実感しづらい部分なので、クドクドと色々な観点から説明しています。
■税効果会計とは①
今まで学んできた企業会計では、税引き前当期純利益に実効税率を
乗じることで「法人税等」を算出しました。
しかし、実際に法人税を算出する時の課税対象は、法人税法の基準に
沿って計算された利益に対して実効税率を乗じます。
この企業会計の基準と法人税法の基準の差を埋めて適切な当期純
利益を表示するための手順が税効果会計と呼ばれています。
■2つの基準の違いは
企業会計と法人税法の違いは今のところこのくらいです。
○収益の呼び方
企業会計 → 収益、費用
法人税法 → 益金、損金
○損益認識の方針
企業会計 → 業績評価、情報開示
法人税法 → 公平な課税、租税回避行為の排除
■税効果会計とは②
これらの違いにより、例えば、ある費用が発生したときに・・・
・企業会計
→費用として計上して税引き前利益を減らすので、法人税等
の額が減少する。
・法人税法
→損金として計上することは認められていないので、税引き前
利益は変わらず、法人税等の額も減少しない。
という現象が発生してしまいます。
このとき、損益計算書上に表示される当期純利益の額が、実際に
当期に支払うべき法人税の額により左右されてしまいます。
○税効果会計適用 損益計算書(一部)
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税引き前当期純利益 ~~
法人税等 ~~
「法人税等調整額」 ~~
当期純利益 ~~
その期の課税対象になっていない部分の損益に対応した法人税等は、
「法人税等調整額」として表示されます。
この法人税等調整額は、今期に支払うべき法人税額に比べて「以前
多めに計上しておいた法人税」または「これから多めに計上しなけ
ればならない法人税」を意味します。
このような、当該期に支払い義務の発生している法人税に揺さぶられ
ている部分を修正して、企業会計上の税引き前当期純利益に正しく
対応した当期純利益を表示させるための手続きを、税効果会計と
いいます。
■具体的な手続きを説明する前の用語説明
○差異
→企業会計上の損益認識と、法人税法上の損益認識のタイミングの
ずれから生じる法人税額の差のことを言います。
○永久差異
→企業会計では収益・費用扱いされるが、法人税法では益金・損金
扱いされないもの。これは損益認識のタイミングによらず永久に
差異が解消されないのでこう呼びます。
現実には、永久差異を加減した課税所得に対してきちんと納税
要求がくるので、簿記1級では「永久差異には税効果会計を適用
しない(不可能である)」と覚えておけば良いようです。
忘れてしまっても問題は解けます。
○将来減算一時差異
→ある資産について、法人税法の要求により、企業会計による算定
よりも多めの課税所得を計上した場合、めぐりめぐって将来、
その資産についての課税所得は、少なく計上することになります。
この、一時的に多めの課税対象を計上することで発生する差額
を将来減算一時差異と言います。
○将来加算一時差異
→将来減算一時差異とは逆に、「今回は計上額が少なかったラッキー
でも、結局は納税総額は同じなんだよね~」という部分の差異。
将来、「ほら、やっぱり今回の納税額が大きくなっちゃったよ」
と後悔するもの。
■税効果会計とは③
くどくなってきましたが、、、
将来減算一時差異の一つである「貸倒引当金」を例に挙げてみます。
引当金/戻入益の上限額は仮設定です。
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1.前期決算時の処理
貸倒引当金には、その期に損金参入できる上限が決まっていますが、
例えば、売掛金1000円に対して貸倒引当金200円を設定します。
企業会計上では繰入額200円すべてを費用として計上できるため
税引き前当期純利益が200円減少します。
しかし、法人税法上では100円しか損金参入できないので、税引き
前当期純利益は100円しか減少しません。
この場合、その期の法人税法上での法人税は、企業会計上の法人税に
比べて100円の利益分だけ多く収めることとなります。
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2.当期決算時の処理①(無事決済された場合)
次期に売掛金は無事に回収されました。
このとき、企業会計では200円の貸倒引当金戻入益として税引き前
当期純利益が200円増加します。
法人税法上では、そのうち100円が益金として認められず、益金不
参入となり(多分)、課税所得は企業会計での算定にくらべて100
円減少します。
したがってこの期では、法人税法上での法人税等が、企業会計上の
法人税等に比べて100円の利益分だけ少なくなります。
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3.当期決算時の処理②(貸し倒れた場合)
なんと、次の期になって売掛金が貸し倒れました。
このとき、企業会計上では1000円-200円=800円が損失と
なり、税引き前当期純利益を減少させます。
法人税法上では、このときに1000円-900円=900円の損失を
認識して、課税所得は企業会計にくらべて100円減少します。
したがってこの期では、法人税法上での法人税等が、企業会計上の
法人税等に比べて100円の利益分だけ少なくなります。
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4.つまり・・・
①→②の流れ、①→③の流れでも、最終的に企業会計上の納税額と
法人税法上の納税額が一致しました。
しかし、企業会計上の損益計算書では、法人税法での損益認識タイ
ミングのずれによって、
・前期の純利益は「損金不参入100円」によって大きくなった
法人税等の分だけ少なく表示されて、業績が悪く見えてしまいます。
・逆に、当期の純利益は、「②益金不参入100円」or「③損金
参入100円」によって小さくなった法人税等の分だけ大きく
表示されて、業績が悪く見えてしまいます。
この100円に対する法人税等を前期のうちに見越し計上して、
企業会計上の税引き前純利益に対応した当期純利益を表示させる手法
が税効果会計です。