『裏世界ピクニック』シリーズ2 | 宇宙とブラックホールのQ&A

宇宙とブラックホールのQ&A

2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

 書評です。

 宮澤伊織さんの『裏世界ピクニック』シリーズについては、前回第1巻~第4巻まで取り上げました。

 『裏世界ピクニック』シリーズ | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)

 

 その後、第5巻、第6巻が出ているので、ご紹介します。

 『裏世界ピクニック5』 ハヤカワ文庫JA1448ミ-17-5 320頁 2020年12月発行 本体価格¥780(税込¥858)

 副題「八尺様リバイバル」

 裏世界ピクニック 5──八尺様リバイバル | 種類,ハヤカワ文庫JA | ハヤカワ・オンライン (hayakawa-online.co.jp)

 

 『裏世界ピクニック6』 ハヤカワ文庫JA1476ミ-17-7 320頁 2021年3月発行 本体価格¥780(税込¥858)

 副題「Tは寺生まれのT」

 裏世界ピクニック 6──Tは寺生まれのT | 種類,ハヤカワ文庫JA | ハヤカワ・オンライン (hayakawa-online.co.jp)

 

 著者の宮澤伊織さんと出版社の早川書房、そしてハヤカワ文庫については、前回の書評をご覧ください。

 

 今どきは電子書籍で読む人の方が多いのでしょうが、私の書評はこれまでのところすべて紙版が対象です。滅びゆく種族かもしれませんけど(^^;

 

 先に外形的な話をいくつか。

 第5巻と第6巻のページ数が全く同じで、宮澤さんて器用な作家さんだなと一瞬思ったのですが、ハヤカワ文庫の広告で調整しているだけでした(^^; 製本の関係かな?

 

 著者番号がミ-17-5とミ-17-7で一つ飛んでいますが、これはミ-17-6として『そいねドリーマー』という別の小説が入っているためです。

 

 各巻の発売間隔は、第1巻から第2巻までは8か月ですが、それ以降第5巻まではいずれも約1年です。

 ところが、第6巻は4か月と早まっています。

 ファンにとっては嬉しいことですが、穿った見方をすると、アニメ人気の消えないうちに出しておこうということかもしれません。

 

 第5巻、第6巻とも書下ろしです。

 第4巻以降は書下ろしで行くことにしたのですね。

 

 前回の書評を掲載した後、アニメが放送されました。

 というよりも、私の書評もそれを意識して書いたものです。

 アニメは第3話が原作にはない話で、また順序を何か所か逆転させています。

 それと、アニメはファイル10までの範囲であり、続編なしの終り方をしています。

 内容はまあ悪くはなかったと思いますが、続編が期待できないのは残念です。(無理やり作ることはできなくないだろうけど。)

 

 第5巻と第6巻について、最後の参考文献を除いた目次を掲げます。

 目次

 裏世界ピクニック5 八尺様リバイバル

  ファイル16 ポンティアナック・ホテル

  ファイル17 斜め鏡に過去を視る

  ファイル18 マヨイガにふたりきり

  ファイル19 八尺様リバイバル

 裏世界ピクニック6  Tは寺生まれのT

  ファイル20  Tは寺生まれのT

 

 以下、ファイルをFと略記します。

 

 第4巻の最後F15で、主人公の空魚は自らの暗い過去の象徴である「赤い人」と対決し克服するので、それ以降は何がテーマになるのかと思ったのですが、裏世界の本格的探検はようやく始まったところでした。

 

 第5巻、第6巻の詳しいストーリーを紹介するつもりはないのですが、出版社の紹介に載っている程度のことは書いても差し支えないと思うので、ごく簡単に触れていきます。

 

 F16「ポンティアナック・ホテル」は、新宿歌舞伎町で行われた混沌のラブホ女子会です。

 ポンティアナックとは、空魚によると、インドネシア、マレーシアあたりの民間伝承に出てくる幽霊、妖怪の類のこと。

 ただ、空魚の記憶が飛んでいる部分は、かなりなんというか・・・

 

 F17「斜め鏡に過去を視る」は、空魚がラブホ女子会以来返事を寄こさなくなった鳥子を尋ねて、鳥子の大学に行く話です。

 空魚の大学が埼玉大学であることはすでに第1巻で出てきますが、鳥子の大学はここで初めて四谷の上智大学であることが明かされます。

 (宮澤さんが具体的な大学名を書いているわけではないので、描写に当てはまる大学を読者である私が勝手に推測しているだけです。でも、東京近辺に住んでいれば間違えようはありませんが。)

 鳥子は、(帰国子女で)英語ができるから安易に英文学部を選んだといいますが、上智だと文学部英文学科です。わざと変えているのでしょう。英文学部なんてどこの大学にも存在しないと思いますよ。

 

 一言でいうと、F16もF17も百合要素の強い話です。

 

 F18「マヨイガにふたりきり」は、二人が裏世界を探検する中でマヨイガを見つける話です。

 マヨイガは「迷い家」と書き、柳田国男の『遠野物語』に登場します。

 体験者が山中で誰もいない豪華な屋敷に迷い込むというものです。

 ただ題名の通り「ふたりきり」かというと、・・・

 なお、裏世界にも、これまで確認できていなかった動物や鳥、虫がじっと身を潜めて棲息していることが判明します。

 

 F19「八尺様リバイバル」は、失踪した夫を探してほしいと依頼されて、裏世界に行く話です。

 第5巻とF19の題名は、F2が「八尺様サバイバル」だったので、一文字変えただけです。

 八尺様はF2で登場し倒された怪異で、それが復活するという意味ですが、第5巻のタイトルになるほど活躍?するかというと、全然そんなことはなくミスリーディングです。

 F18の題名も同様ですが、いずれもわざとでしょうね。

 

 第6巻はF20「Tは寺生まれのT」だけ、つまり本シリーズ初の長編です。

 4月に入り、空魚と鳥子は三年生となっています。

 空魚の記憶喪失と拉致?から始まります。

 その後、空魚が大学で入ったゼミや、ゼミの友人とのエピソードがあり、次第に敵である「寺生まれのTさん」の正体が明らかになっていきます。

 事件解決後に戻った現実世界の場所が、気に入りました。

 

 

 次に、第5巻と第6巻で初登場の人物他についてまとめておきます。

 ・外館(とだて):年配の女性(老婦人)。F18のみで登場。

 白髪を後ろで束ね、鮮やかなオレンジの迷彩ジャケットを着て、銃を肩に掛けた服装。

 ハンターで、マヨイガに犬のハナとともに暮らす。

 もともと外国暮らしだったが、夫を亡くし帰国。

 裏世界でのハンター生活とマヨイガ、特にキッチンが気に入り、元の世界に戻る気はない。

 射止めた鹿などの解体は手慣れている。

 

 ・ハナ:ボルゾイと思われる犬。F18のみで登場。

 ボルゾイは、ロシア原産の超大型の狩猟犬で、視覚と俊足を武器に狩りを行う(wiki等による)。

 もともとは別の飼い主と裏世界に入ったが、飼い主がいなくなり(熊に襲われたらしい)、弱っていたところを外館に拾われ、一緒に生活し狩りをするようになる。

 

 ・肋戸美智子(あばらと・みちこ):30代前半くらいの女性。F19冒頭でのみ登場。

 行方不明になった夫、肋戸誠司(あばらと・せいじ)の捜索を、空魚と鳥子に依頼する。

 F2では、神隠しに会った美智子を探すため、肋戸が裏世界にやってきたと聞いたのと、逆の設定になっている。

 一体どうなっているのか、そもそも肋戸美智子とは・・・

 

 ・霞(かすみ):5、6歳の女の子。F19後半で初登場し、F20でも活躍。

 空魚たちが裏世界で発見して連れ帰るが、身寄りが確認できないため、DS研で引き取る。

 ずっと名無しだったが、F20の最後で空魚が霞という名を付ける。

 急に消えたり現れたりするから、という理由。

 汀が、トイレのしつけその他生活指導全般を行っており、5回に3回は自発的にトイレを使うようになったとのこと。あとの2回は・・・想像したくないですね(^^;

 消えたり現れたりするように見えるのは、この世界、中間領域、裏世界を自由に行き来できるためであり、一か所に閉じ込めておくことはできない。

 自らの言葉をしゃべらないが、空魚たちが過去にやり取りした言葉を切り取って話すことにより、意思は通じているよう。

 

 ・阿部川:4月から空魚の属す文化人類学ゼミの教授。F20に登場する脇役。

 スーツにネクタイ姿の壮年男性だが、顔が日焼けしてやたら黒い。

 

 ・紅森、荒山、土井田、蔡(つぁい):阿部川ゼミの学生。F20に登場する脇役。

 紅森と蔡は女子、荒山と土井田は男子。蔡は留学生。

 4人が肝試しに行って巻き込まれた怪事件について、紅森が空魚に相談を持ち掛ける。

 ただ、他の3人とはゼミでの発表を聞くものの、直接やり取りはしない。

 

 ついでに、空魚と汀(みぎわ)についての追加も。

   DS研の女性看護師のもっている空魚のイメージ。F20,p.36

 ・銃をもって助けに来てくれたこともあった。かっこよかった

 (DS研の医師と女性看護師はシリーズを通じて何度か出てくるが、名前は出てこない)

   茜理のもっている空魚のイメージ。F20,p.88

 ・紙越センパイ、かっこいいんですよ

 ・人に好かれようとしてない。でも意思は強くて、どこか遠くを見てて。

 ・(空魚は茜理に対して塩対応だが)私のことなんか眼中にない人に憧れがち

   紅森のもっている空魚のイメージ。F20,p.172,3

 ・紙越さんって元々怖い話に興味持ってるって有名

 ・まず1年の最初の頃に学部の新歓コンパで、2年生3年生に議論ふっかけて、なんかすごい怒り狂って出て行った

 ・その後は孤高の人

 ・2年になったら急に片目だけギラッギラのカラコン入れてきて目立ってた

 ・金髪の、めっちゃくちゃ綺麗な、読モ(読者モデル)みたいな子と歩いてた

 ・別学部の子が悩まされていた心霊現象?を解決したって噂が流れて、あーそういう系の人だったんだって、私もなんか納得した

 ・ゼミの初回で一緒になって、そのときも自己紹介で実話怪談とかに興味があるって言ってたから、おー変わってないんだって思った

 

   DS研事務局長の汀曜一郎に関する描写。F16

 ・三つ揃いのスーツを着こなし、組織存続の名目で金持ちから金をむしり取って優雅に暮らしている得体の知れない男。

 民間軍事会社と個人的な付き合いがあるだけでなく、自分でも銃を扱う、暴力の行使に手慣れた、どう考えてもカタギじゃない男。(以上p.10)

 ・マヤ文字の入れ墨びっしりの、インテリヤクザみたいな風貌の、金と暴力の扱いに長(た)けた、得体の知れない男。(p.16)

 

 空魚は、そういう汀から次のように言われる。

 「紙越さんの邪魔をするつもりはありませんから、ご安心ください。ただ――わかってしまうんですよね」「私も紙越さんと同じようなことをやって生きてきた人間ですから」

 その2ページ前にある汀の空魚評。

 「失礼ながら紙越さんは、他人にいいように使われるようなタマではないですよね」

 「紙越さんは、根本的にコントロールされるのを嫌う方だ。紙越さんが従順に見えているときは、見えないところで何か恐ろしいことをやらかしていると考えなければならない」

 

 

 F11で登場した潤巳(うるみ)るなも、DS研で隔離されたままですが、F16からときどき元気な姿で現れ、F20ではDS研に侵入したTさんを追い払う役割を果たします。

 

 笹塚二胡が社長を務める民間軍事会社トーチライトは、F18で建設業<ともしび工務店>を兼務していることが分かります。

 

 

 最後に、F16~F20の時間経過を抜き出しておきます。

 前回記事の末尾に載せたものの続編です。

 1月2日~1月半ば F16 ラブホ女子会は1月10,11日

 1月下旬(ラブホ女子会の2週間後) F17

 3月最初の土曜日 F18

 3月末 F19

 4月~5月 F20

 

 この後出た第7巻は次で紹介しています。

 『裏世界ピクニック』シリーズ3 | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)

 第8巻も。

 『裏世界ピクニック』シリーズ4 | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)

 

 ★ アニメもとうに終わってもうニーズはないかもしれませんが、乗り掛かった舟みたいな感じで取り上げました。

 

 

 ★★ 今日のロジバン 順序

   mi raumoi le velskina porsi 「ミ ラウモイ レ゚ ヴェㇽ゚ㇲㇽスィ」

  私は映画鑑賞客の列のかなり後ろの方だ。

 rau : 十分。数詞PA4類

 moi : 数詞nを序列を表す述語に変換する。x1は x2(集合)・x3(原理)のn番目の要素だ。

      MOI類

 velskina : 映画の観客だ <- vel+skina, vel<- ve.skinaのx4をとる

 skina : 映画/アニメーションだ,x1は x2(内容)・x3(制作者)・x4(視聴者)の。-kin-

 porsi : 序列/順番化したものだ,x1(並んだ集合)は x2(規則/基準)に従って x3(不整理の集合)を;列/連続体だ,x1は。-por-, -poi-

 

 数詞 rau 十分は、du’e 過多、mo’a 過少と同じグループです。

 { le velskina porsi } 「映画鑑賞客の列」は、raumoi のx2です。