kumac's Jazz -91ページ目

Sonny Criss『Saturday Mornning』

 先日は、ソニー・クリスの『アップ・アップ・アンド・アウェイ』を紹介したが、kumacがその次に愛するソニー・クリスの作品がこの『サタデイ・モーニング』である。こんなハスキーなアルトを聴いたことがないほど、かっこいい作品だ。ザナドゥレーベルの中でも最良の一枚と、kumacは疑わない。それに、ピアノのバリー・ハリスがしっとりとした音を聞かせてくれて、なんともいえない幸福感を与えてくれる。また、ベースのルロイ・ビネガーは、野武士のような音で迫ってくる。ドラムは『アップ・アップ・アンド・アウェイ』でも叩いているレニー・マクブラウン。
 最初の1曲目の「エンジェル・アイズ」のブルージーなゆったりとした演奏は、家の明かりを消して、コーヒーあるいはウイスキーを飲みながら、月の光に照らされジャジーな一夜を過ごすには最高である。
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ソニー・クリス
サタデイ・モーニング

Sonny Criss『Up,Up & Away』

 仙台の藤崎デパート(マイナーでスミマセン)の近くに昔あったジャズ喫茶「Jazz & Now」は、店主の今は亡き中村さんの一種独特な人柄に惹かれ、大学時代に毎日のように通い続けた。そこで知ったミュージシャンは数知れず、である。そのほとんどは、フリージャズのミュージシャンで、それもヨーロッパ系が多く、今となっては、かなりマイナーな人達だったりする。また、ミルフォード・グレイブスなどというアメリカの超マイナーな精神的にどこか偏屈な、体力系ドラマーのコンサートを催したりしていた。中村さんは、ボクシングの話をすると、とっても機嫌が良くなる。ジャズ=ボクシングみたいな人で、ミルフォード・グレイブスはその真骨頂だった。そのコンサートでは、客としてkumacが飲んでいた水を、やおらテナーの高木元輝が演奏中に、喉が渇いたのか、がばっと飲み干しりしたのもいい思いでであり、その演奏中、楽屋(ただの廊下)でひたすら自分も演奏に入れてくれとアルトを吹き捲くり、デモンステレーションしていたのが阿部薫だった。

 そんな思いで多い「Jazz & Now」で、タウンテーブルに乗かって、音が出た瞬間に、あまりの乗りの良さにノックアウトされたのが、このソニー・クリスの『Up,Up & Away』である。そんな訳で、来日コンサートも(山形のジャズ喫茶「オクテット」主催で山形でコンサートが予定されていた。)絶対観に行くぞと思っていた矢先に、自殺の訃報が飛びこんきたのは、残念だった。kumacは、この『Up,Up & Away』をLPで持っている。今は、LPの再生装置がないので、聴けないのだが、中をあけてライナーノーツを見ると、書いているのが小説家のあの村上春樹である。そこには、もう自殺のことが書かれているので、このLPは、1980年頃に出たものかもしれない。村上氏はこのLPについて次のように書いている。「『Up,Up & Away』は67年にリリースされ、ソニー・クリス唯一のジャズ喫茶人気盤ともなったレコードである。」。kumacにとてもまさにそのとおりであった。kumac評価4.0(5点満点)



ソニー・クリス, シダー・ウォルトン, タル・ファーロウ, ボブ・クランショウ, レニー・マクブラウン

アップ・アップ・アンド・アウェイ

Al Haig『Invitation』

 何気なく入ったジャズ喫茶で、頭の中が真っ白になってぶっ飛んでしまう音に出会った経験は、中年のジャズ好き親父なら誰でも持っているはずだ。そして、そんな出会いの曲やミュージシャンも何曲か、何人か、いるはずだ。kumacも、幾つかの出会いや忘れられない曲がある。
 このアル・ヘイグ『Invitation』とは、盛岡のとある川のほとりにあった(今はもうないらしい)ジャズ喫茶で出会った。もっと、書けば、最初の1曲目である「Holyland」が最高なのである。もったいぶった前振りといい次第にリズムを刻みながらテーマを引き出すかっこよさといい、モノトーンで弾くブルージーなアドリブといい、そのテンポの上げ方、テンションンの盛り上げ方、どれも最高の一曲である。この一曲を目当てに買っても、全く損のないCDである。
 このCDを購入後、何作か古い年代のアル・ヘイグのリーダー作を買ったが、未だにこの『Invitation』を超える作品に出当ていない(たった数枚買っただけですが)。アル・ヘイグは、チャーリー・パーカー&ディジー・ガレスピーのコンボのピアニストとしてkumacは知っていたが、とても地味な印象のピアニストであり、この盛岡のジャズ喫茶で聴くことができなければ、一生(大げさ)リーダー作を聴くことはなかったと思う。
 アルバム全体も、とてもしっくりとして、落ち着いた雰囲気である。そんな中にも、きらりと光るフレーズが現れる、ジャズの大道を行くとてもすばらしい作品だ。kumac評価4.5(5点満点)。
Al Trio Haig
Invitation

Chie Ayado『Life』

 最近、綾戸智絵のコンサートを観に行ってきた。彼女のコンサートは、話半分唄半分と情報を仕入れていたが、まさにそのとおりであった。そんなコンサートになった訳はどうしてか、つらつら考えた。それは、有名人となって、その自慢話がしたいのではにかと、嫌みったらしく思ったりしたのだが、彼女の半生を書いたエッセイ『マイ・ライフ』を読んでみると、どうもそうではないらしい。つまり、根っからの話好きなのであったようだ。
 この『Life』は、彼女がメジャーデビューしての3作目にして、ピアノの伴奏者を排除して作った初めてのアルバムである。つまり、彼女の現在のスタイルを表現した初めてのアルバムである。kumacは、このCDを発売当初に買っていた。それは、CDショップのジャズコーナーにやたら飾ってあって、つい試聴したら、あらっ、びっくり、なんて素敵なゴスペル感たっぷりのブルージーな演奏って感じで、ノックアウトされてしまったのである。それで、即買いであった。家にもって帰ってしばらくは聴いていたが、そのうちにおおくのCDと同じように、忘れていたのであった、その存在を。
 それから大部時間が経って、楽しそうなので、近くでコンサートがあると聞いてチケット買いに、プレイガイドへ行ったら、あらまぁ売り切れてしまって、手に入らない、そうするといよいよナマ綾戸を聴きたくなる。そんなある日に、新聞に彼女のコンサートの事前予約の広告が載ったのだった。それで、めでたく、先日、ナマ綾戸を観た次第である。そのコンサートを音楽面で言えば、この『Life』が原点にあるのかなと思った次第です。そういう風に考えると、綾戸智絵を聴くに際しては避けて通れないCDである。
綾戸智絵, ビリー・ジョエル, ジョン・ニュートン, モート・ディクソン, レッド・スチュワート, キャロル・キング, ハリー・ヘイマン
Life

David Murray『Spirituals』

 まだ3、4歳位の小ちゃな息子と一緒にサックスを吹いているジャケットが、とっても微笑ましいCDである。それでもって、この息子は、CDそのもののレーベル面でもイッチョマエにサックス吹いています。1970年代のロフト・ジャズシーンから頭角を現してきた、どちらかと言えば過激で前衛的な演奏をするといった印象が強いデビッド・マレイですが、この『Spiritual』では、題名の通り、ブラックミュージックの源流をわかりやすくストレート表現しています。一曲目ゴスペルナンバー「アメイジング・グレイス」では、ブラックミュージックの精神を小気味いい吹きっぷりで、おおらかに表現し、快適な気分に浸らせてくれます。

 kumacは、蔵王温泉で開催されていた時期の山形国際ジャズフェスティバルで、このCDとほぼ同じコンセプトで演奏しているデビッド・マレイを聴きました。それで、感動して買ったCDです。これだ!って間違いなく思った記憶があります。山形でも、ジャケットに映っている息子が父と一緒に舞台に立って、遊んでいました。よっぽど、可愛がっていたのですね。夏の開放的なゲレンデで、微笑ましいシチュエーションで演奏していました。

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Wynton Marsalis『Marsalis Standard Time-Volume1』

 ます、「チェロキー」を聴いただけで、ノックアウトしてしまった。こんなに、激しい演奏をするトランぺッターだったか、これまで思ってもいなかった。新発見だ。昔、斑尾ジャズフェスで、メインゲストとしていろんなバンドで演奏していたが、至ってスマートな紳士風な演奏で、あまり感動を覚えなかった。クラッシック畑のテクニックはあるが、それだけのおぼっちゃんって感じであった。弟は、スティングとやったり、以外と骨太な感じがしていたが、兄がこんなに凄いとは思わなかった。いや、kumacがあまりにも世間知らずだったっていうことですね。
 バックの、マーカス・ロバーツにしてもジェフ・ワッツにしても、とても粋なタイミングで演奏している。今から約20年前の録音ではあるが、とても現代的ですばらしい。「チェロキー」の機関銃のようなタンギングブローは、鳥肌ものである。感動と発見の二言。
アーティスト: Wynton Marsalis
タイトル: Marsalis Standard Time, Vol.1

Jack Dejohnette『Parallel Realiteies』

 昨日は、新緑のみちのく路を、気持ちよくドライブした。バックに流れるのは、心地よいシンバルの流れるようなリズムと、暑さを吹き飛ばすかのような清涼感あふれるギターの音色。昨日、ジャック・デジョネットの話題が出てきたので、kumacのCD棚から探し当てたのがこの『Parallel Realiteies』だった。

 メンバーは、ジャック・デジョネット、パット・メセニー、ハービー・ハンコック!の3人で、ベースラインをジャック・デジョネットとパット・メセニーが共同で打ち込みで作っている。だから、このCDは、ジャックとパットの共同作品と言う感じで、ハンコックはあくまで脇役である。また、一つ一つの曲が、セッション風に悪い意味で散漫に流れたりはしない。ソロは、圧倒的にパット・メセニーが目立つ。実は、この文章を書くためにライナーノーツを読むまで、ピアノをハービー・ハンコックが引いているとは全く思わなかった。

 ジャック・デジョネットは、自己のグループ<スペシャル・エディション>を持って、活動していたわけだが、このCDはそれとも一戦を画していつのか、kumacはわからないが、スペシャル・エディションでは、ベースをデイブ・ホランドが受け持ったということを考えれば、このCDはジャックデジョネットが(パット・メセニーが)やりたい音楽のエッセンスを示したものだろうか。

 じめじめした暑い夏に、汗だくで聴くコルトレーンも好きだが、涼しい気分で気持ちよくジャズもいいものだ。その意味では、期待を裏切らない1枚である。

 kumacは、ライブ・アンダー・ザ・スカイで、ソニー・ロリンズのカルテット(パット・メセニー(G)アルフォンソ・ジョンソン(B)ジャック・ディジョネット(DS))で観たのが、最初で最後?の生ジャック・デジョネットかな?



アーティスト: Jack DeJohnette

タイトル: Parallel Realities

『DIZZY ATMOSPHERE』

 kumacが最も好きなジャズ・ミュージシャンは、ビリー・ミッチェルである。彼は、kumacが買った最初のジャズLPのリーダーであり、最初に好きになったジャズ・ミュージシャンである(2番目は、ケニー・バレル)。この、かなりマイナーなミュージシャンは、サド・ジョーンズとのブラスの2管バンドを組んで、ブルーノート・レーベルに幾つかの吹き込みを残している(すべてサド・ジョーンズのリーダー作となっているが)。また、トロンボーンのアル・グレイとの双頭バンドで多くの録音を残している。さらに、カウント・べーシー楽団にも参加していた時期がある(ソロはあまり多くさせてもらえないが)。フランク・フォスターやフランク・ウエスよりもかなり豪快な(粗いとも言えるが)テナーを吹き捲くり、朗々と唄い、演奏が進むにつれてかなりエネルギッシュになる。その、パワーは、ワンパターンではあるが、とっても魅力的で、何とも言えないジャズの醍醐味を与えてくれる。
 この『DIZZY ATMOSPHERE』は、ビリー・ミッチェルがディジー・ガレスピーのビッグバンドに在籍していたときに、リーダーを脇において、バンドメンバーで録音されたものである。このCDの価値は、間違いなく1曲目の「dishwater」にある。この、畳み掛けるような、バンドのバッキングに支えられ、テンションの高い、完璧なソロが繰り広げられる。最高のソロリストは、なんといってもビリー・ミッチェルであるとkumacは断言する。ビリー・ルートのバリトンサックスも最高の乗りを聴かせてくれる。この、盛り上がりには、鳥肌が立つ。ちょっと飛躍するが、ギル・エバンスのビッグ・バンドの乗りに似ている。あの、今は亡き、ジョージ・アダムスのテナーに匹敵する。いや、それ以上である。買って、絶対に損しない1枚である。
アーティスト: Lee Morgan and Wynton Kelly
タイトル: Dizzy Atmosphere

 

Michel Petrucciani『Trio in Tokyo』

 このCDは、1997年11月にブルーノート東京で行われた演奏を収録したものである。ペトルチアーニのピアノは、どことなく哀愁を帯びたメロディー、疾走するドライブ感、そして力強いタッチが、一瞬で彼のピアノの音とわかる特徴のある、誤解を恐れず言えば、癖のある音を聴かせてくれる。つまり、ジャズ界にとって、とっても貴重なピアニストであった。
 kumacは、このCDにに収められた演奏来日の前の来日時にブルーノート東京でのライブ演奏を聴いている。メンバー等、記憶は定かではないが、ベースはアンソニー・ジャクソンで、トリオ演奏でなくカルテット(パーカッション奏者がいたような?)演奏だったような気がするが、失念。kumacは、ピアノのすぐ隣の席で、彼のピアノタッチを真近で見た。付き人に、抱きかかえられて登場し、ピアノの椅子に座って、演奏し始める。おもむろにメロディーを引き始め、次第にエネルギッシュになってゆく。その間、あんな小さな体で、ピアノの鍵盤を広く使いながら、叩き付けるように指を動かす姿が、今でも記憶にくっきり残っている。次第に、演奏に引き込まれてゆき、カタルシス状態に陥ることが何度もあった。
 そんなkumacのブルーノート東京での興奮が、このライブCDで100%蘇る。ペトルチアーニは、90年代に突如現れ、消え去った輝けるジャズの巨人であると言っても過言ではない。
アーティスト: ミシェル・ペトルチアーニ, アンソニー・ジャクソン, スティーヴ・ガッド
タイトル: ライヴ・アット・ブルーノート東京

Jimmy Smith『The Sermon!』

 ジミー・スミスの新作では、若かりしウエス・モンメリーがバックでギターを引いているようだが、この『The Sermon!』のタイトル曲の1曲目「Sermon」ケニー・バレルは、単純にウエスの何倍も強力な単音でのブルージーな音を聞かせてくれている。その要因の一番は、なんといってもジミー・スミスのダイナミックでソウルフルなのオルガンなせる技である。このCDに収められているセッションは、かなりリラックスしたマラソンセッションだったようで、その中から3曲が選ばれている。1曲目は、ジミー・スミスの独特なソウルフル満点のミデアムテンポのオルガン演奏で始まり、ケニー・バレル、ティナ・ブルックス、リー・モイーガンとソロが絡んでくる。いずれの演奏も、スイング感のあるさすがブルーノートと言える内容である。2曲目の「J.O.S」は、もっとアップテンポのマイナー調の曲であるが、ここではジョージ・コールマンのご機嫌なアルトサックスが聴ける。
 最初の一音を聴いただけで、とてもリラックスし、ブルース感あふれるジャズの香りが、沸き上がるジミー・スミスの最良のCDである。
アーティスト: ジミー・スミス, エディ・マクファーデン, ケニー・バレル, リー・モーガン, ティナ・ブルックス, ジョージ・コールマン, ルー・ドナルドソン, ドナルド・ベイリー, アート・ブレイキー
タイトル: ザ・サーモン (紙ジャケ仕様)