振り返る
その瞬間に
裁きの針は寸分違わずその心臓を貫く
復讐の矛は氷の棺から静かに甦る
人間の、その男は初めて天の怒りを知る
驕れる人の子を追う天空の武具
行く手を阻む、海の壁に風のカーテン
巻き上がる炎、火の粉を散らして視界を奪う
やがて辿り着いた砂地で息をつき振り返る
その瞬間に
裁きの針は寸分違わずその心臓を貫く
東方の剣士
東方の国から流れて来た剣士は一風変わっていて
ずっと旅の中に生きていた
世界中の空が真っ赤に燃えた時代に
旅の寄り道と言って戦った剣士
数年後に故郷とは違う島に渡り
やがて旅の途中で病いに倒れたと聞いた
最期まで楽しそうだったと
旅の中に生きていたかったのだと
落ち着くこと安住することはついに
病いを患ってでさえ思わなかったようで
長生きしてほしいと願う気持ちはあったが
あの剣士らしい生き方だといま安心する
東方の国から風のようにやって来て
疾風の剣捌きと凪いだ心で
きっと次ぎの世界に吹かれていったのだと皆が言う
次ぎの世界で新しい旅を生きていると
ずっと旅の中に生きていた
世界中の空が真っ赤に燃えた時代に
旅の寄り道と言って戦った剣士
数年後に故郷とは違う島に渡り
やがて旅の途中で病いに倒れたと聞いた
最期まで楽しそうだったと
旅の中に生きていたかったのだと
落ち着くこと安住することはついに
病いを患ってでさえ思わなかったようで
長生きしてほしいと願う気持ちはあったが
あの剣士らしい生き方だといま安心する
東方の国から風のようにやって来て
疾風の剣捌きと凪いだ心で
きっと次ぎの世界に吹かれていったのだと皆が言う
次ぎの世界で新しい旅を生きていると
旅の終わりに
空を仰いで遠く離れた人を想う
風の中で手を広げて駆ける
深い森の岩の上に座して今日を振り返る
海辺に降り立ち潮風に吹かれる
大地に寝て自然の氣を体いっぱいに集める
星を眺めて夢に落ちる
穏やかで優しくて
あなたのいた日は遠くなるけど
こうして風に緑に潮に土に
抱かれかつてあなたがそうしたように
強く抱きしめ安堵のなかで眠る夜が
やがてまたくることを感じる
夏の終わりに
旅の終わりに
風の中で手を広げて駆ける
深い森の岩の上に座して今日を振り返る
海辺に降り立ち潮風に吹かれる
大地に寝て自然の氣を体いっぱいに集める
星を眺めて夢に落ちる
穏やかで優しくて
あなたのいた日は遠くなるけど
こうして風に緑に潮に土に
抱かれかつてあなたがそうしたように
強く抱きしめ安堵のなかで眠る夜が
やがてまたくることを感じる
夏の終わりに
旅の終わりに
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もともと戦う上での素養があるならなんとかなる。
武器も持ったことがないではお手上げだったが。
一年死ぬ気で修行すれば、一通りのことは身につく。とにかくすべて君次第だ。
君が生き延びるためにも這い上がれ。
