またも福島原発の問題です。未だに危険が去っていない福島の第1原発ですが、大変なことがわかりました。
22日(現地時間)付けのニューヨーク・タイムズとイギリスのガーディアンなどによれば、福島第1原発は、地震と津波が起きる直前の安全管理自体がでたらめなまま原子炉の寿命延長が決まるという、総体的な疑惑の塊であったことが明らかになったと言うことです。
ニューヨーク・タイムズによれば、原子力規制当局である原子力安全・保安院(NISA)が、地震の起きる直前のウェブサイトに公開した福島第1原発の審査結果を引用して、「原発運営者である東京電力は第1原発第1号炉の使用延長が決まるや,何週間後に第1原発の6基の原子炉に対する安全点検の失敗を認めたと」というのです。ましてやそのときの検査でウォーターポンプ、ディーゼル発電機など原子炉冷却システムを構成する33の主要設備に対する点検をしなかったことを報告したというのですから開いた口が塞がりません。規制当局も「福島第1原発の管理は十分な検査をしていなかった」と認めたと言います。
ガーディアンは「日本の原発規制当局は非常用ディーゼル発電機に亀裂が生じ、浸水にいっそう脆弱な状態だという警告にもかかわらず、津波が襲う1ヶ月前に1号炉の使用延長を決定した」と書いています。
今回の福島第1原発の危機的状況は津波による電力供給の遮断→冷却システムの非稼働によるものだといわれていますが、仮に津波がなくても地震だけでも極めて危険な状態であったと言うことになります。
だとすればもはやそれは自然災害がもたらした事故ではなく、人災による事件だと言うべきでしょう。
問題はなぜこうした総体的な不実管理が許されてきたのかと言うことです。ニューヨーク・タイムズはこれについて「原子炉の使用延長を決定、不実な安全点検は原発の運営会社と規制当局の癒着関係を非難する根拠になっている」と書いています。そして「原子炉延長稼働に別に問題はないとの意見を出した専門家らを含む「評価団」は主に政府の決定を支持する学者らで構成されている。彼らは自分を引き上げてくれた規制機構の意思に逆らうことはほとんどない」と書いています。
もちろんこうした御用学者らだけが問題ではなく、東京電力が強力なロビー活動をしていることも問題です。今後10年の間に福島原発の1号炉に続いて残りの5基、それに他の原発のうち13基が耐用年数40年の寿命を迎えることになります。仮に原則に従ってこれらを新たな原子炉に取り替えるとなればその費用はとてつもない額に上るでしょう。原子力安全・保安院も規制当局でありながら、老巧化した原子炉の危険について見ぬふりをする理由がここにあります。
東京電力が原子炉に事故が発生してもひたすら隠し通してきたことは今更のことではありません。2000年には同じ福島第1原発の点検業社の職員が格納容器の蓋に大きな亀裂があることを規制当局に告発したことがあります。しかし規制当局はすぐに問題の箇所を調査するように東京電力に指示しただけで引き続き運転することを許しました。そして住民は2年後に表沙汰になるまでまったく知らなかったのです。
原子力安全・保安院が一度原発の稼働中止を指示したことはあります。2003年です。福島の第1,2原発、新潟県の7つの原子炉について稼働中止を命じたのです。しかしそれも内務告発者が福島県知事に、東京電力が安全点検の結果をでっち上げ、隠蔽していると告発したからでした。その後明らかになったのによれば、東京電力は実に16年間にわたって安全点検記録を改ざんし欠陥のあることを隠蔽してきたことがわかっています。
と言うことになると、経済産業省の傘下機関が業体とぐるになって、原子炉の欠陥をひた隠しにしたまま原子炉を稼働してきたということになりますが,実にふざけた話です。
今回の事態はこうした官産癒着の体質がもたらしたものであって事故などではなく、起きるべくして起きた事件だと言わねばならないでしょう。
東電の犯した罪はとてつもないものです。住民の命よりも保守費用の軽減の方が大事だと判断している東電の発表をどこまで信じて良いものでしょうか。東電の肩を担いだ原子力安全・保安院や御用学者らを抜いた第3機関を通じて、現在の東電の発表が真実を隠さずに公表しているのかを検証する必要がありそうです。そして東電の経営陣、これまで安全検査を責任持ってきた人物,それと癒着した原子力安全・保安院のメンバーを告発し、当然の償いをさせるべきではないでしょうか。