・天の川銀河に降る水素ガス雲は外からやって来た
アストロアーツ3月7日付記事、元は名古屋大学です。
天の川銀河に降る水素ガス雲は外からやって来た - アストロアーツ (astroarts.co.jp)
概要>天の川銀河の円盤に落下しつつある水素ガス雲の重元素量が初めて全天で求められた。落下速度が遅い「中速度雲」の大半は、定説とは違い銀河外から来たガス雲のようだ。
>私たちが住む天の川銀河は、暗黒物質を除くと星と大量のガスで構成されていて、そのガスのほとんどは水素原子だ。電離していない「中性水素原子」は波長21cmの電波(21cm線)を放射するため、この電波を観測すると、中性水素ガスの量や視線方向の運動速度を知ることができる。
宇宙空間における単体の(他の元素と結合していない)水素には、水素分子、水素原子、電離水素の3種類の状態があります。
水素分子 H2 は水素原子2個が共有結合している分子であり、電離水素は水素原子核(陽子)と電子に分離しているプラズマ状態です。
水素の21cm線は、周波数が約 1 420 MHz、波長が約 21.106 cm の電波で、天文学ではよく登場します。
詳しくは次の記事をご覧ください。
△水素の21cm線て何のこと? | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)
>地球からの観測で見える天の川銀河の中性水素ガス雲は、ほとんどが銀河円盤とともに回転運動しているが、一部には銀河円盤の回転と全く違った運動をするガス雲もある。そのようなガス雲の多くは銀河ハローにあって、銀河円盤に向かってほぼ垂直に落ち込むような速度を持っている。銀河円盤に落下するガス雲のうち、速度が約30~100km/sのものは「中速度雲」、100km/s以上のものは「高速度雲」と呼ばれる。こうしたガス雲は、天の川銀河自体の進化にも深く関わっていると考えられるが、不明な点も多い。
渦巻銀河のハローとは円盤部を取り囲む球状の部分で、そこには暗黒物質や球状星団が存在しています。
ハローの綴りは halo で、英語の発音はヘイロウです。
元々は、(聖像などの)円光、光輪、光背、後光の意。
銀河系の円盤部分は回転しているため、そこに含まれるガス雲も通常は同じ方向に回転運動を行っています。
しかし、円盤部分から外れるハローに存在するガス雲は円盤に向かって垂直に落ち込むような運動をしているというのですね。
ワクワクしてくる話です。
>中性水素ガス雲の起源を考える上で重要な情報の一つが、ガス雲にわずかに含まれる重元素(=水素・ヘリウム以外の元素)の量だ。重元素は星の内部の核融合反応や超新星爆発の過程でのみ作り出されるため、一般的には、天の川銀河の中を循環するガスは重元素が多く、銀河の外から飛来するガスは重元素をあまり含まない。
恒星に含まれる、あるいは宇宙空間に存在する元素は、大部分が水素とヘリウムです。
この2種類の元素だけがビッグバン直後に生成されたのです。
それ以外の・より重い元素は、恒星内部の核融合反応などで作られてものです。
このため、天文学では元素を水素、ヘリウム、それ以外に3分類して、最後のものを重元素と一括りで呼びます。
炭素、窒素、酸素などもみな重元素です。
地球上の常識と宇宙の常識は大違いですね(^_^
なお、重元素はまだよい方で「金属」と呼ぶ場合もありますが、炭素、窒素、酸素がいずれも金属だなんて、いくら天文学界ジャーゴンでもひどすぎると思います。
>中速度雲と高速度雲の重元素量については、ガス雲を通して遠くの明るい銀河や恒星の光を観測し、そのスペクトルに生じる「吸収線」から量を見積もる研究が行われてきた。その結果、中速度雲の重元素量は太陽系周辺のガスとほぼ同程度だとされ、銀河円盤のガスが超新星爆発などで吹き飛ばされ、数千光年の高度から再び銀河面に落下しつつあるのが中速度雲だという「銀河系噴水モデル」が提唱されてきた。一方、高速度雲の重元素量は太陽系周辺の10分の1程度しかないため、高速度雲の正体は始原的なガスが天の川銀河の外部から降り積もりつつあるものだと考えられてきた。
スペクトルの吸収線については、次の記事をご覧ください。
△輝線や吸収線て何のこと? | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)
従来、吸収線の観測から、
中速度雲は「銀河円盤のガスが超新星爆発などで吹き飛ばされ、数千光年の高度から再び銀河面に落下しつつある」ものだという「銀河系噴水モデル」が当てはまるが、
高速度雲は「始原的なガスが天の川銀河の外部から降り積もりつつあるもの」だと
推測されてきたのですね。
>ただし、こうした観測を行うにはガス雲の背景に「光源」となる明るい銀河や星がなければならないため、観測例は数十にとどまっていて、2000年以降はほとんど研究が進んでいない。
吸収線は連続スペクトルに刻み込まれる「影」のようなものなので、背後に光源が必要です。
「観測例は数十」だけで「2000年以降はほとんど研究が進んでいない」というのでは、非常に研究しづらい分野であり、従来の定説などの確認も難しかったのですね。
>名古屋大学の早川貴敬さんと福井康雄さんは、2015年ごろからヨーロッパ宇宙機関の宇宙背景放射観測衛星「プランク」の研究チームに参加し、サブミリ波を放射する星間塵(ダスト)と21cm線を放射する中性水素原子の全天分布を比べることで、中性水素原子の量を精密に求める手法を開拓した。2人は今回、この手法を応用して天の川銀河の中速度雲と高速度雲の重元素量を調べた。
福井康雄さんは恒星の誕生に関する研究で有名な天文学者で、1951年9月生まれなので今72歳。
福井さんは、短歌にも詠まれています。(作者ではなく題材の方です(^^)
天文の俳句・短歌から | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)
>早川さんたちは「プランク」の観測で得られた2種類のサブミリ波のデータから、全天でのダストと中性水素の比率を表す精密な地図を作成した。ダストは重元素が主成分で、重元素が多い場所にはダストも多いと考えられるため、この比率をガス雲の「重元素:中性水素」の比と見なすことができる。
ダストは漢字で書くと「塵」なので、固体です。
水素とヘリウムは気体あるいはプラズマなので、ダストが重元素を主成分とするのは当然ですね。
>分析の結果、中速度雲については「太陽系周辺のガスと重元素量がほぼ同じ」という定説をくつがえし、大半が重元素量の少ない始原的なガスであるらしいことがわかった。
中速度雲の定説が覆されたのだとすると、銀河系噴水モデルも否定されますね。
これは重要な発見だと思います。
>この結果について、早川さんたちは、中速度雲も元々は銀河外起源の始原ガスであり、高速度雲が銀河円盤のガスと相互作用して減速し、混ざりつつある段階のものが「中速度雲」として見えているのだと考えている。この解釈の方が、中速度雲だけを「噴水モデル」で説明するよりも単純で、銀河の進化を統一的に説明できる。さらに、天の川銀河以外の銀河に付随するガス雲についても、同じように起源を説明できるかもしれないという。
中速度雲は高速度雲にブレーキがかかったものというわけです。
統一的説明で分かりやすいと思います。
ただそうなると、噴水モデルで登場する超新星爆発で銀河外に追い出されたガスはほとんど戻ってこないという理解になるのですかね?
★ 今日のロジバン 不思議の国のアリス190
.i ca bo ca’o cusku «lu .oi .ue ro da cizra ca lo cabdei
そしてしゃべり続けました。「あらまあ、今日は何もかも風変り!
.oi : 苦情・苦痛。文句を言いたい、不満を訴えたい気持。心態詞(純粋感情)UI1類
.ue : 驚嘆。予期していなかったそれに驚く気持。心態詞(純粋感情)UI1類
cizra : 怪しい/おかしい/風変りだ/不思議だ,x1は x2にとって x3(性質)に関して。-ciz-, -zra- [生命・態度]
cabdei : 今日だ <- cab+dei, cab<- cabna 現在,同時, dei <- djedi 日
{ ca’o cusku } 「話し続ける」内容が lu の引用符内ですが、アリスのひとり言はしばらく続きます。
{ .oi .ue } が心態部、その後が命題部で、主述語は cizra 、そのx1が { ro da } 「すべて」です。
後ろから間制句 { ca lo cabdei } 「今日」が掛かっています。
出典は、
lo selfri be la .alis. bei bu'u la selmacygu'e (lojban.org)