(1)E-コマース・プラットフォーム Spreadshirt

仕事上で交流のある米国人との世間話で、SpreadshirtというE-コマース・プラットフォーム(E-commerce platform)のことが出てきました。同社が用意しているT シャツ、パーカー、ポロシャツ、バッグ、帽子、マグカップな200 点以上のアイテムに対して、個人がオリジナルなデザインを創案・提案すると、それを各種アイテムにプリントした製品にしてくれ、それらをマーケットプレイスあるいはデザイナー自身がオンライン販売できる仕組みになっています。 プリント・オン・デマンド (POD) Eコマース・ プラットフォームのサービスとして欧米主要国のアパレル業界で大きな存在感を持つようになっているとのことでした(年間売上高100億ドル≒1.5兆円!)。

 

(2)ブリーフをアパレル用にデザイン化!?

そうした話の中で、彼から「”オリジナル・デザイン“の中には、男性下着のブリーフをデザインモチーフにしたものさえ結構ある(笑)」と聞いたのには本当にビックリでした(日本的センスではそんなデザインあり得ないでしょう!)。

 

そうとなれば、本ブログの主旨からすると到底無視できません(笑)。早速、欧米各国のSpreadshirtサイトに行って検索すると、「ブリーフがデザインモチーフ」のメイン商品とバリエーションが幾つも出てくるので再驚愕でした。

 

今回は先ず、米国のSpreadshirtサイトに掲載されているデザインとその製品化の一例を採り上げてみましょう。

 

(3)ブリーフがモチーフのアパレル用デザイン:Brief Retro

図1ShrtDsgnさんというChiliの方のデザインによるステッカーで、図案化した「レトロ・ブリーフ」にGO RETROの語句が組み合わされています。Kia***さんの解説(注1)に沿って言えば、「米英でクラシックタイプとして位置付けられるY-フロント型ブリーフとなります。


Yフロント


図1 Y-フロント型ブリーフの図案化(ShrtDsgnさんによる)


(注1)ブリーフの前開き:欧米から見た日本事情

https://ameblo.jp/lin-baelder/entry-12694015287.html

 

図2はこの図案をプリントしたTシャツの例です。生地色(31)とサイズ(9種)の組合せは279通りにも及びます。


Tシャツ
 
  

図2 Y-フロントブリーフ図案のTシャツ


また、このレトロブリーフ図案を用いた衣類はこのTシャツを入れて計7種もあり(図3)、そのそれぞれに対して複数種のカラー設定とサイズ指定が可能となっています。


シャツ各種

図3 Y-フロントブリーフ図案をプリントした各種上着類

さらに、このデザインは女性用(!)の各種シャツ・上着図4)にも用いられています。


女性用


 

図4 Y-フロントブリーフ図案をプリントした女性用シャツ


このデザインは以上の上着類にとどまらず、トートバッグ(図5)やスナップ・バック・キャップ図6)にまで商品展開されています。この広がりとバリエーションには驚きですね。



トートバッグ



図5 Y-フロントブリーフ図案を用いたトートバッグ


帽子


図6 Y-フロントブリーフ図案を用いたスナップ・バック・キャップ

ブリーフに対する国内イメージ(注2)を考えると、以上のようなユニークなデザインと商品展開は日本でまずありえないでしょう。欧米を始めとした海外では、ブリーフという下着についてはやはりプラス面からマイナス面まで種々のイメージがあるようです。しかし、日本国内のような一方的マイナス・イメージやマイナス方向への同調圧力はないということが、このSpreadshirtのデザインや製品にも現れているように思います。

 

Spreadshirtのブリーフ(含Slip)図案・商品化については他にも相当数あり、そのデザインにはお国柄も現れているので、引き続き紹介したいと思います。

 

(注2)すでに掲載の本ブログ記事3件「ブリーフへの逆風と衰退https://ameblo.jp/lin-baelder/theme-10118502194.html 」の特にその2「https://ameblo.jp/lin-baelder/entry-12687163796.html?frm=themeのような状況ですから。

     昨年後半から執筆陣全員が超多忙化して掲載が遅れました。

今回はKia**さんによる「ブリーフ特有現象」の第3部で、穿き上げたときに前開き部中央の二重部の両脇にある一重部が拡大する現象についてです(注1)。

これも、幼年時からブリーフ慣れ(?)した者は特に意識してこなかったポイントで、ブリーフが初体験でかつ現象観察力の優れた帰国子女kia***さんならではの視点でしょう(注2)。

(注1)Kia***さんによれば、この一重部の拡大についてはパート3まであり、「ブリーフ現象」の中核的ファクターの一つとのことです。ブリーフとはつくづく奥深い下着と思います!。

(注2)「大規模外れ、安定化、時として要手入れ修正・・」と言われてみれば、私をはじめ多くの方が「確かに覚えあり!」と思います。

以下kia***さんの本論
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4-3.ブリーフの前開き現象-3:一重部拡張による大規模外れ

(1)今回のテーマ

ブリーフに特有の前開き現象の第3部として、前開き二重部の両サイドにある一重部が拡張して、そこに保護部が“安置“され安定化してしまう現象が主題です。前回から時間が経ってしまったため、復習の意味も込めて、前回までに述べた前開き現象についても要約しつつ述べていきたいと思います。

(2)前開き現象の構成要素

すでに記したように、ブリーフを穿き上げると前開き一帯の形が大きく変わります。その変化を構成する要素は以下の3つです(図25)。
 
  ①補強縁取り線の左右接近(前々回)
  ②中央二重幅の縮小(前回)
  ③表裏開口部に近接する一重部の左右拡張(今回)

外れ現象①②③の③


図25 ブリーフ穿き上げたときの前開き二重部(ふたえ)の形状寸化(図21で今回のポイント部を着色)。前開中央の二重部(灰色)に隣接する一重部(薄オレンジ色)が、ブリーフの穿き上げとともに大きく左右に広がることに注意。

前回までに①「左右縁取り線の接近」②「二重部幅の縮小」について述べました。今回から
③「一重部の拡張」から発生する現象とその付随効果について記していきます。ここで起こることを一口で言えば、「大規模外れ現象とその安定化ならびに透け見え」です。率直に言って、体感や視覚にとっては切実な感覚が反映するテーマですが、客観的に述べていきたいと思います。今回はまず前半の外れ現象に焦点を当てます。

(3)一重部の拡張と大規模外れ現象

(3)-1 「一重部拡大」の4パターン

図26はブリーフを穿き上げたときに発生する「一重部の拡大現象」の代表的パターンです。AとBは②「二重部幅の縮小」との関連で前回取り上げたもので、Aはブリーフを穿き上げただけで生じる拡大、BはAに加えて開脚と閉脚の繰り返しで二重部下端の幅縮小が重なった状態です。

このAからは「保護・可動部の
二重部からの外れ(はみ出し)現象」が生じます。ブリーフ初心者にとってはこれだけでも「ン?」とか「え~っ、何これっ!!!」となりました(前回https://ameblo.jp/lin-baelder/entry-12814207065.html )。

今回のCとDは、
“前開き現象“のAやBがさらに進んで、一重部が大きく拡張した状態です。これはスポーツなどで大きな下肢の動作をしたときに発生するのを経験しました。この現象では、一重部は左右対称ではなく、向かって右側(C)か同左側(D)に偏って大きく拡張するのが特徴です(!)。

一重外れ-2

図26 ブリーフを穿き上げに伴う「一重部拡大」の代表パターン。AやBが切っ掛けとなってCやDへと拡張進展。左右対称ではなくて、どちらかに大きく偏って拡張するのが特徴。

(3)-2 大規模外れ現象(!)の概要

はこれまでのよりも格段に大きな(保護対象部の)外れ現象を引き起こします(図27)。しかもこの現象は、偏った一重部拡張自体をさらに助長・拡大して、大規模外れの状態を安定化させてしまいます。

なおこの大規模外れのCととは同じ現象に見えます。しかし、外れ状態の安定性や付随現象の引き起こし方にかなりの差があります。この差は前開きの構造を考えると、必然的なものと言えます。詳細については、次回以降に改めて述べたいと思います。
保護部外れ比較-1

図27 一重部拡張による外れ現象の4パターン。一重部の拡張で保護部(灰色楕円)が本来位置するはずの二重部(灰色)から部分的(AとB)ないしは全面的(CとD)に外れてしまう。CとDの大規模外れは安定度が高く、着用感や対運動順応性を損ねる


以上のような大規模事象(大袈裟ですが(笑))は、ブリーフ着用で足腰の大きく激しい動きを伴うスポーツ(テニスやサッカーなど)をしている際に、多くの方が経験したことがあると思います。

このような大規模外れを生じてしまうと、
着用上での違和感を覚えるし運動順応にも不都合なため、その場対応で修正したくなります。しかしAやBに対するような、無意識的なちょっとした腰部ひねりや臀部引き動作などではなかなか直りません。スポーツ着とブリーフのウエストを一緒に左右にずらし回したり、”外れ安定性”が頑固に時には手入れ修正を要したりします。

(3)-3 大規模拡張の起こり易さ(自己体験)

私の経験では、大規模拡張CやDの起こり易さは、そのブリーフの使用度で違っていました。つまり、新品状態に近いブリーフでは起こりにくいのですが、着用を重ねると起こり易くなりました。これは前開き構造の緩み・・・・・特に前開きの内側と外側の補強縁取り線(再掲18図のC)と二重部の生地(同図のA)が伸びて緩むからだと当時もすぐ気付きました。

こうしたことが自分の場合は着用開始から間もなく起こり始めた理由等についても次回以降に考察したいと思います(これも大袈裟ですが・・(笑))。



再掲図18

再掲図18 着用前後におけるブリーフ前開き(着色)部の形状変化


(4)大規模外れ現象に対する直感的視察

以下の参考図の比較を見ると、ブリーフの前あき構造内の一重部ではこの大規模現象が生じてしまうことが直感的に見て取れると思います。また
Slipではこうした現象の生じようがないことが分かります。


簡略版S-B比較

参考図 成人用(上側)ならびにジュニア用(下側)について米(英)日型のブリーフ(左側)と欧州型ブリーフ(右側:Slip)との比較。https://ameblo.jp/lin-baelder/entry-12797566387.html


  

本テーマの第3回として、atp***さんの解説を掲載します。今回はブリーフの普及・流行についてよくある説明についての疑問点や矛盾点が指摘されています。関連する項目をキチンと指摘されてみると、「なるほど確かに!」です。そうして指摘された事項は私自身も親世代等から断片的に聞いてきたこととも符号しています(皆さんは如何でしょうか?)。

 

以下atp***さんの解説

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2.ブリーフ第一世代から聞き知る当時の普及浸透状況

2-1.従来説明での疑問と矛盾点


初めに

今後、ブリーフ第一世代(19501960)から聞き取った事柄≒口述証言(大げさですが・・)を紹介するとともに、それらに基づいて、ブリーフが国内普及・流行して行く際の着用率の動向や受け入れ感覚等について考えて行こうと思います。

 

今回はまず、ブリーフが普及して行く過程に関わる新聞・雑誌・インターネットの既存記事や説明に感じられる疑問と矛盾点を記します。

 

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今回はやや長文傾向ですので、記述内容の項目をあらかじめ列記しておきます。

 

[1]国内での普及状況に関する従来からの一般的説明

[2]従来説明中の疑問と矛盾点

 (1)ブリーフの登場場所

 (2)浸透・普及の担い手

 (3)デザイン・着用感の受容感覚

 (4)全盛時代を迎えるまでの経緯と年数

 

[1]国内での普及状況に関する従来からの一般的説明

終戦後間もない日本に米国からブリーフという新規性(新奇性?(笑))の高い下着が入ってきた後、それが国内に浸透・普及して行く様子はインターネットや新聞・雑誌等の記事に記されています。その代表例として日本版Wikipediaの説明(注1)を採り上げると、次のようになっています。

 

「①ブリーフは1950年代中頃に登場し、②流行に敏感な青年層を中心に爆発的に浸透した。③その身体に沿った斬新なデザインとこれまでの下着にはなかった穿き心地や機能性から、若年層を中心に、それまでの既存の男性下着(トランクス、猿股、褌)を駆逐した。その後、カラーブリーフ、ビキニブリーフ等の派生商品も登場し、⑤1970年代には全盛期を迎えた。(番号①~⑤と下線は本筆記者による付記)。


(注1)このWiki説明は別メディアの記事などでよく引用ないし援用されている模様です。

 

 [2]従来説明中の疑問と矛盾点

以上のような解説・説明からは、しかし、以下の疑問点や矛盾点が浮かび上がってきます。

 

(1)ブリーフの登場場所:上記①項

具体的にはどこ(店や紹介媒体)に登場したのか? 商品として「登場」したのはどのような販売店だったのか? そのメリットを表すような着用状況はどこに登場し、知られ、どう受け取られたのか? 1950年代の中頃当時は、包装商品を手にとって見られるような衣料スーパーはないし、TV等の映像媒体も存在しなかったのですから・・・。

 

(2)浸透・普及の担い手:②、④項

若年層(=1534才)ないし青年層(=2030代)を中心に”爆発的に浸透し”、”既存の男性下着を駆逐”」とあるので、1530代の若人達”がブリーフの“爆発的浸透(=移行)”の主たる担い手だったということでしょうか? つまり、若年・青年層≒自立した若人層(注2)が、自己の価値観と判断で“爆発的にブリーフ移行”したのでしょうか?

 

この解説は、「近年ボクサーブリーフがブリーフやトランクスに換わって爆発的に普及・浸透した」という状況説明に酷似していますが、約70年前の戦後社会でそのようなことが起こるのでしょうか? 意地悪く見ると、「ボクサーブリーフで起こった急速な普及・浸透状況」を元に、”ボクサーブリーフ”を”ブリーフ”の語に置き換えて説明としたように感じてしまいます。

 

(注2)当時の高校進学率は45%以下ですから、50%以上の中学卒業者は就職・自立の道を歩んでいたことになります。

 

(3)デザイン・着用感の受容感覚:③項

ブリーフが入ってきた1950年代は戦後間もない時期です。その当時の若人達の内、1520代半ばの方達は幼少年時代に戦前・戦中教育(親たちは戦前教育)、また20代半ば以上の方達は成育過程でやはりモロに戦前教育を受けてきた年代に相当します。今の若人達とは感覚が違っていたはずです(今の7080代の方々が当時持っていた感覚です!)。

 

そうした当時の若人達が、いきなり「下着の“斬新性”」などという観点を持ち得たのでしょうか? そうして更に「ブリーフの新規性・穿き心地・機能性を急速に認識し、目覚めてすぐに飛びつき、”爆発的浸透”を引き起こす」ものなのでしょうか(注3)? 

 

そうだとしたら、従来の下着とは違う「穿き心地や機能性」を具体的にどのような実感をもって捉えたのでしょう? また、Wikiの説明に沿って言えば、「若人達はそれまで穿いて来たトランクス、猿股、褌から超急速でブリーフ移行した」ことになりますが、そんなことが実際に起こったのでしょうか?

 

(注3)ブリーフに対する最近の(強い)マイナス印象・評価とはまったく逆に、当時は「一般に今とは真逆の好印象・高評価であった」ことになります。どうしてそうなっていたのでしょうか? つまり、全盛期(1970年代)からわずか1015年ほどの1980年代で凋落し(=嫌われ)始め、2000年代以降はダサくてほぼ廃れた下着の域に達してしまったとされるので、毀誉褒貶が極めて激し過ぎるように思えるのです。そういう性格を持った下着を当時の人達は実際にどう見ていたのでしょう?

 

(4)全盛時代を迎えるまでの経緯と年数:①、②、④、⑤項

「①1950年代中頃に登場して、②③④を経て、⑤1970年代に全盛時代」という説明ですが、こうした普及状況は「爆発的な浸透」に相当するのでしょうか? つまり、「ブリーフ登場から男子パンツ=ブリーフとなる全盛時代」に至るまでに約20年もの年数を要したことになるのです(!)。全盛を迎えるまでに20年も掛かってしまう”爆発的な浸透”現象なんて実際にあるのでしょうか?

 

この(4)は、ブリーフ第一世代から聞き知った「当時状況」との矛盾を強く感じる項目ですし、(1)~(3)の疑問とも密接に関わっています。このため次回採り上げて、「第一世代の口述証言」から聞き知った「当時状況」と照合して検討したいと思います。


 ブリーフの前開きが生む現象と感触について、引き続きkia***さんに解説頂きます。今回のテーマは、ブリーフを穿き上げたときに中央の二重部の幅が縮小する現象とその影響です。

前回の縁取りと並んで、小さい頃からブリーフに穿き慣れた者には思いがけない観点です。しかし、指摘されてみると「なるほど!」で、私なども動きの大きな運動や姿勢の変化で「アレッ!?」となって、その場でほとんど無意識的に対処していたことに思い当たります(笑:注1)。

(注1)ブリーフが初めての方にとっては、幼児期からブリーフ慣れした私達のような「何気対処」はむずかしいのかもしれません。

以下kia***さんの本論解説
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4-2.ブリーフ前開き現象-2:二重幅縮小で生じる“外れ”現象

(1)今回のテーマ
ブリーフ前開きの特有現象のpart-2で、今回は保護対象の部位が二重(ふたえ)部から外れて起こる現象についてです。

ブリーフを穿き上げると、図21の左から右へと前開きの形が変化します。その構成要素は図中に示した以下の三項目です。    
   ①補強縁取り線の左右接近
   ②中央二重幅の縮小
   ③表裏開口部に近接する一重部の左右拡張
 

着用前後の二重部縮小

図21 ブリーフ前開きを穿き上げたときの二重部(ふたえ:灰色着色部)の形状寸化


前回の(2)節ではまず①に着目して、この現象の詳細ともたらす感触について以下を記しました。
 (2)-1.前開き縁取り線の左右接近が生む感触
 (2)-2.縁取り線位置の安定性の影響
 (2)-3.Slipとの対比
(詳細は前回を参照下さい:
https://ameblo.jp/lin-baelder/entry-12803700657.html

今回は、図21で赤字で示した「②中央二重幅の縮小が引き起こす現象と感触」がテーマで、当時のことを現在の目で振り返りながら述べていきましょう。

(2) 二重幅の縮小による“外れ”現象とインパクト

(2)-1 穿き上げ後に狭まった二重部と保護部の関係
 
ブリーフ穿き上げの前後を図式化すると図22のようになります。前開き中央の灰色部は生地が二重(ふたえ)の領域です。中央部の点線楕円は「保護部ならびに運動中に前者が動くおよその領域」を代表させたもので、略称として「保護・可動域」とよぶことにします。

二重の着用前後-可動部付き

図22 前開き二重部の着用前と着用後の代表的状況。二重部中央の点線楕円は保護部とその可動域(保護・可動域)。

この図のように、ブリーフ穿き上げとともに①前開き左右の縁取り線が接近すると同時に、②二重部中央の幅がかなり縮小します。これによって、姿勢や運動状況に応じて、ともすると「左右接近した縁取り線」と「保護・可動域」がクロスします。

こうして主に①に起因してブリーフを初めて穿いて感じたのが、前回述べたような「ゴロゴロ感」とその「ズレ動き感」あるいは「位置の定まらない異物感」でした。

(2)-2 二重部外れ現象の諸相とインパクト

これに加えて生じるのが、『「②によって幅が縮小した二重部」から「保護・可動域」が外れ出てしまう現象』です。これは①と表裏の関係にありますが、ブリーフが初めての者には相当強いインパクトとなります(!)。

穿き上げと外れ現象

再掲図22 “外れ現象“の発生!

それは下着=Slipだった私にとっては、信じられない事態でした(大袈裟ですが(笑))。つまり、体育や部活等のスポーツで大きな腰部・脚部の運動や姿勢変化の際に、ふとした拍子で保護対象の一部やかなりの部分が二重生地部から外れて「ン?」となったり領域外れ現象)、“ロッド部”や“袋部”の一部が二重の間に挟み込まれたり潜り込んだり小規模はみ出し現象)したのです。

時にはさらに、前開きが開口気味となって、ロッドや袋部の一部がはみ出すような感じ(その時点で実見したわけではないのであくまでも感触からの推定です)を受けて、「え~っなにこれっ!!!?」となったりしました(大規模はみ出し現象)。

(2)-3 “外れ現象”のメカニズム

これらの前開き現象の原因はもちろん、ブリーフには前開きがあって、穿くと必然的に①と②が生じるためですが、当時感じたこともあわせて今の目で見直すと、もう少し詳しい(ややこしい(?))発生状況が見えてきます(注1)。  

(注1)前開きブリーフはある意味、他のタイプにはない奥深さのある下着と言えそうです(笑)。

つまりこの出来事には、図23のように、穿き上げ後の足(太股)が開いているか(左図)閉じているか(右図)で、二重部の幅と形がかなり変化することが密接に関係しています。運動時にはこの開脚(a)と閉脚(b)を頻繁に繰り返すことになるので、「幅縮小の二重部」と「保護・可動域」は不安定になり<1>相互に左右にズレ合いこすれ合う状況となります。
 
着用後の足開閉

図23 着用後の太股の開閉による二重部の幅と形の変化。二重部と保護・可動域との関係も変化。

運動時にはさらに、左右の足(太股)の前後踏み出しとその復元(逆方向)運動が重なってきます。この運動の過程で、穿き上げで幅が狭まくなった二重部ではその「閉まり強さ」が強まったり緩んだりします。こうして、開脚(a)と閉脚(b)の繰り返しで上記<1>の左右方向のズレ合い・こすれ合いに加えてさらに<2>の前開きに対して前後方向の動きで二重部の閉まり強さが緩むとき、先述の「保護・可動域の小規模~大規模はみ出し現象」が発生してしまうのです。

(3)Slipとの対比

図24は、紳士用およびジュニア用について、二重部の実際状況をブリーフとslipで比較対照したものです。ここで示した4例のSlipのブランド(メーカー)のお国もとは違っていますが、共通していずれの場合も着用後の二重部が安定的に十分な幅をもっています。このため、二重部と保護・可動域との関係が安定的で、大きく激しい運動をしていても「外れ現象」が本来的に起こらないことが見て取れると思います。


B-S大人子供用の二重部比較
図24 着用後の二重部の状況比較。上段は紳士用、下段はジュニア用。灰色表示部は二重部Slipのブランド(メーカー)の国別:紳士用slip1は仏、slip2はスイス、ジュニア用のslip1は独、slip2は伊。

次回以降、
「③表裏開口部に近接する一重部の左右拡張」が引き起こす現象と感触について述べ、引き続き、二重部外れ現象に影響する諸因子、周囲のブリーフ派の友人達が(多分)無意識にしていた対処法、また私自身がとった対応策等について記していく予定です。
  本サブテーマに対応するatp***さんの解説を掲載します。atp***さんは、私同様、少年時代にブリーフ着用への逆風を経験した方です(注1)。その逆風への対応と克服を模索する中で、ブリーフ第一世代の方達から、当時は状況がまるで違っていたと聞かされたそうです。今回はそのようなことを聞くまでの経緯を書いていただきました。

(注1)同氏の受けた逆風とその跳ね返し体験については以下を参照下さい:
https://ameblo.jp/lin-baelder/entry-12687163796.html?frm=theme
https://ameblo.jp/lin-baelder/entry-12685223288.html?frm=theme


文章主体の記事になりますので、前回からの方式(各パラグラフの冒頭にポイント表示)をatp***さんも了解・対応いただけました。

以下atp***さんの本文
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1.ブリーフへの逆風と自己対応
小学5年になって気付いてみると、クラス内で最後のブリーフ常用者となっていて、lin-baelderさんの言う「ブリーフ逆風」をモロ受けすることとなりました。自分としては「下着の種類でこんなの不条理!」との思いが強かったのですが、多勢に無勢ということで、やむなく短パン調で無難そうなトランクスや周囲で多数派のボクサーへの穿き換えを試しました。こうした我慢の試行を約1年近く続けましたが、「①何故こんなことをしなけりゃいけないのか!?」の思いが強く、最後は「②やはり自分に合わないものは合わない!」と思い決め、「③覚悟のブリーフ復帰」をしました。その後は周囲から逆風が吹いても「④そんなの個人の(カラスの?)勝手でしょ!」で対処していました(しばらく経ったら微風も吹かなくなって一件落着でしたが・・)。

2.従兄弟達も逆風体験して上世代に訴え+愚痴
このように①~④の経緯を経て行く中で、親戚の集まりで従兄弟達と話したとき、彼らの多くもブリーフ逆風の経験があることを知りました。そしてさらに、私達小中生グループと父親・伯父・叔父達が学校生活のことを雑談する機会も幾度かあり、いわばファッション関係のことが話に出て、「ブリーフ逆風」も話題に上りました。

3.親達の当初反応
当初の大人達の反応は「へえ~今はそんなことあるの?」程度でした。そうして言ってくれたアドバイスは、「まあそれぞれ個人の好みだし、雑音や悪口を入れてくる子がいたら相手にしなければいいんじゃない」との当たり障りのないものでした。

4.親達世代への突っ込み

しかし私達(特に直面中の者)としては、「そんな甘い話じゃない!」ということで納得がいきません。「個人の好み程度で済んでないし、こんな逆風おかしいでしょ!」と訴え、さらに「お父さん・伯父さん・叔父さん達はどうしたのよ!?」と突っ込んで行く方向となりました。

5.自分達とは真逆体験した「ブリーフ第一世代」
すると父親達から返ってきたのは、なんと「お前や○○君達の状況は自分達世代の体験とは真逆(!)だよ」という思いがけない言葉でした。これには、当時の自分達にはびっくりでした。こちら側からすればまさに「それマジ、それともからかい・・・!?」という感じです。

6.ブリーフ第一世代を聴取(ブリーフが仲立ちした世代間対話(笑))
こうして両者が互いに現在と過去の違いに驚くとともに、状況の真逆変化に一種の面白さを覚えて、思わぬ「下着話(笑)」になって行くことが複数回ありました。

こうした思わぬ成り行きの話で、上の世代(=まさしくブリーフ第一世代!)が実体験した当時の真逆状況を知ることになりました。

(今から振り返ると、そこで聞き知ったことが、自分が②③④のような意志や対処を採ることに結びついたのではないかと考えています。)