なぜ日本の手しごとが世界を変えるのか 経年美化の思想 (集英社新書)
Amazon(アマゾン)

本書は1976年(昭和51年)に刊行されて、その新書版である。海軍反省会(全11巻)より随分と前の書籍というわけで、新書版で出してくれたおかげで気づくことが出来た。ただ、編者の前書きで「陸軍が悪い」的な印象を持ち、この方向性なら読まなくてもいいかなぁと暫く放置。佐官級(中堅の人)の率直な海軍反省会(全11巻)が良かっただけに、大将級の反省が「陸軍が~」だと何だかなと。
が数年経ち、気を取り直して今回読んでみることに。
結論、大将たちの率直な弁を聞けて、読む価値(今後に活かす教訓)はあったなと。
肝心なところで近衛文麿や松岡洋右が出てき、ここが一つのポイントかと。
またYes/Noの重要な局面において「ここまで犠牲を払ったのだから今更撤退/共同運営は出来ない、弱気と受け取られる言動は出来ないetc」といった感情が判断の妨げになることを痛感した。
さて。本書のもう一つのポイントは、井上成美大将の「海軍を空軍化する」案である。
大和・武蔵の建造計画が出たとき「もはや大艦巨砲主義の時代ではない」と大反対し、それに同調する方々もいたのだけれど、結局、井上成美案は受け入れられなかった。これは海軍内部の話であって、陸軍ではない。
さいごに。
「海軍戦争検討会議記録」や「海軍反省会」は別段、歴史の〇×を付けるために読んでいるわけではなくて、
世界的大不況でド貧乏、テロも起こる大変な状況下で、先人がなにを第一優先として物事を判断・決断したのか、それを知ることが楽しいのである。日頃から情報収集のアンテナを張っておくとか、いざという時には「これまで懸けた労力云々」を度外視して真に有益な選択肢を選ぶことを頭の片隅に入れておくとか、自らの智に活かす話に満ちている。
Netflixのドラマは当たりはずれあって、1話50分でイマイチな感触が続くと、もう観なくていっか、とネトフリそのものから遠ざかってしまう(アマプラもWOWOWも同じだけど)。そんな中で久しぶりに面白いのが「ブレッチリー・サークル:サンフランシスコ」で、戦前に暗号解読に従事した女性が戦後、持ち前の情報解読スキルで殺人事件を解決していく物語である。
本作は単に探偵役を男性から女性に置き換えたミステリなのではなく、暗号解読に従事した女性陣の戦後の苦悩を描いた話なトコロが良い。戦中、特別な才能を見出され、暗号解読従事者に選ばれた高揚感。しかし極秘事項であるがゆえに、戦後は黙秘を続けなければならない。戦争が終わり、才能を隠すことを求められた。その苦悩。
学生時代、渡部昇一「人間らしさの構造」を読んだことを思い出す。
人間には「機能快(ドイツ語でフンクチオンスルスト)」が備わっており、それは心の内なる問いかけによって見いだされるものである。就活にあたって、どんな仕事が自分にとって心地よいか?を考えたりした。閑話休題。
ブレッチリー・サークルの女性陣はみな、機能快を果たすこと叶わない世の中に悶々とし、その反動で殺人事件を解決するのである。それが、面白い。