とことん気が向いたときにしか更新しないブログですみません。


ひだまりが聴こえるのドラマを見て、静かな衝撃を受けたので、久々に感想など。


ちなみに先行配信の2話までの感想なので、地上波組の方はネタバレ気をつけて下さいね。


原作はBL読んでる人なら大抵知ってる超有名作品。もちろん私も読んでます。足掛け10年連載中で未完。すでに映画化もされています。


下剋上球児を見ていない私にとって、主演の2人は初見。どんな俳優なのかもよくわからないまま、1話を見ました。


んんんん???


これ一般文芸じゃね???


これまでのJBLがラノベだったとすれば、これは圧倒的に一般文芸。


俳優の容姿、台詞、音楽、すべてが非ラノベ。


最初に言っておきますが、ラノベが一般文芸より下とか、そんな話をしたいのでは毛頭ありません。


古くは銀河英雄伝説や十二国記。これらより面白い一般文芸がどれだけあるかと考えれば、ジャンルとしての優劣など語るだけ無駄になります。


ここで言いたいのは、あくまで作風としての区別。


これまでのJBLは、ほぼラノベの文法だったのに対して、ひだまりは一般文芸の香りがそこかしこにします。


TVerのサムネ用にわかりやすいBLシーンを入れてこないし、胸キュン(死語)な仕草や台詞でトゥンク…てならない。


1話のラスト(見せ場)が、悪口を言われてもどうせ自分には聞こえない、と話す航平に「何度でも聞き返せよ!聞こえないのはお前のせいじゃないだろ!」と怒る太一が、無言で涙ぐんだ相手を少し不思議そうに見つめるとこで終わりですよ?


待て待て、これ本当にBLドラマか??


いや、もちろん原作読んでるから、この後ちゃんとBがLすることは知ってます。知ってますが、ドラマとしてあまりにナチュラルな作りに、静かな衝撃を受けっぱなし。


BLドラマって、こうやって作ってもいいんだ。


本数が増えて、似たような作品も増えてきたからこそ、各局あの手この手で独自性を出そうと努力してますよね。


そこに新たに放たれた、ひだまりという微炭酸飲料。公立高校の渡り廊下に置かれた自販機で買えるみたいな素朴さ(よくわからない例えですみません)。


何しろ太一の祖父がでんでん。


でんでんBL出んの!??


山崎まさよしがBLに参戦するこの令和、もう誰が来ようとおかしくはないけども。


たまにBLドラマのちょい役って、近所のスーパー歩いていた一般人連れてきたんか?てくらいアレな演技な人いるので、脇がでんでんという引き締め効果に感動。ありがとう、でんでん。


主演2人のチョイスがもう、顔の良いアイドル俳優で押しきろう感皆無。


決して華やかなイケメンではない。けれども、ドラマの中でこの2人は確かに繊細に、ときに綺麗に見えます。北島マヤ的な見映えですね。演技のうまさで役として輝ける実力と才能。


最近は徐々に演技できる俳優も起用されてきているとはいえ、まだまだJBLは『若いイケメン俳優の成長を温かく見守る』系コンテンツであることは否定できません。


これまでの文法に真っ向から立ち向かうような、ある意味では大胆なキャスティングが大成功だと思います。


2話はより演技に深みが増して、途中からBLを見ていることを忘れていました。


後ろから太一に呼びかけられても聞こえない航平が、肩を叩かれて初めてギョッと体を硬直させる様子。授業中に大声で先生に注文つけてしまう太一の底抜けのおおらかさ。


生きてる。


ドラマの中で、登場人物たちが呼吸をして、当たり前に生活をしている。彼らは夜になれば、家に帰って食卓を囲むんだろう。そんなリアリティがこのドラマには反映されています。


原作の見た目には、映画のほうが寄せていると思います(特に太一)。


でも以前、窮鼠の記事で書いた通り、実写に一番必要なのは、原作を体現できる演技だと思います。



言うならば、映画はラノベの文法。ドラマは一般文芸ですかね。


どちらが良い悪いではなく、映画とドラマでは同じ原作を使って目指している場所が違うというか。


あと私がドラマを一般文芸だと感じたのは、太一役の小林虎之介さん(名前が良い)が、めちゃくちゃ一昔前のフリーター文学みがあったからです。


大学出て、何となくバイトで生活して、恋愛もズルズルうまくいかなくて、あー俺、何やってんのかな、ていうあの一時期たくさん書かれたフリーター文学です。私もよく読んでました。ここから抜け出した実力派作家は何人もいます。


いかにも、そういうフリーター文学に登場しそうな雰囲気。そしてそういう雰囲気の俳優は、普通はBLには起用されません。毛色が違うから。


さらに加えると、台湾映画に出てくる高校生っぽい。のどかな田園風景をチャリで制服着て2ケツしてる、台湾の高校生。


航平役の中沢さんは、静かな影のある佇まいが純文学みあります。


2人とも、良い意味で、今風の俳優ではない。それが逆に強みになっている。


2話のエンディングで川崎鷹也の歌声が流れたとき、太一に導かれて新しい世界へ踏み出そうとする航平の穏やかな表情に、ぐっとこみ上げるものがありました。


おそらく、JBLの中ではトップクラスの演技力。


ドラマひだまりが聴こえるが、この先どんな高みを見せてくれるのか。うんざりするような猛暑の毎日に、涼しげな楽しみが増えました。



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