フインキーのふんいき レビュー -136ページ目

小説「今夜は眠れない」 宮部みゆき

タイトルがうまいですね。眠れなくなるほど面白い本という意味でしょうか。

今回は本格ミステリではなく、ライトノベルのような作風。

今夜は眠れない (角川文庫)/宮部 みゆき
¥540
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スコア選択: ★★★


これは今まで読んだ宮部氏 の本では1番読みやすかったです。

子供視点で書かれていて、こういう柔らかい文章も書くんだなと、見直しました。


主人公はサッカー部に所属する中学生。章タイトルも、前半戦、後半戦、PK戦とサッカー関連なんですが、本文にサッカーの事はほぼ皆無。

この章タイトルにしたかったがために、後付でサッカー部員としたんじゃないかなw



話は、少年の家に突然5億円もの遺産が転がり込んできて、その理由を中学生2人が究明するというもの。

その遺産は以前、母親が1人暮らしをしていたときに命を助けた”伝説の相場師”からのものであり、2人の事実関係が疑われる。が、真相は驚くべきものだった・・・



誰も死なないし、嫌な悪ーい奴も出てこない、平穏な物語。

だけど、どんでん返しもあり、ちゃんとミステリーしてます。

読み終わったときは、1つの良い映画を見終わった後のような満足感が得られました。


この主人公2人が活躍する続編の「夢にも思わない」も読んでみたいと思える良作でした。

小説「鳩笛草」 宮部みゆき

「朽ちてゆくまで」、「燔祭」、「鳩笛草」の3遍から成ってます。今回もSFでございます。
どの話も超能力をもった女性が主人公です。

鳩笛草―燔祭・朽ちてゆくまで (光文社文庫)/宮部 みゆき
¥620
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スコア選択: ★★★★


「朽ちてゆくまで」は予知夢、「燔祭」は念力放火、「鳩笛草」は読心力と様々。
すべて超能力ですが、その能力者の現状は各々違います。



「朽ちてゆくまで」の麻生智子は現在、超能力はないが、あるきっかけで見つけたホームビデオにて、子供の頃(記憶の無い時期)に予知夢を見ることができたということを知る。
この話はちょっとホラーテイストで段々と真相が明らかになる怖さ、そんなゾクゾクっとする感じを味わえます。


「燔祭」の青木淳子は妹を殺害された兄に代わって、念力放火の能力を使い報復の協力を申し出る。
この話は以後の「クロスファイア」に続く、青木淳子デビュー作。


「鳩笛草」の本田貴子は読心力の力が段々無くなりつつある状況で、様々な試練に直面し、刑事としての自分の資質を疑っていく。
力が衰え、無くなってしまうことに怯え、段々と落ちていく状況が上手く描かれ、不安の中に希望が見え隠れする、とても印象的な作品。



個人的には、「朽ちてゆくまで」が好きでした。
ハッピーエンドで終わるところや、人のやさしさを感じられるところなんかも。



本文でも出てきましたが、将来、脳の研究が進んだら、読心力の仕組みも解明される日がくるかも知れません。超能力は人間の普段使用している能力の延長線上にあるものと考えると、誰でも意図的に使うことが出来る日が来ることもありえそうですよね。
読心力などが広まったら、はたして世の中は上手く機能するのでしょうか?

小説「ホームレス中学生」 田村裕

お笑い芸人・麒麟のつっこみ担当である田村裕の自伝。

この本での印税2億らしいです。もう働かなくてもいいでしょw

ホームレス中学生/麒麟・田村裕
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Amazon.co.jp スコア選択: ★★★★


とても読みやすく、読み始めたら一瞬で読み終わりました。

といっても、内容は薄っぺらくなく、濃いーです。

最初のほうは、文体が小説家っぽくないなぁ・・・と思ってたんですが、書き方が段々と上手になってるのか、最後には感動させられている自分がいました。



お笑いは好きなので、田村家の悲惨な状況はある程度知ってました。

もちろん知らなかった部分もたくさんあって、改めて田村裕という人間を見直しました。



悲惨な出来事が立て続けに起こった故なのですが、親の病気や死で子供だけが取り残されるということは決してありえないことではなく、どんな人も紙一重で生きているということを知らされます。


ただ、田村裕は公園で過ごすという1冊の本になるくらい特殊な人生を送っています。

草を食べたり、ダンボールを食べたりと、普通の人は考えられないような過酷な生活を送っているからこそ、どんな小さいことでも幸せに感じる、その心は見習いたいですね。

今の自分がどれだけの人に支えられ、恵まれた生活をしているかってことを実感します。



1番印象に残ったのは、田村裕が生きる気力が無くなっているときに、親身に向き合ってくれたという担任の先生の話。生徒と同じ目線で語ってくれる先生、この先生によって田村くんの人生は救われたといっても過言ではないでしょう。


他にも、田村くんの周りには沢山いい人がいて、読んでるだけで心が温かくなります。

やはり母の影響というのは大きいと感じられる本でした。

小説「死者が飲む水」 島田荘司

占星術殺人事件 」、「斜め屋敷の犯罪 」に次ぐ島田荘司 ミステリー第3弾。
今回はトラベルミステリーです。

死者が飲む水 (光文社文庫)/島田 荘司
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スコア選択: ★★★


前作の「斜め屋敷」の脇役で登場した牛越刑事が主人公。

この牛越氏、前作までの主人公の御手洗氏とはまた違った良さを持っています。
御手洗氏は変人なのに対し、牛越氏はいたって凡庸で控えめ。
でも、この普通っぽさが牛越氏の温かさに表れていると感じます。
この本は奇怪なトリックもありますが、真髄はやはり人間味のあるストーリーではないでしょうか。


トラベルミステリーということで、時刻表が2、3回出てきます。
自分は細かいことを考えながら読むのはあまり好きではないので、このページはすっとばしました。
時刻表を見なくても、文で説明をしてくれるので、細かいのを見るのが嫌な人も大丈夫だと…



あらすじ
実業家の赤渡雄造のバラバラ死体が2つのトランクに詰められて、自宅に届いた。
バラバラ死体とは、犯人はさぞ大きな怨恨があったのであろう。
しかし、調べてみるとこの赤渡氏、超がつくほどの善人で、人に恨まれるようなことが全く出てきません。
しかも、容疑者みんな鉄壁なアリバイがあり、刑事は四苦八苦。
どうやって、このアリバイを打ち崩すか?



時刻表を用いたトリックはふーんといった感じでしたが、終章である「父の飲んだ水」にはとても心打たれました。
それまでのが序章であったくらい、終章は内容が濃く、面白かったです。

小説「堪忍箱」 宮部みゆき

8篇からなる短編小説です。

宮部 氏の時代小説は初めて読みました。

堪忍箱 (新潮文庫)/宮部 みゆき
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スコア選択: ★★★


時代小説はとっつきにくいので苦手です。

が、読み始めると、これが面白いこと面白いこと。


短編なので、すぐ終わってしまうのが残念なくらい、どの話も熱中して読んでしまいました。

自分と同じように時代小説を避けている人は、手に取りやすい短編集から入ってみるのもいいと思います。


モノの名前や話し言葉などやはり古く、意味の分からないことが出てきたり、慣れてないせいか若干読みにくかったりと、ある程度読んだ後でも、まだ抵抗があるかなと感じます。

でも、物語に入り込むことができたらこっちのもので、文字がスラスラ頭に入ってきます。

これも宮部氏の力量でしょう。それゆえ、各話もう少し読みたかったなーという思いが残りました。



全240ページ弱で、1話だいたい30ページくらい。

最後の解説でも書かれてましたが、どの話もすんなり解決して終わるようなストーリーではありません。

描かれているのは、そこに出てくる人間たちの心のざわめき。物語がどう決着するかというより、そこにどんな人間が息づいているかが作者にとって大切なのです。


全て何かしら凝った話だと思うんですが、何が言いたかったのか不明なのもありました。

ちゃんと解決してくれないと。。。という人には向きません。中途半端といえば中途半端なので。


個人的に好きな話は「敵持ち」と「お墓の下まで」と「砂村新田」。


「敵持ち」は、用心棒として雇った侍に助けられる話。これはシリーズ化してほしい。

「お墓の下まで」は、1つ屋根の下に住む一家全員が人に打ち明けられない秘密を持っているという話。

「砂村新田」は、親の過去を知るという心温まる話。