◆ 「野神」というものにちょっぴりと…
「民俗学」という非常に危険な学問があります。
この学問に携わる方々を私は
「おバカさん」と呼んでいます。
軽蔑の意味ではなく、
最大の尊敬の意味を持って。
こんな大変な学問…
「おバカさん」でないとできません!
一つ一つ…丹念に丹念に…
例え成果を期待できずとも懲りずに…
飽きずに…
しらみ潰しに…
汗にまみれ…泥にまみれ…
古来からの「伝承」を吸い上げ形あるものにしていく…。
その最高峰に君臨するのが柳田國男氏であり、
我々はその偉大な功績を大変有り難く享受していると思っています。
日本の文明の発展とともに急速に失われていく古来からの「伝承」…伝えるべく方々の高齢化…悲痛な面持ちで吸い上げることに尽力されたことと思います。
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恒例の余談となりましたが。
そのような民俗学者たちの血の滲むような努力のお陰で、幾分かは現代にも残りました。
その一つに「野神(のがみ)」というものがあります。
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私は民俗学者でもなんでもありません。
あくまでも一般的な事例をごく一部紹介するに留めます。「野神」にもっと陽の目が当たりますように…との思いでこの記事を。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20210919/23/keith4862/84/6f/j/o0810108015003494121.jpg?caw=800)
【「野神」とは】
稲作の守護神の一つ。
「野」の「神」のことです。
主に関西地方でそのように呼ばれ、
他地方では「農神」「作神」「亥の神」などと。関西でもそのように呼ばれる地域も。
地域により信仰形態、祭祀形態もバラバラ。
それがまた面白いところなのですが。
【「野神」の一年】
稲作は一年サイクルで行われます。
「野神」も同様に一年サイクルで守護してくれると信仰されています。
以下は一般的な「野神」のサイクルを。
◎田植えに当たり、「山」から「野神」をお招きせねばなりません。
「野神」は山に鎮まっているとされます。
「村」には「山」があり、それを源流に流れてくる「川」に挟まれた地に人々が暮らします。言い換えれば、そのような地を選んで集落が形成されていきました。
その「山」は「神奈備」などと呼ばれており、つまりは「神の鎮まる山」と考えられていました。
◎「野神」を「桜」にお招きし、収穫まで守護して頂く。
稲作開始時期にちょうど「桜」が咲きます。「桜」は「さ(農耕、田の神)」と「くら(座、つまり宿る)」を語源とする説が有力(→ 「◆桜の語源」の記事参照)。
村の入口、田畑や川の畔、塚や杜の場合もあるようです。多くの場合は「桜」や「榎」などの「木」や、「石」などに宿って頂きます。
◎田植え時に行事をされる地域も。
ひょっとこと牛に扮して面白い掛け合いをしたり…などという行事もあるようです。「御田植神事」と呼ばれるものもあり、区別は困難かと。
◎収穫前にも行事が…。
一般には収穫後に行事(お祭り)が催されますが、地域によっては端午の節句や夏にも。これは畑作のものとする見解もあるようです。
◎収穫後には「野神」に盛大な御礼を。
多種多様な神饌があったり、子供たちの裸相撲や泥相撲、蛇神に見立てた数十mにも及ぶ巨大な注連縄を作り村を練り歩く行事なども。
◎「野神」の保存継承。
どうやら私の住む奈良県が全国でもっとも「野神」が残されている地域であるとのこと。
「大和の野神行事」として、「記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財」として登録されており…(長いな)、奈良市・大和高田市・大和郡山市・天理市・桜井市・橿原市・御所市・川西町・三宅町・田原本町が「野神行事保存会」として組織化されているとのこと。
他にも私の知る限りでは、滋賀県の湖北湖東(高月町周辺)辺りもかなり多いように思います。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20210428/01/keith4862/bd/dd/j/o0810108014933150613.jpg?caw=800)
(御所市蛇穴の野口神社)
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20200722/01/keith4862/43/2c/j/o0810108014792398251.jpg?caw=800)
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20200722/01/keith4862/62/9d/j/o1080081014792398255.jpg?caw=800)