ある時、生理中だった私は、息子に女性の体の大変さを愚痴っていた。
 

「女性ってさ、毎月生理があってバイオリズムがあるから、体の変化に追いつくの大変。妊娠、出産で大きくまた変わるし、つくづく気の毒な生き物だと思うね~。男はいいよなー。」
 
「いや、男だって精通というものがあるんだよ、ママ。変なネバネバの液体が出るらしいよ。嫌だな。」
 

「!?精通を知っておられる!?」
 
「学校でこないだ習ったよ。」
 
「すごい。」
 
私が知らない間に、すっかり学習していたようだ。
 

「担任の先生(女)は、生理は小学校6年生でなって、隣のクラスの藤田(仮)先生(男)は、精通に小学校5年生でなったってー。」
 
「ええええええ!?」
 
息子よ、何故隣のクラスの先生の精通体験まで知っているんだ!?

そして今、藤田(仮)先生は、私に精通年齢まで知られている。
 
生理になった年齢ならともかく、精通した年齢まで教えるほど、今カミングアウトブームになっているのだな。
 

今度会った時、藤田(仮)先生の頭上に、私は精通年齢を浮かべ、密かに頷いてしまうだろう。

「でも、どうして隣のクラスの先生の情報まで知っているのかい?」
 
「担任の先生(女)が言ってたよー。」
 
おおおおおお!!!
 

大丈夫なのか、言いふらして!?
 
中学生か!!
 
それ、飲み会で密かに聞いた情報とかじゃないだろうな。
 

「嘘。担任の先生(女)の生理になった話は本当だけど、隣の藤田(仮)先生のことは嘘。俺、知らない。」
 
私は息子の嘘を大まじめに受け止め、かってに大いに盛り上がっていたのである。
 
何故嘘をついたのかよくわからないが、精通に精通した息子は、私の盛り上がりとは裏腹に、理系的視点で冷静にその現象を受け止めていたのであった。