アパシーと一攫千金(6) | kyupinの日記 気が向けば更新

アパシーと一攫千金(6)

今回のエントリは「近所のおじさん(4)」の続きである。(6)になっている理由は、その間に「リリカ」が入るため。実質的に6番目のエントリになる。

たぶん10年以上前と思うが、ハワイ旅行の際、コンドミニアムの部分保有の案内を受け、ヒルトンハワイアンビレッジに行ったことがある。全く買う気がなかったが、100ドルの商品券をくれると言うので行ってみたのである。コンドミニアムの中の様子がどのようなものなのか少し興味があったのもある。

そのフロアには日本語が話せる日系人がおり、流暢な日本語でその商品の説明を受けた。簡単に言うと、ホノルルのコンドミニアムを部分保有する権利の購入案内で、それを買えば年に数週間?程度、そのコンドミニアムを無料で借りられると言う。その価格は法外な額ではないが、毎月、管理費も支払わなくてはならないのがミソであった。

どう考えても良さそうには見えない。これは不動産のようなもので売買も可能だが、持っていたとしても都合よくそのお部屋を使えるような気がしないし、また簡単に売買できるような気もしなかった。簡単に売れるなら、説明を聞くだけの人に100ドルもくれないと思う。

だいたい毎年ハワイに来るわけではないし。

それと、ハワイに飽きかけていたのもある。実際、ここ10年でハワイには3~4回しか行っていない。ここ5年では1回だけである。

全然、使わないものに毎月、管理費を取られる(維持費というべきか)のは納得できない。当時、アメリカはバブル状態であり、このような不動産風の商品がけっこう売れていたものと思われる。アメリカ人が最も行きたいリゾート地はハワイらしい。

その案内の女性の話で、

早期リタイアは日本ではなんとなく後ろめたいものに思われるかもしれないが、アメリカでは40歳くらいでリタイアしても、日本のようなイメージは全然ない。

というものがあった。アメリカではビジネスで成功して早期リタイアすることは「誇らしいこと」だと聞いた。

次は全く別な話。

たぶん15年以上前の話だが、香港の天高くそびえるような高級マンションには、20歳代後半か30歳代くらいで、株で大儲けした後、全く働かないで毎日ブラブラしている青年夫婦が住んでいたりするらしい。これ以上、株をし続けると破産することもありうるため、リスクを取らず何もしない。もちろん働くこともない。働かなくても一生困らないほどの金融資産があるからである

これもアメリカ風の早期リタイアであろう。

アメリカの場合、大企業ではリタイアした後にかなりの企業年金が得られる会社も多く、例えばGMの場合、リタイアした人が年収1000万以上の年金を得ていることも多かったと言う。この点でも税金を投入してGMを救うのに国民全体の理解が得られないという話も出ていた。全く当然の話である。日本でも日航の破綻時に似たようなことが起こっている。

これは20年以上前の話。
イタリアではずっと金利が高い経済状況があったが、不景気の際、金融緩和のため金利を下げると、金利で生活しているか、金利に多く頼っている人がけっこういるため、かえって国民全体の購買力が低下すると言う話を聞いた。これはイタリアらしいと思った。

日本では、真面目に働くことに価値があるという教育を小学生の頃から受けている。道徳の教科書もそういう話が良く出てくる。

これは日本文化なのである。だからこそ、早期リタイアはたとえ全く問題がないものでもなんとなく後ろめたい。むしろ、病気による早期リタイアとか、会社の経営不振などの早期リタイアは仕方がないものなので同情される文化である。

日本では働ける年齢では働き続けることが美徳とされている。

この辺りに、海外と日本の文化ギャップがある。そもそも、早期リタイアは良いことなのか?ということさえ、現代の日本ではさまざまな意見がありそうである。

しかし時代が変わり、今の若者は、早期リタイアを肯定する人が多そうな気がする。むしろ年配の人の価値観がおかしいといった反論も多そうである。

上で出てくる香港の青年の話は良し悪しはともかく、憧れる若者も多いのではないかと。

あの青年は決して悪いことをしたわけではないし、合法的に大金を得て、早いリタイアを実現しているから。今の若者風に言えば成功者に他ならない。

しかし年配の人に言わせると、確かに金持ちになっているが、「尊敬に値しない」といったところであろう。社会貢献などほとんどゼロに等しいからである。

今の若者は出世欲や名誉欲がない人が多く、「エコノミックアニマル」という言葉は過去のものなっている。

しかし、若者もお金は好きである。

しかもその理由は二次的なもので、お金がほしい理由は今の日本社会で働くのが辛いからである。決して成功を欲して、あるいは社会的成功を経て金銭を得るという煩わしい方法を望んでいない。

ここにアパシー由来の一攫千金の幻想が生じる。

それも、とてつもない大金ではなく、一生働かずに平穏な生活ができるだけの金融資産があれば十分といったところである。

広汎性発達障害(及び正常との間)の人たちに見られるアパシーが間接的に、FXや株式投資へののめり込みや大金を失うことの原因になっているケースがある。

彼らは高機能(高知能というべきか)なので、株式投資やFXで勝てるような気がするのであろう。またこれらにはコンピュータで分析も可能だし、投資手法もプログラム化できそうに思えるため、少なくとも普通の人より成功する確率が高いと思うようである。(株式投資以外のヤフーオークションなども同様である。)

もちろん投資の才能に恵まれ、自立できる人もいるであろうが稀有と言ってよい。その理由は「投資心理」が関係するからである。スタートラインで既に弱点が内包しているとも言える。

株式投資は市場心理を理解できるだけでなく、自らの心理をコントロールできるかどうかも非常に重要である。また近未来を見通せる能力も必要である。元々、広汎性発達障害の人たちはそれができないため損失を被ることが多い。つまり日常生活でも「損して得とる」と言う対処ができない。実はこのような傾向は、広汎性発達障害の人たちだけでなく、近年の若者全般に言える。

かくして、働かなくても良い目的で投資したために、かえって大損して働かなくてはならなくなると言う奇妙な結果になってしまうのであった。

日経平均はこの20年概ね右肩下がりである。また通貨にしてもリーマンショックのような事態が生じることがある。

参考
深刻な不景気とdepression
精神症状と株価暴落が連動している人
精神的渇望とトピナ
医師国家試験の難易度
このブログを読んで、精神科医になりたいと思う人へ
強烈な印象の夢(2009年1月31日)
器質性うつ状態と広汎性発達障害