「ファニーゲームU.S.A」
白い手袋、白いシャツの一見普通に見えるが、話すと全く意思の疎通が
成立しない不気味な若者達に一方的に暴力を振るわれ、
翻弄され続ける一家に感情移入をして作品を見ると、
実に不快極まりない映画である。
一方、冷静に俯瞰して登場人物達を見ると、
例えば第二次世界大戦中にユダヤ人の家庭に侵入し、
一家の自由を奪ったナチスの兵隊の行動、
例えば、自分の楽しみだけの為にホームレスに暴力を
ふるったり、火をつけたりする若者たち、
抵抗する力を奪い、救いの手が差し伸べられる期待が
失われた状況で人間は如何に無慈悲に非人間的になれるのか。
健全なハリウッド映画の規範とは正反対の姿勢を貫き、
「ピアノレッスン」、「白いリボン」など、
自己の内に潜むコンプレックに端を発する他者への行動、
弱者への暴力的支配を映像化し続けている
ウィーン在住のミヒャエル・ハネケ監督。
“ドイツの名門女子高で、生徒が別の女子生徒を地面に倒して、
殴る蹴るの暴行をはたらいた場面でその場にいた生徒たちは
その様子を携帯電話で動画録画していただけだった事件“や
“ドイツの若者が数人で喫茶店に行き、老人の飲むコーヒーカップを
取って老人の顔にぶっかけ、残りの若者はそれを写真に撮り、
「ジョーク」としてネットに画像を配信する“等の事件に
監督が触発されて制作された「ファニーゲーム」の
リメーク版である本作。
製作総指揮に加わり、惨劇に巻き込まれた一家の主婦としての役割を
演じることでミヒャエル・ハネケ監督と共に本作を完成させたナオミ・ワッツの
迫真の演技が、“苦労人”としてのナオミ・ワッツのこの映画にかける
深い思いを感じさせる2008年のハリウッド映画。
アドベント:待降節
昨日12月2日はアドベント第1主日礼拝。
これから12月23日まで毎日曜に1本づつ点灯される
4本のローソクの1本が点灯され、
教会の入り口にはキリスト誕生の話に登場する
人々や動物達を飾り付けたクリスマス人形が飾りつけられた。
赤子のキリストが飾られるのはクリスマス礼拝となる
第4主日礼拝。
本来は断食と悔い改めの時期であるアドベント、
待降節第1主日礼拝では司式者の隣の花台に
生けられた花は“悔い改め”の色とされる紫色の花を
主体とした花が選ばれていた。
早くも12月7日は本格的な冬が到来するとされる
二十四節気の“大雪”。
我が家の庭ではカエデが紅葉し、ピラカンサの艶やかな実の
赤味が深みを増している。
「卵をめぐる祖父の戦争」(CITY OF THIEVES)
時は1942年、1941年9月から始まったドイツ軍による
レニングラード包囲により、食料を含めた物資の補給路が断たれた
レニングラード市民は、極度の飢餓状態で日々を生きのびる
困難な状態に追いやられていた。
「ナイフの使い手だった私の祖父は18歳になるまえにドイツ兵をふたり
殺している」で始まる本作「卵をめぐる祖父の戦争」(CITY OF THIEVES)は
このような状況下のレニングラードで、当時17歳の少年だった祖父レフ・ベニオフが
ひょんなことから金髪碧眼の“脱走兵”ニコライ・ヴラゾラと組んで、ソビエト軍幹部の
“娘の結婚祝いのケーキ用”との命令により、レニングラードから姿を消した卵を
手に入れるために、厳寒の戦場を東奔西走する冒険譚。
エドワード・ノートンを主役に起用し、麻薬の密売犯として実刑判決を受け、
過酷な日々が待ち受けている刑務所に入る前の若者の1日を描いた
“25時”の原作者であり、ハリウッド映画の脚本家としても活躍中の
デイヴィッド・ベニオフが著した本作が面白くない訳がなく、
戦争の悲惨さが行間からにじみ出ているにも拘らず、
敢えて必ずしも上品とは言えない言い回し・ギャグを多用して
笑い飛ばしたり、大逆転を組み込んだり、
ハラハラドキドキの中でオプティミスティックな展開が予想できる
作品として仕上げられている。
卵が姿を消したレニングラード、そこで庶民が食料として選択したものは?
戦火をかいくぐって卵をもとめてさすらうレフ(リョーヴァ)が出会い、レフの人生に
大きな影響を与えた、少年のようなパルチザンの射撃の名手ヴィカと
その仲間のパルチザン達、金髪碧眼の脱走兵ニコライの優しい友人達、
厳寒の中たまたま見つけた農家で肩を寄せ合い住んでいた戦争の被害者の
少女たち、地雷犬や、“雄”のニワトリを服の中に隠して温めていた少年。
戦争という極限状態で生きる人間の姿を描きながら、
時には脱線しすぎの感もあるが、その筆はユーモアに富み、時に大きな
感動をさそう。
「一度も自分の部屋から出たことのない男が、たまたま自分が住む
マンションの入り口で佇む老いた猟犬を見て哀れに思い、
サラミを与えた事から、このマンションに住む住民すべての番犬として
入り口を定住の地とするようになった老犬が数年後に死に、
この犬を埋葬するため初めて自分の部屋から出ていく」との
ニコライの架空の小説「中庭の猟犬」を作中作とする。
ハリウッド娯楽映画の神髄を体現したかのようなデイヴィッド・ベニオフの
2010年の快作。





