「剣」については、「剱岳(つるぎだけ)」のような一部の固有名詞だけで異体字を使おうとする傾向があるが、それは異体字を「独立した漢字」に昇格させているだけである。「剱」を使うなら「剣道の試合」というようなことばでも「剱道の試合」にして、音楽の題名も「剱の舞い」にすべきで、そうしないと、「剣」をあらわす複数の漢字を好んで創ることになり、漢字簡略化が漢字を増やす最悪の結果になる。
 中国大陸では「剣」だろうが「剱」や「劒」だろうが「剑」jiànと書く決まりである。「剱岳」の場合、簡体字なら「剑岳」Jiànyuèになり、同じことばである。手持ちの『新華字典』では「剣」の異体字として「劍」と「劒」だけが記載されている。

 

 中国の戦国時代を描いた映画『英雄』では「剣」の字に20もの字体(おそらく「劒」「劍」「劔」など)があったことになっており、俳優が演じた秦王(のちの始皇帝)がそれを「ばかげたことだ」と批判し、無駄な異体字をなくして漢字を統一する意欲を語っていた。しかし、東アジアでは相変わらず、無駄な異体字が氾濫している。日本で使われる「剣」は清刊『嶺南逸史』で出現している(謝世涯『新中日簡体字研究』36ページ)。しかし、日本で異体字を次々と「地名、人名用漢字」として独立させる無謀なおこないは、古代中国の皇帝も予想しなかったことだろう。日本では次のような問題が起こる。
Y!Japan 秦王 英雄 劍 字体 [1] [2] [3] [4]

 

 

2003年6月18日の讀賣新聞で「剱岳」の表記がバラバラで、地元が「剱岳」で統一しようと考えている話が載っていたようだ。
Google 「剣岳」の表記まちまち、上市町長「剱」に統一を要請 読売 2003(6/18、6/24)

 

 

こういう「剱岳」の字体の問題に関して、関係者が漢字の本場・中国の人に意見を求めることがないのは不思議である。

 

 

Y!China(www.yahoo.cn)で「剣岳」「剱岳」「劔岳」「劍岳」はすべて「剑岳」に変換される。 
劒岳」はそのままだが、その場合、映画の題名は『劒岳-點之記』であり、「点」も繁体字の「點」になる。

 

 

新年で冬の山の事故が多い。テレビのニュースで「つるぎだけ」の漢字表記が「剣岳」だった。現在日本の普通の略字体「剣」を使っていた。それでいい。

劒岳 点の記(つるぎだけ てんのき)』【作品

「剣岳」「劔岳」「剱岳」 - Y!ブログ

午後5:38 · 2013年1月5日

 

@kyojitsurekishi

NHK夕方6時45分からのNHK首都圏ニュースで「北アルプス 剱岳」という表示。飛騨山脈を「北アルプス」と呼ぶ植民地根性に呆れるが剱岳の表記がテレビでバラバラになっているのも問題だ。

午後6:50 · 2013年1月5日

 

 

 

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