夏の終わりと共に、ひだまりが聴こえるの先行配信も最終回を迎えました。


もう太一と航平に会えないのが寂しいような、航平の長い片思いがようやく報われて嬉しいような、悲喜入り交じった気持ち。


このドラマは、ファンタジーであるBLをいかにリアルな日常に近づけるか、終始一貫した姿勢で挑んでいました。


顔芸でごまかさないナチュラルな演技、実際の大学生が着ていそうなやり過ぎないファッション、極力抑えた静かな音楽の使い方。


私たちが生きる毎日の延長に、太一や航平が笑っているかもしれない。そんな現実と地続きの世界を、ずっと見せてくれました。


日本のドラマで、なおかつ深夜のBLで、漫画チックな過剰さを取っ払うことがどれほど大変なことか。


BLドラマがこれだけ増えて、色んな方向性の良作が生まれている現在、ひだまりは写実的な方法でもBL漫画をドラマ化できるという可能性を存分に示したと思います。


一方で、「BLに寄りすぎない」姿勢も一貫していたので、それでいいという方もいれば、そこが物足りない方もいたかもしれません。


原作2冊目の幸福論のBがLする部分が、ドラマでは細かくこつこつ削られていて、そういう方針なんだろうなあ、とは思いつつ、そこは少し残念でした。原作はライトBLの代名詞のようになっていますが、内容はわりとちゃんとBLしてると思うので。


それからこれはBLに限らずの話で、日本のドラマは最終回の手前の回が一番盛り上がるんですよね。逆に言えば、最終回の畳み方が下手というか。


ひだまりの最終回も、舞台を夏祭りに変更したことでやや脚本が強引だったのと、キスがない分、最後のハグは、ついに互いの気持ちが1つになった、万感の思いが滲む様をもうちょいストレートに見たかったかな。


このアッサリ感も、もはや味ですけどね。


友情から始まった太一と航平の関係は、プラトニックゆえに、時折想いが溢れて相手の手を握ったり、衝動的に抱きしめてしまったりと、たまの一瞬の触れ合いがハッとするようなときめきがありました。


原作で一番胸を打たれた、夜の川べりの手話の告白(ドラマでは昼の歩道橋)。


あえて言葉ではなく、太一に伝わるかわからない手話で愛を伝える、航平の奥ゆかしさよ…。個人的にはここがドラマのハイライトだった気がします。実写で見られて本当に良かった。


そして忘れてはならない、マヤの存在。


マヤに関しては、特にインターファンの罵詈雑言よく見かけました。


いや、わかるよ。確かにBLに登場する女子キャラとしては、類を見ないタイプ。


話数が少ないJBLで、こういうはっきりと敵意を持って邪魔者してくる女子を、丁寧に描写することは珍しいです。そこに時間さいているとメインストーリー進まないからね。


彼女に対して「いっぱい傷ついてきたから仕方ない」みたいな感想は、個人的にはちょっと違うかなと思います。


それって結局、マヤを可哀想な庇護すべき存在として、無自覚のうちに同情して一段下に見ていると感じるから。航平やマヤはそうした高慢な優しさに、心をすり減らしてきました。


11話で語られるマヤの過去は、太一への小馬鹿にした態度の理由や説明にはなりません。親から捨てられた太一が、その寂しさから他人を嘲っていいわけではないのと同じです。


自分を絶対にいじめてこないとわかっている太一にだけ強く当たり、高校の同級生には愛想笑いを浮かべている場面は、彼女の立場の弱さと卑屈さがよく表れている。


なので、ここは変に庇わずに「うわ、何この子。きっつー」でいいんじゃないかと。その上で、性格に少し難あるマヤが、2人の関係を受け入れていく過程を味わっていければいい。


「美しい彼」の記事で以前書いたように、セクシャルマイノリティを扱ったドラマは、全方面への配慮が必要なため、悪意のない優しい世界になりがちです(ノワールBL以外は)。




けれども、愛情と憎しみは常に表裏一体。片方だけ廃した世界に、どれだけ本物の感情が生まれるのかといつも考えます。川底の汚い泥を知らなければ、頭上に広がる青空を美しいと感じる心は生まれないわけで。


1話の学食で絡んできた先輩のように、悪意を持ったモブはたまに出てきたとしても、なかなかマヤのようにメインキャラで後半ずっと突っかかってくる子は異例。そらインターファン発狂するわ、ははは。


このマヤと航平のシーンが増えたことで、正直、前半の積み上げてきたBLとしての盛り上がりが、後半やや失われはしました。


それでも、共感できない、正しくないキャラがいる。ファンタジーであるBLで、相反する人間が腕を引っ張ってままならないことが、彼らの住む世界をリアルにそっと一歩近づけるかもしれない。


マヤは全12話あるひだまりだからこそ、視聴者の精神に負荷をかけつつ、じっくり描写できたキャラだと思います。


それに、マヤ演じる俳優さんが巧みでしたよね。ちゃんと演技うまいから、ちゃんと腹立つというか。


それから私は原作の千葉さんが好きなので、大東駿介さんがやってくれたの最高か? 沸いたよ??


脳性麻痺の女性を主人公にした「37セカンズ」で、介護士役の大東駿介さんが最高にイカしてるから、気になる人は見ような!悪い人じゃない綺麗な大東駿介さんだよ!(悪い役も最高)


主演の2人の発表されている次の仕事は、NHKの朝ドラとドラマ10。改めて、従来ならBLルート通らずに売り出される俳優さんを持ってきた感がすごい。


ドラマ10の「宙わたる教室」は、原作すごく面白いですよ。キャストも好みだし、もちろんチェックしますとも。


 


ドラマの続きから読みたければ、シリーズ3冊目の「ひだまりが聴こえる一リミット一」から。


ドラマではリミットのエピソードが、ちらほら使われていましたね。

 



私は一番最新の春夏秋冬シリーズが好きです。2人とも社会に出て、どんどん大人になっていくんだなあ、ともはや親戚目線で楽しんでます。


 

 

自分の生き方と、人生そのものを変えてしまうような相手との出会い。


ゆっくりと緩やかに仲を深めていった2人の恋は、実は鮮烈な感情を内包していると思いませんか?


好きな人のために世の中を変えたくて、大学を辞めてしまう太一と、彼に導かれて向こう側に居場所を見つけた航平。


10年前から連載している原作を、なぜ今、再びリメイクするのか。その疑問にドラマの完成度で答えてくれたように感じます。


続編があるなら、この先、BL濃度が少しずつ上がっていく原作をどう調理するのか気になります。


約2ヶ月間、毎週楽しかったなあ。


ところで私はずっと、今市子先生のBLを実写化してほしいと思ってるんですけど、そろそろどこかでやりません??


古いけど「いとこ同士」とかどうでしょうか。これ、本当に最高だしモロ実写向きの話。


 

 

MBSなんかでやってくれてもいいんですよ…。


オナシャス!!



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