”されてください”〈2〉 | tobiの日本語ブログ それ以上は言葉の神様に訊いてください

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 下記の仲間。
日本語アレコレの索引(日々増殖中)【29】
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1982886133&owner_id=5019671

mixi日記2022年09月●●日から

 下記の続き。
【”されてください”〈1〉】
https://ameblo.jp/kuroracco/entry-12764945041.html

 質問してみた。
【「満喫されてください」ってOKですか。】
https://oshiete.goo.ne.jp/qa/13147809.html
===========引用開始
質問者:1311tobi質問日時:2022/09/17 18:16回答数:12件
下記の続きかもしれません。
【満喫してください!を言い換えると? 満喫されてください。 満喫なさってください。 どちらでしょうか?】
https://oshiete.goo.ne.jp/qa/13141139.html

「ご満喫ください」は「ご賞味ください」と同様でおかしい……という話はおきます。個人的には「お楽しみください」あたりが素直な気がしますが。
「~されてください」が敬語表現としてOKか、という質問です。 

 過去には、下記の質問もありましたが、何がなんだかよくわかりません。
【「参加されてください」は正しい日本語ですか?】
https://oshiete.goo.ne.jp/qa/10005483.html

 こんなのは「誤用」と片づけてもいいと思いますが、根拠になりそうなものが見当たりません。
【”されてください”】の検索結果。約 374,000,000 件
https://www.google.com/search?q=%E2%80%9D%E3%81% …

 実数を確認して呆れました。
「約 25 件」しかありません。何を拾ってここまで膨らむのでしょう。
 しかも、なかには「癒(や)されてください」といった用例もあります。これは受け身でしょう。
【”されてください” -癒】の検索結果。約 18 件 
 これはさすがにほぼ「誤用」なのでしょうか。
===========引用終了

 念仏コメントが入らないのはめでたいが、どうにも決定打が見つからない。
 貴重なコメントもいただき、多少は前進できたと思うのだが。
 結論としては、No.10のahkrkrさんに賛成。
===========引用開始
「~されてください」は不自然な表現であるが、文法的に不自然である理由を説明するのは困難。
===========引用終了
 理由についてはいろいろ考えたのだが、なんとも……。
 ランダムに並べてみる。


●補助動詞との相性の悪さ
 これは下記のときに考えた。
【「参加されてください」の是非】2017-10-19
https://ameblo.jp/kuroracco/entry-12321043639.html
===========引用開始
 敬語の初級者は「レル敬語」を使う傾向があるらしい。個人的にはそれでいいと思う。初級者向けの「レル敬語」を使い、それに慣れたら「ナル敬語」を使えばいい。
「~ください」などの補助動詞?との相性の悪さは、「レル敬語」の制約なのかもしれない。
「ご参加されていただきたい」(※「いただく」は謙譲語)
「ご参加されてほしい」
 etc.……全部Xだろう。補助動詞との相性が悪いのかもしれない。これは発見だった。今後の課題にしたい。とりあえずは、「慣習」と言うしかない。
 あっ、そうか。そもそも「ご~される」が誤用なんだから、「ご」をつけてはダメか。
===========引用終了
「補助動詞」の正確な定義はけっこうむずかしい。ここでは「~てください」「~ていただく」などのことと考えてほしい。おそらく「~続ける」などは「て(で)」がつかないので正確には「補助動詞」ではないが、入れてしまう。
「お/ご~される」は誤用の可能性が高いので、「お/ご」は削除する。
「参加する」をレル敬語にすると「参加される」。これに補助動詞をつける。
1)参加されていただきたい
2)参加されてください
3)参加されている
4)参加されていく
5)参加され続ける
6)参加されだす
7)参加され始める

 先に5)~7)について。この3つは文法的には間違いではないだろう。ただ、この形を敬語と考えるのは無理があるのでは。いずれも受け身ととるのが自然な気がするが、「参加」だととそれもむずかしいだろうか。
 たとえば5)の原型は「参加し続ける」。これを敬語にするのなら、「ご参加になり続ける」にするのが自然(『敬語再入門』p51)。
 4)がよくわからない。原型は「参加していく」。これを敬語にするのなら、「ご参加になっていく」だろうか。
 3)は個人的な感覚ではアリって気がする。でも『敬語再入門』の判定は〈(誤りとはいえませんが)あまりこなれていない〉(p52)。原型は「参加している」。これを敬語にするなら、「ご参加になっている」が自然なんだろう。
 今回のテーマは2)。異和感が強いが、理由がわからない。原型は「参加してくれ」だろうか。通常の敬語表現は「ご参加(になって)ください」「参加してください」。
 1)はそれ以上に異和感が強いけど、これも論理的は間違いではないのかも。原型は「参加してもらいたい」。通常の敬語表現は「ご参加(になって)いただきたい」「参加していただきたい」。


●「お/ご」は必要か不要か
「ください」を使う通常の形は「お/ご~ください」。
 これを「されて」と組み合わせると、「お/ご~される」は現段階では誤用なので、必然的に「お/ご」が落ちる。これも異和感の原因かとも思った。
「ご参加になってください」 
「ご参加なさってください」
 はフツーの敬語表現だろう。
 ただ、「参加なさってください」なら問題がない(はず)。「参加してください」も(敬度は低いが)フツーに使われる。ということは、「ご」がないから……は理由になりそうもないorz。


●『尊敬をあらわす「─(ら)れる」の実態と今後の状況についての考察』をめぐって
 検索しまくって、下記を見つけた。
【尊敬をあらわす「─(ら)れる」の実態と今後の状況についての考察】 2017-03-31
https://mejiro.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=1240&item_no=1&page_id=13&block_id=21
 なかなか興味深い内容だし、何より読むのに苦痛を感じないのがありがたい。
 通常の論文の文体は、当方には苦痛でしかない。まともな内容ならがんばって読むこともあるが、相当の苦行。論文のような文体で中身がメチャクチャな念仏の類いは数行読んだだけで放り投げる。
 どうやら「されてください」はかなり新しい用法らしい。
===========引用開始
2.1 インターネットでの使用状況
 少し前から、サービス業各種受付やレストラン、またはインターネットの世界で散見されるようになってきた表現に尊敬の意味での「─(さ)れてください」がある。どのようなものが見られるか、Googleで2016年8月23日に検索した結果の一部を記す。

(略)

 尊敬表現に「─てください」が後接する場合は、尊敬動詞または「お─になる」形を使用するのが従来の用法である。「お─になる」形を使用した「お─になってください」を省略した「お─ください」も一般的である。このような従来用法がきちんと整備されていながらも、例文のような上記用法はなぜ出現してきたのであろうか。実はGoogleで「─されてください」を検索すると、上記の例だけではなく、この用法を誤用とみなし訂正したり戒めたりするページのヒットが少なくない。敬語の使用に関して、特に若い世代は正解を求めようと模索していることがあるため、このようなサイトが氾濫するのは納得がいく。しかし、そのようなサイトの中には、この「─(さ)れてください」を(7)のように正しい用法として指南するようなものもある。

(7 )「お書きになってください」も「書かれてください」も、それぞれ十分な丁寧さを持っていますから、丁寧さを出す必要に応じて使い分ければ敬語の役目は果たせます。
http://kochan.mypages.jp/kotoba5.htm

「NHK放送研修センター日本語センター顧問」という肩書きの人物がこのように評している。そもそも敬語マナー講座のような場所で「誤用」として指摘されるのは、この表現が広まってきたからこそである。広まっていなければ何も語る必要はない。単に「誤用」と片付けるのではなく、言語変化上の「ゆれ」と見て、この表現が日本語のどのような構造から生まれているのかといった原因や、将来この表現がたどる道筋についても論じてみたい。
===========引用終了

 一般に、学者の論文などは、はっきりした典拠がない限り「誤用」とはしない。
 とくに国語学者は……などと書きはじめると話が拡散する一方だし、当方の手に余る。
 ただ、↑の書き方は「─(さ)れてください」に相当否定的。
〈このような従来用法がきちんと整備されていながらも、例文のような上記用法はなぜ出現してきたのであろうか〉
 それはね。日本語を知らない●●が垂れ流す文章を目にする機会が増えてきたからじゃないかな。
 網羅性がきわめて高い『敬語』『敬語再入門』に「─(さ)れてください」に関する記述がない理由もわかった気がする。後発の『敬語再入門』の原本の発行が1996年。その頃にはまだ、「─(さ)れてください」なんて表現は目立たなかった。
 別にこれが新しい敬語として定着していくのならそれでもいい。でも、すでにほかの表現が定着しているのに、わざわざこういう気持ちの悪い表現を自分で使おうとは毛頭思わない。


●コーパスの判定は
「小納言」をひいてみた。
「されてくだ」の検索結果。34件。
「癒されてください」も複数含んでこの結果は少なすぎる。
 いちばん古いのが1993年の国会会議録。あとは2000年以降で、なぜか2010年以降の用例はない。出典はほとんどがYahoo!ブログとYahoo!知恵袋。まともな文章の中には出てこないと考えるべきでは。

見えねえや。


●「誤用」と「典拠」について
 どうにも勝手が違うのは、いつもの当方の考え方とは逆のことを書いている感じになっているから。
 別に国語学者を気取っている気はないが、当方はよほどはっきりした典拠がないかぎり、「誤用」とは書かないようにしている。
 当方の考え方は、2通りある。これを「矛盾している」と責める人がいるなら、「そうかもね」と言うしかない。

1) どんなに使用者が増えても、誤用は誤用
【世に誤用の種は尽きまじ 総集編〈1〉~〈3〉】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-3326.html

2)根拠もあげられねえのに「誤用」「誤用」と喚くんじゃねえ!
【全方位毒吐き47──根拠もあげられねえのに「誤用」「誤用」と喚くんじゃねえ!】※公開制限あり
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1933096184&owner_id=5019671
【全方位毒吐き47──根拠もあげられねえのに「誤用」「誤用」と喚くんじゃねえ!】〈2〉
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1933201173&owner_id=5019671

 なんらかの典拠があって明らかな「誤用」の場合は1)になる。でも、基本的には2)の態度を取ることが多い。だって典拠がないんだもん。下記あたりはその典型。確かな根拠もなく誤用説がまかり通っている。困ってしまうのは、こういう説が広まると、「誤用」ではなくても使いにくくなること。
【総集編 拝見させていただきます 拝見させていただきたい 拝見させてください】2019年8月補遺
https://ameblo.jp/kuroracco/entry-12505236885.html
【了解/承知 できればこれを最後にしたい】2018-06-18
https://ameblo.jp/kuroracco/entry-12384680778.html

 今回の場合も、明快な典拠はないんだから、「誤用」と断定するのはむずかしいだろう。しかし自然な表現とは思えない。そのあたりを理解したうえで、それでもあえて使いたいかたはどうぞ。
 少し前に見た「所用する」に似ているかも。
【「所用する」という言葉を使ったことがある人はいますか】
https://oshiete.goo.ne.jp/qa/13104758.html

 こちらは認めている辞書が1冊あるから「誤用」とはいえない。しかし自然な表現とは思えない。そのあたりを理解したうえで、それでもあえて使いたいかたはどうぞ。

 でも●●だと思われる確率が高いよ。たいていの人はヘンだと思うんだから。

 

 

 

 

 

 

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