サイコロジー・オブ・マネー――一生お金に困らない「富」のマインドセット
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本書では自主独立のために長期投資をオススメしているが、特徴的だなと感じたのは「とはいえ一定程度の現金を手元に置いておくこと」という考えである。これは私の実体験からも非常に共感できる話で、不測の事態に陥った際にも長期運用中の投資を中断せず手元現金で乗り切る為だ。長期投資の最大の効用は複利運用であり、複利は継続してこそ意味をもつ。長期投資を途中で中断せずに済むよう、たとえ銀行預金の利息が微々たるものであろうとも、手元に現金を置く。
私事、いぜん外貨預金(なので複利効果は薄いが)を10年ほど持っていた頃、世の中が円安へ向かっていった。日次で1円動いていく市況なので、何もせず保持していれば評価損益はプラスになる。だが実際には、私は円安の恩恵を受ける前に解約した。車が故障し、急ぎ買い替える必要があったからだ。手元に一定程度の現金がないと、自分の都合の良い市況が来たときに、その波に乗れないことがある、という教訓。
わたしはゲーセンで一つのゲームにハマったことがなく、また通い詰めた経験もないのだけれど、その反動ゆえか「ゲーセンでその道のプロとして名が通っている」「かつてこんな伝説があった」等々のエピソード収集が大好きである。その一つが「ゼビウス一千万点への解法」であるが、そこにはポケモンの生みの親・田尻智さんも関わってき、エピソードとして何倍もの美味しさを堪能した。また最近では、鉄拳のパキスタン伝説が完全にツボで、定期的に伝説一覧を眺めては心中ニヤニヤする(こわっ)。
そんな次第で生活習慣として「ゲーム」をキーに書籍検索するなか、本書「ゲーム戦記」を手に取る。ゲーム関連の本では写真が大事なのでKindleではなく新書でゲット(わたしのKindleが旧式なだけだが)。
さて、ミカド店長池田さんの最近の活動で「トウキョウヘッド」(大塚ギチ)というバーチャファイタープレイヤへのインタビューをベースにした書籍の復刊のことを知る。バーチャ伝説ですって。飯野賢治さんの「スーパーヒットゲーム学」にて開発者鈴木裕さんとの対談は繰り返し読んだけれども、バーチャをプレイしたことはない。その私でも「新宿ジャッキー」という単語は知っていた。たしか「池袋サラ」という単語もあったか。当時わたしは関西に居たので東京の地名に馴染みなかったが、東京の知人に教えてもらい、かってに変な憧れを抱いたのかもしれない。その界隈を知ることが出来る書籍の復刊。これは必ずゲットしよう。
貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書、のいわゆる財務3表から企業のどんな特徴が読み取れるのだろう?との興味で読む。図表が大変見易いことと、つねに会社を3つ並べて、おのおの該当する表はどれか?を考えさせる構成に惹き込まれる。
面白いのは、ある企業が何故この貸借対照表の形(項目や金額の配分)になっているのか?を解説する段になると、周辺情報が出てくる点である。つまり、財務3表だけでは読み取れない事柄があり、それらを丹念に調べたうえで初めて3表の意味が分かるのである。
例えば本書に出てくる「ウーバー(Uber)」というタクシー配車アプリの会社について、連結貸借対照表をみると、配車マッチングサービスという業態とはズレた?表になっており、それは「投資有価証券の大きな計上」がある為であった(2019年度)。
解説では「これは中国の配車アプリDiDi社への投資を計上したものである」と述べているが、「そもそも何故、アメリカのウーバー社が中国の同業他社(ライバル企業)DiDi社へ投資しているのだろう?」と調べてみると、ロイター2016年8月3日記事に「DiDi社がウーバー中国事業を買収した」とある。つまり、ウーバー社は中国市場においてDiDiに敗れ、撤退したのであった。その事業売却と引き換えにDiDi社の株式を取得し、それが「投資有価証券の大きな計上」として出ていたわけだ。その数年後、その株式保有をどうしたか?の記事もNikkei等の各所で読むことができ、それもまた面白い。
本書でまず財務3表の着眼点を身につけ、自身で周辺検索をすることで世の中をより広く深く知る楽しさが味わえる。
教訓としては、吾唯知足(われただたるをしる)、京都龍安寺の言葉だろうか。
どこかしら何かしらの満足感をもっているのであれば、その点を大切にすることが人生を楽しむコツである。
それは人との優劣によって得るものではなく、ただ自分で充実していると感じればよいことだ。
ここではその感情をプライドと呼ぶこととして、さて一つ人生の智慧がある。それは、そのプライドを自分の人生全てに適用しないこと。自らの中に無知があることを自覚し、かつそのエリアで張り合おうとしないこと。仮にそのエリアで恥をかいたとて、自分の築いてきたプライドが傷つくことはない。私(わたくし)の中にも不得手はある、と素直に受け入れることで、本来のプライドは保たれ、限りある人生を愉しむことができる。が、自分のプライドを全方位に適用しようとすれば、足りないエリアを無理して補う必要がでてき、それが結果としてマウンティングという不毛行為を生む。
本書「バカと無知」はタイトルは刺激的だが、SNSをお騒がせしている人たちの生態を観察した内容ではない。読者が安らかに生きるための、見つめ直しの本である。