2024年5月に読んだ本たち | ますたーの研究室

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英詩を研究していた大学院生でしたが、社会人になりました。文学・哲学・思想をバックグラウンドに、ポップカルチャーや文学作品などを自由に批評・研究するブログです。

 

もう暑い!!

 

・カルロ・コッローディ『ピノッキオの冒険』(杉浦明平訳、岩波書店(岩波少年文庫)、1958年。)

 

自分が所属している吹奏楽団にて、今度『交響組曲 ピノキオ』という楽曲に取り組むため、読んでおかないとと思って読んだ一冊。正直あまり面白くなかった。物語の内容や展開よりも、「木でできた人形が最後少年になる」「うそをつくと鼻が伸びる」という2点のキャラクターの造形によって今まで生き長らえているのだろうなと感じた。

 

 

学校に行く、キツネとネコに騙される、おもちゃの国に行く、サメに食べられる…等々色々なエピソードがわあわあ出てくるが、これは連載作品だったためにあまり長期的な展望がなく物語を書かれたという形式に由来するらしい。だから、エピソードごとにキャラクターの設定が一貫していなかったり、何となく展開が行き当たりばったりになっていることはそういうことらしい。

 

 

終盤のおもちゃの国と、最後にサメからジェッペットじいさんを助け出す場面はそこそこファンタジーな気分がして良かったのだが、ピノキオの性格の一貫性のなさだったり、すぐ牢屋に入れられたりみたいな雑な処理に結構イライラしてあまり楽しめる読書ではなかった。悲しい…

 

 

原作としてはそんな感じだが、訳者解説がすごくよかった。本作に渦巻く道徳的価値観や規範意識(いい子になりなさい)は、近代化を急ぐ当時のイタリアの社会背景がありましたという話と、貧乏だから、不真面目だからといって身体障害になるわけではなく、本人にはどうにもできない因果関係というのがこの人生にありますよね、という話が印象に残った。

 

・ロマン・ロラン『ベートーヴェンの生涯』(片山敏彦訳、岩波書店(岩波文庫)、1938年。)

 

ベートーヴェンに長らく取り組んでいるので読んだ。ロマン・ロランによる伝記部分と「ハイリゲンシュタットの遺書」部分をとりあえず読んだ。確かに読み継がれる名著だという認識を受けた。

 

伝記部分はかなり読みやすかったし、遺書もぐっとくるものがあった。作品に取り組む意識が少し変わったかもしれない。

 

 

・あfろ『ゆるキャン△』(16)

 

 

『ゆるキャン△』16巻表紙。(C)あfろ/芳文社

 

4月から始まったアニメ3期もめちゃよい。『ゆるキャン△』の3期から、アニメ制作の拠点が変わったことに些かの不安があったが、そんなことは全く関係なかった。むしろ3期のデフォルメが効いたデザインが2期までのよりも好きかもしれない。僕はオープニングのデザインがとにかくセンスが良くて好きです。

 

 

さて16巻の話。今回は表紙に描かれているなでしこ、恵那、絵真の3人の群馬キャンプが展開されるが、この3人でキャンプに行くのがまずいいなあと思った。『ゆるキャン△』は人間関係もゆるい。

 

一方で少し思うこととしては、初期のころのお金がなくても~というコンセプトから、本格的な旅行になって来たなという感じで、今回は山梨から群馬に行くにあたって新幹線やタクシーも登場するなどしており、女子高生というよりも女子大学生の経済力ではと思った。

 

 

とはいえ、群馬に行ってくれたのはうれしい。2022年は仕事でしこたま群馬に行っていたが、自分もまた群馬に行きたくなった(前橋と高崎にしか結局行ってないので)。

 

・山本崇一朗『からかい上手の高木さん』(20)

・稲葉光史『からかい上手の(元)高木さん』(20)

 

 

『からかい上手の高木さん』第20巻表紙。(C)山本崇一郎/小学館

 

『からかい上手の(元)高木さん』第20巻表紙。(C)稲葉光史/小学館

 

『からかい上手の高木さん』もついに最終巻となった。確か発売は年明けすぐだったと記憶しているので、かなり遅ればせながらの読みとなった。大変素晴らしかったです。

 

 

『高木さん』の話をするときはいつも書いていることだが、最終巻でもやっぱり変化の話を直球で行ってくれたのが少し嬉しかった。西片が陸上部に入り、高木さんと少し距離をあけることが最後の決め手になったんやなと深い洞察と納得感があった。

 

 

『高木さん』と『元高木さん』の20巻を二つ並べると、子ども→大人の変化が見れてすごくエモーショナルな気持ちになりますね。今映画館でやっている『高木さん』の実写映画も観に行こうかなあという気持ちになった。