最近になってネット通販等で見かける「スリップブリーフ」についての解説です(注1) 商品のネット画像を見ると、国内で一般的な前開き付きのブリーフとは違って前閉じで、ビキニブリーフの一種のようにも見えます。それなのになぜ「ビキニブリーフ」と呼ばれずに、「スリップブリーフ」といわれるのでしょうか。

 

(注1)「本ブログテーマ:ブリーフの形と種類」の一項目として掲載しました。連載中の「slip派への経緯」と密接に関係するとともに、最近は国内通販でも該当商品を見掛けるようになったため、皆様に参考にして頂ける内容と思います。


Kia***さんによる解説

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スリップブリーフ(slip briefs)とは要するに、「“スリップ型”のブリーフ」ということです。ここでスリップ(slip、Slip、slipslipy・・・等)は、米(英)語圏の外のほとんどの大陸側欧州語で、ブリーフ(briefs)のことを指します。


したがってslip briefsのslipを英語に直すとbriefs(-type) briefs、カタカナ書きすると「スリップ(型)ブリーフ」は「ブリーフ(型)ブリーフ」となって、ナンセンスになってしまいます。しかし、米(英)圏側としては下記理由から「スリップ」の語を被せて、彼らにとって普通の「ブリーフ」とは区別しているということです。


briefs-slip比較知恵
 
図1 A(米(英)型(注2))とB(欧州型)のブリーフの典型例

 図1Aの米(英)型B大陸側欧州型(以下“欧州型”)の比較です。Aは日本でもお馴染みのブリーフです。コットン主体生地で前開き付き、裾が股の付け根より下に沿っているローレグタイプ(注3)です。このタイプのスタンダード型では、穿き込みがかなり深いハイ・ライズ(注3)傾向のものが多いようです。

一方のBは南欧・北欧・中欧からロシアまでの各国で共通のスリップです。やはりコットン主体の生地ですが、前閉じで裾が太股の付け根に沿うノーマルカットになっています。穿き込みはミッドライス~ややローライズの傾向です。これらの特徴は欧州側の各国で共通しています(注4)。見てのとおり、両者は前開きの有無、それに関連したフロント部や裾のカットデザインに相異があり、着用感もかなり違います。


(注2)最近の英国内の状況は、本ブログの案件に関する限り、大陸側に近づいています。このため、旧記事の「英米」を、現況に沿って「米(英)」ないし「米日(英)」と修正標記しています。
 
(注3)裾の長さ・形と穿き上げ深さについては以下をご参照下さい。 
(注4)南米・中米のスペイン語・ポルトガル語圏、また知る限りではトルコなどの欧州隣接国でも同様です。

このように、米(英)側から見て、「同じbriefsの語では一括りにしにくい」こと、また英(注5)さらに米にもヨーロッパブランドのブリーフが入ってきたことから、区別するためにslip briefsという語を編み出したのでしょう。

 

(注5)英国におけるブリーフのタイプは、EU離脱以降(皮肉なことに?)、大陸側欧州に融合の傾向です。M&SやNEXTの現地サイトを見ると、slip型が相当割合を占めるようになっています。私が子供時代に、周囲にいた英国人で目にしたY-front前開き型(注6)は成人用が激減、ジュニア用は消滅しています。


(注6) https://ameblo.jp/lin-baelder/entry-12694015287.html  の図1A


なお、このslip briefsはいわゆる「ビキニブリーフbikini briefs」のように見えると思います。特に日本ではそのようで、私も中学入学で帰国して以来よくそう聞かれました。それで「ビキニとかじゃなくてヨーロッパで普通のブリーフ」と説明していました。https://ameblo.jp/lin-baelder/entry-12704667816.html?frm=theme (帰国直後の状況」slipへの周囲反応)


しかしその内に面倒になり、「ビキニ?」と聞かれると「そうかも」と答えていました。しかし、図Bはあくまで男性パンツのslipであり、子供用から大人用までごく普通に製造・販売・購入され、着用されているものです。


これを例示したのが図2で、上側が成人用(紳士用)のブリーフとslip、下側がジュニアのブリーフとslipの比較です。但し、成人用のスタンダードブリーフは一般に大きく重厚なので、ここではセミビキニタイプをslipと比較しています。


S-B比較成人・子供用

図2 米(英)日型のブリーフ(左側)と欧州型型ブリーフ(右側:Slip)の比較。両者間での形状・スタイルの違いは成人用(上)とジュニア用(下)とで共通(注7)。


ブリーフとslipのデザイン差は成人用からジュニア用まで同様なことが分かります。両タイプの間のこのような違いの区別を意識して、米(英)圏ではslipの上に更にclassicの語を被せてクラシック・スリップ・ブリーフ(classic slip briefs)と表記している例があり、紳士用は日本国内の通販サイトでも見かけるようになりました。


(注7)ポイントは前開きの有無、足口カット、中央二重部の形と幅にあります。下記記事とその中の図24を参照下さい。

https://ameblo.jp/lin-baelder/entry-12814207065.html?frm=theme (ブリーフ前開き現象-2)