■前置き
一時差異を生み出す資産・負債のうち、以下の取引に対応する処理
方法を説明します。すべて将来減算一時差異です。
・「棚卸資産評価損」が限度額を超えて損金不参入となる場合
・「引き手金の繰入額」が限度額を超えて損金不参入となる場合
・「減価償却費の償却額」が限度額を超えて損金不参入となる場合
なお、法人税等調整額を算出するときには、「差異解消時の税率」を
使用することに注意。
■仕訳に使う勘定科目
①法人税等調整額(P/L)
・法人税等を多く支払うことになった場合(一時差異解消時には法人
税等の支払額が減少する場合)、差異発生期には法人税等の額が
大きくなり当期純利益を下ブレさせるので、P/L上で法人税等の
金額をマイナス修正する形で記載し、当期純利益を増やして適正な
数値にする働きをします。
・法人税等を少なく支払うことになった場合(一時差異解消時には
法人税等の支払額が増加する場合)、差異発生期には法人税等の
額が小さくなり当期純利益を上ブレさせるので、P/L上で法人税
等の金額をプラス修正する形で記載し、当期純利益を減らして適正
な数値にする働きをします。
②繰延税金資産(B/S資産)
将来減算一時差異が発生する資産、負債が発生したときに計上し
ます。B/Sにこの項目がある場合は、その資産、負債に対しての
法人税等を前払いしている状態を意味します。
③繰延税金負債(B/S負債)
繰延税金資産とは逆に、将来加算一時差異が発生したときに計上
します。B/Sにこの項目がある場合は、その資産、負債に対して
の法人税の未払い残高がある状態を意味します。
■具体的な仕訳例
x9年度決算処理(実効税率40%)
①売掛金10000円に対する貸倒引当金200円を繰り入れたが、
うち100円は損金不参入になった。
貸倒引当金繰入 200 / 貸倒引当金 200
繰延税金資産 40 / 法人税等調整額 40
→40円は、損金不参入になった100円に対する法人税額。
②x8年度に損金不参入だった商品の評価損50円が、x9年度に
商品を売却したために損金参入を認められた。
【前期決算仕訳】
商品評価損 50 / 繰越商品 50
繰延税金資産 20 / 法人税等調整額 20
【当期決算仕訳】
法人税等調整額 20 / 繰延税金資産 20
→一時差異を発生させていた資産(商品)が売り上げられることで
その差異が解消されたので、逆仕訳を行う。
③当期の法人税等充当額は250円である。
④貸借対照表
(流動資産の部)
繰延税金資産 40 /
→繰延税金資産(or負債)はB/S上に記載します。
なお、繰延税金資産、繰延税金負債は、その差異を発生させた
資産/負債に対応させて、流動資産、投資その他の資産、流動負債、
固定負債のいずれかに分類し、
流動資産 vs 流動負債
投資その他の資産 vs 固定負債
を相殺して表示します。
⑤損益計算書
税引前当期純利益 500
法人税等 250
法人税等調整額 △20 230
--------------------------------------
当期純利益 270
→①と②の法人税等調整額を左右相殺して、残った貸方差異20円
を法人税等250円を控除する形で表記します。
実際に支払う法人税等の金額は変わりませんが、P/L上で一時
差異が発生している資産についての含み法人税等を加減すること
で、税引き前当期純利益に対してより合理性のある当期純利益を
表示することができましたね。