映画探偵室 -1998ページ目

誰が為に鼻は高い

あまりにも有名な場面なのでご記憶の方も多いだろう。「キスするとき鼻は邪魔にならないの?」と坊主頭から毛が生え始めて間もないイングリッド・バーグマンがアメリカから来たレジスタンス義勇兵士のゲイリー・クーパーに言うシーンだ。(日本で)封切り当時,鼻が高いことを鼻にかけやがって,と嫌味を言ったヒトがいたようだが,こんな質問をした理由を理解すればこれはとても哀しい言葉だと言うことが分かるはずだ。そんなヒトにはその後の台詞も理解できなかっただろう。

クーパー「同じことをしてもいいのか?」

バーグマン「Yes, Yes]

ヘミングウェイが最後には猟銃で自殺した理由はこの映画にも少し出てくる独白に隠されている。あまりにも重いことなのでここでは深く語る積りはない。映画は結局その人が観た通りでしかないから。

前にも書いたアンソニー・クインの演じた「老人と海」では,創作に行き詰ったヘミングウェイが「作家」として登場する。その作家も,老人もヤンキースのジョー・ディマジオのスランプに心を傷めている場面では,男の苦悩について考えさせられる。


神田明神下

実は当探偵室の名義上の住所はお江戸神田は明神下である。平治親分にあやかろうと開店したがどうもイマイチ「お客」が来ない。平治親分役は前の映画では長谷川和夫だが,ワタシは大川橋三が一番好きだ。長谷川和夫が色っぽすぎるからである。江戸っ子はもっとあっさりしなくちゃイケネエヨ。長谷川和夫じゃお静が年中いちゃいちゃしたくなっちまうだろ。銭を投げつけるなんて不謹慎というお方もいるが,ちゃんと拾っております。そこは「宵越しの銭は持たネェ」などとは申しません(続く,カナ?)。

メグレ役は

誰がいいかとファンならばあれこれ想像したくなる。TVシリーズも決して悪くはないが,初代のジャン・ギャバンも悪くはない(ジャン・ギャバンの出たヘッド・ライトの監督であるアンリ・ベルヌイユはシムノンの旧友であるし)。しかし,当探偵室としてはピエール・ロンスダールを推したい。「ジャッカルの日」でジャッカルに対決した腕利き警視で,どこかのほほんとした温かみがあった。仕事が嫌いで家庭が一番,という愛妻家の設定にもなっていたし。ピエール・ロンスダールはこれ以上フランス人らしいフランス人はいないという顔であるが,本当はイギリス育ちのフランス人だ。「日曜日には鼠を殺せ」(主演:グレゴリー・ペック,フランコ政権下の悪代官,もとい秘密警察署長がアンソニー・クイン)でレジスタンス役をやっていた。探偵は一度見た顔は忘れない。