世界一楽しい決算書の読み方~周辺検索で楽しさ倍増 | 華麗の空~小難しい本のナルホド書評

世界一楽しい決算書の読み方~周辺検索で楽しさ倍増

貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書、のいわゆる財務3表から企業のどんな特徴が読み取れるのだろう?との興味で読む。図表が大変見易いことと、つねに会社を3つ並べて、おのおの該当する表はどれか?を考えさせる構成に惹き込まれる。

面白いのは、ある企業が何故この貸借対照表の形(項目や金額の配分)になっているのか?を解説する段になると、周辺情報が出てくる点である。つまり、財務3表だけでは読み取れない事柄があり、それらを丹念に調べたうえで初めて3表の意味が分かるのである。

例えば本書に出てくる「ウーバー(Uber)」というタクシー配車アプリの会社について、連結貸借対照表をみると、配車マッチングサービスという業態とはズレた?表になっており、それは「投資有価証券の大きな計上」がある為であった(2019年度)。

解説では「これは中国の配車アプリDiDi社への投資を計上したものである」と述べているが、「そもそも何故、アメリカのウーバー社が中国の同業他社(ライバル企業)DiDi社へ投資しているのだろう?」と調べてみると、ロイター2016年8月3日記事に「DiDi社がウーバー中国事業を買収した」とある。つまり、ウーバー社は中国市場においてDiDiに敗れ、撤退したのであった。その事業売却と引き換えにDiDi社の株式を取得し、それが「投資有価証券の大きな計上」として出ていたわけだ。その数年後、その株式保有をどうしたか?の記事もNikkei等の各所で読むことができ、それもまた面白い。

 

本書でまず財務3表の着眼点を身につけ、自身で周辺検索をすることで世の中をより広く深く知る楽しさが味わえる。