今週の担当、税理士新井山です。今週のお話は小規模宅地の特例についてです。小出しで大変恐縮ですが、このネタは何回かに分けて説明したいと思っています。今回はその一部です。


 相続税において、一定の相続人が(配偶者を除く)遺産の中に被相続人等が居住の用に供していた宅地等を相続し、一定の要件を満たす場合には、当該宅地等は特定居住用宅地等として80%の評価減の特例(減額特例)が受けられます。

 しかし、被相続人等の居住の用に供していた宅地等が複数存在する場合には、この減額特例の適用については、明確な規定はありませんでした。
そこで、平成22年度税制改正で、特例の対象宅地等については、「被相続人等が主として居住の用に供していた一の宅地等」に限られることが明確にされました。


一の宅地等とは 

 当初、解説書等では、この改正について「相続財産の中に被相続人の居住の用に供されていた宅地等が複数ある場合には、特定居住用宅地等に該当し80%減額の特例が受けられるのは、その内、被相続人等が主として居住の用に供していた一の宅地等のみに制限された」、というような内容でした。


 ただ、解説書等は、減額特例は相続税事案1件につき一箇所に限定されるとは述べていませんでしたが、一箇所のみと思い込まれた向きもあったかと思われます。
結論として、「一の宅地等」とは、一箇所のみではなく、被相続人と当該被相続人と生計を一にする親族が別々の宅地等(被相続人所有)を居住の用に供しているような場合、それぞれの宅地等が「一の宅地等」に該当する、というような内容です。


宅地等が複数ある場合の取扱い

 居住用宅地等が複数ある場合の具体的な取扱いは、次にようになります。
(1)複数の宅地等が被相続人だけの居住用の場合
被相続人が主として居住の用に供していた宅地等
(2)複数の宅地等が親族(親族が2人以上ある場合も含む)だけの居住用の場合
 被相続人と生計を一にする親族(親族が2人以上の場合は当該親族ごと)の主として居住の用に供していた宅地等
(3)被相続人と当該被相続人と生計一親族の居住用宅地等が同じである場合
 主として居住の用に供していた宅地等
(4)被相続人と当該被相続人と生計一親族の居住用宅地等が異なる場合
 被相続人及び当該親族がそれぞれ主として居住の用に供していた宅地等

遅ればせながら、本年も絆の会を宜しくお願い致します。


天気予報を見ると最近乾燥注意報が、ずっと続いてますね・・手洗い・うがい、体調管理に要注意ですね。

今週も、行政書士 濱田 英明 が絆・火曜コラムを担当させて頂きます。

年末のトリと年始のアタマを担当できるとは!感激です。


さて、前回に引き続き。認知症と相続を絡めたお話をさせて頂きます。


例えば、認知症の方が相続の承認・相続放棄・遺産分割協議をした場合どのような、取扱いになるのでしょうか?

原則、他の相続人や利害関係者の地位が不安定になる為、遺産分割協議の蒸し返しや、相続放棄の撤回は、出来ません!  しかし民法919条2項に、例外的に取り消すことの出来る定めが、あります。


①成年被後見人本人が行った場合

②被保佐人が保佐人の同意もしくは家庭裁判所の許可を得ていない場合
③補助人の同意行為とされているのに補助人の同意もしくは家庭裁判所の許可を得ていない場合


この様な場合は、承認・相続放棄・遺産分割協議は、取り消すことが出来ます。(もちろん取り消さない事も出来ます。) (この他にも、後見人が後見監督人の同意をとか、あるのですが書ききれないので、別の期会に・・)  


『ふーん。取り消しになる場合があるんだね~ っで?  っと突っ込みが、入りそうなので①②③を補足していきます。

認知症の方は、真意(本当にそう考えるのか)が不明です。

なので、法はそういった方等、(認知症以外にも知的障害・精神障害も含まれます)をサポートする制度として、平成12年4月、民法等の改正により従来の禁治産および準禁治産を改め、成年後見制度をスタートさせました。


①成年被後見人・・事理を弁識する能力を欠く 

(自己の財産を管理・処分することができない。)


②被保佐人・・・・事理を弁識する能力が著しく不十分 

(自己の財産を管理・処分するには、常に援助が必要。)


③被補助人・・・事理を弁識する能力が不十分 

(自己の財産を管理・処分するには援助が必要な場合がある。)


後見・保佐・補助は、家庭裁判所で判断され、後見人が選任されます。

この後見人の同意もしくは、家庭裁判所の許可がないと、承認・相続放棄・遺産分割協議がひっくり返せる(逆から見れば、ひっくり返る)場合があります。 


共同相続人の中に、認知症の方が、いらっしゃる場合は家庭裁判所や専門家にご相談頂いた方が良いかもしれませんね。 もちろん絆の会でも何時でも承ります。


では、今週はこの辺りで失礼いたします。最後までご覧頂きありがとうございます!

本年も、絆の会 火曜コラムを宜しくお願い申し上げます。

絆の会・事務局の木藤です。

$「不動産金融に強い司法書士・木藤正義」のブログ


<やったね! ハマヤン!>

絆の会においてもメンバーからムードメーカーとして愛されております行政書士の濱田さん(通称:ハマヤン)が平成23年12月11日(日)に挙式をされました。

誠におめでとうございます!!!


$「不動産金融に強い司法書士・木藤正義」のブログ


新婦も大変お美しい方なのですが、まだまだ新郎が独占をしたいとのことで(笑)、横顔の写真とさせて頂きました。さあ、ハマヤン、愛の証に得意の遺言書でもしたためますか?(笑)


こちらはグランドフィナーレの模様です。盛大ですね!




改めて、誠におめでとうございました!!!

こんにちは、今週の絆火曜コラム、担当は行政書士 濱田です。

ここ数日、ものすごく寒いですね。 痛いぐらいです。さて、今週は認知症のお話です。


三大認知症としてあげられる『アルツハイマー型認知症・脳血管性認知症・レビー小体型認知症』この三つが認知症全体の9割とも言われてます。

2000年4月からスタートした介護保険制度の介護認定によってわかった事として、要支援(要介護)認定者に該当した高齢者の半数、介護施設入所者の8割に認知症の症状が見られるそうです。


介護施設や老人ホームへの高齢者の入所を検討される場合、心情的な問題に加えて経済的な負担に、ついての検討も必要です。


《要介護1以上の方を対象にする施設》


(介護保険施設)               (月額費用の目安)


指定介護老人福祉施設・・・・・・・・・・・・・・・・・約6万~14万

(特別養護老人ホーム)


介護老人保健施設・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・約7万~22万



指定介護療養型医療施設・・・・・・・・・・・・・・・約5万~40万

   (療養病床等)


他にも、グループホーム(認知症対応型共同生活介護)・・・8万~20万 有料老人ホーム15万~25万(別途入所金や一時金あり)


【高齢者の介護負担をされてるご家族の視点からお話しすると】


24時間待ったなしの介護で、日々精神を消耗し、自分たちの至らない看護から、違う病気を併発しないか・・専門的なサービスや健康バランスのとれた食事を食べさせたい。 多少のお金がかかっても、施設の入所を検討される方も大勢いらっしゃいますよね。


この様な場合、相続に関連するお話では、入所前の訪問介護やデイサービスの自己負担なども含め、後日の為に明細等は整理しておくのも必要な事です。

入所に当たっては、本人(入所者自身)が負担するのか、身内で分担負担するのか、早い時期からハッキリ費用負担についてのお話合いが、親族間で出来ればbestですが、そうでない場合(同居家族のみが負担している)後日の話し合いの場などで、主張できるので詳細の記録と保管が大切になります。

高額の入所費用を負担して、さらに親族から法定相続分まで請求されたのでは、目も当てられませんよね。


【高齢者と離れて暮らすご家族の視点でお話しすると】


高齢者の預貯金や年金がどの様に使われているのか?高齢者自身の同居家族に対する愚痴から、『ウチのおじいちゃん・おばあちゃんは、嫁の顔色を窺って肩身の狭い思いをしている!』などと憤るご相談を戴いた事もあります。 

また、高齢者にアレヤコレヤと吹き込み同居親族に有利な公正証書遺言を作成し、その後親族が連絡を取りづらくするため、施設に入れられた! 電話番号が変わっている! こんなご相談もあります。

実際にご相談内容が真実であれば、場合によっては高齢者虐待です。(高齢者虐待防止法7条では発見した場合は、速やかに、これを市町村に通報しなければならない。 と定めています。)身体的な虐待だけでなく、精神的なものや経済的なものも虐待に含まれます。

上記もやはり、お元気なうちから頻繁にコミュニケーションを図り、日頃の生活状況などを把握しておくことが、トラブルの予防になると思います。


どの様に備えをするのが、高齢者自身の為になり、ご家族・ご親族の負担が少なくてすむのか?これはご家族でよくお話合いをして頂くのが一番かと思います。 認知症の高齢者1人の介護には専門職10人が必要とも言われております。 私たち法律系専門職や地域包括支援センター等にご相談頂く事も可能ですが、重要なのはやはり、ご家族・ご親族のお力だと思います。 決して一人で抱え込んで、解決できる問題ではないと思います。


遺言等は、認知症を発症してからでは、意思能力(自己の行為が認識できる判断力)がないとして、紛争になってしまうこともあります。 元気なうちに色々な備えが出来ると良いのですが、現実なかなか難しい場合もありますよね。

年末年始とご家族で、お顔を合わせる機会も増えると思います、正月早々『遺言の件だけど~』っとは、言えないかもしれませんが、しっかりと円満なコミュニケーションを親族間で図っておくだけでも、もしもの事を考えると良いのかもしれませんね。


それでは、今回はこの辺りで失礼致します。最後までお付き合い頂きありがとうございます。


※2011年の絆の会・火曜コラムは今回で、締まります。 次回は、年明け1月17日(火)からになります。


コラムは締まりますが、コラム以外の番外編的ものをUpしたいね。といった声は絆内部にありますので、今後もチェック頂けましたら嬉しいです。


 こんばんは、不動産鑑定士の塚田です。


 実は、私は不動産鑑定士になる前は、税務署で、相続税の調査をしていました。今日はその相続税の調査のお話をしたいと思います。



 平成21年中に死亡した人は114万人、このうち相続税の課税対象となった人数は4万8千人、課税割合は4.06%でした。(3月8日の新井山先生のコラム でも書かれています。)


 このうち、平成22事務年度(平成22年7月から平成23年6月までの間)に実施した実地調査の件数は13,668件であり、相続税の申告書が出てきたうち30%弱は相続税の調査の対象になっています。


 このうち申告漏れがあった件数は11,276件で、その割合はなんと82.5%です。


 申告漏れ課税価格は3,994億円で、実地調査1件当たりでは2,922万円。追徴税額(加算税を含む。)は797億円で、実地調査1件当たりでは583万円となっています。


 申告漏れ相続財産の金額の内訳は、現金・預貯金等1,332億円が最も多く、続いて土地719億円、有価証券631億円の順となっています。


 このように相続税の調査があると、ほとんどの場合、申告漏れを指摘されます。


 なぜでしょうか?



 じつは、相続税の課税の為の情報収集は、亡くなった時から始まっています。


 市役所(区役所、役場)に死亡届が提出されると、税務署にも連絡が行きます。税務署ではこの連絡を受けてから、申告期限までの10ヶ月の間に、被相続人の財産について様々なデータを収集して、申告が必要かどうかを見極めます。


 申告書が出てくると、収集したデータと申告内容とを突合せします。そして、申告が漏れているか、怪しいところはないか、をチェックします。


 このようにして、調査対象を絞っていきます。


 調査のときには、1日がかりで被相続人の生前の生活ぶりや財産の管理状況を確認します。相続人の方には様々な質問を行い、申告漏れが無いかどうかを見ます。その後も金融機関などの調査を行い、申告漏れの実態をつかんでいきます。


 このようにして調査するため、亡くなってからあわてて相続税の節税をしようとしてもうまくいきません。また、納税資金を確保することも必要です。


 しかも、相続税対策は、1年や2年でできる事ではありません。



 大切な家族に少しでも多くの財産を残すために、相続税対策は、生前から、しかも若いうちから計画的に行う必要があります。


具体的な相続税対策は、税理士の先生や他の専門家に相談すると良いでしょう。

こんにちは。

今回の担当は行政書士の植松です。

今回は、先に亡くなる(可能性の高い)夫が、相続(争族)から妻を守るためのお話です。


***


民法では、法定相続分を定めており、配偶者は常に相続人となっています。

世界一の長寿国の日本でも、女性が男性より7歳ほど長生きするため、相続における多くの場合では、夫が先に亡くなり、妻と子どもが相続人になるケースが多数みられます。


夫が年長で年の差がある夫婦であれば、妻がひとりで過ごす時間はさらに延びることになります。

配偶者が常に相続人としておかれているのも、自然なことでしょう。



夫が亡くなると、残された妻と子どもは助け合っていくことでしょう。

子供が親を敬い、残された妻(子の母)を支えていくのが望ましいのですが、現実社会では、精神的な支えを失った妻(子の母)の立場が弱くなることが見られます。

法定相続に不満を持つ者、遺言の内容に異議を唱える者がいると、被相続人の死を悼むどころではなく、欲が前面に現れた現実社会の醜いイザコザに巻き込まれてしまいます。


こうした親族のやり取りの中で、一番辛い立場に置かれるのは、

一番大切な人を失った妻かもしれません。


一緒に助け合い、何でも話してきた相手が居なくなり、その上で自分たちの子孫がいがみ合っているとしたら、やるせないでしょう。



夫は、妻を守らなくてはなりません

確率的に先に亡くなる可能性が高い夫は、

自分の死後残された妻が安心できるようにする使命があります

おそらく、ほとんどの夫婦が、結婚式で、神前で、人前で、仏前で、互いを守り、慈しみ、幸せを与えることを誓ってきたはずです。


結婚式というセレモニーにおける「誓い」には法的拘束力はないものの、自分自身の良心に従えば、この「誓い」はもっとも上位にある守るべきルールだと思います。



では、自分が亡き後に、争族から妻を守る最適な方法はなにか。


それは、遺言書を作成することです。

遺言書はなにも高齢になってから作成するものではありません。

遺言書は、妻を守るという自分の意思を明確にする最良の手段であり、

配偶者へのラブレターです。

さらに、このラブレターは、法的効力を持ち、妻を相続争いからしっかりと守ってくれます。



若いうちから遺言書というと、縁起でもない、といわれるかもしれません。

しかし、さまざまな年齢において伝えたいことは変わるはずです。



愛を述べてもよいでしょう。


遺言書に感謝の気持ちを述べてもよいでしょう。


相続分の指定から分割方法までを詳細かつ具体的に指定しておくのもよいでしょう。


その内容が確実に実行されるように遺言執行人を妻に指定しておくのもよいでしょう。


信頼できる専門家を紹介しておくのもいいでしょう。



遺言書は書き方次第で、文学作品にも、行程表にも、メッセージカードにもなります。


大切な妻を守るために、遺言書を活用することも考えてみてはいかがでしょうか。



***



先日、今年の世相をもっとも反映した漢字として『絆』が選ばれました。色々な出来事があった今年は、『絆』の大切さが例年以上に心に染み渡りました。

また、私事ですが、20111211日に大切な友人が結婚式を挙げました。大変なことがあった年でしたが、新たな『絆』がしっかりとつながりました。

今年うまれた『絆』が固く結ばれ、ずっと幸せでありますように。。。










腹痛弁護士白木です。
あ、でもブログはちゃんと書きます。

自分がおばあちゃんに遺言書の話を聞いていました。その遺言書では遺言執行者として頼まれていたのですが、最終的におばあさまが亡くなってしまった。。。。

では、遺言書を確認しましょう。万が一、自分が話に聞いていた遺言書よりも後に別の遺言書が作成されていれば内容の抵触がある箇所について原則として新しいものが有効となります。
そして、有効な遺言書はどのような形式の遺言書でしょうか?
公証役場と言う所で作成されたものである遺言書以外は検認が必要です。ついでに言うならば危急時遺言なら遺言確認の審判を受けなくてはなりません。

ー検認ー
遺言書の保管者がいれば保管者が、いなければ発見した相続人が検認の申立てを家庭裁判所に行うことになります。封をしてある遺言書なら、封を開けないまま、申立てをしましょう。家庭裁判所以外の所で遺言書の開封をすると5万円以下の過料に処せられます。

検認した遺言書(または公正証書遺言)にやはり自分が遺言執行者で指定されていた場合、自分が任につくかどうかを考えましょう。一旦引き受けたら正当な事由をもって家庭裁判所の許可を受けなければやめられませんので。承諾しなければ家庭裁判所が新たに選任してくれます。承諾するのであればその旨の通知を出します。この通知は相続人や利害関係人にも出しておきましょう。

さて、めでたく就職をしました。次に遺言執行者のする仕事は遺言書の内容をよく検討すること。

遺言書は実体的にも有効な内容でしょうか?
何を伝えようとしているのでしょうか?
実現できないものはありますでしょうか?

実体的に有効かどうかについては

・遺言書のご本人の字でしょうか?誰かが作為を加えた痕はありませんか?
・日付から言って、このような遺言書を作成したことが不合理ということはないでしょうか?

ちなみに、いわゆる添え手は原則として無効ですが、書き手本人に自筆能力があり、添え手が書き始めや改行に、若しくは字配りや行間を整えるためのものだけで、書いた内容そのものに影響を与えていないということが筆跡で鑑定できれば例外的に有効ということになります。
裏を返せば、意識ははっきりしているけど、自筆で書くのは心もとないという方は、自分の遺言書がのちに争われないためにも、公正証書遺言にしたほうがよさそうですね。

遺言が無効であれば、執行できないわけで中止することになるわけですが、相続人と遺言執行者との間で判断が異なる場合もあります。そんなときはどうしたらいいのでしょう?

その時の話は次回にしようかなと思います。
今週の担当は司法書士の木藤です。

$あなたの相続問題に“総合力”でお応えするプロフェッショナル 集団 「絆の会」のブログ


<遺産分割協議の解除の可否>


お客様から頂くご相談の中に、「思い違いがあったのでやり直したい」というご要望を頂くことがあります。例えば、遺言書の作成。長男に全ての財産を相続する旨の遺言書を作成していたところ、最近、長女が良く面倒を見てくれるようになったので、遺言書の作成をやり直したい、と言うようなケースです。

人間ですから一度決めたことでも、思い違いによってやり直したいと思うことは多々あるものです。ちなみに、遺言書には「撤回」が認められているので、さきほどのケースは再作成が可能ですね。


それでは、遺産分割協議の場合はどうでしょうか?


(事例)

・父が亡くなり、相続発生

・相続人は高齢の母、長男及び次男の3人

・母が寝たきりの状態であるため、母の介護をすることを条件に、父の遺産を全て兄が相続する旨の遺産分割協議を行う。

・しかし、その後、兄は海外赴任をすることになり、母の介護をすることが出来なくなった。


このようなケースで皆さんが次男の立場でしたら、どう思いますでしょうか?

「母の介護が条件だから、条件違反の長男に相続財産を渡す義理はない。分割協議をやり直そう!」

この様に思うかもしれません。

そこで、次男は、現状、母の介護と言う条件を満たしていない長男に対し、その債務不履行を理由として、民法541条によって遺産分割協議の解除を主張しました。

ところでこちらは可能でしょうか?

実は、判例はこれを否定しております(最判平元・2・9判時1308・118)。

遺産分割はその性質上協議の成立とともに終了していると言うのが理由です。「海外赴任が終わったら、そのうち面倒見るから大丈夫」とのらりくらりとかわす長男に対して、次男は協議の解除を主張できません。

やり直しのできる手続と、やり直しができない手続がありますので是非ご留意頂きたいと思います。

なお、上記のケースで長男も含めて、相続人全員の合意により、一度成立した遺産分割協議を合意によって解除し、改めて新たな内容の遺産分割協議をやり直した場合はどうでしょうか?

実は、こちらは認められております(最判平2・9・27判時1308・89)。

可能な限りじっくりと協議し、確実な合意形成をはかれる事が理想ですが、現実には困難なことが多いですね。法律行為の効果及びその後の手続の影響について、ご不明な点は、是非、我々プロフェッショナルにお問い合わせください。


相続人が被災者の方の場合、相続を放棄するかどうか考える期間である熟慮期間が延長されていましたが、11月30日でこの期間が切れます。

ですので、「まだ相続放棄するかどうか決めてないよ(涙)」というかたは、家庭裁判所で相続の熟慮期間の伸長を求める手続きをしましょう。本人だけでなく、利害関係人もこの申立てが可能です。

亡くなった方の最後の住所にある家庭裁判所に申し立てて行います。収入印紙800円が必要です。

亡くなった方の住民票の除票又は戸籍の附票
被相続人から相続人までのつながりが分かるように戸籍謄本をそろえて提出します。
 戸籍謄本については追加で提出することも認められるので、「たくさんあって間に合わない!」
 と思ったら、申立てをして相談してみてください。
申立書

今週担当の税理士新井山です。


あなたの相続問題に“総合力”でお応えするプロフェッショナル 集団 「絆の会」のブログ

 自動車事故、航空機事故、海難事故、企業災害などによる人身事故で死亡したときの損害賠償金をめぐる課税関係を整理してみました。


損害賠償金の支払われるまでの態様
 損害賠償金については、次の2つのケースが考えられます。
① 損害賠償請求が係争になっていて、その決着がつかないまま遺族に係争が引き継がれた場合。
② その支払いの請求を遺族が行った場合


相続税は課税が基本?
 財産評価基本通達をみると、訴訟中の権利の価額は適正に評価するものとしているので、課税を基本原則に置いているようにみえます。

 

 しかし、被害者本人の利益のための係争の部分と遺族の利益のための係争の部分が交錯もしています。


保険金の場合も同じ
 損害賠償金を構成する内容には、死亡した被相続人に発生した損害賠償請求権を相続したと解される部分と、遺族の固有の権利として、遺族に原始的に発生したと解される部分とが併存しています。遺族固有の権利部分は、当然に相続財産を構成しないし、所得税非課税の規定の適用もあります。


 相続取得分と解される部分について相続税を課税するとなると、按分が必要となりますが、按分はいつでも容易にできるとは限りません。


保険金の場合とのアンバランス
 死の代償としての金銭という意味では保険金と変わりませんが、保険金についてはあるような相続人一人当たり500 万円非課税の規定の適用が損害賠償金にはなくバランスを失しています。


課税実務は相続税非課税
 そんな問題を避けるためか、損害賠償金のうち被相続人について生じたと解される部分は全体の中では副次的部分にすぎず、これを無視したとしても特に課税上弊害があると考えられない、との趣旨で全部を遺族固有の慰謝料・損害賠償金との扱いをしています。相続税非課税ということです。すでに現金を手にした人とのバランスは失しますが、損害賠償金への課税が国民感情にそぐわないとの判断が優先しているように見受けられるところです。