父親の思わぬ恋する瞬間を、三十路を過ぎて初めて知った瞬間である。
答え:お触り。
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父きみじは、ほとんど漫画もアニメも観ない男だ。
そんな父きみじに、以前、ある関門が訪れた。
「聞いてくれ。わし、仲良くしてる後輩がいてな。その後輩がやたら観てくれ、観てくれ、最高すぎるって勧めてくるアニメがあるんだ。」
「で?」
「それが…萌え系なんだ。ちなみにそいつの嫁さんは、秋葉原のメイド喫茶のメイドだったんだ。」
「作品名が、色々聞かされたからごっちゃになってな。あんた、分かる?明日までに観るって約束しちまってな。」
「私、漫画もアニメも大好きだけど、萌え系は観ないから。」
「うさぎ?天使?にょにょ?モザイク?ご注文?魔法少女?○○娘?なんだっけ…よく分からん、助けてくれ。」
とりあえず、それらしきものにたどり着き、自分の部屋で夜な夜な萌え系アニメにチャレンジする父きみじ。
風呂上がり、父きみじの部屋にドライヤーを取りに行こうとドアを開けると…
よく分からないプログラミングをインプットして、バグった挙げ句、内部から煙りを出して故障した後のロボットのごとく、テレビの前に横たわっていた。
「めちゃくちゃ感動して泣けますからって言ってたのに…1ミリも頭に入ってこない…。」
ある意味泣きそうになっている父きみじを横目に、そっと扉を閉めたのであった。
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何故かシティハンターで有名なあの「Get Wild」とファミマの入店音を掛け合わせた曲を気に入ってかけ流し、陶酔しながら皿を洗っていた。
これが、その曲である
皆さんも皿洗いの時にどうぞ!
確かにファミマ入店音が強すぎる…。
そんな夫が学生時代に設定していた着メロは、火曜サスペンス劇場のオープニングとお風呂が沸いたことを知らせるメロディだったそうだ。
…クセが強すぎる。
そして、一ミリも成長していない。
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2023年ハロウィンナイト。
パーティーの準備をしている間、夫に息子を外へ連れ出してもらった。
その間私はホーンテッドマンションの案内人にふんし、二人が帰ってきた後、パチパチキャンディーを食べるよう指示した。
夫と息子は、何の警戒もせずにパチパチキャンディーを食した。
「ふふふっ。食べてしまいましたね。そのキャンディーを食べると、たちまち包み紙に描かれているモンスターへ少しずつ変貌してしまうのですよ…。」
などと言って、恐怖を煽り、ハロウィンの世界へ誘う。
「……。」
夫は私のコンセプトを察したようで、少しずつゾンビのようになる演技をし始めた。
「よし、おまえ、料理を運べ!」
「…はい。」
夫は気味悪い表情を浮かべながら、ゆったりとした足取りで食卓に向かう。
息子は怪訝そうな顔で、夫を覗き込んでいる。
夫は料理を並べた後、ふいにぶらさがっているハロウィンの装飾に何度も頭をぶつけるという奇行を繰り返す。
「…はい…はい…はい…田中さん…。」
「…はい。」の後の「田中さん。」発言が意味不明だが、とりあえず気持ちが悪い。
あまりの馬鹿らしさで、私は笑いをこらえるのに必死で、顔がゆがむ。
息子は、ゾンビ化した父親と、顔がゆがんだ母親の間で、半信半疑の恐怖を感じて不安そうにしていた。
めちゃくちゃな両親を持ったことが一番の恐怖なのかもしれないと感じる、息子のハロウィンナイトであった。
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