最後の人類 | "THE LAST BATTLE" ミリアムの魔術書・外伝

最後の人類

彼は読み書きができる

計算もできる

いつもシンプルに暮らしている

ときどき、ほかのなにかが目につくと、人が話しているあいだにそちらに気持ちがいってしまう

そうやって関心をもったほかのなにかに向かい合うと、彼は失礼だと咎められ、とても焦った

彼には悪気は無く、それは彼のシンプルな行動と生活の一部だったし


ときどきいじめられた

そのシンプルな生活が他者には奇怪なものに見えていた


読み書きをしているうちに、さまざまな考えに触れて、やはり混乱した


彼の疑問のひとつは、なぜ自分が人と異なる行動をとってしまうかだったけれども


それ以上を考えることが難しかった


シンプルに生き、考える

疑うことがわからない

人の笑顔の裏にある怒りや蔑みを理解できない

自分がそれらを理解できないことがなぜなのかを理解できない


彼を受けとめたのは天の神

彼の想いは神だけが理解した


最後の人類に選ばれたのは

裏をかかない

騙さない

疑わない


ただシンプルな魂

選ばれたただひとつの心