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「孤島の王」(Kongen av Bastoy)

時は第一次世界大戦さなかの1917年、

日本の年号は大正6年。

大恐慌はもう少し先であるが、世界的な経済停滞の状況下、

海岸線にフィヨルドが発達したスカンディナヴィア半島の

ノルウェーも例外でなく、街に溢れる困窮家庭の飢えた

子ども達や、些細な罪を犯した子らを“教会施設”が預かり、

社会に適合させる為の最低限の教育を受けさせる目的で、

オスロの南東約70Kmに位置するバストイ島に設置された

児童隔離施設でこの年に発生したある事件が本作

「孤島の王」のモチーフとなっている。


かつての捕鯨王国ノルウェー。

作品の重要なポイントで繰り返し流される、捕鯨船から3本の銛を

撃ち込まれたとされるクジラが、生き延びるため、銛を体から取り去ろうと

必死に海面に浮かびあがり、また沈む壮絶な映像が本作を象徴している

ように、精神的にも肉体的にも拘束された少年達が、

抑え込まれていた“自由”を希求する心を解き離す様が、

厳冬期には島と陸を隔てている海も凍ってしまうほどの

過酷な自然と、少年達が置かれておる過酷な環境とダブらせて

語られていく。


生きていくため、教会からほんの僅かなお金を盗んだ罪で少年期の大半を

この脱出不可能な孤島の矯正施設に閉じ込められ、収監態度が優秀だった

ことから間もなく解放されるC-1と呼ばれる青年オーラヴ。

捕鯨船で銛を撃っていたがある罪を犯してこの施設に入れられた

ばかりで人一倍“自由”を求める心を持つC-19と名付けられた

青年エーリング。


毎日聖書の証しの言葉を唱えさせられる少年達は、この場所では

すべて番号で呼ばれる生活を強制される。


監視役として入所してきたばかりの問題児エーリングの面倒をみていた

オーラブは、エーリングが問題を起こすたびに共同責任として甘んじて

過酷な罰を受け続け、エーリングの心の内を知るようになるとこれまで

自分の心を殺し、従順にふるまってきた態度が徐々に変化していく。


そして退所して自由を手にするばかりとなったオーラブが

直面したある事件が、オーラブとエーリングの人生を大きく

変えていく。


青年オーラブとエーリングを演じた二人の有望若手ノルウェー俳優に

相対するのがラース・フォン・トリアー監督の“奇跡の海”で若い時の怪演が

心に残り、最近ではハリウッド版の「ドラゴン・タトゥーの女」でも憎々しい

悪役を演じた性格俳優ステラン・スカルスガルド。


銛を射ち込まれて北氷洋で24時間生き延びた巨大なクジラ。

心の優しいオーラブと野生児エーリングの運命は?

カラー作品でありながら、白い雪、氷そしてグレーの空のモノクロの世界が

作品全体の色となっている、マリウス・ホルスト監督の手による2010年の

ノルウェー=フランス=スウェーデン=ポーランド合作映画



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「ヘルプ~心がつなぐストーリー~」(The Help)


今週は1210日まで“人権尊重思想の普及高揚を図る”

人権週間。

まだまだアフリカ系アメリカ人が社会の最下層に位置づけられ、

蔑視され、白人に隷属して生きることが運命づけられていた

1960年代のミシシッピー州“ジャクソン”を舞台にし、

ハウスメードの生の声を若い女性ジャーナリストの卵が本にして

出版する過程を描いた「ヘルプ~心がつなぐストーリー~」

(原題:The Help)は、実にユーモアに富み、琴線にふれる

展開が盛り込まれた、人間的な作品であった。



人種差別の思想が骨の髄まで染みこみ、

アフリカ系アメリカ人は人に非ず、

トイレを共有すると黴菌がうつると信じ込んでいる

典型的中・上流階級に属し、地域の活動に力を

入れることで、自己の社会的地位を高めることに

汲々としている欺瞞と偽善に満ちた主婦。


方や、同じ年代の友人が結婚して子供を産んでいる中

大学を卒業し、結婚にも男性にも無縁で、ジャーナリストと

しての修業を積み、自らは幼少時から少女時代まで

育ててくれたハウスメードを母のように慕っている女性。



ジョニー・キャッシュの「ジャクソン」(この歌のジャクソンはテネシー州、

ミシシッピー州あるいはアラバマ州との説もあるが)が流される

イントロから、1960年代のジャクソンの様子をそのまま再現させた

セットに至るまで、ケネディー大統領が暗殺された時代の

南部の街で、別々に差別されて生きるアフリカ系アメリカ人と白人の

日常生活が再現される。



アメリカの歴史の汚点のひとつは奴隷制度であり、

奴隷制度の醜悪さをユーモアを持って白日にさらす本作が

“自由と平等”の国アメリカで大ヒットし、

痛快なメイドミニーを演じたオクタヴィア・スペンサーが

アカデミー助演女優賞を受賞したのもうなづける。



勧善懲悪をベースに、弱者の哀しみをさりげなく散りばめ、

出演者全員で観ているものの背中を押してくれるような

ミシシッピ州ジャクソンで生まれ育った作家

キャスリン・ストケットの同名の原作を基に

2011にテイト・テイラー監督が脚本、製作総指揮を兼ねて

製作した作品。








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「ファミリー・ツリー」(The Descendants)

欧米からの移住者を祖先に持つハワイ人が居住する

ゆったりとした敷地を持つ緑に囲まれた住宅地、

そして太古の昔から手つかずの海に臨む美しい

丘陵地帯。


「ファミリー・ツリー」は常夏の国ハワイを舞台に、

サーフィンやフラダンスでイメージする観光地のハワイではなく、

米国の一州として白系ハワイ人が堅実に住み続けるオアフ島の街、

カイルア、ラニカイ地域のような、温暖で美しい花や常緑性の

熱帯・亜熱帯の木々と共存する町に住む一家に起こったある事件を

きっかけとした家族の姿を描いている。


ジョージ・クルーニー演じる弁護士マットはハワイ王族の娘と結婚した

米国移民の末裔であり、暮らしぶりは豊かであるが、子供の世話は

妻にまかせっきりで、仕事中心の生活を送ってきていた。

このような日々の中、妻がモーターボート事故でこん睡状態になり、

反抗期の高校生の長女、そしてユニークな個性を持つ小学生の次女の

世話をすべてマットが一手に引き受けざるおえない事態に陥ったことから

この物語は始まる。


父として夫として如何に自分は何も知らずにこれまで過ごしてきたか、

意識の無い妻そして母の過去の行動を確認するため父と娘は短い旅で

共に行動し、お互いの信頼関係を取り戻していく。


原題を”子孫“の意味を持つ「The Descendants」とする本作で、

親子で行ったカウアイ島にはマットが祖先から受け継いだ美しい海岸線と

緑豊かな丘陵地帯から成るハワイ王朝時代以来手つかずの豊かな自然に

恵まれた土地が残されていた。


親と子のそして夫と妻の姿を描くと共に、祖先から受け継いだ豊かな自然を

どのように守り、後世に残していくかについて考察した、

ハワイの美しい景色そして、役者としてのジョージ・クルーニーの力量が

印象深かった2011年のハリウッド映画。




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