『裏世界ピクニック』シリーズ | 宇宙とブラックホールのQ&A

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2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

 書評です。

 『裏世界ピクニック』は、早川書房の文庫シリーズで、著者は宮澤伊織さん。

 イラストは表紙・本文ともshirakabaさん。

 現在、第4巻まで出ています。

 

 『裏世界ピクニック』 ハヤカワ文庫JA1264ミ-17-1 320頁 2017年2月発行 本体価格¥780(税込¥858)

副題「ふたりの怪異探検ファイル」

 

 『裏世界ピクニック2』 ハヤカワ文庫JA1301ミ-17-2 344頁 2017年10月発行 本体価格¥780(税込¥858)

 副題「果ての浜辺のリゾートナイト」

 

 『裏世界ピクニック3』 ハヤカワ文庫JA1351ミ-17-3 302頁 2018年11月発行 本体価格¥780(税込¥858)

 副題「ヤマノケハイ」

 

 『裏世界ピクニック4』 ハヤカワ文庫JA1408ミ-17-4 346頁 2019年12月発行 本体価格¥780(税込¥858) 副題「裏世界夜行」

 

 

 各巻のページ数に違いがあっても、値段は統一しているのですね。

 

 宮澤伊織(いおり)さんは、2011年デビュー。

 2015年、「神々の歩法」で第6回創元SF短編賞受賞。

 年齢、性別は記載がありませんが、本書の内容から男性だと判断します。

 

 早川書房は1945年創業、ミステリー、SFなどの老舗出版社で、SFマガジンの発行元として知られています。

 ハヤカワ文庫は、早川書房が発行している文庫レーベル。

 JAはそのサブレーベルの一つで、日本人作家(Japanese Author)を意味します。

 SFマガジンはずっと月刊でしたが、2015年4月号(2月発売)から隔月刊となったそうです。

 私は、小学校6年から中学にかけてSFマガジンと早川書房や東京創元社から出されたSFを愛読していました。今となっては遠い昔のことです・・・

 

 本シリーズはすでに作画・水野英多さんで漫画化されており、「月刊少年ガンガン」に2018年3月号から連載され、本4冊にまとめられています。

 ただ、原作のどこまでが漫画化されているのかは不明です。

 

 今回この書評を書くことにしたのは、アニメ化が予定されていることを知ったからです。

 アニメの公式サイトは↓

 

 「2021年1月から放送開始!」と書いてあるのですが、12月に入ったのに放送情報などはいまだ載っておらず、本当に1月から始まるのか、不安を覚えます。

 

 各巻の最後に参考文献が載っていますが、それを除いた目次を4巻分まとめておきます。

 目次

 裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル

  ファイル1 くねくねハンティング

  ファイル2 八尺様サバイバル

  ファイル3 ステーション・フェブラリー

  ファイル4 時間、空間、おっさん

 裏世界ピクニック2 果ての浜辺のリゾートナイト

  ファイル5 きさらぎ駅米軍救出作戦

  ファイル6 果ての浜辺のリゾートナイト

  ファイル7 猫の忍者に襲われる

  ファイル8 箱の中の小鳥

 裏世界ピクニック3 ヤマノケハイ

  ファイル9 ヤマノケハイ

  ファイル10 サンヌキさんとカラテカさん

  ファイル11 ささやきボイスは自己責任

 裏世界ピクニック4 裏世界夜行

  ファイル12 あの牧場の件

  ファイル13 隣の部屋のパンドラ

  ファイル14 招きの湯

  ファイル15 裏世界夜行

 

 各章(ファイル、以下Fと略す)の初出は次の通り。

 第1巻のうちF1~F3はSFマガジンで、F1が2016年8月号、F2が同年12月号、F3が2017年2月号。F4は書下ろし。

 第2巻はいずれも電子書籍で、F5が2017年6月刊、F6が同年7月刊、F7が同年8月刊、F8が同年9月刊。

 第3巻のうちF9とF10は電子書籍で、F9は2018年4月刊、F10は同年8月刊。F11は書下ろし。

 第4巻は全巻書下ろし。

 

 本書は一言で要約すれば、「女子大生二人がこの世界とは別の 恐怖と危険に満ちた裏世界に行き来して活躍するSFホラー」です。

 したがって、ジャンル分類はSFホラーとなりますが、同時にラノベ(ライトノベル)でもあります。

 ラノベだというのは、いわゆる百合要素が強いからであり、主な登場人物は主人公の二人以外も若い女性が多いです。

 女性どうしの間の感情描写が多いです。

 ただし、大多数の異世界ラノベと異なり、主人公たちにとって超便利な(ドラえもん的)マジックアイテムは存在しません。

 

 ホラーの面については、参考文献に載っている多数の実話怪談・ネットロアをモチーフにしているとのことです。

 実話怪談というのは、都市伝説のような伝聞ではなく、体験した本人が語っているものだそうです。

 (実話怪談と都市伝説を混同すると、主人公の空魚が激怒します。)

 なお、私はそれらの出典の確認は行っていません。

 ホラーの怖さを百合要素で和らげている、といってよいと思います。

 

 ファイルの名称に含まれる、くねくね、八尺様、時空のおっさん、猫の忍者、コトリバコ、ヤマノケ、サンヌキ(カノ)などはいずれも裏世界で出会う(からやってきた)怪異です。

 きさらぎ駅(ステーション・フェブラリー)は、裏世界の駅です。(米軍に救出されるのではなく、米軍を救出します(^^)

 

 私の読後感では、第1巻が一番面白く、また怖かったです。

 第2巻以降は少し慣れてしまったせいもあるかもしれません。

 あくまでも私の感想ですが、大多数の「なろう小説」と違って、お金を払って読む価値のある小説だと感じました。

 特に、第1巻冒頭の次のような文章が気に入りました。

 1行目>よく晴れた五月の空の下、私は草原に横たわったまま溺れかけていた。

 6行目>いわゆる半身浴。いや違う。違います。いわゆらない。

 5頁目>(「オフィーリアかと思った」と言われて)オフィーリアくらい知ってます。デス寝湯みたいな溺死姿の絵で有名な土左子(どざこ)だ。

 

 

 以下、ストーリーを要約する代わりに、登場人物をまとめておきます。初出順。

 当然ネタバレ注意です。

 

 ・紙越空魚(かみこし・そらを):F1から登場。眼鏡をかけた20歳の女子大生。

 主人公の一人で、本シリーズは彼女の一人称で語られる。

 埼玉の大学(埼玉大学と思われる)の教養学部二年に在籍。

 文化人類学専攻で、大学の講義では民俗学・人類学に興味がある。

 大学の近くのアパートに下宿。最寄り駅はJR埼京線の南与野駅。

 「陰キャのオタクっぽい」と自他ともに認める外見。

 実話怪談・ネットロアに詳しい。竹書房ホラー文庫を何百冊も愛読。

 F1で怪異と出会った結果、右目が青く(深い瑠璃色に)変わっており、それで見つめると怪異の正体を見極めたり、人を狂わせたりすることができる。カラーコンタクトで隠しているが、よく付け忘れたり外れたりする。

 怒ると、精神的に強くなる。秋田県出身。

 高校時代は、母親が亡くなった後、父親と祖母がカルトにはまったため、家に帰らずに廃墟に泊まるような生活を送っていた。しかし、本人はそれを「ふつう」と思っている。

 

 ・仁科鳥子(にしな・とりこ):F1から登場。もう一人の主人公。別の大学の女子大生。

 金髪、色白で、きらきら輝く藍色の目をした凄い美人。

 空魚より背が高く、スタイルもいい。

 失踪した潤間冴月を探すため、裏世界に頻繁に行きたがる。

 カナダで「ママ」と「お母さん」に育てられた。

 軍人だった「ママ」の指導により、武器の扱いに詳しい。

 日暮里の4階建て高級マンションの最上階404号室に一人暮らし。

 最寄り駅は山手線の西日暮里。

 F1で怪異と出会った結果、左手が透き通っており、通常では物理的に触れることのできない怪異にも働きかけることができる。ふだんは手袋で隠している。

 

 ・小桜(こざくら):F2から登場。裏世界の研究を行う認知科学者。

 小学生の少女に見える女性で、引きこもりの中学生のような恰好をしている。

 空魚たちが裏世界から持ってくる異物を、高額(1つ100万円)で買い取る。

 西武池袋線の石神井公園駅から少し歩いた高級住宅街にある、高いレンガの塀に囲まれ全体が緑の蔦に覆われた、庭付きの三階建ての家に住んでいる。

 実は極度の怖がりで、裏世界にはほとんど行ったことがない。

 

 ・潤間冴月(うるま・さつき):小桜の大学の同級生。

 長身、白い肌、艶やかな長い黒髪を切りそろえ、喪服を思わせる黒衣を着、ブーツを履いた、大人の美人。

 しかし、目つきが悪く、太く黒い縁の眼鏡をかけている。

 小桜によれば、寄ってくる人間を片っ端から魅了して、都合よく利用する、生まれながらのアルファ・フィメール。

 鳥子が高校生のとき、その家庭教師をしていた。

 DS研の客員研究員だったが、本書開始時にはすでに裏世界で行方不明となっている。

 潤間冴月らしき姿は空魚たちの前に頻繁に現れるようになるが、空魚にしか見えない。

 

 ・肋戸(あばらと):F2のみで登場。 裏世界で出会った、迷彩服を着て銃をもった男。

 結婚して一年くらいのときに、妻の美智子が狭いアパートから忽然と消えたため、裏世界で妻を探している。

 空魚たちに裏世界で生き延びるのに必要な知識を教えてくれるが、裏世界での滞在が長くなって錯乱してきている。

 

 ・レイ・バルカー少佐、ウィル・ドレイク中尉、グレッグ曹長:F3とF5で登場。

 沖縄に駐留する在日米軍海兵隊ペイルホース大隊第三中隊に属す。

 最後は空魚たちに救出される。ただし、錯乱がひどかったグレッグ曹長は死亡。

 

 ・瀬戸茜理(せと・あかり):F7から登場。空魚の大学の後輩で、一年の女子大生。

 垢抜けた印象。ボーイッシュなショートヘアで、意志の強そうな目をしている。

 空魚の下宿の近所に住む。空手が強いため、空魚はカラテカと呼ぶ。

 高校時代、潤間冴月が家庭教師をしていた。

 

 ・汀曜一郎(みぎわ・よういちろう):F8から登場。

 長身、手足も長く、頬のこけた細面で、癖のある長めの髪を丁寧にセットし、

 身体に合った見るからに高級品の三つ揃いスーツの男。

 一般財団法人 DS研究奨励協会 事務局長。DSはダーク・サイエンスの略。

 (DS研は、溜池山王駅近くのガラス張りのビルを丸ごと占有。)

 言葉遣いは丁寧だが、実は荒事が得意。

 両腕をマヤ文字の入れ墨で埋め尽くしている。

 

 ・市川夏妃(いちかわ・なつみ):F10から登場。

 瀬戸茜理の幼馴染の女性で、茜理は「なっつん」と呼ぶ。

 空魚の下宿の近所にある、実家の自動車整備工場で働く。

 ヤンキーのような外見と話し方。

 空魚たちに助けてもらったため、冂形の農業機械AP-1を裏世界探検用にパワーアップする改造を引き受ける。

 

 ・潤巳るな(うるみ・るな):F11のみで登場。

 セーラー服の女子高校生。潤巳ルナは偽名。

 長い髪を三つ編みにして、頭の横で丸く括ってから後ろに流している。

 潤間冴月に憧れており、冴月を探すためならば手段は問わない。

 裏世界由来の「声」で洗脳する力をもち、それによりカルトを組織している。

 <ありがとう女>はルナの母親。

 

 ・笹塚二胡(ささづか・にこ):F12で登場。化粧の薄い女性。

 民間軍事会社トーチライトの代表取締役。部下は半分以上が外国人。

 昔、汀と一緒に働いていた。

 

 

 最後に、本シリーズの時間経過を抜き出しておきます。

 2月 潤間冴月が失踪

 4月 空魚、裏世界への入り口を見つける。

 5月 F1。空魚と鳥子が初めて会ったのは5月14日

 6月初め F3

 6月24日 F4 鳥子が姿を消す

 7月 F5、F6、F7

 8月 F8

 F8の9日後 F9

 F9のひと月後、秋の色が濃い F10

 秋も深まり空気はもうだいぶひんやり F12

 11月中旬 F14

 11月下旬~12月25日 F15

 

 

 本記事は、書評ではありますが、アニメ絡みなので、次の一覧に載せておきます。

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 その後、続編の第5巻、第6巻が出たので、その書評も書きました。

 『裏世界ピクニック』シリーズ2 | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)

 次は、第7巻の書評です。

 『裏世界ピクニック』シリーズ3 | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)

 最後の方に裏世界の地理について書いてあるので、参考にしていただければと思います。

 第8巻、第9巻の書評も。

 『裏世界ピクニック』シリーズ4 | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)

 『裏世界ピクニック』シリーズ5 | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)