吉田幸司『「課題発見」の究極ツール 哲学シンキング』(マガジンハウス 2020年)読了。
東北支部内で、「この本の内容を実際に使って議論をしてみたい」との提案があり、それを受けて今度、定例の勉強会とは別個で本書の内容を実践して勉強会をするとのことで、まずは予習も兼ねて通読してみた。
哲学を問題解決に実際に活かそうということで、哲学的思考を応用した問題解決のフレームワークを提示している。
ざっと読んでみての感想としては、
「なるほど、こういうやり方もあるな」
というところか。
本書でも指摘があり、また会社などで実際に課題解決のための話し合いをしようというときもそうなのだが、やはり議論の進み方として、課題を解決するための様々なアイデアを出したり、データを収集したり、聞き取りをしたりと、
「その問題に対して、どうしたらいいのか?」
という形で、「解」を求める方向性に流れることが多い、というか、これまでの経験上ほぼほぼそうした議論の流れになる。
それに対して本書では、いきなり「解」を出そうというのではなく、まずは課題となっている「問い」に対して、さらなる「問い」を集めよう、と言う。
例えば、
「〇〇なのはなぜ?」「そもそも○○とは?」「例えば〇〇というのはどんなとき」
といったように、まずはできるだけ「問い」を集める。
次に、集まった問いをグループ分けし、議論を組み立て、新たな洞察・視点の発見につなげる、というものである。
何も考えずに読んでいると、「なんだ、そんなことか」と思うようなことだが、しかし、本書で提示されている方法の方は、従来の「解」をいきなり求めに行くやり方よりも様々な意見が出やすく、議論が活発になるように思われる。
いきなり「解」を出そうとすると、割りとすぐに意見が出つくしてしまい、議論が行き詰まりがちになってしまうことが多々ある。
それに比べて本書のやり方だと、まずは与えられたテーマに対してそれぞれが率直に感じた疑問を、テーマに対する「問い」として出すだけなので、議論のハードルは格段に下がることだろう。
そして、ズレている「問い」でも構わないということなので、あまりそういう場で発言できない人間も発言しやすいという利点がある。
課題解決の議論の場というのは、ややもすると硬直化しやすいような感があるので、本書で提示されてされているようなやり方は、なかなか面白いのではないかと思った。
とはいえ、まだ本書のやり方での議論を本格的にはしていないので、まずは勉強会での場で実践してみてから、ということか。
まして我々の議論のテーマは、大体「どうすればいいか」ということの「解」が出揃っているように思われる。つまり「何をしなければならないか」ということについては分かっているので、ではそれを為すには「どうすればいいのか」という具体的な方法において新たな視点・洞察が得られればいいのではないか、と思う。
ともあれ、議論が活発に行われて、その結果として新たな視点・洞察が発見できればこの試みは成功なので、少し楽しみである。
そして、会社での仕事の場やプライベートなときでも、何かの課題について話し合うとき、本書で学んだことが活かせれば、その課題についてまた違った視点から考えることが出来たりしやすいだろうから、色々面白いのかな、とも思う。
…ということで、今回は少し軽めの本の紹介でした。
https://www.amazon.co.jp/「課題発見」の究極ツール-哲学シンキング-「1つの問い」が「100の成果」に直結する-吉田幸司/dp/4838730810