5-2■アリをすまわせる「アリ植物」―ボルネオ島・マレーシア、カンボジアー | 熱帯雨林を歩く
2011年06月23日(木)

5-2■アリをすまわせる「アリ植物」―ボルネオ島・マレーシア、カンボジアー

テーマ:熱帯雨林の植物
熱帯雨林を歩く

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           ●上 キリロン国立公園(カンボジア)の売店 犬の後ろに、アリノスダマが置いてある●下 売られているアリノスダマ

「アリをすまわせる植物」ということで、ボルネオのサラワク州にあるバコ国立公園のアリ植物を、前に紹介しました。

もう少しくわしく説明しますと、丸くソフトボールくらいの大きさで、表面にはトゲがあるのが「アリノトリデ」です。トゲがあり、いかにもがんじょうそうに見えるため、敵から守る「トリデ」の名前がつきました。

アリノトリデは、アカネ科の着生植物です。茎がこぶ状にふくらんだもので、中は小さな部屋がいくつもあります。部屋はアリのすみかになり、アリのはいせつ物や食べかすは、植物の栄養となっています。すみかを提供し、かわりに栄養物をもらい、おたがいに助けあいながらすむことを「共生」といいます。

このように体内にアリをすまわせている植物を「アリ植物」といい、栄養分の少ない土地に多く見ることができます。

同じアカネ科のアリノスダマもあり、こちらは表面がすべすべしています。そのひとつが、観察用のため断面状に切り落とされ、内部を見ることができました。内部には小さな部屋がいくつもあり、まさにコブ全体が「家」となっていました。


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 ●アリノトリデ(バコ国立公園 マレーシア) 表面にトゲがあり、こぶ状の魂茎(こんけい)が幹に着生している●アリノスダマ(バコ国立公園 マレーシア)こちらは表面にトゲがなく、なめらかになっている●アリノスダマの断面 中の部屋は産卵、ゴミすて場と複雑な構造になっている


カンボジアのキリロン国立公園を訪ねたとき、巨大な塊に出会いました。アリノスダマと紹介しましたが、ステファニアの塊根でした。ご指摘があり訂正します。塊根植物でした。

アリノトリデは、ボルネオのコタ・キナバルの日曜市でも売られていました。煎じ薬として使うそうです。


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                          ステファニアの塊根


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               ●巨大なアリノスダマ(キリロン国立公園 カンボジア)●煎じ薬として売られているアリノスダマ(コタキナバル マレーシア)

ベトナムの森を歩いていると、ツムギアリの巣を発見しました。 木の葉を糸でつづりあわせて巣がつくられており、植物はミツを与えるかわりに、葉を虫から守ってもらっています。棒でつつくとあっという間に、たくさんのアリが出てきました。


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                        ●巣をつつくと植物を守るために出てきたアリ(カッ・ティエン国立公園 ベトナム) 

世界には約500種のアリ植物があるといわれています。茎を利用する植物には、ケクロビアがあります。アリは、茎の中の空洞に巣をつくり利用しています。そして、葉などを食べに来た昆虫を攻撃します。
熱帯の森を歩くとき、アリはかまれると強烈に痛いなど、やっかいですが、生き残るためにさまざま戦略をもつ、森のかしこい生き物です。