種・家庭菜園・園芸・野菜 市川種苗店
シソの種を蒔きたいのだけど、うまくいかなくて・・・
というご質問を良く受けます。
今日は店頭ではスウィートバジルについて質問を受けました。また電話やメールでも赤シソが上手くできないのはなぜだろうかというお問い合わせをしばしば受けます。そんなわけで今が種まきの適期であるシソを取り上げてみたいと思います。
シソは紫蘇とも書きます。梅干し用の赤しそ、別名オオバの青しそ以外にも、バジルなどミントなどハーブ類もシソ科でして、同じように考えることができます。

赤チリメンシソ
●シソの色や香りの原因は???
鮮やかな赤色、独特の香りこれらはストレスが原因で発現すると私は考えています。
①サニーレタスは夏場どんなに頑張っても冬期のような濃い赤にはなりません。また肥料が良く効いていたり、ハウスで温度が高い場合は、露地栽培より緑が濃く出ます。
②唐辛子の場合、苗をお買いになったお客様が全然辛くなかったとクレームをいってこられることがあります。その唐辛子の現場に行ってみると一目瞭然。元気が良すぎます。葉が生き生きと生い茂っています。佐世保では唐辛子の「捨作り(うすてづくり)」=所謂ほったらかしを勧める言い伝えがありますが、要するに過保護が辛味や風味を殺してしまっているのです。
③イチゴ、トマト、スイカ、メロン、・・・糖度が高いことが美味しいといわれる一般に果実類は、肥料をガンガンやることが糖度を高めるのは直接には繋がりません。どんな肥料を工夫しても糖度を1度上げるには相当の苦労を要します。しかし、水分を抑え気味にすると簡単に糖度は上がります。栄養生長と引き替えに糖度や旨味は向上するのです。果実の母体は、ストレスを感じるとき、死期が早まったことを自覚し、次世代に種(ダーウィンのいう所謂”シュ”)の継承を託するために、我が身に回るべき養分を削って種と果実に集中させようとするのです。
結果として、ストレスを受けると植物は自分を守ろうとして、色、味、香りを強める。という法則が成り立つのです。乾燥も植物にとっては大きなストレスですが、水分が少なくなると必然的に体内濃度があがり体液に溶解する糖分の濃度も相対的に上がるのだと考えられます。
シソの場合に当てはめると、有機成分が効きすぎている肥えすぎた畑では、葉が厚く細胞膜が硬くなるので内部の香りが外に出にくくなります。また香りも淡く色も出にくくなり佐世保では老えたシソという意味で「裏シソ」といって嫌います。
痩せている畑でも生育後半の肥料の効き過ぎは同じ結果を生むようです。
肥培管理としては収穫間際には窒素分が切れるように与えることがポイントとです。有機系はだらだらと効きますので、香りのコントロールの意味では化成系にメリットがあります。また、雨が続くとどうしても香りが淡くなるのは上記で述べたとおり仕方がありません。
色、味、香りには良いストレスが必須だと!
私はお客様に申し上げております。子育てと同じで美味しい野菜を作るためには過保護は禁物だと言い換えることができるのかもしれません。

青シソ
●シソ類は種が小さく好光性、しかも短日性を持っています!
わかりやすくいえば、
①シソを種まきするときは土をかぶせるな!
②シソは早すぎず遅すぎず適期に蒔くべし!
ということです。とくにシソ作りの最初の関門は①です。
お客様曰く
「シソはこぼれ種で十分、栽培する必要なんてない!」と。
ご冗談でしょ!と私は答えます。(なぜご冗談なのかは次の項で)
こぼれ種は何リットルもの種が自然界では落ちています。一方人間が蒔く種は自家用の場合せいぜい10mlくらいなものではないでしょうか。単純に計算すると500倍から1000倍くらい多い種が落ちている計算になるので、数%の発芽でも十分のシソが生えてくるのに対し、人工的に種まきした場合には慎重に蒔いて80%の発芽率でも勝負しても負けてしまいます。
発芽率を高め、生長する確率を高めるためにはシソの生まれ持っている性質に逆らって種まきしても成功しない理屈なのです。
光を好む→土をかぶせない→乾燥したり雨にたたかれてします→種を蒔いたらその上から十分鎮圧する。→さらに、光を通すような被覆をすれば完璧なので、昔では籾殻、今なら不織布などをかぶせてあげる。
このように工夫すると発芽の問題はクリアできてとても上手くいきます。
②の短日性についてはあまり遅く蒔くと生長しきれないうちに短日になると花が付いてしまい大きく育たないということなので、少なくとも4月くらいまでには種まきを終えるようにするとよいでしょう。

スウィートバジル
●シソの性質を決定づける色や香りは遺伝的には劣性なハズ!
~こぼれ種がなぜダメなのかの理由です
上記の命題は実験をしていないので大きな声では言えないのですが、論理的に導き出すことは可能です。
①もし、優性であるとするならば、色が良く香りが良いシソが自然界に蔓延することになります。しかし、色が良く香りが良いシソは、人間が好むと同じようにシソに害をなす虫たちも好むはずです。
②すると、ダーウィンの適者生存の原理を当てはめれば、シソ自身は虫に食われたくはないので色が悪く、香りが薄く、結果的に味の悪いシソを次の世代には増やしていこうとします。
③従って最初に述べた優性であることと矛盾するので、優性であるはずがなく劣性でなければならなくなるのです!!
数学的な背理法のように合理的に導かれた結論によると、自然界ではそのまま放っておくと香りが淡く色の薄く、(チジミが少ない)、シソだけが繁殖するようになるのです。
だから、人間が好む色の赤い梅干しに適した香りの高いシソを栽培するには、劣性形質を人工的に選抜した特別な種を用いないといけない理屈になるのです。自然にこぼれ落ちた種を当てにしても良いシソはできないのです!!!
劣性形質を選抜するために、F1では上手くいきません。熟練した純系選抜が必要になります。従ってタキイやサカタなど一流メーカーが得意とすF1=一代交配という手法では無理なので、選抜技術に卓越した熟練の採種農家の腕が欠かせないのです。種屋にとってもF1はお金さえ出せば手に入れることができますが、採種元の技量が直接に品質に反映されるのでお店によって同じシソでもまったく別のシソができるのです。お店の力如何にかかっているのが実情です。
シソ以外にも、高菜、葱、しんぎく、エンドウ、などF1ではなく、純系選抜系が力を持っている領域では同じ名前であっても、種屋から購入した種はまったく異なっていると考えて頂いた方がよいでしょう。こんな言い方は失礼かもしれませんが、専門店以外で売られている一般種は玉石混淆。いや、コストを考えるととても玉が混じっているとは思えず石ばかりなのが現実な訳です。
ワンポイントになるべきところがひどく長くなってしまい申し訳ございません。
※当店の隠れたベストセラーの国産戸塚系「赤チリメンシソ」をご覧下さい
※シソなどマイナーな葉菜類についてはこちらをごらんください
※土をかけない、足で踏んづける、いじめる、良いストレスなど裏技についてはこちらを
※公開してしまってから気づいたのですが二年前の今頃まったく同じテーマで書いていました(大笑)
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