kumac's Jazz -89ページ目

山形ジャズフェスティバル in 天童

 大阪のジョン・ピザレリのライブに続いての生ライブ。現在のジャズの最前線からちょっと距離を置いているkumacとしては、誰がどんな演奏をするのか皆目検討できませんでした。終わってみれば、じゃずはいいなぁです。

【東京リーダーズ・ビッグバンド】

 正直、トロンボーンの佐藤春樹以外は名前を聞いたことがない。ドラムの音がほとんど聞こえず、ブラスの音だけが目立つ、必死に曲を演奏する姿勢が感じられるが、肝心の迫力に欠ける。それに、楽しそうに演奏していない。こりゃあ、失格。



【辛島文雄テルテット】

 初めて聴くピアニスト。力強いタッチが、どこかペトルチアーニを思い出させる。エルビン・ジョーンズと一緒にやってきたことが頷ける演奏。ナマで聴くには迫力があって、いい感じ。でも、曲をじっくり聴かせる力はなさそう。ベースの井上陽介は、収穫。



【ニコル・ヘンリー&トリオ】

 教会音楽の乗りでメッセージ性の強い、かつ、おおらかに歌う。陰影のないところが、ビリー・ホリデーと逆照射の明の側。野外のコンサートでは、とても似合ってしまう。唯一、アンコールが起こる。これといった特徴はないが、人柄は良さそう(お前が、そんなことわかるはずはないじゃないか。はい。)。



【坂田明miiスペシャル】

 パフォーマンスのみの演奏。サックスプレーは、あの山下洋輔時代と何ら変わらず。それを、目先だけを変えて、演奏を続けている。民謡や動揺はおおらかでいい。じゃあ、ジャズとしてどうかと問われれば、主義主張に犯されたドン・チェリーって感じで、没落に向かっている。ここいらで、真剣にジャズを考えてくれ!



【エリック・アレキサンダーカルテット+二コラス・ペイトン】

 これぞ、本場のジャズです。やはり、しっかりとしたジャズの演奏には、スイング感があります。いとも容易く、即興をする姿にはしばし感動。ブルース・オルガンを土台に音を作っていくのは、かなり聴きやすいジャズを目指している印象です。これって、ジョシュア・レッドマンのエラスチックバンドの路線と全く、反対の路線ですね。



【エディ・ヒギンスウ・カルテット】

 安心して聴けるアメリカン・ミュージック。ジャズの王道って感じですね。エディ・ヒギンズは、スライドピアノ的な奏法が多い。その中で、高音部でのアドリブを小粋に聴かせる。演奏を優雅に楽しんでいる。ベースのポール・ケラーは収穫。エリック・アリソンのフルート、アルトはとってもスイート。CD聴いたことなかったけれど、聴きやすい演奏ですね。

山形国際ジャズ

画像

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画像添付忘れました。

山形国際ジャズフェス

始まりました。初めは、東京リーダーズ・ビッグ・バンドです。酔っているせいか、心地よく聴けてます。野外は最高ですね。

Art Pepper『The Art Of Papper』

 kumacは、ずーっと、アート・ペッパーを食わず嫌いだった。理由は、エネルギッシュなジャズに夢中だったから、大人の陰影のある演奏をじっくり聴くことを知らなかったからだ。しかし、年とって、ある日、眠れずに悶々としていた体の芯にずしんと響いてきた音があった。それは、深夜のNHKのラジオから流れてきた「ビギン・ザ・ビギン」。なんともメリハリの利いたサックスの音、緊張感のある張りのある音に、ぐいぐい引きずり込まれてしまった。それまで何度も聴いたアート・ペッパーであったが、一度も感動しなかったのに、この日についにノックアウトされてしまった。kumacのアート・ペッパーは、この『アート・オブ・ペッパー』でなければ始まらない。それ以外の、アート・ペッパーは、ただのサックスおじさんなのだ。kumac的評価5.0(5点満点)
Art Pepper
The Art of Pepper, Vol. 3

Sonny Clark 『Sonny Clark Trio』

 kumacは断言する。ソニー・クラークを聴くならあの『クール・ストラッチン』ではなくて、このタイム盤の『ソニー・クラーク・トリオ』で決まりである。何故かと言えば、ソニー・クラークの素顔を知ることが出来るからだ。曲のテーマに犯された、哀愁を帯びたブルーノートのシングルトーンに騙されては、本当のソニー・クラークを知ることはできない。彼のアドリブが十分に聴けるトリオの演奏が最もジャズ・ミュージシャンとしてのソニー・クラークを知ることが出来るのである。

 この『ソニー・クラーク・トリオ』は、軽快なテンポでの演奏が主体である。それだけに、熱の込もっ他アドリブが聴ける。ドラムとベースとの真の取り方も、緊張感がある。この作品でのクラークを聴いた後に、あの『クールストラッチン』を聴くと、名作がぐっと新鮮な音に聞こえてくるのは不思議である。

 マックス・ローチの神掛かったブラッシュワークも聴きごたえがある。kumac的評価4.5(5点満点)



ソニー・クラーク

ソニー・クラーク・トリオ

Chack Mangione『Children Of Sanchez』

 パット・メセニーの郷愁を漂わせたよき時代のアメリカの優しさとはちょっとちがって、世界平和を願う包み込む優しい音楽を聴かせてくれたチャック・マンジョーネ。過去形で書いたが、最近の活動の様子は聞こえてこない。その優しさである「愛」をテーマに作品や演奏を繰り広げてきた彼の最も優しさを感じることが出来る先品がこの『チルドレン・オブ・サンチェス』であると思う。
 この作品は、映画のサウンドトラックである。マイルス・ディビスの『死刑台のエレベーター』のような即興演奏主体ではなく、各パートごとに明確なテーマが存在する。その、場面場面の情景が映画をみていなっくても目の前に浮かんでくる。それほど、この音楽はメッセージ性を強く持っているってことです。でも、ジャズであることに違いはない。チャッック・マンジョーネのいいところは、それがあまり宗教みたいな主義主張に突っ走ったりしないところで、あくまで音楽で成し遂げようとしていることである。
 kumacが、大昔、インディアンをテーマにした人形劇を創作したときに、そのバックで流れる音楽に迷わず選んだ、隠れたジャズの映画音楽の名盤である。kumac的評価4.5(5点満点)
Chuck Mangione
Children of Sanchez

Sonny Rollins『A Night At 'Village Vanguard'』

 数々の名盤を世に出して、今なお現役で来日を果たそうとしているソニー・ロリンズ。数少ない、今なお健在なジャズの奇人変人的な偉大なミュージシャンである。奇人変人とは、ちと、失礼であるが、2度の雲隠れ、演奏に熱が入ると、時間そっちのけ、我を忘れて、アドリブに入魂っていうミュージシャンは、もうお目にかかれない。

 ちなみに、最後の来日と銘打ったライブで最後になったことはないのではないだろうか、あのアール・ハインズも晩年に初来日を果たしたときに、最初で最後の来日と枕詞が並んだが、そのあと2回位は再来日している。

 ロリンズの一番の存在感は、湯水のごとき湧き出るフレーズが織りなすアドリブである。あの名盤『サクソフォン・コロッサス』でのアドリブのエッセンスのみを抽出したアドリブもいいが、ライブ演奏での自由奔放な演奏もまたすばらしい。自分が、少しでもアドリブをしたいからか(勝手にkumacが思っている)、ピアノレスのバンドを作ることが多い(そのかわりギターが入ったりしますが)ロリンズだが、この『ライブ・アット・ビレッジ・バンガード』は、初リーダー吹き込みかつ初ライブレコーディングという初物づくしで、ロリンズの格闘するアドリブが聴けるピアノレストリオである。挑戦者ロリンズを感じることのできるアルバムである。kumac的評価4.5(5点満点)



ソニー・ロリンズ, ウィルバー・ウェア, エルヴィン・ジョーンズ, ドナルド・ベイリー, ピート・ラロッカ

ヴィレッジ・ヴァンガードの夜

Teddy Wilson『For Quiet Lovers』

 スイングジャズ華やかりし頃、黄金のベニー・グッドマン楽団で人種の壁を軽やかに越えたテディ・ウイルソンは、あまりジャズの巨人として評価されていない。スイングしているいつものおっちゃんって感じで、空気のような存在だったりする。アール・ハインズとセロニアス・モンクを足して2で割ったと書くと失礼だが、オスカー・ピーターソンのようにただ華やかにスイングすればいいってもんじゃなくて、エンターテナー的な要素はほどほどに、しっかりとブラック・アメリカンの強烈な魂を内に秘めた演奏をし続けた。だから、ベニ・ーグッド楽団の中で自己の尊厳を守り続けていられたのだし、アフロ・アメリカンを強烈に主張したセロニアス・モンクも尊敬するピアニストであったのだ。
 そのテディ・ウイルソンが気心が知れた仲間であるミルト・ヒントン(b)、ジョー・ジョーンズ(ds)とスタンダードナンバーを小気味よく演奏しているのがこの『フォー・クワイエット・ラヴァーズ』である。スイング・ピアノの神髄を聴きたい方に是非お勧めである。それも、しっとりとした大人のスイングジャズである。kumacにとってもあまりなじみのないピアニストでしたが、この作品を聴いて夏のむさ苦しさが消えてきます。さわやかにスイングっていいですね。kumac的評価4.5(5点満点)
テディ・ウィルソン・トリオ, テディ・ウィルソン, ミルトン・ヒントン, ジョー・ジョーンズ
フォー・クワイエット・ラヴァーズ

Paul Bley『open,To Love』

 ポール・ブレイの最高の記録は、このECMの『オープン・トゥ・ラヴ』で決まりである。ECMと言えば、この頃、キース・ジャレットの『ソロ・コンサート』やダラー・ブランド『アフリカン・ピアノ』を出したり、かなり精力的にピアノソロの作品を出し続けていた。それは、従来のジャズのおおざっぱな録音技術の考え方を根本から改めてしまう、全てを透徹するガラス張りの部屋のような繊細さを導入し、ピアノの一音一音を逃さないばかりか、音の余韻までをも重要な音楽にしてしまう記録を幾つも残している。そして、ECMの貫徹した音作りの極地がこの作品である。そう語ることができるためには、ポール・ブレイの演奏が重要な役割を演じているのはもちろんである。
 『オープン・トゥ・ラブ』においては、ピアノの持つ音の重なり、その和音から生じる新しい音の世界、鍵盤の響きが余韻となったときのふわっと広がる地平を、こんな美しい世界があるのだろうか、と言えるすばらしいメロディーで作り上げている。でもって、重要なのが、音の間である。これほどまでに、寡黙なピアノ演奏があっただろうか。ポール・ブレイに神が乗り移ったととしか、言い表せられない美しい白眉なピアノ・ソロのアルバムである。kumac的評価5.0(5点満点)
ポール・ブレイ
オープン、トゥ・ラヴ(紙ジャケット仕様)

Albert Ayler『ラスト・レコーディング』

 三島由紀夫が衝撃的な割腹自殺を行った同じ日、つまり1970年11月25日に34歳の若さで、ニューヨークのイースト・リバーで水死体となって浮かんでいたアルバート・アイラー。kumacは、ドルフィー、コルトレーン、アイラーと続く、アメリカン・フリー・ジャズの本道を今もって愛して、やまない。この作品は、先日紹介したコルトレーン『ライブ・イン・ジャパン』とともに、汗水たらして夏に聴くにはもってこいのアルバムだ。こんなにおおらかに、自由奔放に、そしてスイングするジャズはそうめったにあるものではない。kumacは、この作品を大事にLPで持っている。だから、再生装置がなくて、今は聴けないけれど、25年前の音の記憶は、昇華された結晶として、胸の中に大切に仕舞われている。
 『スピリチャル・ユニティ』をもっとワイルドかつナチュラルに仕上げた感じの『ラスト・レコーディング』であるが、kumacは、アイラーの残された記録の中の最高傑作だと、固く信じている。この季節が、とっても聴き頃である(録音も7月25日、26日)。kumac的評価5.0(5点満点)
Albert Ayler
Nuits De La Fondation Maeght 1970

このCD中味は『ラスト・レコーディング』と同じです。フランスのマグー美術館でのライブ録音です。