江崎道朗『インテリジェンスと保守自由主義 新型コロナに見る日本の動向』(青林堂 2020年)読了。
江崎先生のご著書を読むと、いつも衝撃を受ける。
「日本はなんて危機的な状況に置かれているのだろうか」と。
そして、「何とかしなければ我々に明日はない」と思わせてくれる。
日々の学びの原動力を与えてくれる。
本書もまさに「日本が強く賢くならないと、日本自身のためにも、世界のためにもならない」と思わせてくれた。
重要だと思った箇所がたくさんあって付箋だらけになってしまったが、その中でもっとも肝に銘じなければならないと思ったのは、
「力なき正義は無力なり」(p194)
という言葉である。
直後のページにも、安倍首相の発言を受けて
「確かに多国間軍事ネットワークを構築することも一つの方策ですが、弱者の連合など、中国には通用しません。尖閣周辺海域を脅かす中国公船の存在を見れば、通用していないことは明らかです」(p196~197)
と書かれている。
中国は力の論理で動く。日本や欧米諸国の価値観とはまるで違う価値観の中で生きている。
日本や欧米諸国は「人を殺してはいけません」と言ったときに、「当然だ」となるが、中国やロシア、北朝鮮は同じ質問をされたときに「自分より弱い奴を殺して何で悪いの?」というようなことを答えるだろう。
我々が勝手に人の命を奪うことが正当化される意味が全く理解できないのと同じように、彼らもまた「なぜ自分に従わない奴や自分より弱い奴の命を勝手に奪うことが悪いことなのか」が全く理解できないのだろう。
とすると、言葉・価値観が通じない相手にこちらの意思を強要するためには、こちらが相手より強い力を身につけるしかない。
強い力とは何か。第一義的には当然「軍事力」ということになるだろう。
まずは物理的に相手を制する力がないといけない。
しかし、それだけでは勝てない。
腕力だけあっても、頭の中身が空っぽなら、相手にいいように振り回されるだけで、何の効果もない。また自分で考えて、「これはおかしい」と気づくこともできず、ついにはいつの間にやら相手に取り込まれてしまう。笑い話にもならない。
では他に何が必要なのか。
しっかり物事を自分の頭で考え、分析できる力、つまりインテリジェンスの力である。
また、実際に武力の裏付けによって相手にこちらの意思を強要する技術(=外交力)も必要だろう。
武力の行使なくこちらが有利になるのなら、安上がりで安心・安全を手に入れられる。
だが、これらには軍事力、情報力、外交力を身につけるためには当然ながらカネが要る。
そこで経済力が大事になるのだ。
何をするにも先立つものが必要だ。
だから、日本を守るためにはまず、経済を復活させなければならないのだ。
経済を復活させるということは、国民全員に、特に民間に活力がなければならない。
政府に金儲けなどできないし、すべきではない(官僚がこれをやろうとすると統制経済となる。これで失敗したのは歴史が教えてくれる)。
だから、民間から活力を奪うようなことは原則やってはいけないのだ。国力を低下させるからである。
したがって、ただでさえ20年にわたるデフレで疲弊しきっているのに、そこに消費増税するなどもっての外なのである。
最近では、「炭素税」「交通税」などといった、コロナ禍のどさくさに紛れて新しい税の導入を言っている人もあるらしいが、自分で何を言っているのか分かっているのだろうか。
分かっていて言っているのなら敵のスパイである疑いがあるだろうし、分かっていなければ「デュープス」だ。
訳も分からず増税を主張している向きには、その人が日本を何とかよくしたい、と思っているのならば、根気よくしっかりと説明してあげるということが必要だ。そうして「騙されていた」ことに気付いてくれればしめたもの。
「騙される」人が少なくなっていけば、自然と本物のスパイは動きづらくなってくる。
話があちこち飛んだようだが、国内の問題(政局なども含めて)と国際社会の問題はつながっているということがよく分かる。
今回もとても勉強になる一冊だった。
https://www.amazon.co.jp/インテリジェンスと保守自由主義-新型コロナに見る日本の動向-江崎道朗/dp/4792606772