<著作権>に焼け野原にされかけましたが、私は元気です。――「研究室」建て直し宣言 | ますたーの研究室

ますたーの研究室

英詩を研究していた大学院生でしたが、社会人になりました。文学・哲学・思想をバックグラウンドに、ポップカルチャーや文学作品などを自由に批評・研究するブログです。

1. はじめに

 

 

皆さん、こんにちは。はじめましての方ははじめまして。ますたーです。

普段は英詩を研究している大学院生(M2)をやっております。

 

 

2017年の8月に開設した「ますたーの研究室」ですが、この度はてなブログからアメーバブログへと移行します。

何があったかというと、まあタイトルにある通りです。<著作権>に焼け野原にされかけました。

 

 

 

 

本日は備忘録も兼ねて、「いったい何があったのか」をかいつまみつつも詳細に説明していこうと思います。

最初に書いておきますが、この一件に関しては結構腹が立ちました。普段はなるべく怒らないようにしているんですけどね。

ですが、昨今のネット社会における著作権の在り方について、身をもって考えさせられるいい機会になりました。

 

 

2. 「ある日突然書いたものが消される」という恐怖について

 
この前の土曜日、急に本ブログが見られなくなりました。昨日まで普通に見られていたのに、なぜか404エラーが出る。
 
 
さすがにこれは何かあったなと思い、調べてみたところ、一週間前にはてなブログの運営側から警告メールが届いていたのを確認しました。
普段はあまりチェックしないサブのアドレスで登録していたために、発見が遅れてしまったのでした。
日本音楽著作権協会(JASRAC)から著作権侵害の申し立てが届いていたのです。
 
 
 
出ました。JASRAC。
 

 

 

私のブログをお読みいただいていた方はよくご存じだと思うのですが、私は詩を専門にしていることもあり、ブログでも歌詞の分析と批評をよくやっていました。

歌詞自体を論じる対象とすることもあれば、アニメ作品を論じる際に、その主題歌等の歌詞を分析して論を補強することもありました。

まあこれがJASRACの目についてしまったわけです。

 

 

 

著作権法では、一定の条件を満たせば著作権が制限されることがあります。その一つが「引用」です。

著作権法第32条第1項は「公正な慣行に合致すること,引用の目的上,正当な範囲内で行われることを条件とし,自分の著作物に他人の著作物を引用して利用することができる。同様の目的であれば,翻訳もできる」(参考:「文化庁ホームページ」)と規定しています。

 

 

引用の要件ですが、

・引用を行う必然性があること。

・自分の書いたものが「主」で、引用が「従」であること。

・どこが引用部分なのかがはっきりわかるように区別すること。

・出所をきちんと明示すること。

 

などを満たせば、著作権者に許可を取らなくても「引用」として他人の著作物を一部利用することができます。

(参考:「公益社団法人著作権情報センター」)

 

 

 

この引用の問題、当然ながら研究に身を置く者として無自覚であったわけがありません。

他人の論文を許可なしにパクることは「剽窃」といって重大な研究不正に当たります。

また、英文学を扱って論文を書く場合は、一般的には Modern Language Association が定めるルール(MLA Style)を守らなければなりません。引用に関してもかなり厳格にルールが定められています。

 

 

本ブログに関しても、特に歌詞を扱う際にはこれらの引用ルールを明確に意識し、自分の中では「きちんと」やっているつもりだったのですが、まあ甘かったですね。

はてなブログはJASRACと契約していないので、歌詞を扱う際には注意が必要です。

「プリキュアの数字ブログ」の「歌詞のテキストマイニングと歌詞のテキスト保存」の記事を見て「はー便利だあ!使いたい!」と思った矢先にこれです。

『プリキュアの数字ブログ』「大量の歌詞を一度にテキスト化して保存する方法

 

 

なぜはてなブログからアメブロに移行したかというと、アメーバはJASRACと契約をしているので、JASRAC管理楽曲の歌詞掲載が使用料なしに自由に行えるためです。

 

 

 

今後とも本ブログの方向性を維持していくにあたって、「歌詞の分析」は必要不可欠な行為です。

というわけで、もう二度とJASRACからクレームをつけられたくないので、アメブロに引っ越してまいりました。

 

 

 

それにしても、「ある日突然書いたものが消される」というのは本当に恐怖でしかありません。

幸いなことに、かつて書いてきた記事は全て救出・保存することに成功しましたが、著作権の問題については今後さらに自覚的になったうえで研究活動を続けていこうと思いました。とにかく、今回の経験は身に沁みました。

 

 

3. 「権利を守ること」自体が目的化しているのは問題である

 
いや、私にはJASRACさんのことを根底からけなす意図はそんなにないですし、世間的によく言われる「JASRACはクソである」という意見に雷同する気もありません。
前提として言っておきたいことですが、著作権は重要なものであるのは間違いありません。
 
 
言うまでもないことですが、著作者の権利を守ることは非常に重要です。
クリエイティブな活動にはお金も時間も体力も膨大にかかります。著作者の権利を守ることは、クリエイターの生活を守ることのみならず、社会全体の健全な知的生産活動を支えることにもつながります。
 
 
そして、JASRACは音楽活動や創作活動にまつわる権利問題を円滑に解決するために存在する重要な組織であることにも、異論は全くありません。
 
 
ですが、JASRACの問題点は「権利保護によって収益を上げている」こと、そして「権利を守ること」自体が目的化していることにあります。
昨今だと音楽教室への使用料の請求問題。あれはどう見ても良識的ではないと思います。
要はJASRACが「著作権を守る」という名目の下に絶対的な正義面をしてアコギな運営をしているのが腹が立つのです。
また、「じゃあ俺のブログの著作権はどうでもいいのか」とも思います。明らかにバランスを欠いていることにも目をつぶるわけにはいきません。
 
 
 
その「権利の保護」は、本当に著作者が望んでいることですか?
その「権利の保護」によって、かえって健全な知的生産活動が阻害されていませんか?
 
 
私がやっている批評・研究という活動は、そもそも一次資料(テクスト・作品)が存在しないことには成り立ちません。
なぜ批評・研究を行うのかというと、誰かが書いたものを論じることによってまた新たなものが生まれる可能性があり、ひいては人類全体の知的生産活動に資することにつながると本気で思っているからです。
言うまでもないことですが、私は研究で扱う一次資料にはかなりの敬意を払って批評活動を行っています。著作者の権利侵害をしたいとかそんな意志は毛頭ありません。
 
 
 
ですが、今回の一件で「こうして知的財産は消滅するんだなあ」ということを身をもって体験することができました。
 
 
 
インターネットおよびSNSの発達によってあらゆる人が発信者となることが可能になった現在において、著作権の問題はその理論的根拠の在り方のレベルからよく考えていくべき問題であると、思わされました。
 
 

4. 終わりに

 
というわけで、<著作権>の名の下に研究室を焼き払いされかけましたが、私は元気です。
このことを知り合いに話したところ、「使用料を請求されていないだけまだマシだと思う」というコメントをもらいました。
焼け野原にされた上に金までとられていたらと思うとマジでゾッとします。
 
 
とはいえ、今まで書いてきたコンテンツも無事に救出することができたので、手直しした上で公開していこうと思います。
また、書きたいコンテンツも有り余っているので、定期的に更新ができればいいなと思っています。
本ブログは一応「プリキュア批評ブログ」を銘打っていましたので、リニューアル一発目の更新は、先日観に行った『映画プリキュア スーパースターズ!』の感想および論考を予定しています。
 
 
 
新しく生まれ変わった「ますたーの研究室」を、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。