戦後、敗戦国となった日本の雑誌「アメリカ様」。

この雑誌は昭和21年5月に宮武外骨により発刊される。

ところが、進駐軍のマッカサーの命で一部削除される。

外骨は「反骨」のジャーナリストと称される。

 

 

ー宮武外骨(とぼね)ー

戦中の新聞に宮武外骨がとりあげらている。

宮武は、幼名の亀四郎(亀は外骨内肉の動物)を

外骨と改め、以来宮武外骨、廃姓外骨、再生外骨、

半狂堂外骨、復旧宮武外骨などと称していたが、

今年77歳の喜寿を機として、従来の「がいこつ」を

廃して和訓の「とぼね」と改める。このことを知己に

知らせており、その肩書が振るっている。

外骨曰く、

昔とった筆つかいの猛者、

今は天下無類明治文庫の要人

悪くいえば東大の飼い殺し

銃後の配給品喰潰し部隊員

(昭和18年6月5日『中外日報』)

 

 

ー「アメリカ様」の三幅対(三新聞・三財閥・三論士)ー

「アメリカ様」は、見開き2ページで、短文60本。

例言についで「序」がある。これを要約すると、

戦争は、軍閥が、官僚と財閥とこう合し、

無謀の野心を起こしたために我が国を滅ぼしたという。

この敗戦は日本国の、国民の仕合せで、アメリカ様のお陰である。

「アメリカ様」を発行して自らを慰め、他を慰めんとする

東京の床の間に掲げられる三幅対として、

三新聞・三財閥・三論士を挙げている。

 

朝日新聞、毎日新聞、読売報知の三新聞

この三新聞は、いずれも軍閥、官僚擁護につとめる。

反抗らしい態度をとれば発行禁止となり、やむおえずという

ことになるが、戦争犯罪というのは、戦争指導、

戦意激励の行為をいい、アメリカ様に罰せられても

仕方があるまい。

三井、三菱、安田の三財閥。

財閥は、軍閥や官僚とこう合し、無謀の戦争を

起こさせた。軍閥や官僚とともに、この三財閥を

撃退せねばならない。しからば、いかにして

撃退するかが問題で、資本主義を排斥する社会主義者、

共産主義者の手段によるほかはない。

公法で全財産没収か、彼らと馴れ合う官僚政府でなく、

民主政府の確立を待ち自然消滅を期する。

この搾取的国賊の撃退を計る必要がある。

尾崎行雄、徳富猪一郎(蘇峰)、三宅雄二郎(雪嶺)の三論士

を三幅対と挙げる。徳富蘇峰は、「面白新聞」、「公司月報」で、

痛撃を加えるが、毎日新聞(1945.2.21)発行の蘇峰の所論だけでも、

死刑に相当すると思う。

旧令古慣を断ち切り、青年に活舞台、粉砕せよ

日本抹殺の妄想(細目には指導者目覚めよ、

皇国革新十ヶ条)。

天皇の大権発動で、急務十ヶ条の大詔を渙発せよとの論である。

 

 

明治維新で、明治21(1888)年に大日本帝国憲法が

発布されたとき、そのパロディを「頓智研法」を発表し、

天皇になぞえられた戯画を掲載し、懲役3年の刑を受ける。

以後「天ハは神聖ニシテ侵すヘカラス」で、

天皇は神さまとなり、一億一心の要となる。

敗戦後、昭和21年元旦に天皇は人間宣言する。

「アメリカ様」は、敗戦の現実を軍国主義からの

解放にとらえ、それまでの軍閥や官僚政治、それに

おもねった者たちをこきおろし、敵国によって

もたされた事実をアメリカ様と諧謔的に表現している。

 

宮武外骨(参考)

2019.9.14

三谷幸喜(映画『記憶に…』)と宮武外骨(「滑稽新聞」)

2019.9.24

宮武外骨(雪冕)と小林一三ー新大阪物語(675)

2019.9.25

小林一三(小説「練絲痕」)と宮武外骨ー新大阪物語(676)

2019.9.28

天が茶屋の聖天山(正圓寺)ー新大阪物語(679)

2019.10.3

宮武外骨「滑稽新聞」と竹久夢二ー新大阪物語(684)

2019.10.4

宮武外骨と南方熊楠(「奇人」)ー新大阪物語(685)

2019.10.17

大阪市長の池上四郎(天王寺公園)ー新大阪物語(693)

2019.10.18

宮武外骨(「反骨」)と「アメリカ様」