平壌がアメリカに警告 | 朝鮮問題深掘りすると?

朝鮮問題深掘りすると?

初老の徳さんが考える朝鮮半島関係報道の歪み、評論家、報道人の勉強不足を叱咤し、ステレオタイプを斬る。

朝鮮外務省スポークスマンは22日、第38回主要8カ国首脳会議(G8、18ー19日)の宣言に朝鮮に言いがかりをつける内容が言及されたことで、朝鮮中央通信社記者の質問に答えています。前2回にわたるブログの記事と関連する内容なのでお伝えしようと思います。


主要8カ国首脳会議の宣言で朝鮮の平和的な人工衛星打ち上げと、自衛的な核抑制力に対して不当に言いがかりをつけた内容は、全面排撃するとしたスポークスマンの回答の内容は以下のとおりです(丸数字は便宜上管理人がかってにつけたものです)訳は29日付け朝鮮新報日本語版(http://chosonsinbo.com/2012/05/kcna_120522/ )からです。


「正義と真理を無視して米国の対朝鮮敵対視政策を庇護し、朝鮮の自主権を侵害しようとする8カ国の政治的挑発を絶対に許さない。


①われわれは、経済強国建設の要求に沿って自主的な衛星打ち上げ権利を引き続き堂々と行使するだろう。われわれの自衛的な核抑制力は、朝鮮を力で圧殺しようとする米国の敵対視政策によってできたものであり、その政策が継続される以上、核抑制力は引き続き拡大、強化されるだろう。

②対話や協議を通じて、朝鮮半島の核問題を平和的に解決する道は依然として存在するが、米国が対朝鮮敵対視政策の撤回を行動で見せない限り、その道はいつになっても開かれない。


朝鮮半島の平和と安定のために、われわれは米国側に、彼らが提起した憂慮事項も考慮して、朝鮮が2.29朝米合意には拘束されることはなくなったが、実際に行動は自制していると数週間前に通知した。


③われわれは、初めから平和的な科学技術衛星打ち上げを計画していたため、核実験のような軍事的措置を予定したことはなかった。
にもかかわらず、朝鮮の人工衛星打ち上げを問題視することを主導した米国が、「核実験説」を持ち出し対決をあおっている。


④われわれの努力を顧みず、米国が引き続き制裁圧迫行動に走るのならば、われわれも自衛的な対応措置を取らざるを得ない」。


この回答の中で管理人が注目したのは丸数字で示した②、③、④です。①は従前の原則的立場を再表明したもので,核問題や衛星発射問題に対する朝鮮の揺るぎない立場です。この問題が解消されれば,朝鮮の核問題もミサイル問題も解消されるでしょう。


②は朝鮮問題の平和的解決の鍵はアメリカが握っており、アメリカの態度如何にかかっていると言うことです。朝米間の新たな平和的交渉の枠組みが2.29合意の形で生まれましたが、それはアメリカの不当無法な敵対政策のために履行中断状態にあり、朝鮮はその合意の拘束を受ける必要がなくなっています。(朝鮮側はすでにそのことを国連安保理議長声明がだされた直後に明白に公表しています)


だが、この②では「実際に行動は自制している」と明かしながら、それをすでに「数週間前に通知した」としているのです。時期的に見て衛星発射直前のアメリカ大統領特使の平壌訪問と重なります。在米のハン・ホソク氏はこの特使はオバマ大統領の親書を携えてきたと判断しており,その親書は朝米国防長官会議に応じるとした内容だとしています。管理人はこの特使を通じて「行動を自制している」ことを米側に伝えたようだと判断します。


③はいまも日本や韓国で事実のように報道されている朝鮮の新たな「核実験準備説」が、まったく的外れな戯れ言だと言うことを暴露しています。管理人もそれを否定し、するとしたら再度「銀河4号」を使った衛星発射だと考えると指摘しましたが、他方で回答は、④で米国が引き続き制裁圧迫行動に走るのなら、朝鮮も自衛的措置を取らざるを得ないと警告しています。


この「自衛的措置」が何を意味するかは最早明らかでしょう。核実験かも知れないし、大陸間弾道弾ミサイルの実験かも知れません。事実、アメリカは偵察衛星を使って朝鮮が全長40㍍を越える新型の大型大陸間弾頭弾ミサイルを所有していることを公表しています。いずれ実験をする必要があるでしょう。


もしかしたら「具体的行動は自制している」と言っている「具体的行動」の中身がそれかも知れません。アメリカがやはり偵察衛星を使ってムスダン里のミサイル発射場に新たな大型の発射台(銀河3号を発射したトンチャン里の倍近い)を建設していると公表しています。もちろん「朝鮮は危険な国」、「朝鮮は何をしでかすか分からない国」、「国際世論など聞く耳持たない朝鮮」といった「朝鮮悪魔化」のためのアメリカ特有の世論操作かも知れませんが、「大型大陸間弾道弾ミサイル」保有説とつなげて考えるのもあながち間違えでは無いような気がします。


そして看過してはならないのが、④は、同時に朝鮮がそろそろ我慢の潮時を迎えていることを伝えているようだと言うことです。ハン氏の言うとおりにアメリカの大統領特使が秘密裏に平壌を訪れ、国防長官会議に応じる旨を伝えたとしても、その一方では軍事境界線以南の西海で危険極まりない軍事演習を引き続き行うなど,具体的な行動に変化はまったく見られません。


平壌に自制することを望みながら、そうした行動を取れないようにしているアメリカの欺瞞と詐欺的言動に対する怒りと不満が、自制の限界を超えようとしていることを警告しているのです。
もちろんアメリカに限ったことではありません。韓国や日本に対しても似たような怒りがこみ上げていることでしょう。自制する必要があるのはアメリカであり、日本や韓国の李明博政権なのです。