アニメ視聴日記

アニメ視聴日記

日々視聴しているアニメについてあれこれ

2024年春アニメのうち、4月28日深夜に録画して4月29日に視聴した作品は以下の5タイトルでした。

 

 

響け!ユーフォニアム3

第4話を観ました。

今回は完璧な超神回でしたね。ムチャクチャ泣けた。脚本も良かったんですけど、音楽と映像が美しすぎて悲しくなってしまいました。二度と戻らない限られた時を生きているこの作品の登場人物たちは美しく描かれれば描かれるほどに残酷さを感じさせてくれます。その終わりに向かって一歩一歩進んでいるこの物語は常にそうした物悲しさを感じさせてくれるのですが、今回は既に美しくも残酷な生涯を終えた人物が描かれたことで一線を超えてしまいましたね。

主に描かれたのは2年生の月永求の話でした。求に関しては劇場版「誓いのフィナーレ」から登場しているキャラであり、「誓いのフィナーレ」では何故か苗字で呼ばれることを嫌うキャラ付けがされており、その理由は明かされませんでした。ただ「誓いのフィナーレ」においては北宇治が全国大会出場を逃した去年の関西大会で全国大会出場を果たした京都の高校の指導者が求と同じ「月永」という苗字であることは描かれていて、何か因縁があるのだろうかと思わせてはくれましたが、その詳細は不明なままこうして物語は3期に進み、求は2年生に進級しています。今回はその求の過去が明かされるエピソードであったわけですが、それ以外にもグッとくる場面が多かった。極論を言わせてもらえば、仮に求のエピソードがごっそり抜けていたとしても普通に神回だったと思います。

まず冒頭は誰も居ないガランとした部屋のカットから始まり、バイオリンの奏でる曲がBGMとして流れます。この曲は「愛の挨拶」というピアノ曲やバイオリン曲として有名な曲ですが、ここで流れているのはバイオリン曲ですね。ただ、ここでは単にBGMとして流れているわけではなく、この後すぐに墓参りの場面に切り替わって「愛の挨拶」のバイオリン曲はそのまま流れ続けて、その音は実は墓石の前に置かれたラジカセから流れているということが分かります。

つまり、そのお墓に入っている亡くなった人物にその曲をお供えしているということであり、おそらくその人物の生前にゆかりのある曲なのでしょう。そしておそらく冒頭に映った誰も居ない広い部屋はその人物にゆかりのある場所と思われる。そして、このお墓には「月永家之墓」と刻んであり、求が墓参りをしていますから、求の近親者の墓参りなのだろうと思われる。ただ求は1人で墓参りをしているのではなく、他に3人いて、そのうち1人の老人が両脇にいる他の中年の2人から「おとうさん」と呼ばれているところを見ると、中年の2人の男女は求の両親であり、もう1人の老人は求の祖父と思われる。

ただ、この場面での求は1人だけ離れた場所で手を合わせていて、両親や祖父とは距離を置いているように見える。そして、特に祖父と目が合った時に気まずそうに目を逸らしており、どうやら祖父が原因で距離を置いているように見えます。つまり求は祖父を避けているみたいなのです。しかし、祖父を避けていながら祖父が来る墓参りに参加しているのですから、お墓に入っている故人はよほど求にとって大切な人なのだと思われます。

その後、サンライズフェスティバルまで残り3日となって練習に明け暮れる北宇治高校吹奏楽部の皆の場面となります。前回の話で麗奈の厳しい指導に泣いてしまっていた1年生の初心者メガネっ子の武川さんも頑張ってますし、落ち込んで辞めそうになっていた沙里も久美子部長が自分と同じ想いで見守ってくれていると知って元気を取り戻し、明るい笑顔で初心者の1年生たちを励ましています。

そんな中、練習中に求が1年生のユーフォニアム担当の初心者1年生の針谷佳穂を怒鳴りつける騒動が起きた。原因は佳穂が名簿の名前のチェックで求の「月永」という苗字を口にしたことみたいです。慌てて3年生の緑輝が割って入り求を止め事情を聞きますが、久美子と一緒に騒動を見ていた奏などは求の大人げない態度に呆れて、いつまでも名前呼びにこだわっている求をからかって余計にイライラさせようとするので久美子は奏を止めます。求の方もコンバスの師匠として慕っている緑輝に注意されると反省したようで、佳穂に謝ってその場を立ち去っていく。

これは「誓いのフィナーレ」でも描かれた求の「名前呼びにこだわる特徴」を再度強調したシーンのようにも見えますが、しかしこの3期の2話でも求は1年生女子たちに「月永先輩」と呼ばれた際に「求って呼んで」とクールに対応して、なんか逆に親近感アピールみたいに勘違いされてキャーキャー言われていたぐらいですから、2年生になって少しは成長したようで、1年生として入学してきた時みたいに苗字で呼ばれることに過剰な反応を示して奏と喧嘩していたようなことは無くなっていたはずです。だから今回の態度はちょっと不自然であり、緑輝の言うには「先週ぐらいから様子がおかしい」とのことです。

先週というと、ちょうど久美子が1年生集団退部の可能性を知って右往左往していた頃であり、久美子は求の様子がおかしいことまでは気が回っておらず気付いていませんでした。ただ久美子も求が何か事情を抱え込んでいることは何となくは分かっていた。求は妙に苗字で呼ばれることを嫌うだけでなく、どうも吹奏楽部の中でも他人を信用せず警戒しているフシがあり、緑輝ぐらいにしか心を開いていない様子でした。それは去年入学してきた時から一貫して変わっておらず、練習には真面目に取り組むし礼儀正しいし演奏技術もしっかり向上しているので久美子としても特に文句があるわけではなく、どうも深く接することが出来ずにいた。それでも周囲に向ける態度も次第に丸くなってきているようには思って安心していたのだが、それがどうも先週から態度がおかしいのだというので心配になってきた。緑輝の言うには求は先週、家の用事で練習を休んだのだそうだが、その後から様子がおかしくなったのだという。だから家庭で何かがあったのではないかと思われる。

求の家庭というと、久美子や麗奈や緑輝には何となく思い当たるフシはある。「月永」というのは珍しい苗字だが、月永源一郎という有名な高校吹奏楽部の古参の指導者が存在する。それだけならば、たまたま苗字が一緒とも考えられるが、その月永源一郎氏が実は去年から同じ京都の男子校である龍聖学園高校の吹奏楽部の顧問に就任しており、去年の関西大会で龍聖はその月永氏の指導のもと全国大会出場を決めて、全国大会では金賞を獲っている。久美子たちが目指すものを去年実現したのが龍聖なのであり、去年の北宇治は龍聖にその道を阻まれたとも言える。当然、今年の全国大会への限られた枠を巡って競い合うライバルなのです。だから当然久美子たち北宇治の幹部は龍聖を意識しており月永源一郎氏を意識している。だからこそ、もともと求が龍聖学園の吹奏楽部員だったことも把握していました。

求はもともと中高一貫校である龍聖学園の中等部に通っており吹奏楽部に所属していた。普通はそのまま高等部に進むはずです。ところが求は高校は北宇治に進学し、龍聖に内部進学しなかった。そして、それはちょうど月永源一郎氏が龍聖の顧問に就任したタイミングだったのです。つまり、求は源一郎氏の指導を受けることを避けて北宇治に来たように見えるのです。そうなると、珍しい苗字であることも相まって、やはり求は源一郎氏と何か繋がりがあるのではないかと思えてくる。おそらく血縁関係があるのではないかと想像は出来る。そして吹奏楽部においてやたらと「月永」と呼ばれるのを嫌うところを見ると、源一郎氏との関係を知られることを嫌がっているように見えて、あまり源一郎氏とは良い関係ではないように思える。わざわざ源一郎氏を避けて外部進学するぐらいだから、よほど嫌いなのではないかとも思える。それならば先週に家の用事で源一郎氏と顔を合わせて、そこで何かがあって、それ以降に求の情緒が不安定になったと考えると辻褄は合う。

ただ、そうした憶測の真偽も含めて、具体的に何かがあったとしてもその内容も、求に詳しく聞かなければ分からないのだが、さすがに家庭の問題に気軽に踏み込むことは出来ないと思えて、緑輝でさえも求に事情を聞くことは出来ていない。ましてや久美子たちは確認しようもない状態だった。しかし今日みたいなトラブルを求が続けて起こすようならば、他の部員たちも不審に思うようになるかもしれない。特に奏などはもともと求とは去年から苗字呼びの件で揉めており、色々と嗅ぎ回るのが好きな性分だから、おそらく求と源一郎氏に血縁関係があるっぽいことは気付いているのだろう。そして家庭内の不和を吹奏楽部に持ち込む求の態度をワガママだと解釈して憤っているフシがある。もしまた求がトラブルを起こせば奏と大喧嘩になって今度は2年生が揉めだす可能性もある。そう考えると久美子は頭が痛くなってくる。しかもサンライズフェスティバルのプログラムを見ると、北宇治のすぐ後に龍聖が行進するらしい。つまり求が源一郎氏とニアミスする可能性が高く、何か事件が起きるのではないかと久美子は猛烈に不安になってくる。

なお、こうした情報を踏まえて冒頭の墓参りシーンを見ると、おそらく緑輝の言う「先週の求の家の用事」というのがこの墓参りなのであろうと思われ、この墓参りの後で求の態度がおかしくなったのだと思われます。だから、この墓参りの時に何かがあったのでしょう。そして、おそらくこの墓参りに来ていた求の祖父と思われる人物が「月永源一郎」なのでしょう。おそらく、この墓参りの時に源一郎氏との間で何かがあり、それで求は情緒不安定になっているようです。

また、久美子たちが求のことについて話をしているシーンにインサートされて求が下校中にスマホに届いたメッセージを確認する場面が描かれますが、そこで求に送られてきているメッセージは「樋口」という名の男友達からみたいであり、その内容は「サンライズフェスティバルの演奏前に顔を出してほしい」「源ちゃん先生がお前のことを心配しているから」というものであり、おそらく「源ちゃん先生」というのは月永源一郎氏のことであり、樋口というのは龍聖学園の吹奏楽部の部員であり求の中等部時代の仲間だと思われます。樋口は求にサンライズフェスティバルの時に源一郎氏に会うようにと促しているようなのですが、求はそのメッセージを確認すると返信せず無視します。これはどうもトラブル必至な予感がしますね。

そうしてサンライズフェスティバルの当日を迎えました。ここでまず立華高校の描写があります。マーチングの強豪校の立華高校は1期の頃からこのサンライズフェスティバルやコンクールなどでもたびたび登場してきましたが、そこには久美子の中学時代の友人である佐々木梓が所属していた。1年生の時はこのサンライズフェスティバルで再会した久美子と梓が互いに高校でも吹奏楽を頑張ろうと励まし合う姿が描かれましたが、その梓が今回描かれた高校最後のサンラズフェスティバルでは立華高校吹奏楽部の部長として登場しました。久美子も梓も互いに部長になって最後のサンライズフェスティバルを迎えるまでに成長し、しっかりやり切ったのだと思うと感慨無量です。

ここで梓の仕切りで立華高校の吹奏楽部員たちは円陣を組んで体育会系な明るく力強いノリでカッコいい号令を決めてみせて、それを見ていた奏は久美子に北宇治でもああいうカッコいい号令をやったりしないのかとツッコミを入れて久美子が困ってしまう場面は面白かった。そして久美子に気付いた梓は笑顔で手を振ってくれて、久美子も笑顔で応じます。

また、ここで北宇治の部員たちと龍聖の部員たちがニアミスしますが、この場面では求は特に過剰な反応はせず、龍聖の顧問の源一郎氏も北宇治の顧問の滝先生とにこやかに挨拶を交わしています。ただ、ここで源一郎先生は滝先生に「お手数をおかけしますがどうぞよろしくお願いします」と何やら頼みごとをしている様子であり、求はそれを遠目に冷ややかに見ている様子です。この遣り取りの裏側に何があったのかは後で明らかになります。

また、ここで3年生の転校生の黒江真由の描写が少しあります。前回、1年生の初心者の集団退部の可能性があった時に「ついていけない人は辞めた方がいい」みたいなことを言っていた真由ですが、今回は前回部活をサボって久美子を慌てさせていた4人のうちの1人である弥生の衣装がほつれているのを直してあげたり、通常の部活の場面でも同じくその4人のうちの1人である佳穂にユーフォニアムの吹き方のコツを教えてくれていたりしています。このあたりは真由の複雑な多面性を表しているのか、それとも前回の騒動を通して真由も何か思うところがあったのか、そのあたりは明確ではなく、今後のストーリーに繋がっていく描写だとは思います。

そして滝先生がサンライズフェスティバル本番直前に部員たちが厳しい練習に耐えて頑張ったことをねぎらう場面がありますが、ここで麗奈の指導の賜物だと褒めてくれたのは胸が熱くなる描写でした。前回のエピソードでも初心者たちも久美子も大変ではありましたが、一番大変だったのは慣れない指導に四苦八苦していた麗奈であり、麗奈だけは怖がられたりする描写に終始して前回は全く報われる場面が無かっただけに、こうして滝先生のねぎらいがあったのは感無量でした。

その後、北宇治の部員たちは行進のスタート地点に移動していきますが、その途中で龍聖学園の樋口がやってきて求に話しかけてきて、どうして演奏前に源一郎先生に会いに来てくれなかったのかと言って喰ってかかってくるので、求も言い返したりして揉め始めて、樋口が「源ちゃん先生は求のお祖父ちゃんじゃないか」なんて言うので求が怒鳴って樋口の言葉を遮ったりして騒然としてしまう。それを見て奏が「あーあ」と呆れた様子で冷ややかに見ていたので、やはり奏は求と源一郎先生が肉親関係であることは気付いていたようですね。そしてあまり騒ぎになったので樋口も慌てて去っていき、そこに緑輝が来て求に注意すると、求は緑輝に演奏前に醜態を見せてしまったことを詫びて落ち込みます。

それでも求は気持ちを切り替えて旗持役の役目はしっかり務めて行進に支障はきたさず、北宇治はサンライズフェスティバルを無事に終えました。ここで今回は演奏シーン、行進シーンは描かれませんでしたが、サンライズフェスティバルは1期でも「誓いのフィナーレ」でもこれまで何度も描かれており、別に今回は演奏の描写は無くても良いと思えました。今回のエピソードはあくまで求の話がメインであり、求の話に割く尺を削ってサンライズフェスティバルの演奏シーンを描くというのは正しい選択ではないでしょう。

それに、この「あっけなさ」が今回は凄く良かったと思う。久美子たち3年生にとって最後のサンライズフェスティバルがこのようにあっという間に終わってしまったという寂寥感が、いよいよ最後が近づいてきたのだなと余計に思わせてくれてグッとくるものがありました。それに今回はむしろサンライズフェスティバル終了後の描写がメインで描かれることで「最後の祭の後」感が出て良かったと思います。

例えば、例の麗奈に叱られて泣いていた初心者メガネっ子の武川さんも無事に失敗せずやり通せたみたいで安堵していましたが、そこに麗奈がやって来て「初心者の貴方がここまで出来るって見せてくれたから皆も頑張れたんだと思う」と感謝の言葉を伝えてくれて、武川さんが涙を流して喜ぶ場面や、沙里と共に喜び合う場面はとても胸が熱くなって素晴らしかった。これは久美子が麗奈に頼んで武川さんのもとに行かせたようだが、久美子はきっかけを与えただけであって、麗奈が武川さんに伝えた言葉は麗奈自身の言葉であり、そこに嘘は無かったのだと思う。

それでも麗奈が頑張ったのも事実であり、そんな麗奈に久美子も「麗奈のドラムメジャーも良かった」「初めてあすか先輩を超えるドラムメジャーを見た」と最大級の賛辞を送ってあげる。麗奈にこんなことを面と向かって言えるのは久美子だけであり、久美子にしか出来ないねぎらいであった。照れながらも麗奈も嬉しい様子。そして、視聴しているこちらとしては、こういう2人のサンライズフェスティバルでの遣り取りをもう観ることが出来ないかと思うと、なんともいえず寂しい。

しかし、そうした余韻に浸る間もなく、久美子はさっき求と揉めていた龍聖の樋口の姿を見かけると、すぐに追いかけていく。求の抱えている問題が何なのか聞き出したいと思ってのことでしたが、久美子が樋口に追いつくと、緑輝も同じように樋口を追いかけてきており、久美子は緑輝と一緒に樋口から事情を聞くことにした。

そうして樋口に聞いてみると、やはり龍聖の顧問の月永源一郎先生は求の祖父だということが分かった。それでやっぱり仲が悪いのだろうかと思い、久美子が源一郎氏はどんな人なのかと質問する。すると、てっきり厳しくて難しい人なのかと思っていた源一郎氏は実際は気さくで皆に尊敬されている指導者だと分かった。しかも源一郎氏は求のことをすごく心配して気にかけているのだという。それなら求が一方的に源一郎氏を嫌っているということになる。しかし一体どうしてなのだろうかと久美子は不思議に思った。それで何か知らないかと樋口に聞くと、樋口も正確なところは分からないと言うが、求の姉のことが関係しているのではないかと言う。樋口はてっきり求が自分の姉の話は久美子たちに教えていると思っていたみたいで、それで姉の話を口にしたようですが、久美子たちが求からそんな話は聞いていないと知るとビックリして焦ります。求が教えていないプライベートな話を口外してしまった罪悪感で焦ってしまった樋口でしたが、それでもここまで言ってしまった以上仕方ないと思い、久美子と緑輝にだけは秘密の話として打ち明けることにした。

それによると、求の姉は3年前に病気で亡くなっているのだそうです。その時、求は龍聖の中等部の2年生だったのですが、姉の死後に求は凄く落ち込んでしまい、それで心配した源一郎氏は求の近くに居たいと言って、それで龍聖の高等部の顧問に就任して、求が高等部に進学してきたら傍について指導してやろうと思っていたようです。だが求は龍聖を避けるように北宇治に進学してしまったので、それで源一郎先生は戸惑っているらしい。それを見て樋口も心配になって求と源一郎先生の間を取り持とうとして奔走していたようです。

つまり、求が源一郎氏を避けているのは、別に源一郎氏と喧嘩したからではなかった。避けている理由は結局は不明のままで、源一郎氏にも樋口にも分からないようです。ただ、おそらくそれは求が姉の死に際して何か思ったことが関係しているのだろう。それは求自身に聞かなければ結局は分からない。しかし、肉親の死に関わることとなると非常にデリケートな問題であり、他人が突っ込んでいいものかどうか悩ましいところです。普通はそっとしておくべきことなのでしょう。しかし、先週源一郎氏との間で何かがあって、それ以降求の様子がおかしいのも事実であり、それは何もせず放置しておくのは吹奏楽部のために良くないし、求のためにもならないと思えた。

てっきり求が祖父と喧嘩したという程度の話なのだろうと甘く見ていた久美子であったが、これは大変なことになったと痛感した。デリケートな問題であると分かっていながら、そこに切り込んでいくしかないと思った。しかし、そこで緑輝が自分が求に話を聞いてみると言い出す。緑輝は自分は実はこれまで求から少し逃げていたのだと打ち明ける。求は去年入学して吹奏楽部に入るとすぐに緑輝に弟子入りしたいと言ってきて懐いていたが、その一方で他の部員たちに打ち解けようとしなかった。緑輝はその不可解な態度に戸惑い、何か事情があるのだろうと思いつつ、理解不能な問題に介入することを躊躇い逃げていたのだという。しかし、それは部活の先輩として正しい選択ではなかったと今回反省したのだと緑輝は言う。

1年生として入部して上手くなりたいと思って夢中に音楽に取り組んでいるうちに気が付けばもう3年生になっていて後輩が出来ていて、その日々ももうすぐ終わろうとしている。ならばせめて最後に少しぐらいは先輩らしいことをしなければいけないと思い、緑輝は求の話を聞こうと決意した。そして、どっちにしても求とはいずれこの話はしなければいけないとも思っていたことも緑輝は自覚する。それはつまり、緑輝自身が求との関係を高校生活だけで終わらせたくないと思っていたからでした。いつかは求のことをもっと深く理解したいと思っていた。ならばそれが今でもいいのだと緑輝は思ったのでした。久美子もそんな緑輝の気持ちを知って、求のことは緑輝に任せることにした。

そうして緑輝は求と2人きりで話をすることにして放課後の練習時間に2人で別室に行った。すると、そのことを察した奏がどうして求のワガママにそこまで理解を示してやる必要があるのか理解出来ないと言って久美子に抗議してくる。奏は求が単に祖父と喧嘩でもして勝手に嫌って、北宇治の皆に名前呼びを強要したり、いきなりキレたりして迷惑をかけているだけだと思っている。内部進学せずに北宇治に来たのだって、どうせ「祖父の七光り」だと思われたくなくて逃げてきたのだろう。実力で黙らせる自信がないからそうやって逃げるのであり、そんなヤツだから北宇治に来ても周囲を怖がって壁を作ってキレたりするのだと思って奏は求のことを見下していた。

久美子は奏がそう思うのも仕方ないとは思った。そこまでボロカスには思っていなかったが、樋口の話を聞くまでは久美子も同じような印象を持って求のことを困った子だと思っていた。しかし樋口から姉の死の話を聞いた今となっては、求の心情はそういう単純なものではないということは分かっている。ただ、姉の死の件はさすがに勝手に口外するわけにはいかないので、久美子としても奏をどう宥めていいのか分からずちょっと困ってしまう。すると、そこに真由が口を挟んできて、奏がそこまで求のことでムキになるのは求のことをよほど意識しているからではないかと煽りだし、それで奏は呆れてしまい、それ以上求の話をするのがバカバカしくなったようで話を引っ込めてしまう。それで久美子は助かったと思い真由に感謝するのであった。

その後、久美子は放課後の部活が終わって滝先生に鍵を返しに行った際に、実は龍聖学園の月永源一郎先生から求を龍聖に転校させたいという話が来ているのだと伝えられる。サンライズフェスティバルの時に月永先生が滝先生に「お手数をおかけしますがどうぞよろしくお願いします」と言っていたのはこのことだったのです。もちろん最終的には求本人の意思次第なのだが、家族間の話なので滝先生も久美子も口を出せる問題ではない。求が家族と話し合って出した結論に従うしかないようです。そして、それを聞いて、久美子は「先週、家の用事で休んでから求の様子がおかしい」というのはこれが原因だったのだと思い当たった。

おそらく先週、家の用事(墓参り)の際に源一郎氏が求に龍聖への転校の話を切り出したのだろう。源一郎氏は求が龍聖を避ける理由に思い当たるところが無いから、あくまで求のために良かれと思ってそういう話を持ち出したのであろうけど、それが求には受け入れがたいものであったのだろう。それでそれ以来求は情緒不安定なのだ。しかし、樋口の話を聞いた感じでは源一郎氏は話せば分かってくれそうな人みたいです。ならば求は自分が龍聖に行きたくない理由をちゃんと説明すればいいのだろうとも思える。それをちゃんと説明しないから源一郎氏も意見を譲らず、話はこじれていって求も苦しむ結果になっているのだ。どうして求は自分の気持ちをちゃんと祖父に伝えようとしないのだろうかと久美子は不思議に思った。

そうしてとことん話がこじれてしまえば最終的には学費を払っているのは保護者なのだから源一郎氏のゴリ押しで求が北宇治を去って龍聖に行く羽目になってしまうかもしれない。そうなったら緑輝はどうなるのだろうかと久美子は心配になった。いや、それ以前に久美子は部長として求にも居なくなってほしくはない。「全員そろってこそ北宇治」なのです。そんなことを悶々と考えながら下校しようとしていると、久美子は緑輝に呼び止められ、結局は求から詳しい話を聞き出せなかったと言われる。求は頑なに緑輝にも事情を説明はしてくれなかったのだという。それで緑輝は自分は求に信頼されていなかったと言って落ち込む。そんな緑輝に求の転校の話を言えればよかったのだが、滝先生からこのことは誰にも口外しないようにと言われているので久美子としても何も言うことは出来なかった。

そうして緑輝と別れた後、駅の改札を抜けたところで久美子は待ち伏せしていた求に呼び止められる。求は緑輝と話をした際に、緑輝と久美子が樋口と話をしたことを知り、いったい樋口が久美子たちにどういう話をしたのか気になって久美子と話をしたいと思って待ち伏せていたのです。そうして久美子は求と2人で話をして、樋口から祖父との関係の話や姉の死の話も聞いたと伝えた。そして滝先生から転校の話も聞いたと伝えた。

それで求は久美子にこれまでの経緯を全て話してくれた。求は別に祖父のことが嫌いというわけではなく、子供の頃から祖父を慕っていた。それは姉も同様で、子供の頃から求と姉は一緒に祖父からコントラバスを習っていた。実は今回の冒頭で映った何も無い広い部屋というのは、求と姉が子供の頃に一緒に祖父からコントラバスを習っていたレッスンルームだったのです。

そうして姉は祖父が指導していた高校の吹奏楽部に入ったのだが、そこで「指導者の孫」ということで贔屓されていると中傷されてしまったのだという。それで姉はだいぶ苦しんだのだが、祖父はあくまで実力だけ見て判断して姉をコンクールメンバーに選ぼうとしたのだが、そのせいで更に揉めてしまい、それで姉の心は折れてしまったのだという。もともと純粋に吹奏楽が好きなだけだった姉がその気持ちが無くなってしまい、そのまま病気になって亡くなってしまったのだそうです。

その頃、求は龍聖の中等部の2年生だったが、姉の死に大きなショックを受けて落ち込みながらも、自分は姉がもともとやりたいと思っていた「楽しい吹奏楽」をやらなければいけないと思うようになったのだという。ところが求が元気が無いので心配した祖父は求を心配して龍聖の高等部で直接求の指導をすると言い出した。源一郎氏としては求の姉が死んでしまって、その上に求まで失うことになるのではないかと心配でたまらなかったのでしょう。しかし求としては、姉の吹奏楽を好きな気持ちを折ってしまった祖父の指導法の下で吹奏楽をやることは、姉に対する裏切りのように思えて耐えられず、とにかく龍聖から逃れようと思い外部の高校を受験して、たまたま近所にあった北宇治に進学したようです。

そうして去年の4月、入学してすぐに北宇治の吹奏楽部を覗きに行った時に、求は緑輝がコントラバスを弾いている姿を見て、姉に似ていると思ったのだという。「音楽が好きで、楽しくて、皆と一緒に上手くなりたいって、それだけ考えていて」そういう緑輝の姿を見て、求は姉の本当に夢見ていた高校の吹奏楽部ってこんな感じだったのだろうと思い、これが自分のやるべき吹奏楽だと思った。だから緑輝に弟子入りし、緑輝には今のまま変わってほしくないと思ったのだという。だから求は緑輝には祖父とのことや姉のことなど余計なことを教えたくなかったのです。ただ純粋に共に音楽を奏でたかった。子供の頃に姉と一緒にコントラバスをただ上手くなりたいと思って弾いていた時のような気持ちでいたかった。だから求は緑輝に事情を教えてほしいと言われても何も答えなかったのでした。

ただ、求は死んだ姉が生前に心が壊されるまでに高校吹奏楽部で受けた仕打ちを深く心に刻んでもいたので、北宇治の吹奏楽部に入っても姉に似た緑輝以外は信用しようとはしなかった。自分が有名な高校吹奏楽の指導者の孫だと知られてしまえば姉のように贔屓されているなどと中傷を受けてしまい高校吹奏楽を台無しにされてしまうのではないかと極度に恐れ、苗字で「月永」と呼ばれることを極度に嫌うようになり、自分のことを探られないように部員たちとも親しくならないようにして緑輝としか親密になろうとしなかったのです。それが次第に丸くなりかけてきたところで先週になって急に祖父から龍聖に戻るようにと言われてしまい、求としては応じるつもりは毛頭無かったが、自分の身辺に祖父の影がチラつくようになったら北宇治でも変な噂が立つのではないかと警戒して過敏な反応を示しがちになっていたのです。

それで求は自分は龍聖に戻るつもりはないとも久美子にも伝えた。それは確かに久美子には嬉しいことではあったが、しかしそれだけではまだ足りないとも久美子は思った。それに緑輝だって納得しないだろうと思えた。もともと、今の求が様子がおかしいことを心配したことが始まりなのです。龍聖に行かないからといって、祖父との問題を解決せずモヤモヤしたままの求では久美子は安心できないし緑輝だって安心できない。

それで久美子は求に「その前にお祖父さんと樋口くんにちゃんと説明してほしい」と要請した。求の話を聞いて、久美子はどうして求が祖父に自分の本当の気持ちをちゃんと説明しようとしていないのか理由が分かった。それは、求が姉の本当にしたかった「楽しい吹奏楽」をやりたいのだと説明してしまうと、それは祖父の吹奏楽が姉を殺したのだと非難するような形になってしまい、それによって祖父が深く傷つくことが分かっているからでした。だから求は自分の本当の想いを祖父にも、心配してくれている樋口にも説明出来ず不可解な態度を取り続けているのだ。

しかし久美子は、そのことで祖父も樋口くんも求のことを心配して心を痛めているのだと説き、彼らを救うためには求が彼らを傷つける覚悟を持つべきだと諭す。そして付け加えて、久美子は「気持ちは演奏に出るよ」と忠告する。そんなふうに自分の気持ちに嘘をついて演奏していたら、きっと良い音は出ないし、上手にはならない。それ以前に、そんな吹奏楽はお姉さんが、そして求自身が夢見ていた「楽しい吹奏楽」ではないだろうと久美子は諭したのです。

それを聞いて求は納得し、「そこまで考えてくれて有難うございます」と礼を言う。それに対して久美子は「私はこのメンバーでコンクールで最高の演奏がしたいから、求くんにも北宇治のために良い演奏をしてほしい、それだけ」と応える。そのためだけにここまでしてくれる、それだけ自分が北宇治吹奏楽部に必要とされている、それは求にとって最高の賛辞であった。それで求は「それ、凄く嬉しいです」と笑顔で答える。その時、求の中で北宇治に対する不信感は氷解していき、北宇治は「姉が目指していたはずの場所」ではなく「自分の居場所」になったのでした。ここの場面、駅前のロータリーという立地を活かしたタクシーのヘッドライトが回っていくことによる光の演出で、まず久美子の顔に光が差して、それから求の顔に光が差していくという描写によって、久美子の言葉が求に光を与えていくということを表しているのがニクい。

そうして求は帰っていき、久美子はふと思いついて今は離れて暮らす姉の麻美子にメッセージを送ってみる。求と姉の話を聞いて、同じように子供の頃に一緒に吹奏楽をやっていた姉のことを思い出してしまい、吹奏楽は辞めてしまった姉ではあるが、生きて共に高め合うことが出来る姉が健在な自分は幸せだと実感し、突然の連絡に「何?」と返信してくる麻美子に「生きてるならいい」と返信する久美子でした。

そして翌日、部活中に久美子のところに求が来て、祖父と樋口に連絡して今までのことを全て話して、北宇治に残ると伝えたと報告してくれた。そして、求は祖父と樋口に「ここは僕が僕でいられる場所だ」「ここがいい」と伝えたと言う。姉のためじゃないし、姉の恨みを晴らすためでもない。祖父を恨んでいるからじゃない。姉の吹奏楽を引き継ぐためじゃない。ただシンプルに求自身が自分の吹奏楽を目指すために北宇治を選んだのだと伝えたのです。久美子と話をしたことによって、自分が北宇治に必要とされていることを知ることが出来て、求はやっと姉のためではなく自分のために吹奏楽をやろうと思えるようになり、初めて本気で北宇治のために自分の吹奏楽を追求したいと思えるようになったのです。その強い決意を聞いて、おそらく源一郎先生も求はもう安心だと思うことが出来たであろうし、求の姉を殺してしまった結果求の人生を歪めてしまった罪悪感からも少し解放されたことでしょう。

そうして久美子に「僕は北宇治の人間です」と伝えた求はようやく姉の死の呪縛から解放され、その足でコントラバスを持って緑輝が待つ部屋に行き、緑輝を不安にさせてしまったことを謝ろうとしますが、緑輝は明るい表情で「何か一緒に弾きませんか?」と誘ってくる。緑輝は緑輝で求との関係を悩み、言葉ではなく音楽で語り合おうという結論を出したようです。それで求は少し微笑んで「じゃあ、一緒に弾いてほしい曲があります」と緑輝の想いに応える。そうして2人でコントラバス二重奏で弾いた曲は「愛の挨拶」でした。これは冒頭の墓参りの場面でラジカセで流れていた曲で、あれは姉の墓に供えた曲であり、姉と求が子供の頃に祖父からコントラバスを習った時によく弾いていた思い出の曲でした。

求は久美子の言葉によって姉の死の呪縛から解放され、姉の魂を解き放ち別れを告げるために、姉との想い出の曲を姉に似た緑輝と共に演奏して鎮魂としたのでした。この2人の演奏シーンにインサートされて、今回の冒頭で映し出された求と姉の想い出のレッスンルームが再び映し出されるが、冒頭の場面では閉ざされていた部屋の窓がこのラストシーンでは開け放たれており、部屋にずっと閉じ込められていた姉の魂が天に昇っていったことを示唆されている。部屋の中に置かれた3脚の椅子は求と姉と祖父の想い出を象徴し、外から部屋の中に舞い落ちてきた落葉は姉の肉体の死を表し、開け放たれた窓の外から天からの光が差し込む様子は求の心の中に鍵をかけてずっと閉じ込められていた姉の魂が解き放たれて天に召されたということを表していると考えられるでしょう。

そのようにしてこれまでの経緯を一切言葉にすることなく、ただ音楽で語り合うことで緑輝との間で今回の話を終わらせたことによって求は緑輝に「姉に似ているので惹かれていた」ということは一度も告げることはなく、姉からは解放されて1人の女性として緑輝に向き合うことが出来るようになったのだと思います。今後の2人の関係に幸あれと思います。こうして今回のエピソードは終わり、また次の曲が始まるという久美子のナレーションと共に「あがた祭」のポスターが映し出され、次回は毎年恒例のあがた祭のエピソードであることが示唆されて次回に続きます。

 

 

転生貴族、鑑定スキルで成り上がる

第4話を観ました。

今回は前回のお話から3年後の話となります。前回家臣になってくれたシャーロットは魔法兵として大活躍するようになっており巨乳になっていた。そんな中、新たに領内に優秀な人材が見つかったというリーツからの報告を受けたアルスは狩人の兄弟に会いに行きます。すると狩人の兄弟も優秀な兵士となる資質の持ち主であったが、その末の弟のロセルが出来が悪いとのことであったがアルスが鑑定すると非常に知略のスキルが高くて、アルスは兄たちと共にロセルも召し抱えたいと申し出る。

しかし臆病者のロセルは断固拒否して部屋に引きこもってしまう。そこでアルスはロセルが本が好きだと知って城の図書室に誘い、ロセルがもともと文字を習っていないが独学で文字を覚えたのだと知り、ますますその才能を眠らせておくのは惜しいと思う。それでアルスはロセル自身にもその父親にもロセルの才能を知ってもらおうと思い、ロセルに獲物を狩るための罠を考案させる。ロセルは父親に認めてもらいたいと思って、兄たちが兵士になって居なくなった後で役に立つ罠を作ろうとして、その罠は見事な出来であったが、父親は兄たちと一緒にロセルも城に行くようにと言い、ロセルは父親に見捨てられたと思って落ち込んでしまいます。

しかしアルスはロセルに家に戻るようにと言い、ロセルは家で悲しみに暮れますが、父親がロセルの才能に気付いてやれなかった自分は父親失格だからロセルに恨まれて優しいロセルが旅立ちやすくなるようにして償うべきなのだと考えていることを知り、涙を流します。そしてロセルは父親のことを好きだと言い、いつかまた一緒に暮らしたいと言って旅立ちます。アルスはロセルが家臣にならなくても1人の領民として父親と絆を結んで幸せになってくれることを願っていたのだと打ち明け、そんなアルスにロセルもその兄たちも感激して忠誠を誓うのでした。そんな感じで今回とても良い話でした。次回は遂にメインヒロイン登場みたいで楽しみですね。

 

 

無職転生Ⅱ ~異世界行ったら本気だす~ 第2クール

第16話を観ました。

今回は妹であるノルンとアイシャがルーデウスの家にやってきた話。まずはノルンとアイシャの護衛をしてくれて家まで連れてきてくれたルイジェルドとの久しぶりの再会です。転移事件で魔大陸に飛ばされたルーデウスを故郷のブエナ村まで送ってくれた後に別れて以来の再会ということになります。

ルイジェルドと共にいた時にはエリスも一緒に居て、ルーデウスとエリスは相思相愛でしたから、ルイジェルドはてっきりルーデウスはエリスと結婚すると思っていたのでしょう。だからルーデウスが別の女性と結婚したと知って意外だったようで、エリスとはどうなったのかと聞きます。それで別れたと言うと、ルイジェルドはルーデウスの思い違いではないかと言う。そう言われたらそんな気もしたルーデウスであった。もしそうであるなら裏切ったのはルーデウスということになる。しかし3年間の苦しみから自分を救ってくれたのはシルフィなのだからと、ルーデウスはシルフィとの結婚を後悔はしなかった。

それでもエリスのことは気にならないわけではなく、ルイジェルドは旅の途中でエリスに会うことがあれば言い分を聞いて、またルーデウスに会いに来ると言ってくれる。そしてルーデウスにも、もしエリスと会うことがあれば落ち着いて話をするようにと諭して、ルイジェルドは旅立っていった。その前にルイジェルドとバーディガーディが玄関先で睨み合ったりしていて過去に何か因縁があるようでした。

ノルンとアイシャの方は、学校に行かせるようにとパウロからの言伝もあったのでルーデウスは2人をラノア魔法大学に入れようとしますが、アイシャは大学に行かずルーデウスの家でメイドをしたいと言う。アイシャは出来が良くてノルンはあまり勉強が得意ではないようです。ただ、どうもこの世界では勉強というものは出来の悪い者が学ぶためのものであり、出来が良い者は学校に行かず好きに生きるようです。まぁ特に何か研究したいような人は特待生という形で大学に行くというのもアリで、もともと大学ってそんなものなのかもしれません。

それでとりあえず2人に大学の入学試験を受けさせて、アイシャは満点だったのでメイドになる道を選ばせてやり、ノルンはイマイチの成績だったので大学に入ることになったが、寮に入りたいと言う。ノルンはルーデウスを嫌っているのです。以前にルーデウスがパウロに殴りかかった時にそれを見ていたというのもあり、またルーデウスがその時一緒にいたエリスとは違う女性と結婚しているので不誠実な人間だと思っているようです。ちなみにノルンは幼少時にシルフィとは何度も会っているはずだが、よく覚えていないらしい。

このノルンの希望をルーデウスが許してやったので今度はアイシャがノルンを贔屓していると言って拗ねる。どうもノルンはアイシャよりも出来が悪いことでコンプレックスを抱いていて、ノルンは自分が妾の子だから正妻の子であるノルンより大事にされていないというコンプレックスがあるようで、2人は仲が良くないようです。

そういうわけでアイシャはルーデウスの家で住み込みメイドをするようになり、ノルンは寮から魔法大学に通うようになったが、入学から1ヶ月ぐらい経っても大学で見かけるノルンが友達も作っておらずいつも1人で居るのを見てルーデウスは心配する。そうして落ち込んでいるルーデウスを励まそうとしてリニアとプルセナが女生徒からカツアゲした下着をプレゼントしてきて、そのせいでルーデウスは生徒会長のアリエル王女やシルフィにあらぬ誤解を受けてしまったりする。そんなこともありつつ、ノルンのことを心配するルーデウスであったが、今回はここで終わり次回に続きます。

 

 

死神坊ちゃんと黒メイド(第3期)

第28話を観ました。

今回は坊ちゃんの屋敷に突然リズと名乗る謎の女性が訪問してきて、それが実は坊ちゃんの亡くなった祖母の幽霊だった。リズは死んだ後、夫であるビクトル、つまり坊ちゃんの祖父の幽霊と一緒に旅をしているのだと言う。しかも2人はシャーデーとの契約によって幽霊となって旅を続けているのだという。ちなみにアリスは幽霊が見えるのでリズが訪問した時に普通に会話していたが坊ちゃんにはリズの姿は見えなかった。ただ前回ザインが送って来た魔法道具の中に幽霊の姿が見えるメガネもあったので、それを使ってリズの姿を見て声を聴くことも出来るようになりました。

やがてビクトルの幽霊もやって来て、坊ちゃんとアリスはビクトルとリズの夫婦の幽霊と話をすることになる。2人は坊ちゃんの呪いのことは知らず、ビクトルは自分の死後にシャロンが呪いをかけられて眠り続けたことや、シャーデーが死んだことも知らなかった。この屋敷に来た理由は単に生前住んでいた思い出の場所なので訪問しただけであり、此処に坊ちゃん達が住んでいることも知らず、てっきり空き家だと思って訪問してきたのだそうだ。なんでもシャーデーとの契約で幽霊になって旅を出来るようになったらしいが同じ場所に長く留まることは出来ず、同じ場所を2度訪問することも出来ないらしい。だから死後にこの屋敷に来るのは初めてであり、すぐに立ち去らねばいけないのだそうだ。

それで限られた時間の中で坊ちゃんはビクトルからシャーデーの話を聞きます。ちなみにビクトルは子供の頃の坊ちゃんとはよく会っていたが、自分の死の直前に現在の姿の坊ちゃんとアリスに会ったことも覚えていた。それは坊ちゃん達がザインの魔術で過去に戻った時にビクトルと遭遇した時のことでした。

そしてビクトルとシャーデーの関係ですが、リズが事故で死んだ後、悲しみに暮れるビクトルの前に現れたシャーデーがビクトルの寿命20年分と引き換えにビクトルの死後に願いを叶えると言ってきたという。ビクトルはリズと世界中を旅するという願いを持っていたがリズの死によってそれが叶わなくなり残念に思っていたので、シャーデーと契約したのです。それでこうして現在、死後に幽霊となって夫婦で旅を出来ているというわけです。ビクトルはよほど長生きの寿命持ちだったようで、20年分の寿命を差し出しても結構長生きしたみたいですね。

しかし、死ぬまでの間ビクトルのもとにシャーデーは契約者として頻繁に現れてビクトルを観察し始めた。自然に他人の心が読めてしまうシャーデーは相手が嘘をつくとすぐに分かってしまうのだが、ビクトルは全く嘘をつかない珍しい人間であり、それでシャーデーはビクトルに興味を抱いたようです。それで屋敷にシャーデーとその妹のダレスはよく訪問していたのですね。ビクトルはシャーデーと接しているうちに打ち解けていき、シャーデーにも他人を愛するようになってほしいなどと言ったが、シャーデーはいつしかビクトルを愛するようになり、ビクトルの晩年にメイドになったシャロンがビクトルの愛するリズと似た明るい性格であることにも嫉妬するようになっていた。そして誰からも怖がられて愛されない自分に絶望したようです。

そしてビクトルが死を迎えた時、傍に寄り添っていたシャーデーは「本当は私のこと好きになってほしかった」と涙を流し、ビクトルの死後にシャロンと坊ちゃんに呪いをかけた。その話を聞いて坊ちゃんは、自分に呪いをかけた時のシャーデーが自分を抱きしめたことを思い出し、シャーデーは誰からも愛されない苦しみを誰にも分かってもらえず心が歪んで世界を憎んでしまったのだと思った。そして、それは呪いをかけられた後、アリスによって救われるまでの自分と同じだと思い、絶対にシャーデーを死なせたくないと思った。そうして坊ちゃんは、過去に戻ってシャーデーを救い出して現在に連れてこようと決意したのでした。

そしてビクトルとリズの夫婦幽霊が屋敷を去る前に坊ちゃんはロブに幽霊が見えるメガネをかけさせてビクトル夫妻と再会させてあげました。ここはちょっと泣けましたね。そうしてビクトルは自分達の旅の予定表を坊ちゃんに渡し、そこに来れば再会出来るとおいことを教えて、いつでも来るようにと言い、更にシャーデーの心に寄り添ってやれなかったことを悔やみ「シャーデーを頼む」と坊ちゃんにシャーデーを救うことを託して去っていきました。今回はこういう話で、とても良いエピソードでした。

 

 

じいさんばあさん若返る

第4話を観ました。

今回は蔵の整理をしたり文化祭に行ったり、イネがセーラー服を着たら昔の感覚が甦ったり、最後はイネがアクシデントで心まで若い頃に戻ってしまって正蔵のことを忘れてしまったりしますけど、やっぱり真面目な話が多いんですよね。田舎の過疎化問題を描いていたり、昔は学校に行きたくても行けなかったとか、イイ話が多くて良質な作品なんだということは分かるんですけど、そういうのをショートギャグの形式で描かれても、なんか求めてるものじゃない感じがして、どうしても入り込みにくい作品でした。そういうわけで今回で視聴は打ち切らせてもらいます。

2024年春アニメのうち、4月27日深夜に録画して4月28日に視聴した作品は以下の6タイトルでした。

 

 

ワンルーム、日当たり普通、天使つき。

第4話を観ました。

今回はつむぎとのえるにとわが天使だとバレてしまう話でしたが、とても面白かったですね。ヒロインのキャラがみんな面白くて可愛くて、それが絡むことで笑いが増幅していました。まず夜の公園で鉢合わせしてしまった森太郎と3人のヒロイン達は大混乱となります。森太郎は翼の生えたとわの姿をつむぎとのえるに見られて大変なことになると観念しますが、意外にものえるはとわの姿を見て肯定的で「めっちゃ可愛い!」とか言ったりしてる。そういえばのえる自身が雪女なので、羽根が生えてる女の子というビジュアルにあんまり抵抗は無いようです。

それで釣られてつむぎも冷静になり、羽根が生えている女の子が飛んでいるという現実は受け入れたものの、そう見ても天使っぽいその羽根を見て、本当に天使なのかと問いかける。違うと言ったところで怪しさは何も変わらないわけで、森太郎は返事に窮しますが、とわは思い切って自分は天使だと認める。そして人間界のことを勉強しに来たと正直に答えて「よろしくお願いします!」と頭を下げる。そのとわの様子を見て、森太郎はそれで良いのだと思った。こうして正体がバレてしまった以上は、これ以上コソコソする必要など無い。もともと恥じるようなことはしていないのです。このとわの言葉を聞いて、つむぎは呆気にとられてしまっているが、のえるは天使に会えて感激して喜んでくれていて、森太郎はますますこれで良かったのだと思った。

その後、つむぎもとわが天使だということは受け入れてくれて、別に怖がったり嫌がったりはしなかった。それで森太郎はとわがある日突然現れて自分の家に居候している天使なのだということをつむぎとのえるに説明した。そして騒ぎになるといけないのでこれまでとわのことは秘密にしていたのだと言う。つむぎは森太郎が秘密にしていることなら自分も誰にも言わないと約束するが、どうしてとわが森太郎の部屋に来たのかが気になる。森太郎のことが好きなつむぎは2人の間に何か特別な関係でもあるのではないかと心配になったのです。だが、たまたまとわが森太郎の部屋にやって来ただけだと分かり、つむぎは安堵すると同時にそんなとわを行くあてが無いから気の毒だという理由で受け入れているという森太郎の優しさに惚れ直す。だが同時に森太郎にそんなふうに優しくされているとわが羨ましくてモヤモヤしてしまう。

そして同時にもう1つつむぎにとって非常に気になることは、同居しているというとわはともかくとして、どうしてこんな夜遅くに同じ学年のクール系美少女として有名な泉のえるが森太郎と一緒に公園に居たのかという問題だった。森太郎のことを好きなつむぎとしてはそれは気になって仕方がない。それに対して森太郎はのえるとはバイト先が同じで、今もバイトから一緒に帰っていたところだったのだと説明する。それを聞いてつむぎは森太郎とバイトが同じだというのえるを羨ましく思い、自分も同じところでバイトをしたいとか思ってしまう。更に森太郎が泉さんのことを「のえる」と名前呼びしていて、互いに名前呼びであること、それはとわの場合も同様であることに気付き、自分だけが森太郎と他人行儀に苗字で呼び合っていることに気付き、自分だけ出遅れていると思い愕然としてしまう。

一方でのえるは森太郎につむぎととわは森太郎の友達なのかと聞いてきて、森太郎がそうだと答えると、唐突にとわとつむぎに向かって自分は雪女だとカミングアウトする。森太郎は驚き、とわとつむぎはのえるが何を言っているのか最初は意味が分からなかったが、のえるが森太郎に着替えを覗かれた時の恥ずかしさを思い出すことで吹雪を起こすと、とわとつむぎはのえるが雪女だというのが冗談ではなく本当のことだと納得した。なお同時にとわとつむぎは森太郎がのえるの着替えを覗いたという事実も知ってしまった。

森太郎は雪女のことは秘密のはずなのにどうしてのえるがカミングアウトしたのかと質問するが、のえるはとわが天使であるという重大な秘密を自分に打ち明けてくれたのに、自分がとわに雪女だという秘密を隠したままというのはフェアではないと思ったからだと言う。それに森太郎が自分が雪女だということを誰にも言わないと言ってくれたので、このままだと森太郎に友達に嘘をつかせてしまうことになるのも心苦しい。だからのえるは森太郎の友達であるとわとつむぎのことを信じて秘密を打ち明けることで、森太郎に友達に嘘をつかせないで済むようにしようと思ったのだと言う。

それを聞いて森太郎もとわもつむぎものえるがとても良い子なのだと思いました。そして、つむぎは自分だけ秘密を打ち明けていないことに引け目を感じて、思い切って自分も秘密を打ち明けようとする。それで話の流れ的につむぎも何か人間じゃない何者かであったのかと森太郎は思わず身構えますが、つむぎは小学5年生までオネショしていたという恥ずかしい秘密をカミングアウトしただけでした。森太郎は拍子抜けしてズッコケますが、とわは森太郎の友達のつむぎものえるも優しい良い人だと知って嬉しく思い、2人とすっかり打ち解けます。そして森太郎の周囲に素敵な人が集まるのは、きっと森太郎が素敵な人だからなのだととわは思うのでした。

しかし、つむぎはよくよく考えたら森太郎が天使とはいえ可愛い女の子と同居しているという事実に気付き、更にバイトが一緒で名前呼びしているのえるも美少女であるというのもあって、森太郎が2人のうちのどちらかと深い関係なのではないかと心配になって夜も眠れなくなってしまい翌朝は寝不足で登校し、森太郎にそのことを確認すると、森太郎はそんなことはないと全力で否定し、つむぎは安堵します。そして、森太郎と秘密を共有する間柄になれたことを秘かに嬉しく思うのでした。

そうして森太郎が放課後になって下校しようとすると、のえるが待ち構えていて一緒に下校して買い食いしたり交換日記を買いに行こうとか、友達になったのだから友達らしことをしようと凄い勢いで迫ってくる。こちらは森太郎に惚れているわけではなく初めて友達が出来たので気合が入り過ぎているようです。その日はバイトだったので2人とも寄り道はせずバイトに行くが、バイト先の店でものえるはやたら森太郎に親密に接してきて店長には2人が交際していると誤解されてしまう。

するとお店にとわとつむぎが一緒に客としてやってくる。とわは猫が森太郎のバイト先を知っていると思い込んで猫について歩き迷ってしまい、そこに森太郎のバイト先を探していたつむぎがバッタリ会って2人で店に来ることになったようです。とわは店内で困っている人を助けようとして客なのに接客をしようとしたりしてつむぎを困らせ、つむぎはのえるが森太郎にベタベタしているのを見て落ち込む。しかしのえるはあまりに森太郎とベタベタしすぎるので店長に控えめにするよう注意されて落ち込み、店では森太郎と友達をやめるという極端な対応をとる。

とわはそもそもバイトが何なのか分かっておらず、つむぎに教えてもらい森太郎がお金を稼ぐために働いていることを知り、自分が居候しているせいで森太郎が困窮しているのではないかと心を痛め、自分が仕事を手伝えば森太郎が早く帰れると思って接客の手伝いを勝手に始めたりする。それで森太郎がビックリして物陰に連れていき事情を聞き、森太郎はとわはちゃんと家で役に立ってくれていると言ってあげます。それでとわも喜んで家でゴハンを作って待っていると言う。それを見ていた店長は森太郎が三角関係に陥っていると誤解しますが、のえるが森太郎と急に距離を置いたのでさっそくのえるにはフラれたのだと勘違いしたりする。今回はそんな感じのドタバタが繰り広げられて「こういうのでいいんだよ」がギュッと詰まっていました。

 

 

怪獣8号

第3話を観ました。

今回はカフカ達が防衛隊の入隊試験を受ける話でした。自分だけズルするわけにはいかないとの思いで怪獣の力を使わずに試験に臨むことにしたカフカだが、30歳超えて衰えは隠せず、体力試験では最下位クラスの成績に終わってしまい、周囲はエリート候補生が揃っており実力差は歴然で、いよいよ後がなくなってしまう。特に前回ラストでカフカと揉めた四ノ宮キコルという女は史上最年少で討伐大学首席卒業とかいう超エリートで史上最高の逸材と言われており、カフカに敵意剥き出しで、最下位に沈んだカフカを思いっきり見下してバカにします。

しかし続く最終審査の適性試験ではここ2年は怪獣の死骸処理が試験課題となっているので解体業者出身の自分達が有利だとレノは言い、それでカフカも大逆転合格を狙うが、なんと今年の適性試験は怪獣の死骸処理ではなく討伐だと知ってカフカは愕然とする。防衛隊が捕獲した多数の怪獣と戦って討伐していくという試験だが、危険なので受験者は防衛隊の怪獣対策スーツを着用することになる。これは怪獣の体組織から作ったスーツらしいが、スーツの性能を引き出せる割合は個人差があるという。通常は10%も引き出せれば受験者としては上出来で、防衛隊員の精鋭ならば20%程度らしい。そんなスーツの性能をキコルは46%も引き出す。一方でカフカは滅多に見たことがない0%という数値で大恥を掻く。

そうして最終審査が始まるが、カフカは全く活躍できない。しかしミナも見ていると知って気合を入れ直したカフカは、この試験は怪獣の討伐数だけで審査されているわけではないと見破り、エリート受験生たちの討伐を補助することで自分の適性をアピールしようとする。そして解体業者のアドバンテージを活かして、個々の怪獣の特性や弱点を熟知したカフカとレノは討伐補助で有効な働きを示すが、途中でカフカは怪獣に不意打ちを喰らって重傷を負い失格しそうになる。そこにキコルが助けに入って即時失格は免れるが、それでも危険を避けるために自主的な失格を勧められる。だが諦めきれないカフカがスーツの性能を少し引き出し始めたところで今回は終わり次回に続きます。

 

 

烏は主を選ばない

第4話を観ました。

今回は御前会議で若宮を皇太子から引きずりおろそうという企みが起こされ、そこに若宮が雪哉を伴って乗り込んでいく場面から始まります。ここで若宮は「真の金烏」という権威を嵩に着て今上の金烏である父親を「偽の金烏」と侮辱した挙句に屈服させ、更に兄の長束にも土下座を強要するなど、周囲の怒りを買うような傲慢な言動を繰り返す。

これで御前会議は若宮の勝利に終わり、更にその後は若宮は雪哉を連れて花街で豪遊を始める始末で、雪哉は呆れ果てる。呆れたのは別に若宮が暗愚だと思ったからではなく、わざと敵を増やすような行動や、わざと油断して敵に隙を見せるような行動についてだった。案の定、朝になって花街から帰る際に刺客が襲ってきて、そこに護衛の澄尾が現れて刺客たちを返り討ちにする。

その後、若宮は自分は周りが敵だらけであり信頼できる近習が必要だと言い、雪哉を近習に誘う。これまでの不可解な雑用も雪哉を試していたのだという。それで雪哉は遂に説得されて近習となることを了承するが、御前会議や花街での無茶な振る舞いもわざと敵を刺激して襲撃をさせることで、雪哉に自分の置かれた現状を理解してもらって近習になるよう説得しやすくするためだったのだと若宮に言われて、雪哉は若宮のあまりの無茶な行動に呆れ果て、これから近習になるのは大変だと覚悟させられる。そして最後はさっそく雪哉が若宮に振り回されて酷い目にあっていそうな場面が描かれて、その詳細は次回描かれるようです。

 

 

夜のクラゲは泳げない

第4話を観ました。

今回は花音の過去が明らかになる話で、前回までが仲間が集まってきてJELEEが結成されるお話で、今回からがいよいよメインストーリーの開始という感じでしたね。メインストーリーは花音が過去を乗り越えていく話を中心に展開されていくみたいで、今回はその手始めに花音の過去が明かされたわけですが、過去の全貌が明かされたというわけではない。だいぶ衝撃的な内容ではありましたが、これはまだほんの序の口でしょう。花音の過去もまだ謎が多く、花音のもともと所属していたアイドルグループのサンフラワードールズも物語に本格的に登場してきましたが、まだ花音とは直接絡んできておらず、今後物語がどう展開していくのかも予想が難しくなってきました。

その一方で今回は4人でのJELEEの活動がついに本格始動して、初めて4人全員が顔を合わせての共同作業とぶつかり合いを通して、4人の絆が深まった良いエピソードでありました。まぁ全体的には本編の序章部分と見なすべきエピソードであり、前回までそれぞれ1話完結方式でストーリーを重ねてきたのに比べると大きな盛り上がりには欠けましたが、心温まり、心揺さぶる良い場面が多くあり、最後は前回と同じように完成した新しいMVで締めるという綺麗な構成でありました。ラストでそのMVがバズって、ここから物語が大きく動き出すことが示唆される終わり方も引きとして上出来でした。

今回の冒頭は花音の自宅の場面から始まります。よく考えたらこれまで花音の自宅の場面は無かった。ここからいよいよ花音の物語が始まるという感じです。ただ、この場面は花音の描写はごく僅かであって、最初はサンフラワードールズというアイドルグループが活動を再開するという告知をしている画像がスマホで流れていて、それをたまたま自宅で花音が見て反応するという場面となっています。花音はすぐにその画像を消してしまい、そのことを無視するかのようにさっさと外に出かけていきます。この後はバイト先のお店でまひるとめいと会っている場面となるので、バイトに出かけるところだったのでしょう。

なお、この「サンフラワードールズ」というのは花音がもともと「橘ののか」という芸名でアイドル活動をしていたグループであり、2年前に花音がメンバーに暴力を振った事件の影響で花音がアイドルを引退したというのはこれまでも言及されていましたが、花音が引退した後のサンフラワードールズがどうなったかはこれまで劇中で言及されていませんでした。だが、この冒頭の場面を見ると「活動再開」と言っていますから、花音の引退騒動の後はサンフラワードールズは活動を休止していたようですね。2年間も活動休止ですから実質的に解散のようなものだと思いますが、それが今回こうして活動再開に踏み切ったようです。これは芸能界から完全に身を引いている花音にとっては寝耳に水だったのではないかと思います。

活動再開メンバーも2年前に花音と一緒にやっていた3人がそのまま変わっておらず、2年前に花音が暴力を振った相手とされている「瀬藤メロ」というメンバーもセンター格でしっかり残っています。ですから、この活動再開報道は花音にはかなり精神的に大きな影響があることだと思いますが、それがどういう感情を引き起こしたのかはこの冒頭の場面ではよく分からない。ただ、1つ気になるのは、花音の始めた覆面アーティスト「JELEE」の活動があくまでサンフラワードールズが事実上解散した状態を前提としたものだということです。

第2話ではめいはハロウィンの路上ライブ動画で唄う花音の歌声で「橘ののか」ではないかと疑い、画像の顔を解析して本人だと特定しましたが、それはつまりコアなファンならばJELEEの歌声だけで「橘ののか」ではないかと疑う可能性は高いということです。おそらくもっと花音の身近でサンフラワードールズの活動に関わっていた人たちは顔出し無しでもJELEEの正体は花音だと気付くであろうし、サンフラワードールズの活動が再開すれば昔のサンフラワードールズを知っているファン達の中にはめいのようにJELEEが「橘ののか」ではないかと疑って騒ぎ出す人たちも出てくる可能性が高い。そうなるとサンフラワードールズ関係者にとってJELEEの活動は迷惑になる可能性が出てきて、花音に連絡してJELEEの活動の中止を求めてくるかもしれない。せっかく前回で4人メンバーが揃ったJELEEですが、この「サンフラワードールズ活動再開」という新展開がJELEEの活動に悪影響を及ぼす可能性は十分ある。そのことに花音は気付いているのではないかと思います。

そして場面は変わって花音とまひるのバイト先の店にめいが来ていて、花音とまひるは先日配信した「最強ガール」のMVが1万再生に達したとか言って喜んでいる。花音の目指しているのはフォロワーが10万人なのでこれではまだ全然及ばないが、それ以前の花音が1人でJELEEをやっていた時の黒バックの動画の時は百回ぐらいしか再生されていなかったのですから、4人のJELEEになったことによってようやく「10万再生」ぐらいは現実味を持ってきたといえます。てゆーか、よくそんな百回ぐらいしか再生されないような状態でフォロワー10万人とか言えたものです。非現実的にもほどがある。

一方めいはDTM、つまり音楽制作ソフトの使い方がよく分からないと悩んでいる。花音もまひるも全く分からないので、仕方なくそういう方面に強そうなキウイに連絡してめいにオンラインでDTMの使い方をレクチャーしてもらいますが、どうもオンラインでは埒が明かないので直接こっちに来てレクチャーしてほしいと花音が言い出し、それを聞いてまひるは焦ります。まだまひるは花音やめいにキウイが引きこもりだということは教えていないのです。前回のCパートでキウイはまひると外で待ち合わせして久しぶりに再会していましたが、あれは特別であってキウイはまだ引きこもりは続けているようです。そういうことや、キウイが生徒会長だと言っていたのは嘘だということも、まだまひるは花音とめいには伝えていない。だから花音は気軽にキウイに今からこっちに来てほしいなどと言うが、そんなことを言われてもキウイは困るだろうとまひるは思った。

それでまひるはキウイは忙しいからとか言って花音に上手く誤魔化そうとしますが、意外にもキウイは花音の家で作業するのなら行ってもいいと言う。キウイも自分のついた嘘のためにまひるが花音たちに嘘をつかねばいけなくなる状況は申し訳ないと思ったのです。ただ、それでもお店みたいな多くの人の居るところに行くのはまだ辛いので、誰かの家ならば何とかなると思い、まひるの家だとまひるの家族は昔馴染みだから今の変わり果てた自分を見せるのは逆に面倒臭いので、それなら花音の家にしようと思いついたのでした。それに、まひるが再びイラストを描くようになったきっかけとなった花音ならば信用出来るのではないかという気もしたからでした。こうして4人は花音の家で作業するという流れとなった。

そうして土曜日、4人は新宿で待ち合わせすることになった。花音の家は新宿にあって、姉とアパートで2人暮らしだそうだが、姉は仕事であまり家には居ないのだそうだ。そうして新宿で集まった花音とまひるとめいの前にキウイがやって来て、そこでキウイは今まで人気者だとか生徒会長だとか言っていたのは全部嘘であって、本当の自分は不登校の引きこもりだと告白し、花音たちに今まで嘘をついていたことを謝罪した。

花音もめいも驚きますが、花音は全く怒る様子は無く、キウイに対して「自分と同じだね」と笑顔で言う。ここで花音は自分も実は不登校なのだと打ち明ける。花音の通っている高校は芸能人が多い学校なので不登校みたいになっている生徒は多いのであまり目立っていないらしいのだが、花音も全然学校に行っていないのだという。それで自分とキウイが不登校女子高生で、まひるとめいが普通の女子高生だからバランスが取れているのだなどとバカな冗談を言って場を和ませてくれたのでキウイも気が楽になり、この仲間たちなら安心出来ると思うことが出来た。

しかし、花音が不登校であるっぽいことは第2話でも示唆されていたが、やはり不登校だったんですね。しかも芸能人が多い学校だといっても花音は今はもう芸能人ではないのですから仕事が忙しくて不登校状態になっている他の生徒とは全く異なる状況といえます。むしろ、元は人気アイドルで事件を起こして炎上して引退となった花音ですから、周囲に芸能人が多い学校には行きづらくなって、それで不登校になっているのではないかとも思える。まぁそれについては第2話でめいと初めて会ったチェキ会の回想シーンで花音は「子供の頃からレッスンばかりで友達も出来なかった」と言ってますから、もともとアイドルになる以前からあまり学校に行けていなかった可能性も高いですけどね。

そうして4人は花音の家に向かって歩いていきますが、途中で最近人気のカップティラミス屋があって、まひるはそこで並んでカップティラミスを買ってから花音の家に行こうと提案するが、花音は「遊びに来たわけじゃないから」と言ってその提案を却下して家に行くのを急ぎます。そうして花音の家に着くが、そこは予想以上に寂れたアパートで、部屋の中も乱雑に散らかっていて後片付けもちゃんと出来ていない感じで、そこらじゅうにあるゴミを見ても食生活もインスタント系が多く、どうも食生活も乱れているようだった。今や引退して落ちぶれているとはいえ、普段の花音の華やかでカリスマ感ある姿とはどうもギャップがある部屋に3人はいくらか戸惑います。特にキウイは引きこもりである自分の部屋に似た不健康な精神を感じ取り困惑する。

そうした微妙な空気を打ち消そうと、まひるはまずは皆で親睦を深めようと言ってピザを注文してちょっとしたホームパーティーを演出する。実際、花音やめいはキウイとはさっき会ったばかりであり、いきなり作業に入るのではなく、まずは皆で食事でもして仲良くなった方がいい。さっきまひるがカップティラミスを買おうと言ったのもそういう趣旨だったのです。しかし花音はどうもそういうまひるの気遣いが理解出来ないようで、やはりまだ「遊びに来たわけじゃない」とか文句を言っている。どうも花音は早く作業に取り掛かりたいみたいみたいですが、まひるはそういう花音を「集団作業はこういうのが大事」と宥めて皆にピザを振る舞い、更にあらかじめ4人分買ってきていた海の生き物の食玩のお菓子を配る。

どうもまひるはこの食玩が好きみたいで、4人はそれぞれ別々の海の生き物の食玩が当たるが、まひる自身はクラゲの食玩が当たる。クラゲは4人のチームである「JELEE」を象徴するキャラですから、これには皆大喜びで、何かと焦り気味に見えた花音もこれには目を輝かせてまひるを祝福しますが、まひるはこのクラゲを「JELEEのリーダーだから」と言って花音にプレゼントします。それで花音は真っ赤になり、嬉しい様子なのですが、何か素直に喜べない様子です。

こうした花音の態度を見ていると、一見すると照れているだけみたいにも見えるが、普段の花音はそんなに照れ屋ではないので、嬉しいけど素直に喜べない複雑な心境であるというのが正解でしょう。ただ普段の花音はそんな複雑な性格ではなく、もっと単純明快であるはずです。だからやっぱり今日の花音はどうもおかしい。変に焦っているのも不自然だが、そういう協調性の無い自分の態度を恥じているようにも見える。だからまひるに「JELEEのリーダー」と言われても、自分にはそんな資格は無いとでも思っているような煮え切らない態度になってしまう。

しかし普段の花音はそんな性格ではない。素直にリーダーである自分を受け入れるタイプのはずです。しかし今日の花音は自分はリーダーが務まる人間ではないと思ってしまっているようです。これはどうもサンフラワードールズの活動再開のニュースを見たことと関係があるように思える。かつて花音はサンフラワードールズのセンターでありリーダーだった。しかし花音は暴力事件を起こしてサンフラワードールズを活動休止に追い込んでしまった。事の経緯は不明だが、リーダー失格の行動であったのは間違いない。サンフラワードールズの活動再開を知って花音はそうした自分の過去の失敗を思い出し、同じく4人チームである旧サンフラワードールズをJELEEに重ね合わせて、自分には皆のリーダーを務める資格は無いと思ってしまったのではないか。

このあたりの一連のシーンの合間に、活動再開したサンフラワードールズが地道に活動する場面がインサートされていくが、ここで印象に残ったのは、まずサンフラワードールズには「雪音」という名のプロデューサーがついていて、芸能界ではかなり有名なプロデューサーであること、そしてサンフラワードールズの現在のセンターである瀬藤メロはこの雪音プロデューサーに心酔しており絶対の信頼を置いているということが分かる。このメロというのは2年前の事件で花音に暴力を振われたという相手です。また第2話の回想シーンでも「橘ののか」だった頃の花音はメロと仲が悪いことは自ら認めているので、もともと確執があったのは間違いない。そして「雪音」というプロデューサーは2年前の事件の時もサンフラワードールズを担当しており、おそらくサンフラワードールズの結成当初からずっと雪音がプロデューサーなのでしょう。つまり当然花音とも深い関係にあり、2年前の事件にも関わっている可能性が高い。また、サンフラワードールズのメンバー3人は未だに2年前の事件のことを引きずっているようであり、特にメロは深く思うところはあるようです。

そうして再び場面は花音の家の場面に戻り、夕方になってようやくキウイがめいにDTMの使い方を教え終わったところでミーティングに移行して、花音は今後の方針として「JELEEの最終目標はフォロワー10万人」と従来の目標を繰り返した後、「次の曲は来週の水曜日までに配信したい」と言い出す。あと数日で新曲を仕上げてMVまで完成させるとは何とも無茶な話で、まひる達は唖然としますが、花音は大真面目で「そのためにこれから毎日集まりたい」とか言い出す。

だが皆は当然、毎日集まるのは無理だと言い、花音は「それじゃ間に合わなくなる」とかワケの分からないことを言って焦った様子になる。何に間に合わせるのかとキウイが問い詰めますが花音は答えようとせず黙り込んでしまう。どう見ても花音の言っていることは道理が通っておらず他の3人の意見の方が正しい。それで花音は納得して意見を引っ込めますが、暗い表情をしてそのままコンビニに行くと言って家を出ていってしまう。残された3人は花音が自分の意見が通らなかったので拗ねて出て行ったように思い、どうして花音がそんなに意固地になったのかと不審に思いますが、そこでめいが「来週の水曜日」に花音がこだわっていたことに心当たりがあると言う。

実は「来週水曜日」というのはサンフラワードールズの活動復活の第一弾シングルの発売日なのです。めいはもともとサンフラワードールズの追っかけをしていたので、花音が引退していなくなった後もアイドルオタクは続けており、それなりにアイドル事情には詳しく、サンフラワードールズ復活の動きも把握していたのです。そのことをめいに教えられて、まひるとキウイは花音が自分を追放したサンフラワードールズに対抗意識を燃やしているのかもしれないと思ったが、それでもどうも釈然としない。ただ、サンフラワードールズの2年前の事件に絡んだ何らかの想いが関わっているのだろうとは思えた。すると、そこに花音の姉の美音が酔っぱらって帰宅してきて、3人は美音に花音の過去について教えてほしいと頼み込み、美音は花音の過去について語ってくれたのでした。

実は花音はもともとアイドルをやりたかったわけではないのだという。だが小学校の時に両親が離婚して、それ以降は花音はお母さん子になって、「母親が喜ぶことをしたい」という理由でアイドルになったのだと美音は言う。それを聞いて、まひる達は花音の母親がアイドル好きで、そんな母親を喜ばせようとして花音がアイドルになったのかと思ったが、美音はそうではないと言う。実はサンフラワードールズのプロデューサーである「早川雪音」は花音の母親なのだというのです。

当然、雪音は美音の母親でもある。しかし花音の苗字は「山ノ内」であり、つまり花音は小学生の時に両親が離婚した際に父親に引き取られたということになる。ちなみに美音は「早川美音」なので、姉の美音は母親に引き取られたということになる。父親に引き取られたのにお母さん子になったというのも奇妙な話であるが、引き離された母親が恋しいあまりに母親を強く慕い、母親の喜ぶことをして関心を引きたかったのかもしれない。ちなみに美音は「自分は全く逆」と言っているから母親のことは好きではないようです。そういう美音が語っているからなのかもしれないが、どうも花音の「母親が喜ぶことをしたい」という想いは、母親である雪音とはすれ違っていたような印象を受ける。

そもそも花音は第2話のめいとの初対面時の回想シーンで「子供の頃からレッスンばかりだった」と言っているが、それは両親の離婚前も離婚後も続いていたということになる。サンフラワードールズ自体は花音が中学生以降のことだろうと思うので、サンフラワードールズは関係なく両親が離婚する前から花音は母親にレッスンを受けていたのかもしれない。そして、それは両親の離婚後も続いたということになる。花音を引き取った父親がどういう存在であったのかもよく分からないし、どうも花音の過去は一筋縄ではいかない事情がありそうです。

とにかく花音は母親がプロデュースしたサンフラワードールズのリーダーとしてアイドルデビューした。その間も終始一貫して姓は「山ノ内」のままだったから父親と暮らしていたのか、それともアイドルの寮のような場所に居たのか、あるいは母親と暮らしていたのか、詳細は分からない。ただその頃には美音はもう母の雪音とは離れてこの新宿のアパートで一人暮らししていたようです。だから美音はアイドル時代の花音について詳しくは知らないし、どうして花音があんな事件を起こしたのかは知らない。花音もそれについて語ろうとはしないし、美音も聞き出そうとは思っていない。

ただ、確かなのは花音は母親を意識してなのか、サンフラワードールズのメンバーの中で一番ストイックにアイドルの仕事に打ち込んだが、そのせいもあってメンバー内で孤立していたということです。そして事件が起きて引退した花音は美音の部屋に転がり込んで居候するようになり、自暴自棄になったように不健康な生活を送るようになったのだという。何かよほどのことがあったと考えるべきでしょう。もともとアイドルに憧れていたわけではない花音が単にアイドルの夢が破れたからといってそんなに一気に崩れるはずがない。母親のためにストイックにアイドルをやっていた花音が自暴自棄になったのは、母親に見捨てられたからに違いない。アイドル時代は父親のもとに居たのか母親のもとに居たのかは不明だが、そのどちらでもなく、そんなに親しかったわけでもない姉のところに転がり込んできたのも、よほど居たたまれないことがあったのだと推察できる。

そうした事情はまひる達も想像はついた。ただ、それでも美音から聞いた話だけでは、どうして花音がサンフラワードールスの復活シングル発売の日にJELEEの新曲を間に合わせようとしたのかの理由は分からなかった。それでももう1つ確実に分かったことは、さっき花音が自分の意見が通らなかった後、急に部屋を出て行ってしまった理由でした。おそらく花音は母親に対する拘りが強すぎて必死に結果を追い求めて周囲が見えなくなったせいで仲間とトラブルを起こしてしまったサンフラワードールズ時代と同じ過ちを繰り返している自分に気付いて、居たたまれなくなって家を出ていったのだ。

そのことに気付いたまひる達に向かって、美音はそうして自暴自棄になって不健康に生きていた花音が最近になって急に生き生きとしてきて「毎日が楽しい」と言うようになったのだと言う。そして、それはきっと貴方たちのおかげなんだろうと言われたまひる達は、自分達はこのまま花音を2年前みたいに孤独にしてはいけないと思い、キウイとめいは2人で花音を探しに新宿の街に出ていく。

花音の方あても無く彷徨ううちに新宿の街頭でサンフラワードールズの3人の映っている街頭ビジョンを見つけて、その3人の映像が消えて真っ黒になった画面に映った1人ぼっちの自分の姿を対比させると「私は何にも変わってないな」と自暴自棄に呟き拳を握りしめる。しかし拳に握ったままだったクラゲの食玩に気付き、今の自分は2年前と全く同じではないのだと気付き、思い直して別の場所に移動していきます。

そして花音を探すキウイとめいは、めいがサンフラワードールズのミニライブがちょうどやっているのでそっちに行ったのではないかと言うが、キウイは寂しい人間はそういう所には行かないだろうと言う。そしてさっきまひるが行こうとして提案を却下されたカップティラミス屋に行ってみたところ、そこに花音が居て、カップティラミスを買っていた。花音は焦って周りが見えなくなっていた自分の反省して、2年前とは違い今回はJELEEのリーダーとして仲間のために行動しようと思い直して、皆のためにカップティラミスを差し入れして家に戻ろうとしていたのです。そして花音がそういう行動を選ぶだろうと信じたキウイとめいもそこに行き、花音と会うことが出来たのでした。

そうして家に戻ると、留守番をしていたまひるが部屋を綺麗に片付けてシチューを作って皆の帰りを待ってくれていた。そうして4人でシチューを食べてカップティラミスも食べてから作業に取り掛かり、花音は3人が早く帰らなくて大丈夫かと心配するが、3人は毎日集まれないぶん今日はとことん作業に付き合うと言ってくれる。花音は感激して涙ぐむが、どうして急にそんなにやる気になったのかと問い、それでまひる達は美音から過去のことを聞いたと打ち明ける。そしてキウイは、過去の恥ずかしい話を知られてしまった花音を気遣って、自分が中学デビューに失敗して引きこもりになった恥ずかしい経緯を初めて3人に打ち明ける。それを承けてめいも実は自分は酷い音痴でコンプレックスがあるのだと告白する。そしてまひるは「今ちょっと気になってる人がいる」と打ち明ける。これについては今回は詳細は明かされなかったので次回以降に期待ですね。

そうして徹夜で作業して完成させた新曲のMVをアップロードしたところで全員ダウンしてしまい、そこから特殊エンディングで新曲「月の温度」のMVが流れて、目覚めたらそのMVがバズっていたというところで今回は終わり次回に続きます。

 

 

THE NEW GATE

第3話を観ました。

今回はシンが教会にある孤児院の依頼を受けて、浄化のスキルを持つ人を探してほしいという依頼で、代わりにシンはミリーの能力が星読みだと教えてもらう。浄化のスキルを継承したいというのは教会の神父の孫ラシアで、浄化のスキル持ちでないと教会を継げず別の者が教会を継ぐと孤児院は無くなってしまうらしい。それでシンはラシあが浄化のスキルを獲得出来るように魔物狩りを手伝うことになるという話。まぁとりあえず全然面白くならないので今回で視聴は切らせていただきます。

 

 

ささやくように恋を唄う

第3話を観ました。

今回はひまりが依に告白されてから困惑している場面から始まります。ひまりが困惑していたのは、ひまりが恋愛感情というものをまだ知らなかったからでした。それでひまりは友人の未希に依に告白されたことを打ち明けて相談する。それで自分の依への感情が恋愛感情なのか確かめようとするが、未希に聞いても結局よく分からない。未希は好きでなくても付き合ってもいいんじゃないかとアドバイスしてくれて、ひまりは少し気が楽になって依との関係を前向きに検討してみることにします。

依の方は告白して返事を聞かずに帰ってしまって以降、期待と不安が相半ばして焦った気持ちで過ごしていたが、ひまりからちゃんと考えてから返事するという誠意のあるメッセージが来て嬉しく思う。どうやら両想いかもしれないというのは勘違いだったというのは分かって、それは残念ではあったが、ひまりが自分の告白を真面目に考えてくれているというのが分かっただけでとても嬉しかったのでした。

その後、亜季と一緒に下校した依はひまりに告白して返事待ちだと打ち明けて、亜季は驚くが依と普通に接する。一方ひまりは依と交際するかどうか決められず迷っていましたが、母親が父親と交際を始めた時の話を聞き、高校1年生の時に父親に告白された母親が良い友達だった父親と変な関係になりたくなくて交際を断り、それでも父親は母親を好きでい続けてくれて高校3年生の時に母親も父親を好きになって交際を始めて結婚まで至ったという話でした。その話を聞いてひまりは素敵だと思い、依にどう返事するか決めることが出来た。

そうしてひまりは放課後の屋上で依と会い、自分は恋愛感情が分からないので、今交際して依を傷つける結果になるのが怖いので、今まで通りの関係を続けながら依に恋愛感情を持つことが出来たら交際したいと伝える。そして身勝手なことを言って申し訳ないと言ってひまりは泣きますが、依は告白してフラれて今のひまりとの関係が壊れてしまうのが不安だったのだと打ち明け、だから前向きな返事が聞けたことが本当に嬉しいと伝える。そして依は絶対にひまりを振り向かせたいと思い、そのために自分がやるべきことはやはり歌しか無いと思い、特にひまりが見たいと言ってくれたバンドをやろうと決意し、亜季に誘われていた軽音部のバンドにボーカルで参加することにした。今回はここまでで、いよいよ話が転がり出してバンド編に突入して次回に続きます。

2024年春アニメのうち、4月26日深夜に録画して4月27日に視聴した作品は以下の5タイトルでした。

 

 

アストロノオト

第4話を観ました。

今回は監視カメラに映っていた幽霊のような人影の正体を突き止めようという話になり、ミラと拓己がスープカレーで罠を張って幽霊っぽい不審者を捕えようという作戦を敢行し、犯人は入居者がいないと思われていた7号室に住んでいた上町葵という女性であったことが分かる。実は葵は極度の人見知りで、先代の大家である下高井戸に廊下から出入りせずに済むよう特別に改造した7号室に入居させてもらっていたそうです。そして下高井戸が亡くなって大家がミラに変わって自分の存在が忘れられているとは知らなかった葵は食堂に置いてあった朝食を自分用のものだと勘違いして部屋に持ち帰っていたのだが、それをミラや拓己が泥棒の仕業だと勘違いし、監視カメラで映った葵の姿が長髪のせいで幽霊に見えたのだった。

その後、ミラはショーインと一緒に下高井戸の弁護士だった人を訪ねて話を聞く。その弁護士はもともとあすなろ荘の住人だった人で、その人の話を聞いてミラ達は下高井戸がミボー人であったことを確信する。その晩、皆で葵の歓迎会をしようということになり、7号室に入れてもらえなかったので拓己の部屋で宴会することになる。ここで、拓己たちは知らないようだが、どうやら葵は拓己と旧知の仲であるようです。その拓己はミラと映画に行ったりして親密度が増しますが、ミラがショーインと一緒にラブホテルに入るのを目撃してショックを受ける。今回はここまでで次回に続きます。

 

 

変人のサラダボウル

第4話を観ました。

今回はまず惣助のもともと居た探偵事務所の後輩女子の閨春花という奴が現れて仕事を紹介してくれる。それはイジメ調査の仕事で、中学1年生の娘が学校でイジメられているのではないかという母親からの依頼でした。本人である娘の友奈に確認してみたがイジメなど無いと言う。しかしサラと三国志の話題や父親が死んだ話で意気投合して、友奈はうっかりイジメがあることを告白してしまう。実は友奈は父親の死後に母親が雇ってもらった会社の社長の娘にイジメられていた。自分がやり返したりイジメをバラしたりすれば母親に迷惑がかかるのではないかと思って友奈は我慢しており、相手はそれを良いことにイジメをしていた。それを聞いた母親は自分のことは気にしなくていいと言って友奈を叱り、惣助は合法的な手段でやり返そうと助言し、隠しカメラでイジメの証拠を映像で残して弁護士に送ってやり返した。

これで一件落着となり、その後、ハロウィンの催しにサラが仮装して参加する話があり、岐阜駅前で織田信長像の前でサラと惣助が記念写真を撮って、そこで惣助がサラの元居た世界は実は日本ではないかと指摘し、サラの元居た世界は地球のパラレルワールドでありサラの居た国は日本だったのだが、そこは信長が本能寺で死なずに天下をとって皇帝になって魔法の国を作っており、サラは信長の子孫なのだという。だからどうしたという話だが、今回はこれで終わり次回に続きます。

 

 

魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい?

第4話を観ました。

今回はザガンがネフィリアに膝枕してもらったり、ネフィリアを魔術の弟子にしたりします。魔術師の悪友のバルバロスが訪問してきてネフィリアがまだ生贄にされずに生きているので驚いたりしますが、ザガンがネフィリアを弟子にして大切にしていると知ってバルバロスはザガンに人間らしい心が残っていたのかと感心する。ネフィリアもザガンが実はバルバロスを友人と思って気を許しているのだと気付く。

その後、ザガンはネフィリアに魔術を教えたり、ネフィリアに屋敷の世話をしてもらったりして穏やかな日々を過ごすが、そうして半月ほど過ぎてザガンは12人の魔王から呼び出しを受け、魔王の待つ亡き魔王マルコシアスの居城に向かう。そこでザガンは13人目の魔王となるようにと言われ、マルコシアスの持っていたネフィリアの首輪の鍵を手に入れるために魔王となることを了承する。そうして魔王となり鍵を手に入れたザガンはネフィリアの首輪を外して、魔王となった自分の険しい人生にネフィリアを巻き込まないよう、そしてネフィリアを自由にしてやるために自分の居城から追放する。そのことに気付いたネフィリアが悲しむところで今回は終わり次回に続きます。

 

 

ガールズバンドクライ

第4話を観ました。

今回はすばるがバンドを辞めるとか言い出して仁菜や桃香が右往左往するような話で、結局はスッキリした答えは出なかったように見えますが、これで実はバンドの目指すところを探すための第一歩を踏み出したというお話になっていて、今回は脚本の出来が非常に良かった。まぁここまでの3話も実際のところ脚本の出来も良かったんですけど、なんか勢いが勝ってる感じがして脚本の良さが目立っていなかった。今回は勢いが抑えめなぶん、脚本の繊細さが際立って見えました。

何よりエピソードの方向性が良い。バシッと綺麗な形で結論を出さずに魅せることで、形式的なものよりも大事な本質があることを浮き彫りにしているのは、先日の「響け!ユーフォニアム3」の3話にも通じるものがある。こういう一見すると中途半端な話で序盤の1話を消費して重要なことを描いてくる作品はむしろ終盤の爆発力を予感させて1クール単位で見ると強みを感じる。毎話しっかり充実していることも大事だが、単に毎話レベルが高いエピソードを作ること、それを繋げてレベルの高い1クールの作品を作ることだけでなく、その中で巧みに緩急と流れを作ることが出来るのが超一流なのだろうと思う。そういう流れを作る上で今回のエピソードは重要な布石だったように思います。前クールは設定が破格的に面白いキワ物の作品が多かったんですが今期は上位は正統派の作品が多くて脚本勝負になってきそうなんですが、その中でもこの作品は十分に今期のエースといえる作品だと思えました。

今回は仁菜と桃香とすばるの3人がバンドをやる意味についてリアルに描かれた話だったといえます。そもそもバンドをやろうと言い出したのは桃香ですが、桃香は元いたバンドから抜けて1人で活動した後音楽を諦めて田舎に帰ろうとしていた人間です。それが仁菜に出会って再び音楽をやろうと考え直して、仁菜に「バンドをやるべきだ」と誘い、すばるにも声をかけたのだが、仁菜とすばるは別に才能に溢れた人材というわけではなく素人に近い。だから桃香は別にメジャーを志向しているわけではなく、かといって趣味で音楽をやろうとしているスタンスでもない。一旦辞めようと決めていた音楽を再び始めたのだから心に期すものはあるはずなのです。そして、そのためには仁菜やすばると一緒が良いと考えたようです。

ここまでの桃香の言動を見た印象では、彼女は別にメジャーになろうとか売れたいとか成功したいという考えは無く、ただ真摯に音楽に、ロックに向き合いたいと思っているように見える。極論を言えば、別にこの3人のバンドを盛り上げていこうとか守っていこうという意識すら希薄に見える。桃香は自分がロックに向き合うために必要だから仁菜やすばるを求めているだけであり、彼女らを守ろうとはしていない。ただ年長者であるし自分が声をかけたからという義理と、生来の世話焼きの性分で2人を気にかけている程度でしょう。桃香は社会的な成功よりも内面的な充実を求めている人間であり、仁菜やすばるのことも自分と同じタイプだと思うから自分のバンドに巻き込んでいるのでしょう。

そういう意味では桃香は「響け!ユーフォニアム3」の3話で描かれた黄前久美子とは対極にあるキャラに見える。久美子は吹奏楽部から誰も脱落者を出さないために精一杯の努力をしようとしていたが、桃香は今回バンドを辞めようとするすばるを積極的に引き留めようとはしなかったし、前々回でも仁菜にバンド入りを拒否されるとすぐに諦めたし、前回も仁菜にバンドを辞めるよう促したりしている。ただ、それらはバンドや音楽が仁菜やすばるにとって魅力的であれば勝手に戻ってくるという考え方に基づく行動であり、本気で辞めさせようとしていたわけではない。

おそらく久美子は「吹奏楽部を守ること」が「皆が吹奏楽に真摯に取り組むこと」に繋がるという思考なのであり、逆に桃香は「皆が音楽に真摯に取り組むこと」が「バンドを守ること」に繋がるという思考なのであり、思考の順序が違うのでしょう。そういう意味でこの「ガールズバンドクライ」の人間関係は割とドライで尖ったものになりがちです。ただ久美子と桃香に共通しているのは、彼女らがそれらを目に見える形での成功や勝利などよりも重視しているという点です。特に桃香はそれが際立って見える。それは久美子は責任ある立場であり、桃香は久美子ほど責任を負う立場ではないという差によるものでしょうけど、そのぶんやはりこの「ガールズバンドクライ」の方がそういう意味でのメッセージ性は若干強く見えます。そして、そのメッセージのアツさがこの作品の一見するとドライに見える部分を十分に補って魅力あふれる物語を作り上げている。

とかく最近はそれとは対極に「勝たなければ意味が無い」「勝った奴が正しい」という感じのメッセージの作品が目立つ。小難しい説教なんか聞きたくない中高生はそういうものの方が分かりやすくて心地良いのでしょう。なろう系とかジャンプ系の作品なんてそんなのばっかりです。そういう作品自体が必ずしも全部嫌いというわけではないですが、そんな作品ばかりに慣れすぎると物語の趣旨を読み解く力が失われていってしまい、正統派の物語が廃れていきそうで心配です。だから私はやっぱりこういう「響け!ユーフォニアム」や「ガールズバンドクライ」のような物語の方をどうしても高く評価したくなる。

そういうわけで今回の話ですが、まず冒頭は仁菜たち3人が楽器店に来ている場面から始まります。ここで仁菜はご機嫌でギターを物色したりしている。仁菜は楽器は全く弾けないのでギターも弾けないのですが、桃香みたいにギターを弾きながら歌ったりしてみたいようです。桃香は初心者の仁菜がギターを弾いても歌が疎かになるだけだから止めたほうがいいと忠告しますが、仁菜はあまり聞く耳を持っていない様子で、これは前回ラストで描かれた仁菜にとっての初ライブで思いっきり唄ったのが仁菜にとってとても気持ち良かったからでした。

仁菜はこれまで熊本で人目を気にして本当の気持ちを言うことも出来ず鬱屈した日々を送っていた。それは川崎に出てきてからも変わっていなかった。でも初ライブで観客の前で自分が思っていることを思い切り叫んで、人生で初めて力の限り自分を出すことが出来て、初めて心の底からの笑顔になれた。その気持ち良さは前回も桃香やすばるにも予告されていたものであったが、実際にその気持ち良さを体感したことで仁菜はすっかりその虜になっていた。そして、自分にそれを予告した桃香もすばるも同じようにライブを気持ちよく感じたはずであり、自分は桃香とすばるという一緒に心の底からの笑顔になれる仲間を得たのだと仁菜は思って高揚した気分になっていた。

だが、配信用の音源作りのためにスタジオで練習を開始すると、桃香は至って冷静に作業に取り組んでおり、初ライブの高揚感を引きずっていた仁菜は自分と意識のズレを感じた。そうしていると、桃香が見ていたスマホの画面がたまたま目に入った時、桃香が「ダイヤモンドダスト」の記事を検索していたことに気付いて、仁菜は桃香がダイヤモンドダストを意識しているのではないかと思った。つまり桃香が袂を分かつた元仲間のダイヤモンドダストをライバル視してこの3人のバンドで勝ちたいと思っているのではないかと想像したのです。

しかし、そのことをすばると2人になった時に言ってみたところ、メジャーデビューして売れているダイヤモンドダストに勝とうと思っているのならそもそも自分達みたいな素人同然の2人を誘うわけがないと言って笑われてしまった。初ライブの高揚感でダイヤモンドダストにだって勝てるんじゃないかと浮かれていた仁菜は冷や水を浴びせられたようで少し嫌な気分になり、すばるとも温度差を感じてしまった。

しかし、ライバルとして意識しているのではないとするなら、一体どうして桃香はダイヤモンドダストの記事の検索なんかしていたのだろうかと考えた仁菜は、もしかしたら桃香はダイヤモンドダストに未練があって戻りたいと思っているのではないかと思ってしまいモヤモヤしてきた。なんだか初ライブで浮かれていたのは自分だけであって、桃香もすばるもそんなに高揚していなかったのかもしれないと思って仁菜が嫌な気分になっていたところ、スマホに届いたメッセージを見て何やら慌てたすばるが作業の途中なのに急に帰ってしまい、その後もメッセージを送っても返信も無く、その日の夜遅くになっても既読さえつかなかった。

それで桃香は男と会っているのだろうと言う。こんな夜遅くまでスマホを見ることも出来ないということは、単にデートをしているという感じではなく、例えば裸になって男と一緒にベッドで寝ているようなそういう関係だと言っているようなものです。仁菜は自分と同い年のすばるが男とそんな爛れた行為をしているとは信じられないが、桃香はガールズバンドをやってる女子はバンドマンに狙われやすいからそんなのはザラだと言う。

ただ、すばるを勧誘した時点では男がいるような印象は無かったので、きっと一旦別れた男とヨリが戻ったのだろうと桃香はワケ知り顔で言う。それを聞いて仁菜は桃香がダイヤモンドダストに戻りたがっているのかもしれないという疑惑を思い出し、桃香にダイヤモンドダストとヨリを戻したいと思っていないのかと質問します。桃香はダイヤモンドダストの名前を聞くと不機嫌になり、今のダイヤモンドダストのことはどうも思っていないと答える。その言葉に仁菜が突っかかって、どうも思っていないならどうして辞めたのかと質問する。それに対して桃香は「その話はしたくない」と言って答えを拒否する。

実際、桃香は仁菜が疑うようにダイヤモンドダストに戻りたいなどとは思っていないでしょう。自分から辞めて田舎に帰ろうとしていたぐらいですし、もしかしたら戻りたくても戻れない事情がある可能性もありますが、それならばわざわざ仁菜やすばるを誘う必要も無いはずです。だからおそらく桃香はダイヤモンドダストに戻りたいとは思っていない。しかし「どうも思っていない」というわけでもないのも事実でしょう。どうも思っていないのなら仁菜の質問に対してこんなに不機嫌になることはないし、仁菜の質問に答えて昔の話をするのを拒んだりもしないはずです。それにティッシュ配りのバイト中にダイヤモンドダストの看板を見つめていたり、記事の検索をしていたのも、ダイヤモンドダストに対して何か思うところがあるからなのでしょう。

それぐらいのことは仁菜にも分かるので、仁菜はしつこく「どんなバンドだったのか教えてください」と食い下がる。それで桃香も根負けして、溜息をつくと自分の部屋から額縁に入れたダイヤモンドダストの結成当時の写真を持ってきて仁菜に向けて放り投げて渡す。その写真には高校生の頃の桃香とダイヤモンドダストの他のメンバーが一緒に笑顔で写っていた。そして桃香は仁菜にダイヤモンドダストの昔の話をした。

出会ったのは旭川の高校の軽音楽部で、全員才能があって全員気が合った。やりたい音楽の方向性も一緒で、それで「これはプロになる運命だ」と皆が思った。そうして1年生の時の学園祭でライブが大成功して、こうなったらプロになるしかないと思って全員高校を中退して上京してインディーズで活動を始めた。自分達に才能があると気付いてしまった田舎の女子高生たちは高校卒業まで田舎でくすぶっているなんて耐えられなかったのでしょう。そうして実際にインディーズでも成功してメジャーデビュー直前までこぎつけた。だが、そこで桃香は脱退し、残りのメンバーはメジャーデビューして売れっ子になった。

一体そこで何かあったのかはまだ不明です。第1話で桃香が仁菜に「ダイヤモンドダストは辞めたこと」「曲の権利も譲ってやったこと」は説明したが、そこに至った経緯は明かしていない。それはおそらく桃香にとっては言いたくないことであり、思い出したくもないことなのでしょう。仁菜に昔の話をするようにと言われて嫌がったのも、それを思い出したくないからなのでしょう。田舎から出てきた仲良しガールズバンドがメジャーデビューをするにあたって何かの決断を迫られて、そこで仲間内で何か決定的な亀裂が生じたのではないかとは想像できますが、それが何であったのかは分からない。

仁菜にもそれはもちろん分からない。ただ仁菜はもう桃香がダイヤモンドダストに戻りたいと思っているのではないかという疑いは抱いていなかった。それは桃香の昔話の中身に納得したからというわけではなく、桃香から渡された額縁の中の桃香の笑顔を見たからでした。その笑顔はとても屈託の無い心の底から楽しそうな笑顔で、仁菜にはその桃香の笑顔が今の自分の笑顔と同じだと思えた。初めて音楽で自分を力の限り出すことが出来た心の底からの喜びに満ちた笑顔であった。これが桃香が初めて音楽の楽しさを知った時なのだと仁菜は思い、その写真を額縁に入れて自分の部屋に飾っているということは、それは桃香の大切な想い出なのだろうと思えた。だが今の桃香はそんな笑顔を見せたことは一度も無いとも仁菜は思った。つまり今の桃香はその頃とは全く違う人間になってしまっているのであり、今の桃香にとってダイヤモンドダストは完全に過去の想い出になってしまっているのだろうと仁菜は納得出来たのです。

それで仁菜は額縁を見つめて「桃香さん、こんな顔で笑うんですね」と笑って言う。それを聞いた桃香はハッとします。それはつまり、今の自分が仁菜たちの前で昔みたいな笑顔になれていないということを意味していたからです。自分は高校の時にバンド

を始めた時のような新鮮な喜びをいつの間にか忘れてしまっていたのだと気付いた桃香は、自分がダイヤモンドダストに戻りたいなどと思っていないはずなのに看板を見つめたり記事を検索するというような無意味な行動をとってしまっていた理由がようやく腑に落ちた。自分は確かにダイヤモンドダストに戻りたいとは思っていない。だが、それは「今のダイヤモンドダスト」であって、自分は本当は「昔のダイヤモンドダスト」の頃に戻りたいと無意識に思ってしまっていたのだと桃香は気付いた。

もちろん戻れるはずがない。そんなことは桃香は分かっている。問題はそうやって戻れるはずもない昔に心を奪われて自分が現在において昔のようにちゃんと笑えていないことの方だった。一方で先日の初ライブの後で仁菜が昔の自分みたいな心の底からの笑顔をよく見せるようになったことには桃香は気付いていたので、桃香はどうして仁菜がこんなふうに昔の話で突っかかってきたのか理由が分かったような気がした。桃香自身は無自覚であったが、いつの間にか仁菜の喜びのテンションに自分がついていけなくなっていたのだ。それで仁菜を寂しがらせてしまい不安にさせてしまったのだろうと気付き、桃香は反省しました。

ただ、反省したところで実際に昔のように心の底から楽しくなれるかというと、それは今の自分には難しいのだろうとも思えた。大人になってしまったし、色々なことがありすぎた。高校の時と同じことをしていても、もう高校の頃のような笑顔にはなれないように思えた。何か新しいことが無ければあの頃のような笑顔は取り戻せないように思う。いや、高校の頃から何も変わらないままだったからこそ、いつしか自分は笑顔を忘れてしまい、それでダイヤモンドダストをダメにしてしまったのではないかとも思えた。それならば、自分が変わらなければ今回のバンドも結局同じようにダメになってしまうのではないかとも桃香には思えてきたのでした。

しかし翌朝になって緊急事態が起きてしまう。仁菜がすばるのスマホに送っていたメッセージへの返信が深夜に来ていて、そこですばるが「バンドやめます」と伝えてきていたのを朝に起床して仁菜が発見して、慌てて桃香に連絡して、仁菜がすばるに事情を聞くためにすばるの通うアクターズスクールに行こうと言い出すので、桃香もついて行くことになったのです。

仁菜にしてみれば、せっかく自分が生まれて初めて本当に笑顔になれる場所が出来たと思っていたのに、すばるが辞めてしまったらその場所であるバンドが無くなってしまうという危機感を覚えて、何とかしてすばるを引き留めなければいけないと必死でした。辞めるなんて言ってるぐらいだからスマホで説得しようとしても埒が明かないだろうし、すばるの自宅も知らないし、そうなるとアクターズスクールに押しかけて直談判するしかないと仁菜は考えたのでした。

だが桃香の方は仁菜が1人で行ったら面倒なトラブルを起こしそうなので仕方なくついて来たが、あんまり乗り気ではなかった。桃香も仁菜もすっかりすばるが辞める理由は男性関係だと思い込んでおり、桃香の経験上、いや実は経験はあんまり無いので他人から聞いた話なのだが、男と無理に別れさせようとすれば逆に意固地になって男にズブズブ嵌ってしまうパターンの方が多いらしいので変にすばるを刺激したくはなかった。ただ、だからといってこのまますばるを辞めさせてしまって良いのかというと、それは確かに良くはないのだが、すばるが音楽に真摯に取り組んだ上でこのバンドに魅力を感じているのならいずれは戻ってくるはずだというのが桃香の基本的な姿勢です。そして同時に、桃香は昨晩の仁菜との遣り取りでちょっと自信喪失気味であり、昔みたいに笑えなくなった自分が果たして仁菜やすばるを引き留める資格があるほど釣り合いのとれる相手なのだろうかと少し懐疑的になってしまっているという側面もある。

そうして2人がアクターズスクールの建物内に入ると、そこにすばるがやって来るが、すばるが普段とはキャラが違っていてずいぶんとお嬢様風にキャラを作っているので、一度そういうのを見ていた仁菜は平気でしたが桃香は戸惑う。ただ仁菜も戸惑ったのは、すばるが今回はずいぶん年配の和服を着た女性と一緒に歩いてきたことで、すばるはその女性に「おばあ様」と言っていて、どうやら先日すばるから説明を受けた祖母の大女優の人らしいということに仁菜は気付いた。一方ですばるから家族の話を何も聞いていなかった桃香はそれが誰なのか分からなかった。

すばるの方はバンド活動を秘密にしている祖母と一緒にいるところにいきなりバンド仲間の仁菜と桃香が現れたので慌てて2人を物陰に連れていき揉め始めるが、そこに祖母が来て誰なのかと質問してくるので、すばるは咄嗟に役者仲間だと言って誤魔化す。だが、どう見ても役者っぽくは見えない2人組を見て祖母は疑った様子であったが、表向きは納得した体で3人を連れて喫茶室に行き、お茶を飲みながら歓談して役者の心得の話をしたりします。

そうして面と向かって座っていると、さすがに桃香も相手がテレビでも見たことがある大女優の安和天童だということに気付き、すばると姓が同じであることで本当にすばるが安和天童の孫だということに納得した。それで祖母がトイレに行った間にすばるに確認すると、確かにすばるは安和天童の孫娘であり、昨日急に上京して来て会いたいと言われたので慌てて帰って会い、その後ずっと相手しているのだと説明する。

つまり男に呼び出されて帰ったというのは勘違いだったのだと桃香も仁菜も理解したが、桃香はすばるが芸能人一家の人間だとは聞いていなかったと文句を言う。それに対してすばるは芸能人一家ではないと言う。祖母が女優であるというだけで、両親は普通の仕事をしているのだという。それに自分は役者になる気も無いのだとも説明する。バンドをやるなんて言っても邪魔されるだけだからバンド活動を秘密にしているだけであって、そのまま役者になる気は無く、自分はあくまでバンドをやりたいのだとすばるは仁菜と桃香に強調する。

だが、それならどうして「バンドやめます」なんてメッセージを送ってきたのかと仁菜は問い質す。押しかけてきたのが迷惑みたいな扱いをされてしまっているが、そもそもすばるが変なメッセージを送ってきたからこんなことになっているのだ。そう詰め寄られると、すばるも返答に窮してしまう。確かにバンドを辞める気が無いのならそんなメッセージを送るのは道理に合わない。それについてはすばるも自分の失態を認めざるを得ない。問題はどうしてそんな失態を犯してしまったのかだが、それについてはすばるは何だかよく分からない言い訳に終始する。要するによほど気が動転して自分でも理解出来ないような行動をとってしまったようです。すばるの様子を見ていると、よほど祖母が苦手みたいで、祖母と話をしているうちに「もう役者になるしかない」「バンドはもう続けられなくなる」と絶望的な気持ちになってしまい、その勢いでヤケクソで「バンドやめます」と仁菜にメッセージを送信してしまったっぽい。

すばるの話を聞いていると、まるで祖母とはマトモな会話が成立しないので説得は不可能みたいな印象を受けるが、しかし実際に会ってみた安和天童は確かに芸事には厳しそうな人ではあったが、基本的には優しくて穏やかで物分かりの良さそうな人に見えた。普段は飄々としているすばるがどうしてあの穏やかそうな祖母の前でだけそんなに萎縮してしまうのか、どうも桃香にはよく分からなかった。

そこに祖母が戻ってきて、すばるの役者としての成長を見たいから今からアクターズスクールに戻って即興劇をやるようにと言い、桃香と仁菜に即興劇の相手をするようにと言う。そもそも即興劇を見ただけで役者としての力量が分かるような人が、見るからに役者の基本も身についていない2人組を役者だと見なして即興劇をさせようとしていることが不自然であり、どうも祖母は桃香と仁菜をすばるに絡ませて何か確かめようとしているようにも見える。

そうして3人は祖母の前で即興劇をやらされる羽目になります。即興劇の設定は、仁菜が演じる男性に桃香が演じる女性が愛の告白をしているところにすばるが演じる元恋人の女性がやってきて仁菜演じる男性とヨリを戻そうとするというもの。こういう設定でたどたどしく演じていた仁菜であったが、すばるが「もう自分の心に嘘をつけない」「貴方が好き」とか言ってきたのに対して腹が立ってきて、「どうして簡単に別れるなんて言ったの?」と、バンドをやめるなんて気軽にメッセージを送ってきたことについて本気で詰りだす。意外な展開に返答に窮してしまうすばるに対して、更に仁菜は「あの時、私に本気だって言ったのは嘘だったの?」と更に詰め寄る。仁菜は祖母が怖いぐらいでバンドを辞めるなんてヤケクソで言ってしまうようなすばるが本気でバンドをやりたいと思っていないのではないかと思ってしまい、初ライブで本気で楽しかったのは自分だけだったのかと思うと悲しくなってきてしまったのでした。

この仁菜の剣幕に対して言葉を返すことが出来なかったすばるであったが、帰りの電車の中で改めて仁菜に「バンドを辞める気は無い」と伝える。それに自分はアクターズスクールでは「安和天童の孫」としか思われていなくて、別に実力は認められていないので役者としてやっていけないはずであり、いずれ祖母も諦めるはずだと言って仁菜を安心させようとします。ところがすばるのスマホに所属事務所からメッセージが入って、祖母の主演ドラマに端役で出演が決まったということを告げられてしまう。完全に祖母のコネを使ってのゴリ押しの出演だが、どうやら祖母が急に上京してきた理由は、そうしてセッティングしたすばるとの共演の場面の撮影のためだったようです。

すばるには全く寝耳に水の話であったが、祖母が決めたことに逆らうことは出来ず撮影に行くことを決める。そのために1週間ほどバンドの練習には参加できないと言う。しかし仁菜は納得できない。役者になる気が無くてバンドを続けるのが本気だと言うのなら、どうしてすばるがちゃんと祖母に断らないのか納得できない。本当はすばるはバンドを辞めてもいいと思っているのか、それとも結局は祖母に逆らうことは出来ずにズルズルと役者にされてしまってもいいと思っているのではないかと仁菜は疑い、撮影に行くことは絶対に反対だと言い張る。

しかし桃香はすばるが撮影に行くことを許可する。別にスケジュール的に問題があるわけではないし、自分にはすばるを無理に引き留める権限も資格も無いと思えた。すばるがバンドをやることで高校時代の自分のように笑顔になれるというのならバンドを辞めることはないであろうし、役者をやることで笑顔になれるのならば、それを邪魔することも出来ない。全てすばるが自分で決めればいいのだと思えた。それで、「すばるちゃんがいなくなるかもしれない」と抗議する仁菜にも桃香は「バンドじゃよくあることだ」と諭す。それを聞いて仁菜は桃香のことを「思いやりが無い」と非難し、すばるは「バンドを辞めない」という自分の言葉を信じてくれない仁菜の方が思いやりが無いと非難する。

更に桃香も仁菜に対して「人には触れられたくない部分があるんだ」と説教する。桃香にとって触れられたくない部分であるダイヤモンドダストの過去にズカズカ踏み込んできた仁菜が、また今度はすばるの触れられたく部分に踏み込もうとしているように思えて桃香は心配したのですが、それは言い換えれば桃香もすばるにとって祖母との関係が何か他人には言いにくいものなのだろうということが何となく察しがついているということであった。だから桃香はもしかしたらこのまますばるが祖母との関係に絡めとられて戻ってこられなくなるかもしれないと危惧もしていた。ただ、それが自分にとってのダイヤモンドダストと同じようにすばるにとって他人に触れてほしくない部分なのであれば、それは自分にはどうすることも出来ないと桃香は思っていた。

しかし、そうした桃香の言葉を聞いて、すばるは自分が触れられたくないと思って隠している想いのために仁菜や桃香を心配させてしまっていることに気付き、やはり特に心配している仁菜には自分の本当の気持ちを理解しておいてもらおうと思い直し、翌日1人暮らしの自宅に仁菜を招いて、ある古い映画を見せる。その映画はすばるの祖母の安和天童の若い頃の出世作で「すばる」というタイトルの映画でした。天童さんの若い頃の映画ですから、すばるはおろかすばるの両親も知らない映画ですが、孫娘のすばるが産まれた時に天童さんがこの名前が良いと言って名付けたのだそうです。「役者になるには縁起の良い名前だから」というのがその理由で、つまりすばるは祖母から産まれた時から役者になることを強く期待されていたことになる。その想いそのものが名前の由来になっているわけですから、「すばる」という名前で呼ばれるたびにその想いはまるで呪いのようにすばるに圧し掛かってくるわけです。

それでも、すばるは役者になりたくないのだと言う。いや、そもそもそんな重圧を産まれた時からかけ続けられてきたら、好きなものでも嫌いになるでしょう。それに祖母の七光りで実力に見合わない特別扱いをされたり、そもそも芝居があまり好きでもないというのもあって、すばるは役者になる気は全く無い。ただ、それでもすばるは決して自分の口から「役者になりたくない」と祖母に伝えようとはしない。そういう自分の気持ちを祖母に知られないように、今回みたいな露骨なゴリ押し出演も文句を言わず引き受ける。ただひたすら祖母が諦めてくれるのを待っている。それは仁菜から見れば焦れったいであろうけど、すばるはそういうスタンスを変える気は無い。

それはどうしてなのかというと、すばるは「私が役者を目指してるって言うと笑うんだよね」と言う。そして「その時だけ、作った笑顔じゃなくて本当に笑うんだよね」とも言う。つまり、祖母はすばるが「役者を目指してる」と嘘を言えば笑ってくれる。それは「本当の笑顔」なのであり、すばるは祖母のその「本当の笑顔」をどうしても守りたいので、「役者になりたいくない」と伝えて祖母の「本当の笑顔」を消すようなことは出来ないのです。

しかし、もともとはそうした祖母のあまりに強い想いがすばるを苦しめているのであり、すばるがそうした迷惑な祖母の願いを自分を苦しめ続けてまで守ってあげる義理は無いはずです。それでもすばるがあくまで祖母の笑顔を守りたいというのは、すばるがよほど優しいからなのか、それともそこに更に何か事情があるからなのか、それはここでのすばるの話だけでは分からない。それはおそらく桃香が「触れられたくない」と言った部分なのでしょう。それについてすばるもここでは全部を仁菜に言ったわけではない。ただすばるは自分はとにかく祖母の「本当の笑顔」を守るために自分の気持ちを偽っているだけであり、バンドを続けたいという想いが揺らいでいるわけではないということを伝えたのです。

そして、その上ですばるは仁菜に「どう思う?仁菜ならどうする?」と問いかける。すばるも迷ってはいるのです。単に「役者をやりたくない」と思っているだけの頃は「祖母の本当の笑顔を守るために役者を目指しているフリをすればいい」と簡単に割り切ることは出来た。でもこうしてバンド活動を始めて、初ライブで仁菜が「本当の笑顔」になったのを見てしまったことによって、すばるは祖母の「本当の笑顔」と、仁菜の「本当の笑顔」のどっちを守るべきか葛藤するようになってしまった。だから仁菜にどうしたらいいか判断を委ねようと思ったのです。

一方で仁菜の方はすばるから祖母の天童さんの「本当の笑顔」の話を聞いて、それが初ライブの時に感じた自分の気持ちや、額縁の写真で見た高校時代の桃香の笑顔と同じような「人生で初めて知ったかけがえのない喜び」なのであろうと理解した。それはとても大事なものであり、傷つけてはいけないものだと思った。でも、そのために自分の「本当の笑顔」の源であるバンド活動が邪魔されるのは嫌だと思った。そんなのはワガママだとは仁菜も自分で分かっている。でも天童さんの想いだってワガママではないかとも思えた。だから別に自分のワガママを通してもいいのだと思い、仁菜は「今のままは良くない」「女優になる気が無いなら早く言った方がいい」と答える。それを聞いてすばるは同意して、撮影の時に祖母に自分の気持ちを伝えると約束してくれた。そして別れ際にはすばるは「自分もライブの時にドラムが楽しいと思った」「だからバンドは辞めない」とも伝えてくれたが、仁菜はその後もどうもモヤモヤしてしまう。

そしてそのドラマ撮影の当日となり、仁菜と桃香も「すばるの役者友達」という名目で撮影の見学に行きます。すばると主役を演じる祖母との共演シーンは、すばるが端役なので順調に撮り終わり、その後すぐ新幹線に乗って祖母は東京を発つという。そうして撮影後に休憩している祖母は仁菜と桃香に「すばると同じ作品に出るのがずっと夢だった」と言う。更にすばるの名前の由来が自分の出世作のタイトルだとかいう話も聞いて、仁菜は胸がチクリと痛みます。

そして、更に仁菜と桃香は祖母の口から意外な事実を知らされる。祖母はすばるの母親である自分の娘には嫌われているのだと告白したのです。女優をやっているために家に全然おらず、家事も何も出来ないので、娘にはダメな母親として軽蔑されて嫌われていたようで、女優であることもずっと否定されてきたようで、当然娘は女優になろうとはせず普通の人生を歩み、母親である自分のことを褒めてくれるようなことはなかったという。実の娘にそんなふうに思われ続けた人生はさぞ辛かったことでしょう。これがつまり桃香が言っていた「触れられたくない部分」であり、すばるが全部は言わなかった安和家の暗部だったのでしょう。

しかし、孫娘のすばるだけは女優という仕事をしている自分を好きだと認めてくれて自分も女優になりたいと言ってくれた。それが心の底から嬉しかったのだと祖母は言う。そうした話を聞いて、仁菜は子供の頃のすばるが自分の母親に憎まれている祖母のことを可哀想に思ってそういうことを言ったのだろうと思った。そして、そのすばるの言葉が祖母にとって人生で最高の幸せとなり「本当の笑顔」をもたらしたのだ。おそらく祖母にとって、そのことが女優として生きていくモチベーションになったのでしょう。いつか女優になったすばると共演することだけを心の支えに女優業を続けて娘に軽蔑され続けることにも耐えることが出来たのでしょう。すばるは女優になる気は無かったが、そうした祖母の心の支えを折るようなことはしてはいけないと思い、祖母の前ではずっと「女優になりたい」と言い続けるしかなく、そうした呪縛のせいで祖母のことを鬱陶しく思ったりもしたが、それでもやっぱり祖母の「本当の笑顔」を消すことは出来ないと思い続けた。その結果こうしてアクターズスクールに入れられてバンド活動との板挟みで進退窮まってしまったのだ。

だが、仁菜は祖母の話を聞いて、そうしたすばるの気持ちが理解出来たような気がした。何故なら、仁菜もこの祖母の「本当の笑顔」は守らないといけないと思えたからです。それは言い換えれば、仁菜自身の「本当の笑顔」は祖母の「本当の笑顔」に比べれば重要ではないと思えたということになる。仁菜は初ライブで感じた喜びで有頂天になっていたが、そんなものはこの祖父の話に比べればまだまだ全然大したものではないと気付いたのです。それはおそらく「ライブでドラムが楽しかった」と言っているすばるも同様であり、そんな自分やすばる程度の人間が自分のワガママのためにこの祖母の「本当の笑顔」を損なって良いはずがないと仁菜は思った。

それで仁菜は撮影後に自分の気持ちを祖母に打ち明けようとしているすばるを邪魔して強引に連れ帰ってしまい、結局すばるが自分の気持ちを祖母に伝えるのを阻止してしまった。すばるは言動不一致だと仁菜を非難しますが、仁菜は「いつかは言わなくちゃいけないけど、それはやりたいことがちゃんと見つかったら」と言う。確かに祖母の「本当の笑顔」を守るためにすばるが嘘をつき続けるのは間違っており、いつかは本当の気持ちは伝えなければいけない。でも、今の段階で祖母の「本当の笑顔」を損なってまでして実現する自分たちの「本当の笑顔」があの初ライブの後の満足感程度では釣り合いが取れない。祖母の「本当の笑顔」を代償にして実現する価値のある、もっと凄い「本当の笑顔」を自分達が手にしてから初めて祖母に本当の気持ちを打ち明けて、自分達が祖母以上に幸せになったことを見せてあげて安心させてあげるのが正しい道だと仁菜は考えたのでした。

また桃香も、すばるの祖母の話を聞いて、すばるが祖母の抱く夢を否定することが出来ずに自分を追い詰めて苦しんでいたのだということに気付き、すばるが自分たちのバンド以外に夢を見つけられたらそれでいいと考えていた自分が間違っていたと悟った。すばるに必要だったのは外の世界での夢ではなく、このバンドで祖母の夢を超えるだけの夢を見つけることだったのだ。それなのに自分はすばる同様に過去の夢に囚われ、自分はもう夢を見る資格が無いなどと決めつけてしまい、すばるに夢を見させてやることを怠っていた。それは間違っていたのだと思った桃香は仁菜の言うようにこのバンドで「やりたいこと」をちゃんと見つけて、自分もダイヤモンドダストの頃を超えた「本当の笑顔」を見つけようと心に誓った。

そして、すばるも仁菜の言うように「やりたいことをちゃんと見つけること」から自分がずっと逃げ続けてきたことに気付いた。それが最終的に祖母を悲しませてしまうことが分かっていて、それが怖くて逃げていたのです。だからずっと自分に嘘をついてアクターズスクールに通ったりバンドのことを隠したりしているだけで、そこから一歩も前に進もうとしていなかったのだ。そうしていよいよ追い詰められても判断を仁菜や桃香に委ねたりして自分が責任を負うことから逃げようとした。その結果がこうしたグダグダであるのは当然だった。自分のことは自分で決めなければいけないのだ。そう決意したすばるは、これから当面は自分のっ気持ちは祖母には告げないままバンドを本気で頑張って、自分が「本当の笑顔」になれるような「ちゃんとやりたいこと」を見つけることが出来たら堂々と祖母に自分の本当の気持ちを打ち明けて安心させてあげようと思った。その日までは心にモヤモヤを抱えながらそれをドラムに叩きつけてやればいいのです。

ただ、すばるの祖母は案外とすばるの本当の気持ちは既に分かっているのではないかとも思える。すばるが撮影場所で自分の気持ちを打ち明けようとしていた時も、何度も躊躇するすばるをじっと見守って話を聞いてくれようとしていたり、仁菜に連れられてすばるが去っていった後も何かを察しているような表情で微笑んでいたし、もともとすばるが本心では役者をやりたがっていないことはとっくに気付いていたのではないかとは思える。だから最後に自分の昔からの夢であるすばるとの共演だけは実現させてからすばるを解放してやろうと考えていたのではないかと思える。それでもすばるの将来を心配する気持ちもあったであろうし、自分の夢を押し付けたせいですばるの人生がおかしくなってしまったのではないかという心配はあったでしょうけど、そこで仁菜や桃香と出会い、彼女らと関わったことですばるがどうやら何か自分の道をちゃんと歩みだそうとしているようだと思って安心したのではないでしょうか。

 

 

HIGHSPEED Etoile

第4話を観ました。

今回はレセプションパーティーみたいなのに招待券を無くして入れなかった凛が、怪獣のソフビを探して道に迷っていたキングと遭遇して、相手がキングだとは気付かず共に行動することになるという話。なんかクイーンでも似たような話をやっていたような気がするんだが、今回はキングと一緒に玩具屋に行ったり、また凛の実家でもんじゃを食べたりぜんざいを食べたりします。まぁ全く面白くないということもないんですが、こんな調子で最終話まで見る気も起きず、基本的にレースシーンもつまらないし、今回で視聴は切らせていただきます。

2024年春アニメのうち、4月25日深夜に録画して4月26日に視聴した作品は以下の6タイトルでした。

 

 

ダンジョン飯

第17話を観ました。

今回はライオスがこれまでの経緯を全部シュローに話してしまった結果、シュローが激怒して険悪な状況となったところにハーピーの群れが襲ってきて戦っていると、キメラ化したファリンが襲ってきてシュローやカブルーのパーティーのメンバーがどんどん殺されていってしまう。それでもライオス達はファリンと戦うことを躊躇したりするが、結局は戦って撃退します。そうしてファリンが去った後、殺されたメンバーを蘇生させていきますが、マルシルは黒魔術を使ったことがバレているので蘇生に参加することをシュローに止められる。

シュローは黒魔術の件をエルフに報告してマルシルを引き渡して、エルフの術でファリンの魂だけでも救うと言い出すが、ライオスは狂乱の魔術師を倒してファリンをその支配から解放すればマルシルの黒魔術でファリンを救うことは出来ると言い意見が対立し、ライオスとシュローは殴り合いの喧嘩を始めるが、ちゃんと食事を摂っていなかったシュローは負けてしまい、ファリンを救うために魔物を食べてでも進んできたライオス達の方が真剣だったことを認めファリンを諦め、シュロー達は地上に戻りもう二度とダンジョンに来ないと言う。

一方カブルーはライオスに魔物食を喰わされたりして散々な目に遭うが、ライオスならば狂乱の魔術師を倒せるかもしれないとか思いながらも、その後ライオスがダンジョンを封印しないのではないかと危惧したりします。結局シュロー達もカブルー達も地上に帰還して、再びライオス一行だけがダンジョンを進み始めるというところで今回は終わり次回に続きます。今回は黒魔術の禁忌を巡って揉める話であったのですが、どうしてそこまで黒魔術が禁忌扱いされてるのかという物語の基本設定がどうも呑み込めていないので、イマイチ切迫感が伝わらなかった。でもアクションは凄かったと思います。

 

 

花野井くんと恋の病

第4話を観ました。

今回から新展開みたいですが前回クリスマスイブのデートでお試し交際を無期限継続することを決めた後、新たな気持ちでお試し交際をスタートさせたほたると花野井くんの気持ちが描かれたエピソードでした。ただ前回までの流れがかなり盛り上がったものであったので、そこから仕切り直しての展開の1話目ということで、今回はそんな決定的な内容ではなく、割と地味であったとは思います。

まず最初は初詣の場面から始まります。前回のクリスマスイブ以降、ほたると花野井くんは会っていなかったようで、クリスマスイブ以来の7日ぶりの再会のようです。ちなみに2人で一緒に年越しデートを出来なかったのは、ほたるの妹がヘソを曲げたかららしい。妹は妹なりに姉であるほたるのことが好きで、クリスマスイブに一緒に過ごせると思って楽しみにしていたみたいで、それが花野井くんが急にやって来て姉を奪っていったように思えたようでちょっと怒っていたようです。だから年越しはほたると一緒がいいと駄々をこねたようで、それでほたるは年越しは花野井くんと過ごすことが出来なかった。

そういうわけで初詣での再会となったわけですが、クリスマスイブ以降もほたると花野井くんが付き合うと聞いて2人が正式にカップルになったと勘違いした響が皆で一緒に初詣に行こうと誘ったのに対して、ほたるは深く考えずに乗ってしまい花野井くんも誘いました。そういうわけでほたると花野井くんの2人きりではなく、響や月葉や、響の彼氏の圭悟も一緒でした。ほたるとしては単純に花野井くんに響たちとも仲良くなってもらいたくて誘ったのだが、響は2人がまだお試し交際継続中だと知ると、花野井くんに悪いことをしたと反省し、花野井くんは当然ほたると2人きりが良かったはずだと言います。実際、花野井くんは楽しくなさそうにしていて、ほたるとしか会話をしていない有様だった。

それでほたるは花野井くんの気持ちを理解してあげられていなかったと反省しますが、花野井くんも久しぶりに会ったのだから会えて嬉しいはずだという響たちの指摘を聞き、ほたるは自分もそうなのではないかと気付く。クリスマスイブ以前とは違って花野井くんと会った時キラキラして見えて、それで妙に花野井くんのことを意識して照れてしまい、それでかえって花野井くんに距離を置いた態度をとってしまっていた。

2人きりになった時、そういう「照れてしまった」という自分の気持ちをほたるは花野井くんに伝え、ほたるに避けられているのではないかと思っていた花野井くんはそれを聞いて安堵して、ほたるに触れないように身体を近づけて「ほたるちゃん成分の充電」をさせてもらう。すると、ほたるも何だか足りなかったものが満たされるような気持ちになり、やはり自分も花野井くんに会いたかったのではないかと気付きます。そうして充電を終えた花野井くんは機嫌も良くなり響たちとも少し打ち解けてくれました。ほたるはもっと花野井くんのことをよく知って、花野井くんも笑顔になってもらいたいと決意します。

そういうわけで正月が終わって3学期が始まると、ほたるは初めてアルバイトを始めますが、花野井くんが本を読むのが好きなので、少しでも花野井くんの好きなもののことを知ろうと考えて近所の本屋でアルバイトをします。しかし花野井くんはほたるがバイトを始めたので会う時間が減ってしまうので残念に思っていて、ほたるがバイトを終える時間に待ち伏せしていつもほたるを家に送ることでほたると一緒に居る時間を作る。ほたるの方は本屋でバイトを始めた理由を聞かれても花野井くんを妙に意識してしまって「花野井くんのことをもっと知りたかったから」と素直に言えず、変に突き放した対応をしてしまい反省します。それで、ほたるは毎日送ってもらうのを遠慮しようとして、花野井くんが自分と会いたがっている気持ちを無視するような態度をとるのはやめようと思い直し、家に送ってもらいます。

そうして家に着くと母親と鉢合わせしたので花野井くんは夕食を食べるよう誘われ、ほたるの家にお邪魔することになる。そうしてほたるの部屋に通された花野井くんは、ほたるのアルバムが置いてあるのを見つけて、アルバムを見たいと言う。それでアルバムを見せると、花野井くんは小学生の時に髪を伸ばした姿のほたるの写真を見つけて、そのことを話題にします。しかしほたるは微妙な態度をとってしまい、また自分は素直に気持ちが言えずに花野井くんに寂しい想いをさせてしまったと反省する。

それでほたるは意を決して、まず本屋でバイトを始めた理由は花野井くんのことを知りたいと思ったからだと打ち明け、更に続いて小学校の時のトラウマの話をする。それは仲の良かった友達に髪を切られてしまったという話で、それによってほたるは髪を伸ばすのを避けるようになってしまったのだという。その相手というのは前回のクリスマスイブの時に花野井くんに少し話した「相手を傷つけたことにも気付かないまま嫌われて離れ離れになってしまった子」のことでした。

初めてその話を他人に打ち明けたほたるは花野井くんがどう受け止めたかと心配して緊張します。そして自分は昔から他人の気持ちが分からないダメな人間なのだと自嘲しますが、花野井くんは他人の気持ちなんか分からなくて当然だと言い、ほたるのことをちゃんと自分の気持ちを理解しようとしてくれる素敵な人だと言ってくれて、こんなふうに自分の気持ちを理解してもらえるのは初めてのことだと言う。それを聞いてほたるは花野井くんも自分と同じように初めてのことになかなか踏み出せず不器用に戸惑っていたのだと気付き、花野井くんが愛おしく思えてきて、無意識に花野井くんの頭に手を置いてしまう。それで花野井くんがビックリして一瞬変なムードになるが、夕食が出来たと母親が呼ぶのでその場はお開きとなる。そうして夕食後、花野井くんは帰っていくが、ほたるは自分が花野井くんに以前よりも触りたくなっていることに気付き、そうした自分の変化に戸惑ったというところで今回は終わり次回に続きます。

 

 

ゆるキャン△SEASON3

第4話を観ました。

今回はなでしことリンと綾乃の3人の大井川キャンプ編の2話目であり、二手に分かれて着々とキャンプ場に近づいていく3人の様子が描かれました。楽しいことやキツいことなど、旅の様々な側面を3人と一緒に追体験できる非常に面白いエピソードでありました。それぞれ別々の場所で旅をして別々のことをやってからキャンプ場に集合して、旅の想い出の話の花を咲かせながらキャンプ飯を食うというのもなかなか楽しそうですね。

まずは鉄道一人旅のなでしこの場面から始まりますが、太平洋岸の東海道線から金谷駅で大井川鉄道に乗り換えてきたなでしこが千頭駅で更に別の列車に乗り換えたところまでが前回では描かれていて、この乗り換えた列車が大井川鉄道の有名なアプト式鉄道なのだと思っていたのですが、どうやら厳密には違っていたようですね。千頭を出発して更に奥地を目指した列車内で乗り合わせた三重県からの観光客の年上女子2人組と一緒にお菓子を食べたりしたなでしこは、途中の駅で降ります。

このなでしこの乗っている路線は正式名称は「大井川鉄道井川線」といいまして、金谷から千頭までの「大井川鉄道本線」とは別の路線です。千頭駅で本線から乗り換えるわけですが、線路も本線とは規格が違い車両も井川線は普通の列車に比べてだいぶ小さいようですね。もともとはダム建設の資材運搬用の路線として設置されていたので小型車両の路線だったみたいで、それをベースにして今は観光用の旅客路線を運行しているみたいです。

千頭駅から終点の井川駅までは13駅あり、今回なでしこが途中下車した駅は千頭から6つ目の駅でアプトいちしろ駅といいます。もともと信越本線の碓氷峠越えなどで使われていたアプト式鉄道というのは急勾配を登るために機関車の底に歯車が付いていて、線路側にも歯車を受ける溝が真ん中にあって、そこでガッチリ歯車を喰い込ませて歯車の推進力で登っていく。

千頭から6つ目の駅であるアプトいちしろ駅と7つ目の駅である長嶋ダム駅の間に急勾配があるため、そこを迂回せず新たな旅客用の線路を引く際にアプト式を採用したみたいであり、だから現在アプト式なのはアプトいちしろ駅と長嶋ダム駅の間だけなのです。そういうわけで、アプトいちしろ駅で停車した際にアプト式の機関車との連結をするのですが、なでしこはアプトいちしろ駅で下車した後でこの連結の様子もバッチリ見ることが出来ました。現在日本でこの光景を見ることが出来るのはこの場所だけだそうですから、これは良い旅の土産話が出来ました。

なでしこがアプトいちしろ駅で下車した理由は、ここがキャンプ場の最寄駅だからです。ただ、リンと綾乃がキャンプ場に到着するまでまだだいぶ時間に余裕があるので、なでしこは一旦キャンプ場で荷物を預けて場所取りも済ませた後、そこから歩いて移動できる長嶋ダム駅から再び井川線に乗って、そこから2駅先にある奥大井湖上駅に行こうと考えています。奥大井湖上駅はダム湖に突き出た半島状の山の突端に位置しており、もともとダム湖が出来た際に水没した村のあった場所なので現在は民家なども全く無くて「秘境駅」として有名な観光スポットなのです。

そういうわけでまずはキャンプ場に行こうと思ってなでしこはアプトいちしろ駅を出て吊り橋を渡ってキャンプ場方面に歩いていきますが、トンネルを通らねばキャンプ場に辿り着けない。このトンネルというのはもともと資材運搬用に使われていた井川線の旧線の廃トンネルであり、中は照明も無く真っ暗です。もともと資材運搬用の古い路線のトンネルだったので綺麗なトンネルではなく、まるで洞窟みたいでなかなか怖い雰囲気です。このトンネルを怖がりのなでしこがビビりながら進む様子が可愛い。更にこのトンネルは現在は「お化けトンネル」と愛称がつけられていて、地元の人達の作った手作りお化けが中に飾られていて観光客をビビらせているのだそうで、そうとは知らないなでしこはこのお化けを見て思いっきり怖がって泣いてました。

そうして何とかトンネルを抜けてキャンプ場に着き、そこで荷物を預けて場所取りもして、なでしこは長嶋ダムに走っていきます。そこで長嶋ダムの壮大な景観を一回りして見て、さっき千頭駅の食堂で食べたダムカレーに想いを馳せる。ダムの下に架かる橋がエビフライだとか、ダム本体が大盛ライス、ダムの貯まった水がカレールーだと妄想し、そうなるとこれから自分が目指す奥大井湖上駅はさっきのダムカレーでカレールーの中に浮いていたゆで卵だと妄想したなでしこは、そうこうしている間に長嶋ダム駅にやって来た次の列車に乗ってゆで卵もとい奥大井湖上駅を目指す。

一方、朝から千頭で集合してからバイクでツーリングしていたリンと綾乃は吊り橋巡りをしながらそれよりも更に奥地である井川湖に既に到達していた。途中で道路に落石が転がっていたりして、さすがに「険道」というだけのことはある難所であったが、なんとか井川湖まで来て給油して、なでしこからキャンプ場の場所取りが出来たとのメッセージが入る。そして2人は目的地である畑薙湖を目指して出発するが、バイクで渡れる井川大橋で写真を撮って休憩する。

ここで綾乃が疲れたので昼食を食べたいと言い出す。朝に千頭を出発する時は夕食のキャンプ飯を美味しく食べるために昼食は食べないと宣言していたはずだが、予想以上に道が険しくてバイクの旅がキツくて空腹に耐えられなくなったようです。そこで2人は近くに唯一あった食堂でおでんを食べることになった。そうして体力が回復した2人は畑薙湖に向けて再出発するが、畑薙湖まで行くには7つの田代トンネルを越えていくのだという。そうして2人は延々と進んでいくのだが、これがかなり長いバイク旅となり、畑薙湖に着いた頃には2人はクタクタになっていた。千頭から45㎞も走ったことになり、しかもずっと険道であり、原付バイクの旅としてはかなり無茶といえます。

2人は畑薙湖を見下ろしてヘタリ込みますが、まだこの先2.5㎞ほど上流に吊り橋があるらしい。しかしバイクで行けるのはこの畑薙湖までであり、この先は徒歩だけとなる。これだけ疲れ果てていて更にこの先往復5㎞も歩くのはしんどすぎるが、しかし、こんなに大変なバイク旅でやっと辿り着けたこの場所からでなければその吊り橋には行けないのだ。ここで吊り橋に行っておかないと、後で後悔して吊り橋に行こうとすれば再び今来たルートを45㎞バイクで辿ってこなければならない。リンにはむしろそっちの方が大変な気がしたので、ここまで来た以上はあと往復5㎞を歩いて吊り橋に行っておいた方がいいと主張する。それで綾乃も悩んだ挙句に賛同して、2人で此処にバイクを預けて吊り橋までの道を歩くことになった。

しかし、その道は他に誰も歩いておらず、これまでの険道よりも更に荒れた道であり、慎重にゆっくり歩いていくことになった。そうして道すがら2人はじっくりとお喋りする。バイクに乗ってる時は会話は出来ませんから、2人でこんなゆっくりした時間を過ごすのは意外と今日の旅では初めてだったかもしれません。会話の話題はやはり2人の共通に好きなものであるバイクの話で、綾乃もリンと同じように祖父がバイク乗りで、祖父の影響でバイクに乗るようになったのだそうです。そして綾乃は今まで周囲にバイクに乗る友達がいなかったので、こうしてリンと友達になって一緒にツーリングに行ける友達が出来たことが嬉しくて、それでこんな無謀ともいえるバイク旅を企画したようです。それに「バイクが好きだから色んな道を走ってみたいんだ」と言う綾乃の言葉にリンも共感した。

そうこうして歩いていると、目的地の畑薙大吊り橋に到着したが、「橋の定員は15人です」とか看板に書いてあり、しかも橋の骨組みや手すりなどは細くて脆弱そうで、足場は真ん中に鉄板が細く通してあるだけで左右はスカスカで、足場を踏み外したら即落下というやたらデンジャラスな吊り橋だった。しかも下の川まで高さ30mぐらいあって、落ちたらタダでは済まない。リンは怖気づいて渡らずに帰ろうかと言い出すが、吊り橋を渡るためにわざわざここまで歩いて来ようと言ったのはリンであるので、綾乃はこうなったら渡ろうと言い、結局2人で吊り橋を渡り始める。

しかし渡り始めるとやたら不安定な足場に恐怖が増してきて、やっぱり1人ずつ渡ろうとか、ここまできたら2人で渡った方が早いよか揉めてるうちに強い風が吹いてきて吊り橋が大きく揺れて、2人は必死に手すりの紐にしがみついて風が止むまで悲鳴を上げて耐える羽目となる。マジの絶叫マシーンのような恐ろしさであったが、ようやく何とか渡り切った。そこでさすがに小休止したかったところであるが、渡った先には「クマ出没注意」という看板があり、2人は大急ぎで恐怖の吊り橋を戻る羽目となったのでした。

その頃、なでしこは奥大井湖上駅に到着して観光を楽しみ、その後はキャンプ場に戻ることになっている。一方でリンと綾乃も吊り橋を後にして畑薙湖まで歩いて戻り、そこで温泉に浸かって疲れを癒す。そうして2人は露天風呂に浸かりながら吊り橋でのお互いの醜態を笑い合い、2人の仲もだいぶ深まったようで、疲れたし大変だったけど吊り橋まで行って良かったと言い合う。そしてここからキャンプ場まで34㎞のバイク旅がこれから始まるかと思うと大変だと思うのであった。そういうわけで今回はここまでであり、次回はいよいよ3人がキャンプ場で集合して旅の土産話をしながらのキャンプ飯ということになりそうです。

 

 

WIND BREAKER

第4話を観ました。

今回は桜たちが梅宮と初めて対面する場面から始まります。前回、獅子頭連に追われていた中学生は佐々木という名で、万引き犯人を追っていたら獅子頭連のシマに入ってしまったのが今回の騒動の元らしい。それを聞いて梅宮は町と人を守ろうとした佐々木を褒めて獅子頭連とのトラブルは自分達に任せろと言う。獅子頭連をダサいと言って喧嘩を決定的にしてしまった桜のことも梅宮は自分も最近の獅子頭連はダサいと思うと言って褒めてくれた。それで桜は梅宮に惹かれます。

そうしていると獅子頭連の頭取の兎耳山が1人で風鈴に乗り込んできて梅宮に勝負を申し込む。兎耳山は獅子頭連のトップになってからつまらないのだそうで、同じようにトップを張っているのに楽しそうにしている梅宮が羨ましくて、梅宮ごと風鈴を手に入れたら楽しくなるかと思って梅宮とタイマンしたいのだと言い、梅宮はその勝負を受けます。

しかし、そこに獅子頭連の連中が来て、翌日にチームを組んで団体戦みたいなタイマン勝負することになる。梅宮と兎耳山がタイマンして、十亀と桜がタイマンして、柊と佐狐という奴がタイマンして、杉下も蘇芳もそれぞれ獅子頭連の奴に勝負を申し込まれ、5対5の団体戦でチームの命運を賭けて決着をつけることになる。その後、風鈴の皆でポトフに集まることになるが、そこでことはが梅宮と同じ施設で育った妹分で、実は桜と同い年だったと分かる。また梅宮がことはを妹と呼んで溺愛していることも分かります。そして獅子頭連の話になり、昔はマトモなチームだったらしいが兎耳山が頭取になってから悪い噂が立つようになったのだそうだ。

とにかく兎耳山と喧嘩で対話すれば分かるだろうと言う梅宮の言葉を聞いて、桜は喧嘩が対話の手段だという考え方を始めて知る。そして桜は恐縮する佐々木に対して、梅宮みたいに「任せておけ」と初めて言えた。そうして翌日、桜たちは獅子頭連のシマに行きタイマン5番勝負に挑む。桜にとって「自分のため以外の喧嘩」は初めてのことだったが、今までになく桜は負ける気がしないのであった。そういうところで今回は終わり次回に続きます。まぁ本筋の話は現状ありきたりなヤンキー漫画風になってはいますが悪くはないです。ただ男キャラの可愛い描写が多くて、やっぱり女性向けコンテンツだなぁという印象。あと梅宮の五条悟感が強すぎるけど、五条悟よりはマシなキャラだとは思う。こういう作品はキャラの強者感を出し過ぎると人間味が無くなって安っぽくなるんだが、この作品はギリギリのところで持ちこたえてる印象。次回はアクションで楽しめそうです。

 

 

Re:Monster

第4話を観ました。

今回もなんか色々と短い話が描かれましたが細かすぎて全部コメントする気も起きない。ほとんど敵を喰って能力を得る話だし、それぞれ話が短くて特に味わいも無いし、要するに主人公が最強って話だし、もう飽きました。そういうわけで今回で視聴は切らせていただきます。

 

 

喧嘩独学

第3話を観ました。

今回はまず光太がスマホをカツアゲした犯人と喧嘩してライブ配信し、額で相手のパンチを受け続けて相手の拳を痛めつけて勝利。配信の収益も増えて光太は高い服を買う。それで夏帆にデートに誘われて行ったら夏帆も同じ服を着ていた。でも光太は自分では夏帆に釣り合わないと思って暗い態度で、それで夏帆はガッカリして帰ろうとするが、光太が自分の情なさを告白して夏帆は自分に勿体ないぐらい可愛いとか言ったら夏帆は嬉しく思って機嫌が直る。だが夏帆が実は光太の級友の格闘家の扇と友人だと判明し、扇も合流することになり、光太は見栄を張って扇とは仲良しだとか言っていたので緊張する。今回はそういう感じでした。

2024年春アニメのうち、4月24日深夜に録画して4月25日に視聴した作品は以下の2タイトルでした。

 

 

怪異と乙女と神隠し

第3話を観ました。

今回はよだれかけ事件の解決編でした。かなり謎めいたお話であり、謎として残った部分は多く、なかなか後味の悪い話ではありましたが、よだれかけ事件そのものは綺麗に解決したといえます。事件の犯人はコオネ女学院中等部の女性教諭の畦目真奈美であることは前回のラストで示唆されていましたが、今回は真奈美の子供の頃の過去回想シーンから始まります。

小さい頃に両親を亡くして田舎で1人暮らししていた祖母のタエに引き取られて2人で暮らし始めた真奈美は貧しいながらもタエからの愛情を受けて育ちお祖母ちゃん子だった。だが貧しかったために服や小物はタエの手作りや格安品ばかりで、それらの粗末さゆえに小学校では同級生たちにバカにされてからかわれていたが、内気で大人しい性格だった真奈美は言い返すことも出来ず黙って耐えていました。

そんな中、学校の大掃除のために各自が雑巾を持参してくるようにと担任の先生に言われて、タエは雑巾をたくさん縫って真奈美に持たせてくれて、他の子にも分けてあげるようにと言ってくれました。真奈美はクラスの子達と仲良く出来るチャンスだと思い喜び、大掃除の日に雑巾を忘れてきたという子に自分の雑巾を分けてあげますが、その雑巾の生地が真奈美の着ていたシャツと同じ生地であったために級友たちから「雑巾を着てる」とからかわれ、さらに級友たちは両親がいなくて祖母と貧しい暮らしをしている真奈美をバカにして、その雑巾を「年寄り臭い」と言い、汚いものを扱うように投げ捨てたりして遊び始めた。

それで真奈美は自分だけでなく優しい祖母までバカにされているのが悲しくて必死に雑巾を取り返そうとして、つい級友に暴力を振ってしまい、級友の親が抗議してタエが真奈美と共に学校に呼び出され、担任教師は一方的に真奈美を悪者扱いして、真奈美の問題行動は家庭に問題があるせいだとタエを非難した。これによって真奈美は自分がイジメを受けており、大人たちはイジメを止めてくれないばかりか自分の祖母のことをイジメたと感じて、この世界はイジメに満ちた世界だと思うようになったみたいです。それで真奈美は前回の話でも、ちょっとふざけてじゃれ合っている生徒を見ただけでイジメだと決めつけて非難してイジメを止めさせようと必死になっていたのであり、イジメの無い学校を実現しようとして、自分が勝手な思い込みでイジメをしていると認定した生徒を「よだれかけ」にして不登校に追い込んでいたのであろうと推測できます。

その後、話は現在に戻り、場面は変わってきさらぎ駅の構内で菫子や乙から彼女らがコオネ女学院で遭遇した「よだれかけ」事件について蓮が報告を聞く場面となります。菫子の目の前で大量の涎を垂れ流して発熱して昏倒した女生徒は3人、乙の級友の麻里とエリカと珠緒だった。同じ場所に居た乙とのどかの2人は何故か無事で、菫子も無事だった。そして麻里とエリカと珠緒の3人も先生が校舎の外に運び出した途端に回復した。つまり、これは典型的な「よだれかけ」事件であった。そして、この事件が起きた時に、その場に「標識」が立ったのを乙が見たという。ならば「よだれかけ」時間は「怪異」であることはほぼ確定したと見ていいだろうと蓮は結論づけた。

菫子には伝えていないが、もともと蓮と乙はきさらぎ駅で異界行きの切符を手に入れるために「怪異」を集めなければならないという事情があり、コオネ女学院で起きている奇妙な事件が「怪異」によるものかもしれないという疑惑をもって菫子に頼んで潜入調査をしてもらっていたのだが、こうしてその「よだれかけ」事件が「怪異」によるものと確定した以上は、次はその「怪異」を捕えると蓮は言います。それを聞いて菫子は「捕える?」と怪訝そうに問い直す。自分の時のように呪書のような呪具的なものを回収するというのではなく「捕える」というと、まるで妖怪みたいな存在が「怪異」を引き起こしているかのように聞こえるが、果たしてそんなものがこの世に本当に存在するものだろうかと菫子は疑問に思ったのです。

そうした菫子の疑問に答えるように、蓮はここで明治時代の哲学者の井上円了が「妖怪学講義」という著書で示した妖怪の定義についての話をします。円了は妖怪という存在を「批判的」に研究したことでよく知られる人物です。「批判的」というのは悪いものだと決めつけるとか、否定的に扱うという意味ではなく、要するにあくまで実証的に考えるということです。妖怪というものは昔から「とにかく不思議なもの」という扱いであり、その実態の解明など出来ないものと考えられていて、古くからの伝承をそのままただ信じればよいものとされていました。つまり思考停止していたわけで、円了はそれではいけないと考えて、妖怪という存在を理屈で説明のつく存在として再定義しようとしたのです。

そもそも円了の専門分野である「哲学」というものがそういう学問です。例えば「神」という存在について純粋に宗教的な立場に立てば「神は絶対である」「それ以上は何も考える必要は無く、ただ信じるのみ」ということになる。しかし哲学の立場においては「神」というものが存在する意味を考察して結論を出そうとする。もちろん「神」を科学的に実証することは出来ないが、それでも理屈や仮説の上でならば神という存在に何らかの意味を見出すことは出来る。いずれ科学が発達すれば、その仮説が証明される日が来るかもしれない。実際、科学の発展というものは、これまでもそうした未知の存在に関する仮説がまず構築されて、それを証明していこうとする努力の結果推し進められてきたものなのです。だから、そういう意味で「哲学」は「科学」の一分野なのだといえます。

そうした哲学の徒である井上円了が「妖怪」という伝承の上の「不思議なもの」に過ぎなかったものを哲学的に再定義したものが「妖怪学講義」ということになります。その定義によると、妖怪はまず「実怪」と「虚怪」に分かれるという。「虚怪」というのは恐怖心やイタズラなどによって超常現象が起きたと錯覚したものであり、実際は超常現象は起きていない。円了の言うには世の超常現象といわれるものの8割はこの「虚怪」なのだそうです。一方で残り2割の「実怪」というのは実際に超常現象が起きているものを指します。

この「実怪」というのは実際に超常現象が起きていて、しかもそれは人為的なトリックによって起こされたものではない。人為的に起こされたものは「虚怪」に分類されるからです。つまり「実怪」というのは自然が引き起こす超常現象であると円了は定義しているのです。そして更に円了はこの「実怪」を「真怪」と「仮怪」に分類し、このうちの「仮怪」は何らかの証明が可能なものとしました。つまり「自然界が引き起こす超常現象であり、科学的に説明可能なもの」が「仮怪」だといえます。例えばUFOなんかは完全にその謎は解明は出来ていないが「宇宙人の乗り物なのではないか」という理屈で説明は可能です。ネッシーなんかも「恐竜の生き残りなのではないか」という理屈をつけることは出来る。死んだ人の幽霊が現れた場合も「人間には霊体があるから」とかいう理屈で説明することは出来る。こういうものは全て「仮怪」といえます。こういう「仮怪」が世で超常現象といわれる事例のうちのおよそ2割であり、「実怪」の大部分はこの「仮怪」だと円了は定義する。

すると問題はほんの僅かな事例しかない「真怪」です。これは科学では全く説明がつかない真の超常現象なのだという。これは全く意味が分からないものであり、この世の理から外れた現象といえます。ただ円了はこの「真怪」を「自然の法則全て」と定義した。自然の法則から外れた現象を「自然の法則全て」と定義するのは一見奇妙ですが、要するに円了は現在の人間の知性ではまだこの世の法則の全てを把握出来ていないと考えたのです。だから現在の人間の目から見て全く意味の分からない「真怪」もいずれは説明可能になる日が来ると考えた。「仮怪」の中にもかつては「真怪」であったが科学の発達によって説明がつくようになり「仮怪」に移行したものも多い。いずれはそのようにして全ての「真怪」が「仮怪」に再定義される日も来るはず。むしろ、そうした「真怪」の研究を突き詰めることによって自然を究極的に解明することに繋がると考えて、人類の科学の発展のためには「真怪」の研究をすべきだと円了は提唱した。

菫子も円了のそうした思想は知っていたので、結局は捕えるべき妖怪のようなものは存在しないのではないかと疑問を呈するが、蓮はそうした円了の考え方を「哲学者らしいロマンチックな解釈」と断ずる。つまり「全てのものがこの世の理屈で説明可能であるはず」という哲学的思考こそが非現実的で夢想的だというのが蓮の考え方であるようです。蓮の「真怪」の定義は「真の怪異」なのだという。それはつまり円了の定義とは全く違い「真怪とはこの世の法則から完全に外れた超常現象である」という定義であり、言い換えれば「真の怪異とは別の世界由来のものである」ということになる。この世で「妖怪」と言われているものの大部分は「虚怪」であったり「仮怪」であったりするが、中にはごく稀に「真怪」が存在し、それはこの世界とは異なった世界からやって来たものだというのが蓮の考え方です。蓮自身が異界から来た者なので、それは確信出来るのでしょう。

そして蓮は数多くの妖怪伝承や怪異伝承の中でどれが「真怪」であるのかは大体把握しており、その事例が稀であることも分かっている。そしてそうした「真怪」には例の標識が立つみたいです。だから「よだれかけ」が「真怪」であるのは間違いなく、既存の伝承の中の「真怪」の事例と「よだれかけ」事件の特徴とを比較照合した結果、蓮には「よだれかけ」の正体は大体想像はつきました。そうなると、その怪異を捕える作戦も立てられるようです。菫子も詳細はよく分からないながらも蓮がそこまで相手の正体が分かった上で「捕える」と断言している以上はもう安心なのだろうと思い、これで自分の潜入調査も完了したと安堵する。だが蓮は菫子には明日もコオネ女学院に潜入してもらうと言うのでした。

そして翌日の放課後、コオネ女学院の女子トイレで大きな物音がしたので駆けつけた畦目真奈美先生は、トイレの個室に閉じ込められてイジメ被害を訴えて助けを求める女生徒がいることに気付き、助け出すとそれは「高等部の若造さん」こと菫子でした。そうして2人で廊下に出て、真奈美は菫子に事情を聞きます。すると菫子が昨日は「イジメは受けていない」と言ったが本当は自分はイジメを受けていたのだと告白する。それを聞いて真奈美は愕然とした表情となるが、その後で何かを決意したような様子で「やっぱりダメね。加害者を狙っても終わらない。被害者を休ませてあげなきゃ。口実は私が作ってあげる」と言って、いきなり四つん這いになって廊下の床を舐めようとする。

すると、その瞬間、菫子が幼女の姿に変身し、床を舐めようとしていた真奈美が「影が縮んだ?」と戸惑って動きが止まり、顔を上げていきなり目の前に出現した見知らぬ幼女の姿に呆気にとられる。すると真奈美の背後から現れた蓮が真奈美の服の襟足を掴んで引っ張り上げて「初めまして、ごきげんよう」と挨拶すると真奈美を廊下に座らせて「今後、床舐めは禁止ですよ」と言う。それで真奈美はいきなり現れた知らない男にビックリして何者なのかと問い質す。蓮は自分はここの生徒の保護者だと答え、菫子は再び女子高生の姿に戻り、逆に真奈美に「畦目先生がよだれかけの犯人」と指摘する。

つまり、この菫子の「イジメの被害者のフリをして真奈美に助けてもらう」という行動は真奈美がよだれかけの犯人であるかどうかを確認するためのお芝居だったのです。菫子にこんなお芝居をやらせて真奈美を罠に嵌めるために蓮は菫子にもう1日コオネ女学院に潜入してもらう必要があると言ったわけですね。それはつまり、蓮が当初から真奈美が怪しいということと、菫子がイジメ被害者のフリをすれば真奈美の犯行現場を押さえることが出来ると踏んでいたということを意味します。

まず、蓮は「よだれかけ」事件の特徴と過去の伝承に残る「真怪」の事例とを照合して、「よだれかけ」事件と「牛鬼」という妖怪の伝承に類似点があることに気付いた。「牛鬼」というのは様々な地域で伝承が残っている妖怪で、残忍で人を喰らうとか人を病にするとか神の化身として信仰されたりとか様々ですが、蓮はこの牛鬼の伝承のいくつかは「真怪」と見なしていた。そうした「真怪」の伝承の中で「牛鬼に影を舐められた者は大量の唾液を垂れ流して火が点いたように身体が熱くなり死に至る」というものがある。この症状が「よだれかけ」と酷似しており、何者かが牛鬼の怪異の力で標的とした者の影を舐めてそうした症状を発症させたのではないかと蓮は推測した。

被害者が学校から離れると症状が治まり、学校に来ると症状が再発するというのは、犯人が常に学校に潜んでいて、その被害者が登校してくるたびに影を舐めて症状を引き起こしてきたからなのだろう。逆に登校してこない限りはわざわざ被害者を追いかけて影を舐めて症状を引き起こそうとしなかったということは、その相手に恨みがあるのではなく、その相手が学校に来られないようにすることが目的なのだということが分かる。こうした犯人像が分かってくると、それは牛鬼という妖怪そのものなのではなく、牛鬼の力を使うことが出来る学校関係者ということになる。

そして被害者像の方も絞り込んでいこうと、学校内の事情通である珠緒に「よだれかけ」を発症した生徒たちの共通点を聞いてみたところ「周りと揉め事がある子が多かった」とのことだった。だが、その珠緒自身が「よだれかけ」の被害者となっており、珠緒は別に周りと揉め事は無かった。ただ、珠緒や彼女と一緒に「よだれかけ」を発症した麻里もエリカも、その直前に畦目先生に「菫子に対するイジメをしているのではないか」と疑われていた。ちなみに同じ場所に居合わせた乙とのどかは菫子を囲んでいなかったのでイジメの疑惑はかけられていなかった。そして直後に菫子は畦目先生に「本当はイジメられていたのではないか」としつこく問い詰められており、そうして畦目先生と別れた直後に再び菫子が麻里と珠緒にふざけて腕を掴まれた時に麻里と珠緒とエリカが「よだれかけ」を発症して、乙とのどかは発症しなかった。ちなみにその時、周囲には彼女らの影を舐めている者の姿は見えなかったが、放課後で夕刻であったので影は長く伸びていて、遠くの物陰で彼女らの影を舐めることは可能だった。

こういうふうに見ると、「イジメッ子が犯人の標的だったのではないか」と思えてくる。「周りと揉め事がある」というのはまさにイジメをしていた例もあるだろうし、犯人から見れば他人と喧嘩しているのが「イジメをしている」と見えた可能性もある。つまり「イジメっ子をよだれかけにして学校に来られなくすることによって校内からイジメを無くす」というのが犯人の目的だったのであり、中には珠緒たちの事例のように勘違いでイジメ加害者と間違われて「よだれかけ」を発症させられてしまった生徒も多かったのだろうと思えた。

そうした推理のもとで、こういう状況を見ると、どう見ても畦目真奈美先生が怪しいと思えた。真奈美はイジメを「絶対にダメ」と強く否定しており、思い込みが激しいようで相手の言い分を聞こうとしておらず、校内からイジメを無くすためには極端な行動をとってもおかしくないように見えた。また、わざわざ放課後の「影が長く伸びる時間」に校内を見回ってイジメが起きていないかどうか調べていたりしたのも怪しいし、真奈美がイジメ加害者だと決めつけた珠緒たちは実際はイジメをしていないのに発症している一方で、イジメ加害者と決めつけられていなかった乙とのどかだけ同じ場所に居ながら発症していないのも、真奈美先生の関与が無いと考える方が不自然といえた。

そこで蓮は菫子にイジメ被害を受けているというお芝居をさせて放課後に真奈美にそれを目撃させることにした。そうしたら昨日珠緒たちを「よだれかけ」にしたことで菫子をイジメから救うことが出来たと安心しているはずの真奈美はショックを受けて何らかの行動を起こすはずだと読んだのです。別の加害者の影を舐めに行くか、あるいは菫子の影を舐めてイジメ被害者である菫子自身を不登校にすることで校内イジメの根を断とうとするか、そのどちらかの犯行の現場を押さえることが出来れば真奈美が犯人で確定だと思って蓮が物陰に潜んで菫子と真奈美の様子を窺っていたら、真奈美が菫子の影を舐めようとして、菫子はその場合の備えとして事前に蓮に指示されていた通りに幼女の姿に変身して影を短くして回避したのでした。そうして蓮が出て来て真奈美を捕まえたわけです。

そうして蓮は真奈美を押し倒すと身体の匂いを嗅ぎ始める。とても変態行為みたいに見えますし真奈美も恥ずかしがって凄く嫌がりますが、どうやら蓮は趣味でそういうことをやっているわけではなく、牛鬼の怪異の力の源の在り処を臭いで探ろうとしているようです。そうして真奈美の髪飾りが牛鬼の怪異の力の根源だと突き止めた蓮は髪飾りを奪おうとするが、真奈美に頭突きを喰らって蓮はひっくり返ってしまう。真奈美は髪飾りを渡すつもりはないようです。また、蓮が1話で菫子と追いかけっこをした場面でも同様でしたが戦闘力はほとんど無いということも分かります。

そうして真奈美は髪飾りを守るように手に掴むと菫子に「先生の邪魔をしないで」と言う。真奈美はあくまでイジメの無い学校を作ることは正しいことだと考えており、そのために髪飾りの力を使えばイジメっ子を不登校にすることが出来ることも分かっているみたいであり、だから自分の理想の実現のためには髪飾りを渡すことは出来ないという考え方みたいです。それに対して菫子はイジメを無くすために生徒を傷つけたら元も子も無いと説き「時間をかけて少しずつイジメを無くしていきましょう」と言って真奈美に髪飾りを手放すよう求めます。しかし真奈美はあくまで菫子が邪魔をするつもりだと判断すると、髪飾りの一部を念のために齧って呑み込むと、髪飾りを渡すフリをして菫子に近づき「今イジメられている子にはそんな時間は無い」と言って菫子の顔の影になっている部分を舐め上げる。すると菫子の口から大量の涎が溢れだしてきて、同時に菫子の身体が炎を発して燃え始めてしまう。

それを見て蓮は驚きます。菫子や乙からの報告で聞いていた「よだれかけ」事件の発症者は高熱を発して昏倒するだけであり、死にも至っていなかった。牛鬼の伝承では「死に至る」とあったが、少なくとも即死するような代物という感じではなく、それも多少大袈裟に言い伝えられていると思われ、牛鬼の怪異の力といっても実際は短期間だけ涎を垂れ流させて高熱を発する程度なのだろうと思っていたのです。少なくともこんなふうに身体から炎が発するなど全く想定外でした。このままでは菫子は焼死してしまう。それで慌てて蓮は菫子に飛びついて自身も炎に身体を焼かれながら、菫子をひとまず安全な場所に連れていきます。

そうして一旦、真奈美から逃れて教室に入って、そこで蓮は菫子の身体を焼く炎を鎮めようとします。その方法というのは「石は流れ、木の葉は沈み、馬は吠え、牛はいななく」という言葉を呟くことでした。これは和歌山県の牛鬼伝承で、牛鬼に出会ってしまった時にこの言葉を唱えると牛鬼に襲われずに助かるのだと言い伝えられている言葉なのだそうです。それで蓮はこの言葉を伝承に従い「牛鬼の怪異の力を弱める作用がある」と見なして唱えており、その結果、菫子の身体の発火は収まり、菫子は死なずに済みましたが、それでも大火傷を負っており、火が燃え移った蓮も同様に大火傷を負っていました。

しかし、この「石は流れ、木の葉は沈み、馬は吠え、牛はいななく」という言葉は前回のエピソードの最後で真奈美が牛鬼の怪異の力を使う前に唱えていた言葉と同じです。一方で今回、菫子の顔を舐めた際には真奈美はこの言葉を唱えておらず、その結果、菫子は身体が発火してしまった。そしてそうした発火を蓮がこの言葉を唱えて抑えたということは、やはりこの言葉には牛鬼の怪異の力を弱める作用があったのだと思われる。ということは、真奈美は前回の最後の場面ではこの言葉を唱えることによって牛鬼の怪異の力を抑制して使っていたのであり、その結果、珠緒たちの身体は発火したりはせず、単に高熱を発して昏倒するぐらいで済んでいたのだと思われる。そして、これまでの「よだれかけ」事件の全てが珠緒たちと同じ症状であり、菫子のように身体が発火していないところを見ると、真奈美はこれまでずっと牛鬼の怪異の力をこの言葉を唱えてセーブして使用していたということになります。そんな真奈美が菫子に対しては力をセーブせず焼き殺そうとしたのは、菫子が髪飾りを奪い真奈美の「イジメの無い学校を作る」という目標を邪魔しようとしたのがよほど許せなかったのでしょう。

真奈美は自分が菫子の顔の影を舐めて発火した際に驚いていなかったので、自分が「石は流れ、木の葉は沈み、馬は吠え、牛はいななく」という言葉を唱えずに力を使えば相手が発火することは知っていたのでしょう。それは、一度はその言葉を唱えずに相手を発火させた経験があるということです。だが後の「呪い返し」の場面で判明することですが真奈美はこれまで誰もこの力で人を殺してはいません。それは、一度相手を発火させた際にもこの言葉を唱えて鎮火させたということなのでしょう。つまり殺意は無かったということになります。殺意が無いのにこんな危険な能力を使ったということは、誤って使ってしまったということを意味しており、この「石は流れ、木の葉は沈み、馬は吠え、牛はいななく」という言葉自体はもともと知っていながら、その言葉にこの危険な発火作用を弱める効力があるということはあらかじめ知らなかった可能性が高い。

しかし、そもそもどうしてこの「石は流れ、木の葉は沈み、馬は吠え、牛はいななく」という言葉に牛鬼の怪異の力を弱める作用があったのでしょうか。この言葉はもともは道理に合わない不条理な事柄に対して非難する意味合いが強い言葉であり、前回の最後の場面で真奈美が珠緒たちをイジメっ子と見なして「よだれかけ」にするために牛鬼の力を使う際にこの言葉を唱えていたので、てっきりこの言葉が術の効果を高めるためのものであるのかと思い、「イジメ」という「道理に合わない不条理な行為」に対して非難する強い想いを示すも言葉なのかと思っていました。しかし、どうやらそれは勘違いだったようです。むしろこの言葉が牛鬼の怪異の力を弱める作用があるということを考えると、この言葉によって「道理が合わず不条理なもの」として非難されているのは、牛鬼の怪異の力そのものであると思われます。つまり、怪異というものは「この世の法則の外にある異界由来のもの」なので、そのようなこの世界の理に反した力を使うことの危うさを戒めるための言葉だったのでしょう。

この後、蓮は自分が牛鬼の怪異の力を見誤った結果、菫子に大怪我を負わせてしまったことを深く反省し、こうなったら自分が身を挺してでも真奈美を止めて菫子のことも守ろうと決意する。そうして蓮は追いかけてきた真奈美の前に1人で立ち塞がります。真奈美は蓮が菫子の身体の火を消していることに驚くが「御守りを奪おうとしたからよ!」と蓮と菫子を非難する。それを聞いて蓮はその髪飾りは「御守り」ではなく「呪い」だと指摘します。

その髪飾りは真奈美が祖母のタエから「先祖代々伝わる御守り」として渡されたものだった。あの子供の頃に雑巾の一件で学校で非難された時の帰り道で、タエが真奈美に「お前を必ず守ってくれる」と言って渡してくれたものだった。それから真奈美はその髪飾りをいつも身に着けるようにしていたのだが、それからしばらくしてタエが亡くなり真奈美は悲しみに暮れたが、そんな中でも真奈美に対する級友達のイジメはエスカレートしていき、ある日、イジメっ子が真奈美の給食を教室の床にぶちまけて、「雑巾」と綽名をつけていた真奈美に対して、床に落ちた食べ物を雑巾みたいに舐めて喰うようにと迫った。それで真奈美は言いなりになって床と一緒に食べ物を舐めて喰ったのだが、その際にちょうどそのイジメっ子の影がその食べ物の落ちた床にかかっていて、結果的に真奈美がそのイジメっ子の影を舐めた形となった。するとそのイジメっ子は大量の涎を垂らして身体から火が出て苦しみ悶えて転げまわり、真奈美は驚いて、御守りが自分を守ってくれたのだと思った。そして祖母から御守りに対して唱えるように言われていた「石は流れ、木の葉は沈み、馬は吠え、牛はいななく」という言葉を唱えると、イジメっ子の身体に点いた火が消えて、イジメっ子は一命は取り留めたが学校には来なくなった。

その後、真奈美は何人かのイジメっ子に対して同じようなことを試してみて、御守りの髪飾りを身に着けた状態で相手の影を舐めると相手は涎が止まらなくなり身体から火が出て苦しみ、「石は流れ、木の葉は沈み、馬は吠え、牛はいななく」と唱えると火が消えることを知った。また最初から「石は流れ、木の葉は沈み、馬は吠え、牛はいななく」と唱えてから影を舐めると、涎を垂れ流して高熱を発する程度に調節することも可能なことを知った。そして、これは「イジメっ子を排除して自分へのイジメを止めさせるための御守り」なのだと思うようになり、そのうちにこの御守りは自分を守るためだけに使うものではなく、自分以外の多くのイジメられっ子を守るためにも使うべきだと考えるようになった。そうして真奈美の中でこの御守りは「イジメの無い世界」を作るための御守りなのだと考えられるようになっていき、今こうしてコオネ女学院の教諭となった真奈美は、その目標を達成するため、まずはコオネ女学院を「イジメの無い学校」にするためにイジメをしていると思われる女生徒たちを「よだれかけ」という症状で不登校に追いやるために使われているのです。

だが蓮はその髪飾りは「御守り」などではなく「呪い」だと言う。祖母からそれを「御守り」だと言われて渡されて、ずっと「御守り」として大事にしてきた真奈美にとって全く予想外の言葉であった。蓮の言うには、この髪飾りは「牛玉」と呼ばれる遺物であり、牛鬼の欠片なのだそうだ。つまり牛鬼の身体の一部から作られたものなのだという。おそらく真奈美の一族はもともとは「牝牛」と書いて「うなめ」と読む氏族に「畦目」という当て字をした一族であり、牛鬼を祀る一族だったのだろうと思われ、それゆえ「牛玉」が伝わっていたのだが、それは怪異の欠片であり呪いそのものだった。そしてその呪いを鎮める言葉「石は流れ、木の葉は沈み、馬は吠え、牛はいななく」と共にそれは代々伝えられてきた。ところが時代が経つにつれてその教えは薄れて、その唱える言葉と共に単なる「御守り」として伝えられるようになり、そうして真奈美の手に渡り、たまたま呪いとして使用されるようになったというわけです。もし祖母が生きているうちに呪いが発現していれば、祖母は慌てて真奈美から回収したはずですが、祖母の死後に呪いが発現したので真奈美が変な思い込みで突っ走ることになってしまったのです。

今まで「御守り」だと思っていたものが「呪い」だと言われて真奈美は驚きますが、確かにそう言われてみれば、他人を燃やしたり病気にしたりするこの髪飾りは「御守り」というより「呪いの道具」のようだと納得は出来た。ただ、「御守り」であれ「呪い」であれ、これを使えば「イジメの無い世界」を作ることが出来る。それは真奈美にとっては絶対的に正しいことであり、その手段が「呪い」であったとしても別に構わないと思えた。

しかし蓮は「呪い」は危険なのだと言う。どうやら蓮の言ってることを整理すると、呪書や牛玉のような呪いの道具みたいなものはそれだけでは呪いは発動しないみたいで、第1話での若返りの呪いが菫子の世界への恨みのような感情が引き金となって発動したように、強い心の動きがあって初めて呪いは発動するようです。「世界から排除された者特有の情動」のようなものが異界の怪異と共鳴して呪いを発動させるという感じでしょう。こうした強烈な心の動き、情動や怨念のようなものを脳内で司るのが大脳辺縁系らしいのだが、この大脳辺縁系は「主語」が理解出来ないのだと蓮は言う。つまり自分と相手の区別が出来ないので、相手を呪えば同時に自分も呪うことになり、他人への呪いは自分への呪いとなって返ってくるのだという。いわゆる「人を呪わば穴二つ」というやつです。

だから、こうして真奈美が「牛玉」を使って他人に危害を加えていれば、いずれ同じ危害が真奈美自身に返ってくる。それを回避するためには「牛玉」を自分の手元から離すしかないのです。だから蓮は真奈美に「牛玉」を手放して自分に譲るようにと説得する。自分はその「牛玉」を妹を返すために有効利用できるのだと言って蓮は真奈美に迫りますが、真奈美は「イジメの無い世界」を作れるのなら自分は呪い返しでどうなっても構わないと言い張って、あくまで牛玉を渡そうとはしない。

それに対して蓮は「友達とふざけることすら許されない世界が本当にあなたの望む世界ですか?」と問いかける。昨日真奈美によって「よだれかけ」にされてしまった珠緒たちはイジメなどしていない。ただ菫子とふざけて楽しく遊んでいただけです。そんなものまで排除して作り上げた真奈美の理想社会に一体何が残るというのか。しかし真奈美はそうした蓮の言葉に感情的に反発して蓮の胸倉に掴みかかり「ふざけてただけ、そんなつもりじゃなかった、イジメる側はいつもそう言うわ!」と叫ぶ。実際、小学校の時に真奈美をイジメていた級友たちも彼ら自身はふざけていただけだったのでしょう。悪意などほとんど無かったかもしれない。しかし真奈美は深く傷ついていたし、今でもそうやって悪意の無いおふざけによって深く傷つけられているイジメられっ子はたくさんいる。それは紛れもなく事実です。だから真奈美は自分が間違っているとは思わない。

蓮も確かにその部分では真奈美を論破することは出来ないと認める。「ふざけているだけ」という言い訳を振りかざして相手の気持ちを思いやることを怠るような人間は、たとえどんなに善良な人間であったとしても、常に弱者の気持ちを思いやろうとしている真奈美のような人間よりも下等であると思えた。ここで蓮の回想シーンのようなものが流れて、そこでは蓮や乙と思われる少女と一緒に戦場化している都市のような場所をボロボロになって彷徨っていた。これが異界における蓮と乙の過去なのか、それとも異界からこちらの世界に来てから戦場のような場所に行く羽目になったのか、詳細は分かりません。ただ蓮は「あの頃、先生のような優しい人が傍にいてくれたら僕や妹はこうなっていなかったかもしれない」と言っている。詳しい話は分かりませんが、とにかく蓮は本音では珠緒のような人間よりはいくらか真奈美のような人間に賛同しているようです。

ただ、ここで蓮は「でも僕はどうしても世界から排除される側の気持ちばかり考えてしまうんだ」とも悲しそうな顔で言っている。それもどうしてなのかはここでは詳細に説明はされないが、おそらく蓮自身が「世界から排除された者」だからなのでしょう。だから菫子の気持ちも分かるし、真奈美の気持ちだって分かるのですが、同時に真奈美によって学校から排除されてしまった珠緒たちやその他の被害者たちの気持ちもどうしても考えてしまう。そこは意見の正当性の優劣などは関係なく、蓮はとにかく世界から不当に排除される者は1人たりとも許容できないのでしょう。

だから、やはり真奈美の行動は止めなければならない。そもそもこうして真奈美が絶対拒否の姿勢を貫く限り、交渉の決裂は不可避であり、そうなれば蓮は真奈美から攻撃を受けて火だるまにされてしまう。「石は流れ、木の葉は沈み、馬は吠え、牛はいななく」と唱えればダメージはいくらか軽減できるが、既にかなり大火傷でダメージは受けており、そう長く耐えられそうもなく、蓮が倒されれば菫子も殺されるであろうし、今後も真奈美の暴挙で犠牲になる人も絶えないだろう。だから蓮は非常手段を使わざるを得なかった。

それは蓮が普段は糸目のように閉じている細目をカッと見開いて渦巻のような両目の黒目部分で真奈美を至近距離で見つめることでした。それによって真奈美は突然に大量の涎を垂れ流したかと思ったら、その場に標識が何本も立ち、そこから炎が噴き出して真奈美の身体を焼いたのでした。それはまるでさっき真奈美が菫子にかけた呪いがそっくりそのまま真奈美自身に返ってきているようであり、どうやら蓮の両目には「他人を呪った者に強制的に呪いを返す」能力があるようです。但し代償はあるようで、まずそれによってその呪いそのものが消えてしまうらしい。だからここで真奈美が持っていた牛玉の呪いそのものが消えてしまい、それは単なる髪飾りになってしまった。これで蓮は今回の事件で「怪異」を手に入れることが出来なくなってしまい、きさらぎ駅で切符を手に入れるのはお預けになってしまった。

そしてもう1つの代償は、どうやら蓮の両眼にもダメージが返ってくるようだという点でした。そのダメージで倒れそうになった蓮を菫子が助け上げる。菫子は大火傷で動けなかったはずだが、変若人の能力で身体を作り替えることで一定のダメージは修復されるようで、28歳の姿に戻ることで火傷は修復されたようです。そして真奈美は菫子のように大火傷を負った後、呪いが消滅すると共に炎も自然と消えて、気絶して眠っていた。もし真奈美がこれまでに呪いで人を殺していれば、その呪いも返って来てきっと真奈美は死んでいたことでしょう。幸い真奈美は人に大火傷を負わせたことがあった程度だったので大火傷ぐらいで済んだのだといえます。そんな真奈美を病院に運ぶ手配をするよう乙に頼んで、菫子と蓮はコオネ女学院を後にすることにした。

その後、真奈美はのどかの親の経営している高天原病院に入院し、学校ではよだれかけ事件も終息し、不登校になった生徒たちも再び登校出来るようになり、まさか真奈美が犯人だったとは知らない珠緒や麻里やエリカも不注意の火傷で入院したということになっている真奈美のお見舞いにやって来て、真奈美に注意されていた菫子への接し方についても考えが足りなかったと反省の言葉を口にした。それを聞いて真奈美ももっとちゃんと生徒たちと話をすれば良かったと反省した。もともと祖母は自分の心の優しさを認めてくれて、そんな優しい自分が幸せになれるようにと大事な「御守り」を渡してくれたのだ。それは本当は「呪い」だったのだが、それが「御守り」だと思って大事にしていた祖母の心は本物だった。だから、あれは間違いなく「御守り」だったのだと真奈美は思った。それを「呪い」に変えてしまったのは祖母の期待を裏切って「優しさ」を忘れてしまっていた自分の愚かしさであったのだと真奈美は深く後悔し、心の中で祖母に謝り、これからは誰に対しても優しく生きようと決意するのでした。

なお、真奈美の持っていた牛玉の正体ですが、蓮はあれは牛鬼の欠片ではなかったのではないかと後で言っていました。牛鬼にしては発火能力などあまりに呪いの力が強大すぎるので、蓮はあれは「塵輪鬼」という怪異だったのではないかと言う。「塵輪鬼」というのは岡山県に伝わる伝承で、大和朝廷と戦った強大な鬼神なのだそうで、この塵輪鬼が討伐された破片が牛鬼になったという。あの髪飾りの強大な呪いの力を考えると、あれは牛鬼の欠片ではなく塵輪鬼の欠片だったと考えた方が説明がつくと蓮は言い、塵輪鬼の強大な呪いを真奈美があの逆言の呪文で抑えていたので「よだれかけ」程度の被害で済んだのだろうと言う。ただ、既に髪飾りの呪いが消えてしまった以上、それも推測に過ぎず確かめようはないとも蓮は言う。

これで全ては終わったかに思えますが、しかし奇妙な点が残っている。真奈美が蓮や菫子と髪飾りを巡って争っていた時、真奈美の頭には何故か角が生えていたのです。そして、その角は最後に蓮の呪い返しによって髪飾りを呪いが消えた後も真奈美の頭に残っていた。そしてラストの病室の場面でも真奈美は頭にバンダナを巻いており、バンダナで隠された下に角はどうやら残っているようです。

この角が生えたタイミングをよく見てみると、菫子が真奈美に顔を舐められて全身が炎に包まれた辺りと思われる。その直前に真奈美は髪飾りの一部を吞み込んでいる。おそらくあれが原因なのでしょう。あの呑み込んだ髪飾りの欠片そのものは蓮の呪い返しの際に呪いは消えたと思われます。あの欠片の呪いも菫子への呪いに使われたはずであり、これまでにも多くの人間への呪いに使われてたと思われ、その呪いが全部真奈美に返ってきたことによって呪いは消滅したはずだからです。だが、それでもその後も真奈美の角が生えたままということは、あの角は別の呪いによる産物ということになる。

つまり、あの髪飾りを一部を体内に入れたことによって真奈美の中で新しい呪いが生まれたようなのです。これは呪書の呪いを使ったことによって菫子自身が呪いそのものとなり変若人になったのと似た現象といえます。つまり、どうやら真奈美もまた塵輪鬼由来の新たな呪術を使える人間となったみたいなのです。それはおそらく強大な呪力なのでしょう。そして、今回のラストシーンで、その真奈美の病室に、珠緒たちが見舞いから帰るのと入れ違いに、謎の車椅子の少女が訪問している場面が描写されている。これは一体何を意味しているのか、真奈美の角の謎も含めて、次回以降のエピソードで触れられるのかどうか注目していきたいと思います。

 

 

出来損ないと呼ばれた元英雄は、実家から追放されたので好き勝手に生きることにした

第4話を観ました。

今回はアレンたちが悪魔の動向を探るために死んだ王族の幽霊が目撃されたという村に行きます。実はリーズ姫は子供の頃に行方不明になった叔父を探していて、その幽霊が叔父ではないかと思って探します。その村は死者の霊を呼び戻すとかいう祭りをやっている奇妙な村で、そこでリーツは叔父と出会い、父である王がリーツを殺そうとしていると聞かされ、共に王を倒そうと持ち掛けられる。しかしリーズが拒否すると叔父はリーズを殺そうとしてきて、そこに割って入ったアレンが術を解くと叔父は正気を取り戻す。実は叔父はとっくに死んでいて死体を操られていたのだという。そして束の間だけ人間に戻れた叔父はアレンと決闘してリーズのことを託して永遠の眠りにつきます。そしてアレンは叔父の死体を操り死人のゾンビの村を操っていた悪魔を倒しました。そうしてアレンがその悪魔に力を与えていた黒幕が自分の実家だと気付いたというところで今回は終わりとなりますが、ちょっと話も全然面白くないし作画も酷いし、今回で視聴は打ち切らせていただきます。