「ファニーゲームU.S.A」
白い手袋、白いシャツの一見普通に見えるが、話すと全く意思の疎通が
成立しない不気味な若者達に一方的に暴力を振るわれ、
翻弄され続ける一家に感情移入をして作品を見ると、
実に不快極まりない映画である。
一方、冷静に俯瞰して登場人物達を見ると、
例えば第二次世界大戦中にユダヤ人の家庭に侵入し、
一家の自由を奪ったナチスの兵隊の行動、
例えば、自分の楽しみだけの為にホームレスに暴力を
ふるったり、火をつけたりする若者たち、
抵抗する力を奪い、救いの手が差し伸べられる期待が
失われた状況で人間は如何に無慈悲に非人間的になれるのか。
健全なハリウッド映画の規範とは正反対の姿勢を貫き、
「ピアノレッスン」、「白いリボン」など、
自己の内に潜むコンプレックに端を発する他者への行動、
弱者への暴力的支配を映像化し続けている
ウィーン在住のミヒャエル・ハネケ監督。
“ドイツの名門女子高で、生徒が別の女子生徒を地面に倒して、
殴る蹴るの暴行をはたらいた場面でその場にいた生徒たちは
その様子を携帯電話で動画録画していただけだった事件“や
“ドイツの若者が数人で喫茶店に行き、老人の飲むコーヒーカップを
取って老人の顔にぶっかけ、残りの若者はそれを写真に撮り、
「ジョーク」としてネットに画像を配信する“等の事件に
監督が触発されて制作された「ファニーゲーム」の
リメーク版である本作。
製作総指揮に加わり、惨劇に巻き込まれた一家の主婦としての役割を
演じることでミヒャエル・ハネケ監督と共に本作を完成させたナオミ・ワッツの
迫真の演技が、“苦労人”としてのナオミ・ワッツのこの映画にかける
深い思いを感じさせる2008年のハリウッド映画。
