KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『ジャズ大名』 | 新・法水堂

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KAAT神奈川芸術劇場プロデュース

『ジャズ大名』



【神奈川公演】
2023年12月9日(土)〜24日(日)
KAAT神奈川芸術劇場〈ホール〉

原作:筒井康隆(『エロチック街道』(新潮文庫)所収)
上演台本:福原充則、山西竜矢
演出:福原充則 音楽:関島岳郎 振付:北尾亘
美術:石原敬 照明:松本大介 音響:藤森直樹
映像:ムーチョ村松 衣裳:髙木阿友子
ヘアメイク:大宝みゆき 演出助手:山本真一郎
舞台監督:津江健太 制作:原佳乃子

出演:
千葉雄大(藩主・大久保教義)
藤井隆(家老・石出九郎左衛門)
大堀こういち(藩士・鈴川門之助)
大鶴佐助(牢屋番方・烏丸源之進)
山根和馬(藩医・玄斎)
富田望生(やこ(女中/村娘/護衛の武士/トマス叔父さん/結城四郎))
板橋駿谷(佐吉)
北尾亘(茂助)
永島敬三(藩士・三浦正太郎)
福原冠(藩士・田臥利信)
今國雅彦(藩士・小野木守三)
佐久間麻由(女中/千代/鯉淵四郎)
ダンテ・カーヴァー(黒人奴隷・ジョー)
イサナ(ジョーの弟・サム)
モーゼス夢(ジョーの従兄・ルイ)
高田静流(女中/村人/侍従/谷竜夫)
入手杏奈(女中/村人/奥方/長山真一郎)
米田沙織(女中/村人/岩尾鬼三郎)
山根海音(女中/村人/川上司)
神野幹暁(小姓/村人/牢屋番/敗残兵/小田原の使い)

演奏:
大熊ワタル
川口義之
辰巳光英
和田充弘
桜井芳樹
こぐれみわぞう
関根真理
関島岳郎

STORY
維新の嵐が吹き荒れる江戸末期、アメリカの南北戦争が終結し、解放された黒人奴隷が故郷のアフリカを目指して船に乗り込むが、日本の小藩に流れ着いてしまう。鎖国の世、外国人の取扱いに困る藩の役人らは彼らを座敷牢に閉じこめておくが、好奇心旺盛な藩主・大久保教義は彼らの奏でる楽器の音に夢中になり、家老・石出九郎左衛門の制止も聞かず、次第に城中を巻き込んでジャム・セッションを繰りひろげていく。熱狂はいつまでもいつまでも続き、そして…。【公式サイトより】

筒井康隆さんの「ジャズ大名」を舞台化。

KAAT製作ということで、舞台を小田原藩の支藩・荻野山中藩に移し、薩摩藩士・鯉淵四郎を隊長とする倒幕派浪士隊が山中陣屋を焼き討ちした史実を踏まえた物語が展開。千葉雄大さん扮する荻野山中藩、最後の藩主・大久保教義(のりよし)も実在の人物。

今回は原作から脚本を書いたそうだけど(山西竜矢さんは筒井さんと同じく同志社大学卒)、芸術監督の長塚圭史さんは岡本喜八監督による映画版を舞台でやりたかったのだろうなという気がする(映画版には大鶴佐助さんの父・唐十郎さんが特別出演)。
本作の白眉はやはり演奏、とりわけ最後20分にわたるセッションシーンは映画版を意識したものであろうが、パワーとエネルギーが劇場全体を横溢していて最高潮へと達していくあたりは映画版に劣らず狂騒的でミラーボールが回り紙吹雪が舞い、ええじゃないかの人たちも出て来て(一般市民の方?)大いに盛り上がりを見せた。正直、そこに至るまでのドラマ部分はやや不満に感じる部分もあったが、最後のセッションシーンが帳消しにしてくれた。

千葉雄大さんは決して悪いというわけではないが、大名というより若殿という感じ。大久保教義は当時42歳だったそうだけど、千葉雄大さんは童顔な分、もう少し貫禄が欲しかった。
富田望生さんは語り手的ポジションながら、男役も含めて複数の役をこなし、芸達者ぶりを遺憾なく発揮。
上演台本・演出の福原充則さんとスリーピルバーグスを結成している佐久間麻由さんは終始楽しそうで、お得意の一輪車も披露。ザ・クズレルズ仲間の入手杏奈さんと並ぶといつ崩れるかと思ってしまったよ(この年末は千歳船橋で崩れる予定)。

上演時間2時間9分。