最も重い巨大ブラックホール連星 | 宇宙とブラックホールのQ&A

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2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

 ・最も重い巨大ブラックホール連星を発見

 アストロアーツ3月8日付記事、元はジェミニ天文台です。

 最も重い巨大ブラックホール連星を発見 - アストロアーツ (astroarts.co.jp)

 

 概要>楕円銀河の中心にある巨大ブラックホール連星の質量が、周囲の恒星の運動から求められた。質量がわかった巨大ブラックホール連星としては最も重いものだ。

 

 >「超大質量ブラックホール(Supermassive Black Hole; SMBH)」を持つ2つの銀河が衝突・合体すると、中心のSMBH同士も連星となり、最終的には合体するはずだ。銀河が衝突合体するとき、SMBH同士は正面衝突するのではなく、互いに接近してはすれ違う「二体散乱」を繰り返す。この二体散乱が起こる際に別の恒星も同時に接近する「三体相互作用」が起こると、恒星はSMBH連星から運動エネルギーをもらってはじき飛ばされ、2個のSMBHは位置エネルギーを失って間隔が近づく。これを「スリングショット(パチンコ効果)」という。

 

 久し振りに言葉の解説から。

 まず巨大ブラックホールと超大質量ブラックホールは、どちらも Supermassive Black Hole の訳語で同じ意味です。

 “Mass” が「質量」なので、形容詞形の “Massive” が「大質量の」となり、その頭に “super” が付いた “Supermassive” が「超大質量の」となります。

 ただ、ブラックホールの半径は質量に比例するため、超大質量ブラックホールと巨大ブラックホールは同種のブラックホールを意味することになるわけです。

 このブログでは、日本語としてよりこなれていてまたより短い「巨大ブラックホール」の方を使っています。

 英語の略語 SMBH って、どこかのメガバンクみたいな・・・

 

 「スリングショット(パチンコ効果)」ですが、細かいことをいうと「スリングショット(パチンコ)効果」では?

 それはともかく「三体相互作用」と「スリングショット効果」は覚えておきましょう。

 

 実は私は、ブラックホール連星が徐々に近づくのは回転(公転)に伴う重力波放射で運動エネルギーが失われるためだと思っていました。

でも、その効果は距離がかなり近くなってから働くのでしょうね。

 

 >SMBH連星がスリングショットを繰り返して間隔が数光年まで近づくと重力波を放出し、最後には合体する。恒星質量ブラックホールの連星では、2015年以来、重力波望遠鏡によってこうした合体が観測されているが、SMBH連星ではまだ観測例はない。そのため、SMBH連星が本当に合体するのかについては長年議論が続いている。

 

 恒星質量ブラックホールは、大質量星のうちでも特に質量の大きいものが超新星爆発した場合に誕生します。

 巨大ブラックホールは、通常は1つの銀河に1つしか存在しません。

 しかし、恒星質量ブラックホールはときどき誕生しているので、ずっと数が多いのです。

 したがって、恒星質量ブラックホール連星の合体は何例も報告されていますが、SMBH連星の観測例がいまだないのは決して不思議ではありません。

 

 ただ、「SMBH連星が本当に合体するのかについては長年議論が続いている」というのは思いもよりませんでした。

 というのも、ほとんどの銀河の中心に巨大ブラックホールが存在することが認められており、かつ銀河どうしの合体は宇宙論的時間のなかでも比較的頻繁に生じることから、SMBH連星が合体しないのであれば、中心に複数個の巨大ブラックホールが存在する銀河が相当数観測されているはずだからです。

 

 >米・スタンフォード大学のTirth Surtiさんたちのグループは、米・ハワイの「ジェミニ北望遠鏡」の多天体分光計(GMOS)で過去に観測されたデータから、ペルセウス座の方向約8億光年の距離にある楕円銀河「B2 0402+379」(4C +37.11)のSMBH連星に注目した。このペアは2個のSMBHがわずか24光年しか離れておらず、ブラックホール同士の間隔が直接測定されたSMBH連星としては最も接近した天体だ。

 

 ジェミニ天文台は、ハワイ島マウナケア山頂にジェミニ北望遠鏡、チリ・パチョン山にジェミニ南望遠鏡をもち、両者で天球全体をカバーしています。

 2つあるので、ふたご座のジェミニという名前が付けられたわけです。

 どちらも口径8mの光学赤外線望遠鏡です。

 ジェミニ北望遠鏡は、1999年ファーストライト。

 

 ジェミニ北望遠鏡の多天体分光計の略称 GMOS は、”the Gemini Multi-Object Spectrographs” の頭文字をとったもの。

 

 ペルセウス座はトレミーの48星座の一つで、晩秋の星座です。

 その名前は8月13日に極大を迎えるペルセウス座流星群で有名ですね。

 ベータ星アルゴルは変光星(食連星)として知られており、また二重星団も有名です。

 ペルセウス座は、アンドロメダ座、カシオペア座、ケフェウス座、くじら座とともにアンドロメダ神話を構成する星座です。

 

 2個の巨大ブラックホールがわずか24光年しか離れていないというのは、本当に近いと思います。

 

 ここで、アストロアーツ掲載の画像をご覧ください。

 2個の巨大ブラックホールからなる連星を描いたイラストです。

 それぞれが活動銀河核になっているように見えます。

 巨大ブラックホール連星の合体は長年予言されているが、観測例はないというコメントが付いています。

 

 >これまでの研究で、B2 0402+379のSMBH連星はなぜか過去30億年間にもわたってこの間隔を保ったまま、合体していないことが知られている。そこで、研究チームはGMOSのデータからSMBH連星の周囲にある恒星の速度を見積もった。「GMOSの素晴らしい感度のおかげで、恒星が銀河中心へ近づくにつれて速度が上がる様子をとらえることができ、2個のブラックホールの合計質量を求めることができました」(スタンフォード大学 Roger Romaniさん)。

 

 宇宙年齢が約138億年なので、30億年というのは宇宙論的にも結構長い期間といえます。

 その間、間隔を保ったまま合体していないというのは、それ自体が不思議といえます。

 

 >解析の結果、このSMBH連星の合計質量は太陽質量の約280億倍と見積もられた。この値は過去に測定されたSMBH連星の質量としては最大だ。

 

 私はこれまで巨大ブラックホールの質量範囲は太陽質量の約100万倍~約100億倍としてきました。

 今回の「合計質量が約280億倍」というのは、約100億倍としてきた上限を上回っていますね。

 ただ、数百億倍とするのも、間違いではないけど上に広げ過ぎのような気がします。

 しばらく悩まなくてはいけないかな。

 

 >これまでの研究から、B2 0402+379のSMBH連星は数回の銀河合体を経ているとみられている。その理由は、この母銀河が「銀河団の化石」らしいという点だ。つまり、1個の銀河団が持つ星とガスの大半が合体して1個の巨大楕円銀河になったという天体なのだ。しかも、SMBHが2個存在し、合計質量がこれほど大きいことから、複数の銀河にあった複数個のSMBHが何段階も合体してここまで成長したことがうかがえる。

 

 「1個の銀河団が持つ星とガスの大半が合体して1個の巨大楕円銀河になった」、またその中心の2個の巨大ブラックホールも「複数の銀河にあった複数個の巨大ブラックホールが何段階も合体してここまで成長した」というのですね。

 まさかそんなことがあるとは想像できませんでした。

 銀河とその中心の巨大ブラックホールの共進化の歴史を示す極限的な好例といえるでしょう。

 「銀河団の化石」とは言い得て妙だと思います。

 

 >今回求められた質量の大きさからみて、このSMBH連星の軌道をここまで接近させるには莫大な数の恒星が必要だったと研究チームは考えている。2個のSMBHがこの距離になるまでの間に、SMBHは周囲の物質をスリングショットでほぼ全てはじき飛ばし、銀河中心部から星やガスを一掃してしまう。その結果、SMBH連星をこれ以上近づけるのに必要な物質がもう周りに存在せず、現在の軌道にとどまっているというのだ。

 

 なるほど。

 連星を構成する2個の巨大ブラックホールの距離を近づけるには、周囲の多数の恒星をスリングショット効果で弾き飛ばすことが必要だが、弾き飛ばして周囲から恒星がなくなってしまうとそれ以上は距離を近づけることはできないというのですね。

 納得できる理由です。

 

 >「もっと軽いブラックホール連星を持つ銀河であれば、すばやく合体できるほどの十分な星や質量が周囲にあると思われます。今回のペアは非常に重いので、合体させるには大量の星とガスが周りに必要ですが、銀河中心部から物質をなくしてしまったために現在の軌道を保っていて、私たちの研究対象になったというわけです」(Romaniさん)。

 

 連星を成す巨大ブラックホールの質量が比較的軽ければ、弾き飛ばされる恒星の数・質量が小さくても合体させられるが、今回ほど重いとなかなか距離を縮められないというのですね。

 

 >もしこのSMBH連星が合体すれば、放射される重力波は恒星質量ブラックホール連星の重力波より数億倍も強いものになるだろう。だが、このペアが停滞を乗り越えて数百万年後に合体するのか、あるいは永遠に今の軌道にとらわれ続けるのかについてはまだわからない。

 

 巨大ブラックホール連星が合体する際の重力波も観測されることをぜひ期待したいとは思うのですが、このペアがそうなるのはいつになるか分かりませんね。

 少なくとも我々が生きている間は絶対になさそうです。

 

 >もし母銀河が別の銀河とさらに衝突合体すれば、追加の物質と3個目のブラックホールが供給されてSMBH連星の軌道がさらに近づき、「最後の距離」を征服できるだろう。だが、この母銀河が“銀河団の化石”状態であることを考えると、他の銀河と合体することはありそうにない。

 

  >「B2 0402+379の中心核をさらに追跡調査して、どれくらいのガスが存在するのかを調べるのを楽しみにしています。それによって、このSMBHたちが合体するのか、連星でい続けるのかを知る、さらなる手がかりが得られるでしょう」(Surtiさん)。

 

 さまざまな面で非常に興味深い天体だと思います。

 さらなる観測と研究に期待します。

 

 

 ★ 昨日4月20日(土)、石川県加賀市「アパリゾート佳水郷」で藤井聡太叡王に伊藤匠七段が挑戦する第9期叡王戦五番勝負第2局がありました。匠七段の先手で、叡王が3三に角を上がって同角同金と進み、あまり例を見ない3三金型の角換わりという戦型です。珍しく叡王にミスが出て、87手までで挑戦者の勝ち、叡王の負けとなりました。これまで両者の対戦は持将棋1局を除きすべて叡王が勝っており、匠七段は今回初勝利です。同世代のライバルとして、お二人の死闘が今後数十年繰り広げられるのを期待します。

 

 昨日午前、自治会の会計監査を行いました。私は監事で、もう一人の監事とともに帳簿と領収書の突合を行い、その後決算書のチェックを行って、ハンコを押しました。電卓を3本指で打つのは誰でもできることだと思っていたのですが、もう一人の方(デザイナーの女性)がいちいちキーを見ながら1本指で打っているのを見て、これも一種の技能かと改めて認識しました。

 

 ★★ 今日のロジバン 不思議の国のアリス191

   .i ca lo prulamdei ro da fadni fasnu

  昨日は、ほんとにいつも通りだったのに。

 prulamdei : 昨日/前日だ,x1は <- pru+lam+dei, pru<- purci, lam<- lamji, dei<- djedi

 purci : 以前/過去だ,x1は x2(時点)よりも; 先人だ,x1は。-pur-, -pru- [時間]

 lamji : 隣接する/隣り合う,x1は x2に x3(並列特性)・x4(並列方向)で;x1はx2の隣だ。-lam-, -la’i- [空間・相対位置]

 djedi : 日だ,x1は x2(数)・x3(基準)の。-dje-, -dei- [時間・日]

 fadni : 平凡/通常/普通だ,x1は x2(性質)・x3(集合)において。-fad- [構造・セット,グループ,群]

 fasnu : 事/出来事/事件/事象/現象だ,x1は;起こる/生じる/発生する,x1は。-fau- [過程]

 

 アリスの自問自答の続きです。

 前に間制句 { ca lo prulamdei } 「昨日」が来ています。

 日本語の「昨日」や英語の「yesterday」はそれだけで副詞的に使えますが、ロジバンの内容語は間制詞 ca と冠詞 lo を付ける必要があります。

 なお、原文は purlamdei となっていますが、辞書にはどちらの形も載っていて全く同じ意味です。耳で聞いても区別が付けづらいでしょう。

 主述語はtanru { fadni fasnu } 、そのx1が { ro da } で、「すべてが普通のことだった」となります。

 昨日であることが明示されているので、時間の間制詞 pu [過去] は不要であり、この点も日本語や英語とは異なります。

 出典は、

 lo selfri be la .alis. bei bu'u la selmacygu'e (lojban.org)