映画「PERFECT DAYS」
主人公の平山（役所広司）は、浅草
界隈のアパート２階の部屋でひとり
暮らしで、渋谷公衆トイレの清掃員
だった。
彼は、毎日、決まったような生活を
していた。
薄暗い内に起きて、歯を磨き、草花
に水をやり終わったあと、缶コーヒ
を飲み、清掃道具を載せたワゴン車
に乗り、高速道路で浅草から渋谷に
着くまで好きな曲のカセットテープ
をかけ聴いている。
昼休みにはいつも高台にある神社で
休憩し、樹々の間から射す木漏れ日
を見ては、フィルムカメラを取り出
し、モノクロ写真を撮る。また大木
の傍に小さな芽をだした苗木があれ
ば、これを持って帰り、他の草花と
同じく大切に育てている。
仕事が終わると、自転車でアパート
近くの銭湯にゆき、そのあと、浅草
地下鉄の商店街の定食店で焼酎を一
杯飲み、夜の食事をする。
そして休日の夜には、雨が降っても、
行きつけの居酒屋に通っていた。
ある日女将（石川さゆり）は、客に
せがまれて、「朝日のあたる家」を
歌い、これを聴き入っている平山。
いつも、寝床では、眠くなるまで
関心のある小説を、「木」（幸田
文）やフォークナーの「野生の棕
櫚（しゅろ）」などを読み、その
日に目にした木漏れ日の映像が重な
り眠ってしまっていた。
ある日。若い姪（中野有紗）が家出
をし平山のアパートにやってきた。
一緒についてきて公衆清掃をし、い
つもの高台で休憩し、木漏れ日を眺
めて撮っている叔父を知る。
若い姪は離婚したおばさんは、（平
山のことを）「あのひとは住む世界
が違うから」と、言ってたことを告
げる。
その夜だった。平山の妹が娘を連れ
戻しにきた。
妹は「介護施設にいる認知になった
お父さんに会っておいては」と言わ
れ、妹に抱きつき、とどめなく涙し
ていた。
ある日、平山は居酒屋にゆくと店
はまだ開いてなく、しばらく向か
いの店で飲んで開くのを待ってい
ると、女将が男を連れて店に入っ
ていった。
店の灯がつき、入ろうとしたとき、
戸の隙間から、抱きあっている二
人を見た。
隅田川の川岸で平山と男が向こう岸
を眺め話している。
男（三浦友和）がいう。
結婚２年後に癌を患い彼女（女将）
と離婚し、５年経った。
今晩彼女に会いに来た。
どうしてだろう、逢っておきたいと
思ったのは？という。
平山は、缶ビルを勧める…。
ゆれる川に映る影。
川の影はひとつになっている。
人の影はどうしてひとつにかさなら
ないのだろうか、いやなりますよ。
どうですか、なったでしょう。
いや、なっていないですよ。
それじゃ、影踏み遊びをしましょう。
はじめわたしが鬼に…、
今度はあなたですよ…。
と、夜が更けてゆく。
再び夜が明けだす。
薄暗いなか、平山はいつもの通り、
歯を磨き、…。ゴン車で高速を走り、
からだでリズムをとり、カセットテ
ープの「Feeling Good」を聴きな
がら、こぼれるような笑顔で運転し
ていた。（完）
Enjoy映画「PERFECT DAYS」
（感想）
季節は移ろいゆき、ときは流れる。
ときの流れは、川の流れと同じで、
日々かわってゆく。
映画館を出た。
曇天の空。街の外を見上げる。
駅前の公園の木々の隙間から、木
漏れ日が射す。
ぼくは写真を撮る。
限られた命。
どうして今ここにふたりが立って
いるのだろう。
彼女は「また逢えるの？」という。
「今度」というと、今度っていつ
と聞かれ、「こんどは今度、いまは
今」と応える。
このとき、ぼくは、ふと「世の中
のこと、何もかもわからずに終わ
ってしまうのだろうか…」と、思
った。
映画「PERFECT DAYS」
監督 ：ヴィム・ヴェンダース
共同脚本：高崎卓馬
美術：桑島十和子
平山（親族）
平山（新宿・所掃除）：役所広司
平山の妹 ：麻生祐未
平山の姪・ニコ ：中野有紗
同僚
タカシ ：柄本時生
タカシの恋人アヤ：アオイヤマダ
居酒屋
居酒屋のママ ：石川さゆり
ママの元夫・友山：三浦友和
居酒屋の常連客 ：あがた森魚
平山・趣味の店
写真店の主人 ：柴田元幸
古本屋の女性 ：
カセット販売員 ：
音楽（楽曲）など
□アメリカのフォークソング：
「The House Of the Rising Sun」
（朝日のあたる家）
□ニーナシ・モン「Feeling Good」
□エグゼクティブプロデューサー
：役所広司
「Feeling Good」
Birds flinng high
you know hou I feel?
Sun in the sky
You know how I feel
さあ、風に身を任せよう
君もそうしたいだろ？
夜明けに
陽の歌を聴いて
新しい自分に生まれ変わって
新しく人生を始めるのさ
最高の気分だ
Fish in the sea
you know hou I feel?
River running free
You know how I feel
さあ、川の流れに身をませよう
何かが始まりそうな予感がするんだ
夜明けに
陽の歌を聴いて
新しく人生を始めるのさ
最高の気分だ
You know what mean,dontya know
どういう意味か分かってるだろう？
夜明けに
陽の歌を聴いて
新しい自分に生まれ変わって
新しく人生を始めるのさ
今まで最高の日だ。
最高の気分だよ。
これ以上ない喜びさ
これ以上ない幸せだ。
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