新聞広告を見て驚いた。

広告の内容が、奇想であった。

本日から公開される映画「記憶にご

ざいません!」の広告を見、明治の

宮武骸骨のことと結びつけた。

 

ー映画「記憶にございません!」ー

広告によると、三谷幸喜(脚本・監督)

は大ヒット党の党首で、5つの公約を掲

げている。

「其の二」に「政界風刺はございません

!」とあり、(本作は総理大臣の記憶喪

失から始まるファンタジー。

見覚えのある政治家や政策があっても、

それはたまたまです。)とことわりが

ある。

 

 

ー宮武外骨と「頓智協会雑誌」ー

宮武外骨(1867ー1933)。

かれは生涯(明治・大正・昭和)にわ

たり雑誌を40冊以上、廃刊しては創刊

してきた。

慶応3(1867)年、豪農の家(現香川

県綾川町)で誕生し、幼名は亀四郎で、

14歳で上京し2年後に帰郷する。

新聞・雑誌好きの彼は、中国の「亀は

外骨内肉ノ者也」から「外骨」と改名

し、翌年20歳のとき、「頓智協会雑

誌」を発行する。

 

創刊から2年後、明治22(1889)年

に大日本帝国憲法が発布された。

このとき、外骨は、翌月の雑誌(28

号)に「寓意画 頓智研法発布式 

附研法」を図入りで掲載する。

 

<頓智研法発布式>

 

 

「骸骨」が「頓智研法」を下賜する図と、

「大頓智協会は讃岐平民ノ骨之ヲ統括ス

」にはじまる「研法」の条文を掲載してい

る。

当時、憲法の発布を祝い式典の錦絵が売れ

る、これを模した挿絵と憲法の条文を研法

の条文と内容を替えて掲載する。

 

ところで、これにより外骨は「不敬罪」と

なる。

「王座の上に骸骨を図したる等は天皇に対

不敬の所為なり」と告発され、結果、3

年8ヶ月の獄中生活を余儀なくされる。

 

<「滑稽新聞」>

生涯40冊以上の雑誌を創刊しては廃刊を

くりかえす。外骨のどの雑誌も面白い。

たとえば「滑稽新聞」、この雑誌は第1

号(明治34年1月)から第173号(明治

41年10月)まであり、最終号は「自殺

号」と称し廃刊する。

 

ー滑稽新聞「自殺号」ー

 

 

廃刊になった滑稽新聞(自殺号)の

表紙には、

威武に屈せず 冨貴に淫せず ユス

リもやらずハッタリもせず

とある。

記事に「悪官吏のため其生命を絶たれ

んとして潔く自ら死す、アゝ惜しいこ

とだと云われたいのである」と記す。

表(裏)紙画のタイトルは「新陳代謝」

である。

 

ー宮武外骨と映画「記憶にございません!」ー

宮武外骨は、生涯に入獄4回、29回の

行禁止処分を受ける。

奇想の外骨よ、生きた時代がちがうと

いえ、『政界風刺ではございません!』

と、ひとこと、ことばをそえられなかっ

たか。

あわせて、三谷幸喜監督が、この映画

をもって廃業にならないかと心配する

が、これは、この映画を見てみないと

わからない。

 

 

 

2019.9.13

絵師・河鍋暁斎(「風刺」)ー天変地異と「風刺」(戯画・美人画・漫画)