△輝線や吸収線て何のこと? | 宇宙とブラックホールのQ&A

宇宙とブラックホールのQ&A

2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

Q  天文ニュースなどではときどき輝線や吸収線という言葉を目にしますが、どういう意味でしょうか?


A  光が発生したり吸収されたりするのは、荷電粒子(を含む物質)がそのエネルギー状態を変えたときです。
これには主に二通りあり、その一つは原子や分子、原子核のエネルギー準位が変化したときで、これを遷移(せんい)といいます(エネルギー準位の解説は後で)。

原子のエネルギー準位の変化(遷移)による放射の例としては、輝線(スペクトル)が挙げられます。
これは、高温・低密度の状態にあるガスが放射する光で、特定の波長をもっています。
スペクトルにおいてその波長に対応する明るい線として現れるので、輝線と呼ぶのです。
黒体放射のような連続スペクトルとは異なり、輝線スペクトルを示す光はプリズムを通しても色が変わりません。
その意味で、単色光と呼ぶことができます。
同じ種類の物質が同じ状態にあれば、常に同じ線スペクトルの組を示します。
ですから、輝線は物質の身分証明書のようなものと考えられ、これによって遠方の宇宙に存在する物質の構成も知ることができるのです。
これに対して、黒体放射は物質の種類を区別しません。
以下では、輝線スペクトルが放射される仕組を解説します。

量子論によれば、原子や分子はそれぞれに固有の、いくつかの不連続なエネルギー状態しかとることができません。
これをエネルギー準位と呼びます。
原子のエネルギー準位は、電子の軌道によって決まっています。
(電子の「軌道」orbitalといっても量子論的なものなので、惑星などの「軌道」orbitとは全然意味が違いますが、細かく説明し出すときりがないので、量子力学の啓蒙書・啓蒙サイトでも参照してください。以下は最低限の知識でありかつ素人向けの記述です。)
電子の軌道を大きく決めるのは主量子数という整数で、n=1,2,3,・・・という値をとります。
nが大きいほど、エネルギー準位は高くなります。

一番簡単でかつ重要な水素原子を例に説明します。
水素原子では、陽子1個からなる原子核の周りを電子1個が回っています。
主量子数n=1のエネルギー準位はエネルギーが最低かつ安定な状態であり、基底状態といいます。
これに対し、n=2,3,・・・に対応するエネルギー準位は励起(れいき)状態といいます。
励起状態にある原子はほうっておくと、一定の確率でより低いエネルギー準位に落ち込んでいき(遷移せんい)、その際に光を放出します。
これが輝線スペクトルです。

スペクトルにおいて輝線と対になるものとして吸収線というものがあります。
これは黒体放射などの連続スペクトルの光が低温・低密度のガスを透過するとき、そのガスの輝線に対応する特定波長の部分が吸収されてスペクトル上で暗い線として現れるものです。
昔は暗線という呼び方もありましたが、今は吸収線と呼ぶのが一般的です。
(輝線に対応するものだから暗線でもいいとは思いますが。)


参考
△黒体放射って何のこと?:https://ameblo.jp/karaokegurui/entry-12471786281.html

 


★ 黒体放射に続いて、輝線の入門です。
この先は相当あるのですが、どうしますかね・・・

参考
△Q&A一覧:https://ameblo.jp/karaokegurui/entry-12471786793.html