ここのところ来日する外国人が急増して、特に東京や大阪といった主要都市ではbudget hotelsの予約がいっぱいになっているようです。
先日、米国人の同僚が隣の席で、出張で泊まるホテルを探していましたが、「全然空いてない」とぼやいていました。「外国人観光客でどこもいっぱいなんだよ」と教えてあげると、「だからどのホテルもチャペルを作っているのか……」とブツブツ。「チャペル?」何かおかしいと、彼のパソコンをのぞき込んだら、そこにはよく遭遇する例の和製英語が……。
きちんと言いたいことが伝えられるように、まずはどの表現が和製英語なのか、そして英語では何と言うのかを知っていくことが大切ですね。今回も再び、私たちが日ごろ頻繁に耳にしている和製英語を紹介いたしますので、正しい英語での表現を覚えていきましょう。
朝の礼拝(西洋風)は無料でございます
チャペル付きのビジネスホテルなんて聞いたことがないですよね。不思議に思って「チャペルがあるbudget hotelsがあるの?」と同僚のモニターを見ると、映っていたのはあるビジネスホテルの英語サイト。同僚が指をさした先には、
【Morning Service】 7:00-9:00
と書かれていました。「モーニングサービス」。これ、一見英語風ですが、実は和製英語。しかも通じないだけじゃなくて、誤解を招きそうな厄介な表現です。
ホテルのいわゆるモーニングサービスであれば、「無料の朝食=complimentary breakfast」と言うべきでしょう。あの有名な名古屋の「モーニング」のように、カフェやレストランの「モーニングサービス」であれば、「朝食セット=a breakfast special」という表現がいいのではないでしょうか。
同僚が「ほら、こっちも!」と別のホテルのサイトを見せてくれました。
We offer a free morning service every day (Western Style).
これ、同僚の目には「当ホテルでは、毎日、朝の礼拝(西洋風)が無料でございます」と映っていたはず。
「西洋スタイルの礼拝 → キリスト教式の礼拝 → チャペル」に行きついたのかもしれませんね。ネイティブスピーカーは、英語でmorning serviceと言われると、教会で行なわれる礼拝のことを連想するようです。
「そうは言っても、『無料の礼拝』って、そもそも礼拝って無料だし、ちょっと変だと気づきそうだけど……」と筆者は疑問に思ったりもしたのですが、それでも「チャペル付きホテル」という風に情報処理されてしまうものなのですね。もしWestern Styleではなくて、Japanese Style(和風)だったら、仏式か神式の礼拝だと思ったのでしょうか…。
まあそれは置いておいて、「名古屋はモーニングが有名だよ」というのを、この和製英語を使ってNagoya is famous for morning services at cafés.なんて言ったら、「名古屋は喫茶店での朝礼拝が有名だよ」という意味になってしまいますね。面白がって筆者もネットで検索してみたら、
Our morning service comes with free toast and coffee.
なんてホテルもありました。「当ホテルのモーニングサービスには、無料のトーストとコーヒーが付いています」という意味なのでしょうが、「無料のトーストとコーヒー付きの朝礼拝」と勘違いしてしまうネイティブスピーカーもいる? いや、さすがにこれは気づきそうですけどね……。
今回はもうひとつ、一緒に気を付けてほしい和製英語があります。「ホテル」&「モーニング」つながりで、「モーニングコール」という表現も和製英語だと覚えておいてください。英語ではa wake-up callと言います。これは、ご存じの方も多いのではないでしょうか。
同僚に「モーニングサービス」の意味を教えるついでに、「日本人はよく『モーニングコール』という表現も使うけど、どんな風に聞こえる?」と聞いたら、モーニングコールは「間違っているけどa wake-up callのことかなと想像はつく」とのことでした。
この後も、彼はホテルを探し続けていましたが、どこも満室ばかり。唯一空いていた某有名シティホテルは、1泊7万円! ちょっと悪戯な笑顔を浮かべて、「もうここに泊まるしかない!!」と嬉しそうに言っていました。
You wish! (ムリ、ムリ!)
その彼のはかない夢は破れ、出張2日前にキャンセルが出て、無事にa budget hotelに予約が取れてしまったようです。残念でした(笑)。でもEnjoy the breakfast special! (モーニングサービスをご堪能あれ!)
シンデレラの魔法が解けるとき
筆者は英語研修の際、自宅学習の一環として多聴・多読をよく勧めています。レベルに合わせて、市販のリーダー(読みもの)や映画、ドラマなどを読んだり観たりしてもらい、定期的にクラスメートの前で、気に入った作品を紹介する時間を作っています。
プレゼンテーションの練習にもなりますし、面白いものはお互いにシェアすることで、ほかの人の学習動機にも結び付きますので、とても効果的なのです。筆者も知らなかった面白い映画や本を教えてもらえるので、いつも楽しみです。今回は、先日とある企業での映画紹介の際に遭遇した和製英語を取り上げてみましょう。
ハナコさんは20代後半、営業アシスタントをしています。彼女が紹介してくれた映画は、実写版「シンデレラ」でした。最近DVDやブルーレイが発売になったようで、さっそくレンタルしたのだとか。女性は年齢を問わずプリンセスものがお好きな方が多いようで、クラスメートの女性陣は皆さんI watched it too!と沸き立っていました。
映画は、私たちがよく知っているシンデレラのストーリーに忠実な展開だった様子で、「とにかくすごくよかったので、皆に観てほしい」とハナコさんが熱烈に勧めていました。そんなに言うなら筆者も観てみようと思ったくらいの熱いプレゼンテーションでしたが、こんなオジサンが「シンデレラ」をレンタルするのもなぁ……とちょっと恥ずかしく思ったりもしました。皆さんもよくご存じの深夜12時に魔法が解けてしまうというくだり、ハナコさんは頑張って次のように英語で言ってくれました。
The spell was supposed to be broken at just 12 o’clock.
「魔法が12時ちょうどに解けてしまうことになっていました」と言いたかったのですね。spell「魔法」がbe broken「解ける」という表現、とてもよく英作文できていました。実際のセリフをしっかりと聴き取っていたのでしょうか。さらに、be supposed to「~することになっている」という表現も上手に使って、話の前後の流れもとてもスムーズでした。
「~時ちょうど」はexactlyかsharpを使う
唯一惜しかったのが、「12時ちょうど」という表現。日本語では「12時ジャスト」や「ジャスト12時」のように言いますが、このジャストは和製英語なんです。時間にjustを付けると、「ちょうど」という意味ではなく、「ほんの」という感じの意味になります。
たとえば、It’s just 12:00 o’clock.と言うと、「まだ(ほんの)12時だよ」という風に聞こえてしまいます。ハナコさんの文で「ほんの12時に魔法が解ける」というのは変ですよね。「~時ちょうど」という表現は、
at exactly 12 o’clock
at 12 o’clock sharp
のように、exactlyかsharpを使うのが一般的です。少し口語的な感じもしますが、at 12 o’clock on the dotという表現もあります。「ちょうど~時」を例文で見てみましょう。
What time is it? 「いま何時?」 ―― It’s [ 3 o’clock sharp / exactly 3 o’clock ]. 「3時ちょうどだよ」
He arrived here [ at nine sharp / at exactly nine ]. 「彼はここに9時ちょうどに到着しました」
sharpは時間表現の後に、exactlyは時間表現の前に置くようにしましょう。
でも、今回は午前0時なので、midnightという表現がピッタリですね。at 12 o’clock sharpというよりも、at midnightの方が自然だと思います。
日本人はよくmidnightを「夜中」という意味と勘違いしていることがありますが、midnightは夜の12時(午前0時)という時計時間の表現です。noon「昼の12時(午後12時)」とセットで覚えておきましょう。ちなみに「夜中」はin the middle of the nightと言います。
ハナコさんはそのほかの部分も上手にまとめて、映画のあらすじを分かりやすく紹介してくれました。
最後、王子がシンデレラを探していたシーン。シンデレラがガラスの靴を履いてみると、ぴったりとサイズが合うという部分。ここでもうひとつだけ和製英語が…。
The glass slipper was just fit.
まず、ガラスの靴ですが、英語ではglass slippersと言います。slippersは通常、室内用の履物を指しますが、舞踏用の靴などにも使うことができるようです。それでも、私たちがよく目にするシンデレラのガラスの靴はslippersという感じではなく、筆者にはパンプスにしか見えないのですが……。ちなみにバレエシューズもballet slippersと言うこともできるようですが、ballet shoesの方が一般的だと思います。
なぜシンデレラではslippersなのかはわかりませんが、とにかくガラスの靴はglass shoesではなく、glass slippersと覚えておきましょう。ハナコさんは、しっかりと映画で使われていた単語を覚えていたようですね。
では、この文のどこが問題なのかというと「ジャストフィット」です。日本語ではよく使う表現ですよね。気持ちとしては「ちょうどピッタリサイズ」という感じだと思いますが、残念ながら英語ではbe just fitとは言えません。形容詞のfitには「~に適している」という意味と、fitness clubなどのfitnessの形容詞形である「(運動をしていて)健康的な」という意味があります。
Jane is fit for the job. 「ジェーンはその仕事に適任である」
John is really fit. He regularly works out. 「ジョンはとても元気(健康)だ。定期的にトレーニングしているから」
服飾品のサイズがピッタリは、fitを使う
「適している」というときにはbe fit for ~やbe fit to ~のように後ろに説明がつきますので、ただbe fitと言われると「健康的」という意味の方のfitに聞こえます。これは通常、人が主語になりますので、ハナコさんが言ったように物が主語になっていると意味不明な文になってしまいます。
「ガラスの靴は元気なだけだ」では意味が通じませんよね(justは先ほどと同じように「ほんの」とか「~だけ」というニュアンスに聞こえます)。服飾品のサイズがピッタリというときには、fitの名詞か動詞を使うといいでしょう。
The glass slipper fit Cinderella’s foot perfectly. 「ガラスの靴はシンデレラの足にピッタリと合いました」 (他動詞)
Cinderella put on the glass slipper, and then it fit perfectly. 「シンデレラがガラスの靴を履くと、ぴったりと合いました」(自動詞)
The glass slipper was a perfect fit for Cinderella. 「ガラスの靴はシンデレラにピッタリでした」 (名詞)
試着などをして服のサイズが「ジャストフィット」と言いたいときには、
This shirt fits well! 「このシャツちょうどいい!」
These pants fit perfectly! 「このパンツピッタリ!」
のようにfit perfectly/wellを使って言うとよいでしょう。This is exactly my size! 「これピッタリ私のサイズ!」なんて言い方もできますね。
ともあれ、ハナコさんのプレゼンテーションはふたつの和製英語を除いて、映画の魅力が皆に伝わる本当にすばらしいものでした。ハナコさんには言わなかったのですが、久しぶりにシンデレラの話を聴きながら、
Why didn’t the glass slippers vanish when the spell was broken?「魔法が解けたとき、ガラスの靴はどうして消えなかったのか?」
と、筆者は妙に気になってしまったのでした。やっぱり、こんなことを思ってしまう夢のないオジサンには、シンデレラは向かないかなぁ……。
欲しいのはどんな鉛筆?
先日、英語研修のターム終了時に、TOEICのIPテストを派遣先の企業で行なったときのことです。スコアが今期の研修評価に直結するとあって、研修生たちはいつもよりも緊張気味。会場にひとり、またひとりと徐々に集まって、15分前にはほぼ全員揃いました。
いつもならここで歓談になるはずが、妙に静まり返って、中には「真新しい」単語帳を必死にめくる研修生も……。Don’t worry! You’ll be fine. (心配しなくても、みんな大丈夫だよ)と励ましつつも、筆者も「ちゃんと全員スコアアップしてくれるかなぁ?」と妙に緊張してきました。
最後のひとり、タロウさんが現れたのは集合時刻の10分前。部屋に入るなり、「Oh, no! I’m ビリですか?」とタロウさんが驚くと、みんなも思わず笑って、少し緊張がゆるみました。彼は、席についてゴソゴソしていたかと思うと、今度は突然立ち上がって筆者に
Excuse me! I forgot a sharp pencil! (先生!シャーペン忘れました) と叫び、またみんなで大笑い。
ただ、このa sharp pencilというのは和製英語なので気をつけましょう。英語でa sharp pencilというと文字通り「尖った鉛筆」という意味ですから、削って尖った状態の鉛筆のことになってしまいます。
I forgot a sharp pencil. (尖った鉛筆持ってきませんでした)と言ったら、Do you need a sharpener? (鉛筆削りが必要?)なんて言われてしまうかも。シャーペンは英語ではa mechanical pencilと言います。ですから、I forgot a mechanical pencil.やI forgot my mechanical pencil.というのが正解です。ただ、ふだんの会話ではシャーペンでも、ただa pencilということが多いと思います。本当の鉛筆と区別するときだけ、a mechanical pencilと言えばよいでしょう。
鉛筆の話ついでにもうひとつ。a sharp pencilは尖った鉛筆ですが、逆に先の丸くなった鉛筆は英語で何と言うと思いますか?多くの生徒がa round pencilと言うのですが、これも日本人ならではの直訳英語です。a round pencilは確かに「丸い鉛筆」という意味ですが、色鉛筆などによく見られる円筒形の丸い鉛筆のことを指します。普通の鉛筆はa hexagonal pencil 「六角形の鉛筆」ですよね。まあ、あまりこんな風に鉛筆の形状の話をすることはないと思いますが……。
では、先の丸い鉛筆は何と呼ぶかというと、a dull pencilと言います。dullには「尖っていない、鈍い」という意味があります。同じような形容詞でbluntというのもあり、a blunt pencilという人もいます。米国ではa dull pencilの方が一般的なようです。
このdullやbluntという形容詞は刃物にも使うことができます。切れ味の悪いナイフなどはa blunt knifeと言います(a dull knifeも可)。筆者はナイフにはdullよりもbluntの方が一般的だと思いますが、どちらがいいかというのにはネイティブでも個人差があるかもしれませんね。
(東洋経済オンライン より)
☆こちらをクリックしてください!
↓
↑
今日も一緒に前を向いて頑張りましょう!