今週の担当は司法書士の木藤です。

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<遺産分割協議の解除の可否>


お客様から頂くご相談の中に、「思い違いがあったのでやり直したい」というご要望を頂くことがあります。例えば、遺言書の作成。長男に全ての財産を相続する旨の遺言書を作成していたところ、最近、長女が良く面倒を見てくれるようになったので、遺言書の作成をやり直したい、と言うようなケースです。

人間ですから一度決めたことでも、思い違いによってやり直したいと思うことは多々あるものです。ちなみに、遺言書には「撤回」が認められているので、さきほどのケースは再作成が可能ですね。


それでは、遺産分割協議の場合はどうでしょうか?


(事例)

・父が亡くなり、相続発生

・相続人は高齢の母、長男及び次男の3人

・母が寝たきりの状態であるため、母の介護をすることを条件に、父の遺産を全て兄が相続する旨の遺産分割協議を行う。

・しかし、その後、兄は海外赴任をすることになり、母の介護をすることが出来なくなった。


このようなケースで皆さんが次男の立場でしたら、どう思いますでしょうか?

「母の介護が条件だから、条件違反の長男に相続財産を渡す義理はない。分割協議をやり直そう!」

この様に思うかもしれません。

そこで、次男は、現状、母の介護と言う条件を満たしていない長男に対し、その債務不履行を理由として、民法541条によって遺産分割協議の解除を主張しました。

ところでこちらは可能でしょうか?

実は、判例はこれを否定しております(最判平元・2・9判時1308・118)。

遺産分割はその性質上協議の成立とともに終了していると言うのが理由です。「海外赴任が終わったら、そのうち面倒見るから大丈夫」とのらりくらりとかわす長男に対して、次男は協議の解除を主張できません。

やり直しのできる手続と、やり直しができない手続がありますので是非ご留意頂きたいと思います。

なお、上記のケースで長男も含めて、相続人全員の合意により、一度成立した遺産分割協議を合意によって解除し、改めて新たな内容の遺産分割協議をやり直した場合はどうでしょうか?

実は、こちらは認められております(最判平2・9・27判時1308・89)。

可能な限りじっくりと協議し、確実な合意形成をはかれる事が理想ですが、現実には困難なことが多いですね。法律行為の効果及びその後の手続の影響について、ご不明な点は、是非、我々プロフェッショナルにお問い合わせください。