時ちゃん(大蛇様の息子で蛇身)は

写生に行ってるから出てこないんである。

 

嬉しそうに

時太郎の絵に見入る和尚に

イナは

安憬が村長の妻ハツミに

『口吸い』されていた事を

伝えます。

ややこしい事になった、

と焦る和尚。一方で

-それで安憬は口を漱いでいたのか、

と納得します。

 

安憬が「口吸い」をとても嫌がっていたと

イナが伝えると、

過去になにか嫌な事があったんだろう、

とお茶を濁す和尚。

イナはもう一つ尋ねます。

 

安憬はお父さんを何故殺そうとするの?

お父さんにかなう訳ないのに。

痛々しいよ。

 

安憬が何故大蛇さまを憎むのかを

知っている和尚さんは辛そうな

顔をします。

どうしたの?

と尋ねるイナ。

あんまり身なりに構わないようだけど、美人さんのイナちゃん。鱗が目立ってきたような。野鳥むしゃむしゃ食っちゃうのに、安憬さんには優しい気持ちもあるんだね。そういえば彼女は赤ちゃんの時、安憬さんくらいにしか懐かなかった。

 

それは、そのうち分かって来る、

自分で分からなければいけないこと

なのだよ、

とやっと答える和尚、

何を言っているのか分からないイナ。

 

寺の庭では安憬が相変わらず剣の稽古を

しています。

稽古をしながら、

安憬はむかしを思い出す-

 

自分を父親から救ってくれた和尚は

友人の僧(イナちゃんと話してた和尚)に

会いに旅に出ます。

別の僧を供に選んだことを腹立たしく

思う安憬。

なぜ自分を連れて行ってくれない、と

和尚に絡む安憬に、和尚は、

お前を一番信頼しているから寺に

残すのだ、

と言い、

まだ海を見たことが無かったな、

こんど連れて行ってやる

となだめ旅立ちます。

 

ある雨の日。

安憬たち寺の僧が勤行に

勤しんでいると、

戸を激しく叩く音がします。

安憬が開けてやると

ずぶぬれになって立っていたのは

和尚と一緒に旅立っていった僧。

「よく帰って来たな!和尚さまは?」

と問うと、

恐怖をあらわにして僧は

「大蛇に-」

とだけ言い絶句-。

 

疲れ、稽古をやめて木陰に

座り込む安憬。

足音。

振り向くと、立っていたのは

聞きたいことがある様子で

近づいてっ来るイナ-。

   目つき悪いけどびぼうずである。