※このブログはソーシャルゲーム・ステーションメモリーを絡めて展開します。不明な表現については無視してください。
Prologue
「マスター。命令を…」
ミオはいつも明確な指示を求めてくる。ヒューマノイドは配属された人と共に旅をして想い出をデータとして未来へ伝達する他、身近な駅に留まってそこを訪れる他のヒューマノイドと情報を交換する役割もある。
なのでほかのヒューマノイドと交流する頻度が多いほど沢山の仕事をこなすことができる。
駅ごとに沢山の仕事をこなしたヒューマノイドマスターが貼り出されるので、小生もそれなりにこの地道な活動を続けている。
この仕事は要は他のマスターとの競い合いになるのでヒューマノイド達とチームを組んで戦略を考える必要がある。ミオは駅に留まってから、他のチームにそれを奪われないためのスキルに秀でているのでディフェンスの要なのである。
「今日は伊豆へ行こう」
「伊豆へ…。それが命令?」
高台を走る特急踊り子号の車窓に広がる波を湛えた紺碧の海の向うに伊豆大島の島影を望む。
ミオは相変わらず無表情で言葉を発しないが、その瞳が水平線と空の溶け込むはるか彼方を懐かしそうに見つめているように思えた。
蓮台寺ミオ、彼女は伊豆急行の車輌と蓮台寺駅をモチーフに創られたのだという。
furrow.2 伊豆急行
伊豆急行はそのほぼ全線が海を望む高台を走り、四季ごとに美しい自然景観を車窓に繰り広げるという列車に乗っているだけでも楽しく魅力的な路線である。
沿線には、活発な火山活動が形づくった様々な自然景観や特殊な地形、数々の温泉という天恵に溢れ、これらが険しくも美しい海の景観と渾然一体になって織り成す旅はここならではの衝撃を与える。
東京から近く手軽に訪れることができるため、多くの観光客がこの地にやってくるのもうなずけよう。
しかし、変化に富んだ火山地帯の地形に路線を引くということはそれなりの苦労があったに違いない。またそれを維持しつづけるというのも大変な努力が求められることだろう。
伊豆急行が開通したのは1961年と比較的新しい。火成岩の不安定な地層や温泉の噴き出すトラブル、落盤事故など、想像を絶する難工事だったらしい。
同時に、ルートを確保するための用地が限られたスペースしかないため、沿線住民との折り合いや同時期に着工した国道との工事区間の重複など政治的な難題も多かったようである。
全線の38%がトンネルでその数は29にも及ぶ。今や多くの住民や観光客にとってなくてはならない存在だが保線にも常に多くの資材が必要だろう。
furrow.3 伊豆急と東海バス
伊豆急行は伊豆急下田が終点であるから、その先の南伊豆や西伊豆のエリアは公共交通機関としてはバスを利用することになる。
そのネットワークは伊豆急グループの東海バスにより運行されているのだが、電車との接続も概ね良くて主だった観光地はほぼ網羅されている。
また鉄道とバス共通の南伊豆フリー乗車券のような企画切符も季節に応じて発売されているので、結構便利に旅ができる。
今回はその南伊豆フリー乗車券を利用して下田近辺の観光を楽しんだ後に、同じくフリーエリアにある西伊豆の雲見温泉を目指した。
雲見温泉に直通するバスはないので、まずは伊豆急下田から蓮台寺を経由して西伊豆の山道を走り松崎町の中心にある終点の松崎バスターミナルで降りる。
西伊豆ではここが東海バスの中心地となっていて、ここから各方面へのバスが発着している。
乗り換えの合間に近くの海岸へ足を伸ばしてみた。交通の要衝ではあるが、穏やかな浜辺に人影はまばらで釣り人や犬を連れた姿は地元民と思われ静かで落ちついた景色に癒された。
松崎にも温泉があって、伊東園グループの高層ホテルが近くに聳え立っていた。
余談になるが、かつて伊豆箱根鉄道駿豆線の終点修善寺から西伊豆に鉄道を敷設する計画があったそうだが、それが実現していたらこの辺りの景色は相当変わっていただろう。
松崎から雲見入谷ゆきのバスに乗ると、西伊豆の奇岩を車窓に眺めながら25分ほどで温泉へ到着する。
furrow.4 雲見温泉の泉質
雲見温泉では富久三苑さんにご厄介になった。到着時刻が18時近かったのですぐに夕食をいただく。
ここは料理が評判なので少し奮発したのだが、海の幸が沢山食卓に並んでびっくりするほど豪華であった。
東伊豆ではキンメ鯛が有名だが、西伊豆ではやや趣が変わって鮑の踊り焼きやイサキの刺身、カンパチの照焼きなどで種類も豊富である。温泉を堪能する前なのだが我慢できずにビールも頼んでしまった。
雲見温泉の各旅館に供給される温泉はほぼすべて松崎三浦(さんぽ)地区に湧く複数の源泉と赤井浜に自噴するものの混合泉で富久三苑さんにも供給されている。
ちなみに赤井浜には露天風呂があったので翌日訪れてみようと思っていたのだが、雨に見舞われたために断念せざるをぬこととなり、この露天風呂は残念なことに翌年閉鎖されてしまった。
海辺の温泉なのだが、ナトリウムよりもカルシウムの方が上回るカルシウム、ナトリウム-塩化物泉で成分総量が12,000mg/ℓを超えて実に濃厚な湯である。
furrow.5 雲見温泉富久三苑の浴感
濃厚な源泉が加水、循環なしで惜し気もなく掛け流される浴場は2箇所あり、共に札をつけて内側からロックすることで貸し切りにできる。
源泉温度が50度と比較的高く、加水されていないためやや熱めの入り心地であった。それでもここのところ高温のあつ湯に続けて入る機会が多かったせいか、表示されている温度の割には長く入ることができたように思う。
成分が濃厚なのだが含食塩重曹泉なので重い感じではなく入りやすいこともあるかもしれない。
こちらには露天風呂はないのだが、これだけ良好な湯が掛け流されているのであるからそれだけで贅沢である。しかも24時間入れるので翌朝まで繰り返し堪能させていただいた。
堪能すると言えば海辺の温泉の夜はこれに限る。
外は雨が降り始めていたが、湯と酒は我が懐にある。ほかには何もいらない贅沢な夜がふけてゆく。
furrow.6 伊豆七滝を歩く
南伊豆フリー乗車券は2日間有効なので、翌日は蓮台寺でバスを降りてから河津へとひと駅移動して伊豆七滝を巡る遊歩道を歩いてみた。
遊歩道は整備されているので、高低差はあるが歩くのは運動靴あれば至極楽であった。
河津川に支流が合流して流れ落ちる出合滝を皮切りに6つの滝が遊歩道に次々あらわれる。
上流へ行くに従って火山性の地形が顕著になってゆく感じで、滝壷近辺や流れる岩盤に特徴的な柱状節理が見られる初景滝や蛇滝はそのあたりも見所になっている。
そして曲がりくねった流形が海老の尾を連想させる海老滝と続く
最後にあらわれるのが釜滝。大滝に次ぐ落差22mの滝の岩盤に見事な柱状節理を備えていて荘厳のひとこと。
そしてだるだるだんだん橋を渡って猿田淵に至る。
いやいや七滝やろ、もうひとつは…
残念ながらもっとも規模の大きな大滝は、管理している天城荘さんが臨時休業でしたので入って見ることができませんでした。
Epilogue
下部温泉を旅してうちのヒューマノイド達の感想
ミオ
柱状節理興味深い…人もでんこも一緒、自然の創ったものはひとつひとつ違う
(そう、その個性が既に存在価値なんだろうね)
にころ
西伊豆は景色がいいのに静でしゅねー
(そこが魅力なんだろうけどもっと賑わって欲しい気もするよね)
なより
雨が降って残念だったなの。もう少し雲見の町を見たかったなの
(郵便局もあるしなかなかの温泉街だったのにねぇ)