その4.千葉県の高校と教師(前編)

※この記事は常に新鮮なネタを提供すべく、随時、更新されています。

 

 今回は以下の内容となります。

前編

 ①千葉県の令和元年度学校基本調査結果より

 ②三部制定時制高校増設が学校社会に及ぼす衝撃

 ③学校現場への無理解、誤解が生じてしまう背景にあるもの

後編

 ④新科目「公共」や「歴史総合」が目指す授業とは?

 ⑤生き残るための授業実践とは?

 ⑥「教師のバトン」をどうつなぐのか? 退職教師に告ぐ!

 

①千葉県の令和元年度学校基本調査結果より

 以下は千葉県の統計から読み取れることではあるが、日本全体の人口動態を踏まえれば他の多くの都道府県でも似たような問題を抱えていると思われる。これから指摘することは千葉県の学校現場におられる方ならば敢えて統計を示すまでもなく、周知されている事柄であろう。ただ現在の若手教員と学校現場が直面している困難をクッキリと浮かび上がらせるためにも、念のためデータを用いて概観してみよう。なお学校基本調査は3年おきに行われる全国調査なので直近のデータは令和元年度のものとなることを予めご理解いただきたい。

 2019年段階で千葉県の公立高等学校の教員は半数が50代以上という超高齢化に直面していることが分かる。また学校現場にとって最も深刻な問題点は学校運営の中核を担うべき40代の教員(緑色のゾーン)が急激に減少してしまっていること。平成19年度に比べると令和元年度は4分の1以下まで激減している。40代と言えば既にそれなりの経験を重ね、かつ体力、精神力もまだ十分に残っている、いわゆる「脂がのっている」世代に該当しよう。

 今、若手教員にとって頼りがいのあるリーダー的存在となるべき40代の急激な減少は千葉県の学校現場に様々な局面で深刻なダメージを与えつつあるのでは。本来は主に40代が務めるのが妥当な主任、指導主事を、まだ経験の浅い20代の若手教師に務めさせている学校は県内に数多く存在しているに違いない。高校ほど年齢間の極端なアンバランスは見られないものの、中学校でも40代の減少は現場の困難度を大きく高めてしまっているようである。

 このアンバランスさを性別の観点を加えて人口ピラミッド風に表したものが上のグラフである。左側が公立中学校、右側が公立高等学校の教員の性別(それぞれ左が男性、右が女性)及び年齢階層別教員数を示している。高校の場合には中学校以上に性別のアンバランス(女性教員の少なさ)が目立ち、それが比較的若い世代においても十分に解消されていない、という残念な現実が見てとれる。千葉県の高校教育界での大問題としてこの件も追加すべきだろう。男女共同参画社会の実現を目指してこれまで繰り返し上から目線で掛け声をかけてきた千葉県の、高校における無様な現状がこのグラフによって明らかとなっている。おそらく性別面での教員数のアンバランスは部活動指導の外部委託がさらなる前進を見ない限り、改善されることはないだろう。何はともあれ千葉県の場合、教員の年齢別、性別構成での大きな偏りによって生じている問題はとりわけ高校において顕著なのである。

※参考記事

 ◎千葉県公立高の入試採点ミス 7月にも改善策提示 教育長「人為的ミス防止が第一の視点」

  千葉日報社 によるストーリー 2023.5.20

 〇「デジタル採点導入を」 千葉・公立高入試で有識者会議が提言 

  産経新聞 2023.6.14

 〇【高校受験】千葉県公立高、デジタル採点導入など…採点ミス改善策で提言

  リシード 2023.6.19

 2022年度の千葉県における公立高校での入試採点ミスが98校、933件にも達してしまった件に関して

 県の教育長は「…各県立高へのアンケートで不注意や解答用紙の様式などが採点ミスの原因として挙

 げられた」との認識を示し、専門家からなる改善検討会議を設置してその提言に基づく改善を検討し

 ていくとのこと。しかしながら直近まで高校入試の現場にいた自分としてはなぜもっと早くから改善

 策がとられなかったのか、不思議でならない。そもそも「解答用紙の様式」と「模範解答の様式」が

 異なることが採点時のミスを招く、との指摘はかなり昔から存在していたし、アンケートでも繰り返

 し指摘されてきたはず。ところがこれまでまったく改善されることは無かった。

  加えて入試の前後は3年生の追試、成績処理、卒業式の準備、就職指導などと重なり、3学年に関わ

 る多くの職員は極めて忙しい。殺人的な忙しさに振り回される中での不注意を一体、誰が咎められる

 のだろう。「入試」は別格の重要な仕事であることなぞ、とっくの昔に承知している。別格の仕事な

 らばその時期に他の仕事を集中させてはならぬはず。採点ミスの責任の一端は教員の多忙化を加速さ

 せ、アンケートの結果、すなわち現場からの提言を黙殺してきた県教委にあることは明白だろう。こ

 れこそが「人為的ミス」の最たるものなのに、相変わらず自らは反省せず、ミスの責任を現場に転嫁

 する無責任な弱いもの叩き…いかにも千葉県らしい対応ではある。入試という重大な場面でのこれだ

 けの大失態を招いた責任を本来、真っ先に負うべきは教育長以下、県教委であるはず。ならば教育長

 が率先して引責辞任をしてみせてから現場への指導を行うのがスジではないのか。

  とはいえ高校入試の受験者数が年々、減少の一途をたどり、採点すべき答案の枚数は以前よりかな

 り減ってきているはず。しかも千葉県では年2回の入試が1回に軽減されたばかりの段階であるにも拘

 わらず、ミスがこれだけ多いとなると、この件がはらむ問題は意外に根深く、相当に深刻なのでは。

  おそらく採点ミスの発覚件数は実際には数千件に達しているものと考えてよい。近年、生徒や保護

 者から自分の入試答案の開示請求が多くなり、開示請求で採点ミスが発覚してしまうという悩ましい

 案件が生じてきていた。こうした事態にようやく重い腰をあげた県教委が本格的に抽出答案(実際の

 答案枚数のほぼ1割に相当する答案で、毎回、各高校から県教委に提出されている)のチェックを行っ

 てみたところ、今回の件が不覚にも発見された…というのが推測される、事件発覚の経緯である。つ

 まり県教委側も抽出答案のチェックがこれまで不十分だった可能性が指摘できよう。

  とすればもはやミス多発の原因を単なる教員の過労や県教委の怠慢…といった分かりやすい要因だ

 けでは十全に説明できないようにさえ感じられるのだ。少なくともそう思えるほどに千葉県の高校教

 育現場の疲弊ぶり、破綻ぶりは今や切迫してしまっているのではあるまいか。

  では現今の入試採点ミス多発が意味することとは一体何だろう。もしかしたらこれは学校運営の中

 核たる40代後半から50代前半の教員の異常なまでの少なさと校務全体の複雑化、多忙化などによって

 千葉県公立高校全体が徐々に自らを教育機関としてまともに運営する力を失い、まさに今、地滑り的

 崩壊が始まろうとしている…すなわちこれは公教育としての破局的な局面に移行しつつある一つの兆

 しなのかもしれない。

  現に大学生は「沈もうとする船に乗りたくない」と言わんばかりに教職を忌避するようになってい

 る。教師不足が叫ばれる一方で今や再任用を断る退職予定の教師だって少なくない。一番悲惨なのは

 職場から職場から長期離脱したり、早期離職に追い込まれる働き盛りの教師が増えていること。加え

 て生徒たちもまた学校への忌避感が増大し、不登校児童生徒数は増える一方である。これらの問題ば

 かりは「人為的ミス」という表現でアッサリと説明してしまうことは許されないだろう。

  従って私としてはせっかくの有識者の提言もおそらく時すでに遅し、入試を含めたあらゆる事態の

 悪化が容赦なく加速度的に同時進行し、視野の狭い部分的改善など現時点に至っては何の意味もなさ

 なくなる…と考えるが、いかがか。

異例の196人処分・指導措置 千葉県教委、入試で採点ミス相次ぎ

 毎日新聞 によるストーリー 2023.7.20

 結局はトカゲの尻尾切りである。これで教師の意欲はさらに低下し、千葉県の公立高校における機能

 不全はさらに進行するだろう。マークシート方式の導入など、採点業務に絞られたミクロな観点から

 の改善策だけでは高校現場の働きやすさの向上には何一つ、つながるまい。採点ミスが減ったとして

 も教員採用試験の倍率が上がるわけではない。県の対応は対症療法でただのモグラたたきに過ぎず、

 今度は別の事件事故が頻発するだけ。

教員の魅力を動画でPR 千葉県教委作成、来月にも公開

  東京新聞 2023年9月10日

 教員採用試験の倍率低下、教員不足に危機感を抱いた文科省と各地の教育委員会は恥も外聞もはばか

 るこ となく、「青田買い」どころか教職のバーゲンセールまがいの詐欺的商法にまで手を伸ばし始め

 ている。ずいぶんと落ちぶれたものだ。

  さしずめ千葉県の場合はこう言った塩梅ではなかろうか。これまで堅調に売り上げが出ていた人気

 商品がこのところ何だか少しずつ、売り上げが落ちている。宣伝広告にもっと力を入れればきっと売

 り上げは回復するに違いあるまい。だって商品の質にはそれなりの自信があるし、老舗としての伝統

 の力もある、問題は宣伝不足…そこで思い切った新機軸を打ち出そう。そうだ、若者に訴求力のある

 動画作成を業者に依頼し、商品の魅力を分かりやすく、かつガッツリとアピールしてもらおうではな

 いか…

  しかし本当に商品の品質は保たれてきたのだろうか。肝心のお味の方は時代の流れに取り残されて

 いないだろうか。今どきパッケージだけ飾り立てても胡散臭いだけ…箱の中身は実際、いかがなもの

 だろうか。とっくの昔に賞味期限が切れていないだろうか。どうみても強烈な腐臭が漂っているはず

 なのだが、なぜ、売り場の誰一人としてそれに気づかないのだろうか。そもそも商品が劣化していな

 いか、誰か定期的にきちんとチェックしてきたのだろうか。腐り切った商品を30年以上の歳月と交換

 に若者へ売り渡し、彼らをたちまち過労死や精神障害に追い込む…こんなブラック企業のような悪徳

 商法を国はいつまで続けるつもりなのだろうか。

  完全なブラックボックスと化している学校の中身は意外なほど闇が深い。箱の中身が見えにくかっ

 たからこそ売れてきただけのインチキ商品に未来ある若者が騙されて手を出してはなるまい。

飲酒、わいせつ、セクハラ…千葉の先生のモラルはどこへ? 懲戒処分、最悪のペース

 産経新聞 2023.12.20

令和5年度の教職員の懲戒、過去最多の52件 千葉県教委 産経新聞 2024.3.21

 案の定、千葉県での教員の不祥事が多発してきている。明らかに千葉県の教育界は機能不全に陥って

 いるのであり、その原因は多岐にわたるだろう。しかし最大のポイントは県の教育界の頂点にいるは

 ずの教育長に責任を問う論調がマスコミにおいて皆無であること。指導的立場にいる人物が部下たち

 の不祥事の責任を一切、とろうとしないような組織に自浄能力は期待できない、と考えるのが世間の

 常識であろう。マスコミの機能不全は今に始まったことではないが、やはりマスゴミには今後も一

 切、期待してはなるまい。

      昨今のパーティー券販売による裏金問題では関係する自民党所属の閣僚が相次いで辞任している。

   当然、岸田首相もまた任命責任を厳しく問われることになろう。相変わらず腐敗を極める政界です

 ら、多少のケジメはとろうとしている。ところが千葉県の教育界では令和4年度の高校入試における採

 点等のミスが千件近くも発覚するという、未曾有の不祥事を引き起こしてもなお、教育長は自ら責任

 をとることを一切せず、末端の教員ばかりを処罰するにとどまっていた。そしてたちまち令和5年度の

 教員による不祥事多発である。

  残念ながら教育次長は何と学校現場に綱紀粛正を求める通達を出すだけで事足れりと考えているよ

 うだ。しかも教育委員会として他に出来ることは無い、というみっともないほどの言い訳がましいセ

 リフを残しているという。あまりにも無責任であり、恥知らずであり、無能すぎるのではないのか。

  この発言は教育困難校で授業中に騒ぎ出した生徒たちに対して「静かにしろ」と切れてみせるしか

 能の無い問題教師とまったく等しいレベルではないのか。真っ当な教師ならば自分の授業のつまらな

 さ、分かりにくさを反省して授業をより魅力的にするための努力を重ねていくはずであろう。仮に教

 師が授業中の騒がしさをひたすら学習意欲に欠ける無作法な生徒たちの責任であるとして自身の授業

 改善に一切取り組まないようなら、校長はその教師を厳しく指導するのが管理職としての当然の責務

 である。同様に部下の不祥事多発に対して教育長らが綱紀粛正を口先だけで求めても何らの意味が無

 いどころか、それはむしろ職務放棄に近い愚挙なのである。教育長、教育次長らが率先垂範、示して

 しまったこうした自浄能力の欠片も感じさせない無気力な姿勢はただでさえ問題の山積する千葉県教

 育界の隅々まで行き渡り、次年度以降のさらなる不祥事多発を呼び込むに違いない。

  一体、県の教育長は何のために存在しているのだろう。よくありがちな文科省の官僚が天下る高給

 取りの名誉職という、ただの肩書だけの役職に過ぎないならばいっそのこと無くしてしまった方が良

 いに決まっている。いよいよ兵庫県などに追いつき、追い越せとばかりに学校不祥事多発の県として

 の悪名を全国に轟かせようと勢いづいてきた千葉県の教育界からは今後とも、片時も目を離してはな

 るまい。

副校長・教頭の時間外勤務の多さ浮き彫りに…千葉県調査 リシード 2024.3.22

 これはかなり以前から指摘されてきた事態である。何をいまさら…という感は否めないが、学校の危

   機的状況の一端ではあり、世間にも周知された方が良いのは確か。

 

 40代の教員が少ないという年齢構成の歪みは初任教員の指導にも甚大な影響を及ぼすだろう。面白くて分かりやすく、生徒達の印象に残る社会科の授業を創り出す事は極めて難しく、授業準備には相当の手間暇がかかる。当然、若手教師にとって先輩教師のアドバイスは大いに参考となるだろう。特に沢山の生徒達から絶大な支持を集めている熟練教師の授業内容や手法は見逃せまい。脂がのった40代教師の授業には参考とすべき要素が多いはずである。しかし40代が少ない千葉県の高校現場では授業見学に値する先輩教師が実数としてかつてより少なくなっていることはほぼ間違いない。自分の親世代同然の50代教員の老練(老獪?)な授業がどこまで若手教師のお手本となれるのか・・・もちろん人によりけりだが、やはりIT化の波に乗り遅れがちな50代教師に過度な期待は出来ないと考えるべきだろう。

 生徒数が多かった30年ほど前までは千葉県内の多くの高校が一学年10クラス程度の学年規模であった。学校内の社会科の教員数は一学年のクラス数とほぼ同じだったので新米教師は10名近くの先輩教師から多方面にわたるアドバイスや教材、プリントなどをいただくことが出来た。しかも年齢構成のバランスが比較的とれていたので、多くの高校では新米教師が孤立してしまうことなど起こり得なかったのである。ところが現在は少子化の進展によって多くの高校が一学年4~5クラス程度の規模に縮小している。つまり校内での同じ教科の教員数がほぼ半減している。加えて40代教師の激減である。千葉県内の高校では若手教師が授業以外でも孤立しがちとなり、様々な場面で孤軍奮闘を迫られているに違いない。

 近年、初任教師には初任研の指導員として校内でベテラン教師が一人割りあてられている。私も一度、その任に就いたことがあるが、経験上これで十分とは言いがたい。もちろんそうしたマンツーマンの指導場面もあって良いのだが、かつてのように多様な先輩教師に囲まれて多様な刺激を受ける方がはるかに現場の実態に密着でき、豊かな経験を積めるのではあるまいか。

 指導が難しい高校では生徒指導上、教科準備室よりも学年室や大職員室に常駐する時間が長い。千葉県内の高校の少なくとも三分の一程度は教科準備室よりも学年室や大職員室が教師の居場所として重視されるだろう。学校によっては教科準備室がただの物置になっているような高校さえある。そのような高校に採用されてしまった初任教師は先輩教師から授業に関する温かい助言を受ける機会がどうしても少なくなり、授業の成立に一層大きな困難を覚えるに違いない。

※参考記事

25歳の女性、県立高の教育実習で教員から暴言・暴力を受け「今でもつらい」と県を提訴…抑うつ

 状態で働けず 読売新聞 によるストーリー 2023.11.6

 鍛錬と協調を旨とする抑圧的な精神主義がいまだにはびこる学校ではありがちな事件。また本格的な

 教員養成教育を受けなくとも高校教師に採用されてしまうシステム上の問題も背後にはあるかもしれ

 ない。それに加えて学校現場のブラック化による慢性的なストレスで精神的に追い詰められた教師に

 よる感情の暴発、といった要素も十分考えられる。ただ県としてはこうした事件によって教員志望者

 数がさらに減ってしまうことこそ、避けなければならない事態なのだろうが、いずれにせよ、千葉県

 の公立高校が抱える問題の深刻さを予感させる事件の一つとして捉えたい。

教員の精神疾患による休職・病休は依然として多く、20代30代で増加:背景になにがある? 

 妹尾 昌俊教育研究家、学校・行政向けアドバイザー

 YAHOO!ニュース JAPAN 2021/12/22(水) 15:00

教員免許の授与数、20万件割れ 「過労死ライン」の労働環境影響か

  朝日新聞社 2022/08/01 06:00

 高校での教員免許授与数が特に激減していることの背景を問いただしたい。文科省は教員免許取得条

 件の緩和による取得免許数の増大を検討しているようだが、ただの数合わせ、泥縄式の発想に過ぎ

 ず、かえって学校現場の混乱を深めるだけであろう。このような短絡的発想しか出来ない教育行政の

 側こそが最早オワコンなのだとつくづく思う。

「業務断れず限界まで」「眠るのが怖い」20代教員に心の病増加…過重業務で適応障害、自殺も 

 読売新聞 2022/10/24 05:00

千葉の中学3年の過半数は公立高校志望、でも「学費が同程度なら私立」選ぶが76%

 読売新聞 によるストーリー  2023.11.24

 確かに公立高校の改革はすでに手遅れであり、もはや多くの公立高校が時代の急速な進展にまったく

 ついていけなくなっていることは明白だろう。とりわけ千葉県の場合、公教育における制度的、組織

 的欠陥、束縛の多さや頑迷な保守的体質、予算の圧倒的少なさが教育の改革、改善の足を引っ張る現

 象があまりにも目立ち過ぎてはいないだろうか。

  今後は東京都や大阪府のように高校改革の多くを私立校の努力に委ねる方向に動いていくのが多く

 の民意に沿い、現実的であるように思えるが、いかがだろう。すなわち公教育の民営化を進め、市場

 原理を導入して高校間での競争を煽ることで時代の変化に即応できる高校教育の実現を目指した方が

 現在の高校教育の、残念なまでの行き詰まり、閉塞状況を打開するにはどう見ても手っ取り早いよう

 に思えるのだ。

  中学生の4分の3以上が私立進学希望であるならば、今後は中学生の進路希望に応えて私立高校の数

 を増やすとともに私立高校の入学定員を大幅に拡大していくべきだろう。私立における保護者の学費

 の減免はある程度必要になってくるだろうが、公立高校の予算を削った分をまわすことで相当程度、

 家計負担の軽減は可能となるはず。そのためには当然、公立高校の職員数の大幅な削減も進める必要

 はあるだろうが、現今の教員不足がむしろ追い風となっており、文科省や県教委の妨害さえ排除でき

 れば公教育の縮小は思いのほか順調に進むのではないか。 

  公教育の大幅な民営化こそ、保護者、児童、生徒の要望にこたえる方途であり、文科省は学習指導

 要領や学校設置基準等による下らない縛りを緩めてより自由で多様性に満ちた高校教育の実現を推進

 するためにまずは徹底的な自己変革を行うべきであろう。

  1980年代以降、鉄道や郵政など多くの分野で民営化が進み、その都度、様々な議論を呼んできた。

 もちろん民営化に大きな犠牲が付きまとってきたのは事実であろう。教育の民営化に反発する人は少

 なくあるまい。しかし日本の公教育の閉塞状況は既に日本の経済力、政治力を酷く毀損させてきてい

 るほどに深刻な機能不全に陥っているのではあるまいか。今後、「公」の力に期待できないとすれば

 民活導入は不可避であろう。

  それほどに文科省以下、千葉県教委、公立高校の弱体化は深刻であり、公立高校が自身の力だけで

 悲惨な現状を打破できる可能性は決定的に低いと言わざるをえない厳しい現状があると私は考える。

 したがって千葉県教委はこれまでの公立高校の入学定員を今後は大幅に削減させていき、私立高校に

 高校教育の主導権を委譲する決断をすべき段階にきていると思うが、いかがだろう。

 

参考資料

千葉県公立学校教員採用試験倍率の推移(2020~2024年度採用)

 

2020

2021

2022

2023

2024

小学校

2.0

1.9

1.9

1.6

1.4

中・高国語科

2.0

2.3

3.3

2.5

2.0

中・高社会科

5.3

4.8

4.8

6.1

3.5

中・高数学科

3.4

3.2

3.3

3.2

2.2

中‣・高理科

3.2

2.3

2.2

2.3

1.7

中・高英語科

2.7

2.4

2.5

2.4

1.7

表中の年度は採用予定年度であり、採用試験自体はそれぞれ前年度に行われている

   なお2025年度採用試験の志願倍率はまだ発表されていない。

  以上の受験倍率の経緯からみて千葉県の場合、次年度の教員不足がかなり懸念される状況にあると言えよう。中・高の国語科に関してはここ数年、比較的低め安定の倍率だが、女性教員の割合が多く、産休等で年度途中から教員不足が生じがちな教科であり、今後も予断を許さない深刻さを感じる。社会科や数学科の急速な倍率低下は現状では教員不足を免れる段階だろうが、教員の質を保てなくなるレベルには既に達しているだろう。ついに2倍を切ってしまった理科と英語科はとりわけ深刻であり、教員不足と質の低下の双方が同時進行していると見て間違いあるまい。とりわけ女性教員の多い英語科はかなり危機的状況にあると言っても過言ではないだろう。

 

 

①   三部制定時制高校増設が学校社会全体に及ぼす衝撃

 高校の場合、他校に赴任すると自分の意に反して突然、自分の専門外の科目を任されることは普通にある。そもそも転勤先が定時制や職業高校ならば専門外どころか複数の科目を任されること自体、当たり前である。特に定時制や小規模校(現在、増加中)の場合、少なくとも三科目までは覚悟する必要があるだろう。自分も大学時代に専攻した学問とは全く異なる科目を初任からずっと任されてきた。初めて受け持つ科目が一つならば何とか対処できるだろうが、それまでやったことのない科目を一度に二科目も任されてしまうとなればさすがに誰でも辛いはず。

 ところで今、話題の三部制の定時制高校では多くの場合、学年制ではなく、単位制を取っており、しかも秋入学秋卒業を認めている例が多い。このためほとんどの講座は2単位もので構成されている。と言うことは必然的に一人の教師の持ち科目数と持ち時間数が多くなりがちになる。

※4単位ものの場合、半期の講座では週8時間の授業となってしまうのでこれは教師、生徒共に辛すぎ

 る。どうしても4単位ものの講座は通年の講座しか設定できない。とは言え通年の4単位ものの講座を

 多くしてしまうと選択肢が狭まるため、今度は秋卒業が難しくなってしまう生徒が出てくる。これで

 は生徒の不利益につながるので勢い、講座は2単位ものばかりになってしまう。

 また各科目の講座は通年の講座と半期の講座(半年で2単位が修得できる)とに分かれている。私は日本史で採用試験を受け、表面的には日本史を専門としていたにもかかわらず、三部制の定時制では現代社会の通年講座と半期講座(前期)、倫理の通年講座と半期講座(前期)、政治経済の通年講座と半期講座(前期)をそれぞれ一講座ずつ年度の前半に持たされた経験がある。

 半期講座の場合は半年で2単位取得できる。つまり2単位の講座にもかかわらず週に4回の授業を行うわけである。同じ倫理という科目でも通年の講座の方はごく普通に週に2回の授業で一年かけて行う。このため、単純に見ても半期の方が授業の進度は通年の講座の倍の速度になる。すなわち倫理を通年と半期の2講座を担当するといっても同じ内容の授業を繰り返せるのは最初の頃の授業だけ。ということは倫理一科目に限ってみても、授業準備にかける労力は通常の2単位ものとは比べものにならないほど重くなる。倫理の場合、「週6種類の授業準備」とまではいかないにしても、実質週3種類余りの授業準備をほぼ半年間行う・・・少なくともそれくらいの負担に相当すると言えるだろう。

 私のいた高校ではすべての講座が2時間連続(45分+45分=90分)の授業展開で、合間に僅か5分の休憩が入るだけ。もちろん連続の2時間が終われば今度は次の2時間まで15分もの休憩が入るから、休憩時間に関してトータルで不足しているわけではない。ただ授業の合間の5分という時間がそもそも休憩時間として適切なのか・・・と思う部分はあった。

 転勤してきた際に初めて受け持つ科目(倫理)が2単位ものと聞いた時、2単位ものなのだから授業準備にそれなりの時間が確保できそうだ・・・と実際に授業が始まるまでは安心していた。が、4月になって半期ものが週4時間、それも一度に2時間が連続するということを知った時、愕然としてしまった。これでは授業準備が間に合わなくなるかもしれない・・・加えてこれまで教えたことのある政治経済や現代社会までもが異様なほどの負担感となって私を襲ってきたのである。

 三部制の場合、午前部、午後部、夜間部の時間割にそれぞれ2時間分オーバーラップする時間があるため、教師の時間割は一日6時限ではなく、一日8時限で組まれている。普通の学校は授業の分母が6時限なのに対してこちらは8時限であるため、当然、一日6時限分もの授業を割り当てられることは普通にある。最悪の場合は半期のみとは言え一日8時限の授業となる日も出てくるかもしれない。となればその日に必要な授業準備は確実に前日までに終わらせておく必要が出てくる。否応なしに授業準備や提出プリントのチェックなどは前後の空き時間が少ないため、そのほとんどを自宅へ持ち帰ることになるのだが、時間不足と翌日の授業に間に合わなくなるかも、という不安とで、曜日によっては夜もまともに寝付けなくなる。

 もちろん自習監督の割り当ては一日8時限という分母を基準にしているので一日4時限程度の授業ならば当然の如く自習監督を入れられてしまう。しかも8時限の時間割のため教師及び生徒には放課後としての時間がほとんど確保されていない。どうしても生徒との面談や文化祭の準備、部活の指導、学年会議や分掌の会議などはその時間設定と教室の確保に常時、非常な困難を感じてしまう。HRや教室掃除の時間も実質20分程度しか用意されておらず、休憩時間を削らないとどちらも成り立たないのだから最早稀に見る、驚きのブラック・システムであった。

 半期の講座は通年の講座よりも早く終了してしまうため、定期考査の問題漏洩を避け、両講座の成績面での公平を期するには、厳密に考えれば(通常とは逆に思えるだろうが・・・)テスト問題をまったく同じ内容にするわけにはいかないはずである。したがって同じ倫理という科目で同じ担当者でありながら、実は通年と半期とでは問題どころか授業内容自体をも一定程度、変えていく必要が生じてしまうはずなのだ。

しかしこんなことは一体どこまで可能だろうか・・・そもそも一体どこのどなたがこんな無茶苦茶なシステムを考え出したのだろう・・・というわけでこの年は前期の場合、実質的には週に合計18種類の異なった授業をしなければならず、定期考査の問題はその都度6種類、前期だけで合計12種類もの試験問題を限られた空き時間の中、たった一人でひねり出す必要があった。

 三部制の定時制の生徒達の中には日本に来たばかりで日本語すら十分に理解できない子(日本語を母語としない生徒は定時制の全学年で合計50人以上か。平仮名すら分からない高校3年生もいた)や中学校3年間で200日以上欠席している子(かつて不登校だった子は午後部ではクラスの3割近くを占める)、非行に走り、腕力にものを言わせて周囲を威圧するいじめっ子、家ではDVを受けて心に深い傷を負っている子(児童養護施設から通う子もいる)、貧困にあえぐ子(生徒の8割近くはアルバイト)、何らかの発達障害や学習障害を持つ子(重い知的障害を抱えた自閉症の子もいる)・・・それぞれが少なからぬ割合で一つの講座に混在している。こうした定時制の生徒達を授業中誰一人取りこぼすことなくしかも合計90分という長丁場を飽きさせることなく乗り切っていける社会科教師など果たしてこの世に存在しうるのだろうか。そもそもどんな生徒が相手であってもこの条件下で三科目すべての科目、講座を一人の教師が無事に最後まで勤め上げること自体ほとんど神業に等しいに違いない。だが誰が何と言おうと、割り当てられた週18時間分の授業準備を前期の半年間は続けなければならない・・・

 もちろん三部制の定時制だからといって、すべての高校がこんな過酷さを持つわけではなく、また担当教科や午前部、午後部、夜間部によっても負担感の差はかなりある。夜間部の場合は普通の定時制に比べて若干、授業の負担は重いものの、生徒指導や進路指導のあり方には他の定時制とほとんど差が無い部分も少なくはない。しかし午前部や午後部は教師の誰一人として経験が無い分、何かと面食らうことが多い。

とりわけ教科の違いによる負担感の差は三部制の場合、明らかに極大化してしまうだろう。多様な生徒の実情に合わせようとして授業を工夫しようとする教師ほど悪戦苦闘は不可避であり、なおのこと負担が重くなる。毎時間、提出用の自作プリントを用意し、回収するだけでも過酷な作業量である。プリントは授業中に終えることが出来なくとも授業の終わりに必ず回収する必要がある。次の授業の時(多くは1週間後)までにかなりの生徒が紛失してしまうか、教室に持参してこないからである。多様な背景を持つ生徒達に通用する社会科の授業を創り出すには想像を絶する努力を要するのだ。

 こうした学校ではよくありがちなことだが学級担任の希望者が極めて少なく、新任者には有無を言わせずに学級担任、場合によっては学年主任などを委ねてくる。特に再任用の常勤講師ならばベテランということでクラス担任どころか主任にされることも珍しくない。だから多くの場合、転勤早々の4月から分掌の責任者あるいは新入生の学級担任としての激務なども加えられた上で授業を含め、疾風怒濤の勢いで新学期が始まったりするわけである。

 当然の事ながら教育困難校にはこれまたありがちなことだが、新一年生の学年団が新任者ばかりという笑えない事態が繰り返されてしまう。そのため、極めて常識外れで複雑怪奇な三部制のシステムのことを校内の誰に聞いても苦笑いされるだけでほとんどの教師は明確には答えてくれない・・・人事面での異動が激しいため、経験の蓄積と共有が決定的に不足してしまっているのだ。私の属していた不登校の多い午後部の担任の多くは3年で転勤するか、たちまち午前部へと鞍替えしていった。私の隣のクラスなどは4年間、何とすべて違う教師が入れ替わり立ち替わり学級を受け持っている。事情に通じている他の三部制高校の経験者がこの高校に転勤してくることは在任6年間で一度も無かった。いつまでたってもまったくの手探り状態のまま、時間だけが慌ただしく過ぎていく。

 こうして長々と三部制の定時制における無茶ぶりの実態を愚痴ったのには訳がある。実は何と悲惨なことに現在、多くの県の教育委員会はこの過酷な実態を持つ三部制の定時制高校をその欠陥を取り立てて是正することもなく、増加する一方の不登校者への対策としてさらに増設する計画を持っているというのだ。

 このとんでもないダイナマイトのような破壊力のある「教師のバトン」を一体、誰が手にしてしまうのだろう。このバトン渡しはまさに命懸けの罰ゲームのような悪夢ではないのか。運の悪い(?)少なからぬ数の教師にとってあまりにも過酷すぎる将来がすぐ近くまで迫ってきていることを皆さんは実際、覚悟出来ているのだろうか。特に社会科教師が直面する悲惨さには全員が絶句する他ないだろう。

 もちろん中学時代、不登校だった生徒達や発達障害などでいじめられてきた子共達の貴重な受け入れ先として各地の三部制の定時制高校が不十分ながらも一定の社会的役割を果たしている側面は見逃せまい。しかし教師の授業負担一つとっても異常なレベルであるこのシステムの欠陥だらけの現状は余り世間には知られていない。しかもこうした学校がこの状況のままで増やされていくことが意味することは学校社会全体にとってとてつもなく破壊的であろうと予想する。これまでも批判されてきたはずの学校のブラック化が性懲りも無く一気に加速していき、心身を病む教師がいよいよ増えていくに違いないのである。

 おそらく中学校でも教師達が三部制の定時制と大差のない苦しさの中で高校を遙かに上回る週20~24時間程度の授業数を精神的に不安定な思春期の子供達相手に必死でこなしているはずである。そして当然のように中高の多くの教師は放課後や土日のほとんどを会議や保護者への対応、事務処理、とりわけ部活動に捧げている。であるにも関わらず、十二分にブラック化していた学校現場に(今度こそ教師達のとどめを刺そうとするかのように)何とコロナ禍への対応、そして高校の場合はいよいよ2022年度から新科目「公共」、「歴史総合」などを含む新学習指導要領の導入が始まってしまった。にもかかわらず文科省はこれまで教員の負担軽減にずっと力を入れてきたと平気でうそぶいているのだから何とも始末に負えない。

 

③学校現場への無理解、誤解が世間に生じてしまう背景にあるもの

 公務員には「職務上知り得た秘密」を退職後も外部には漏らしてはならない、という守秘義務が地方公務員法によって課されている。この守秘義務に違反するとかなり重い罰則が与えられる。それは当然のことで仕方ないだろうと素朴に思う方がいるかもしれない。確かに教師が保護者から提出してもらった生徒の個人調査票の記述内容、すなわち生徒及びその家族のプライバシーなどを勝手に外部に漏らすことは厳禁である。これは当たり前。

 問題は「職務上知り得た秘密」をどのような範囲に限定するのか、にかかっていると思われる。かつて食品関係の企業で「食の安全」を脅かす様々な事件が連発した際、事件事故の再発防止を狙って政府は食品関連の企業の社員から所轄官庁への情報提供を積極的に促す対策をとった。外国産の原料を使っているのに国産と偽って製造・販売している企業をケースに考えてみよう。この場合、原料の調達などにあたっている社員が自社の偽装工作、犯罪行為を知ってしまう事は十分あり得る。もしも公務員の守秘義務のような厳しい規則が民間企業にあてはめられているとすれば、立場の弱い平社員は守秘義務を楯にとって自社の犯罪に関しては見て見ぬ振りを続けてしまうかもしれない。その一方で消費者側が蒙る損害は会社の偽装が世間にバレない限り、際限なく拡大し続けることになるだろう。

 こうした企業犯罪を防止するには社員からの内部告発を容易にすべく、告発という行為によって特定の個人が不利益を蒙らぬよう、国が内部告発した社員を手厚く保護する必要がある。実際、政府はそうした告発者の身分保障までしても、多発する企業の不祥事を減らすために社員自ら勇気を持って告発するよう、促したのである。企業のコンプライアンスが厳しく世に問われ始めたのもこの頃からであった。

 では公的組織の犯罪行為を公務員は同じように勇気を持って内部告発できるのだろうか・・・たとえば公務員が上からの職務命令に基づいて明らかに違法と思われる行為を強要された場合、どうなるのだろう。近年、地方公務員法改正によって人事評価制度が導入(←勤務評定)され、特定秘密保護法が成立し(施行は2014年から)、公務員の守秘義務違反に対する罰則規定の強化(3万円以下の罰金⇒50万円以下の罰金)が図られるなど、「他言無用」とばかりに公務員への締め付けがどんどん進んできた。今や多くの公務員が社会通念上は告発すべき事案に対してすら萎縮気味になっている気配を私は感じてきている。もちろん上司からの命令が明らかに法律違反である場合には今もこれに従う必要はないはず。とはいえ上司から公文書の改竄を命じられ、罪悪感に駆られて自殺してしまった赤木氏の例がある。近年、組合加入率が極端に低下し、ただでさえ組織力を失って孤立しがちな下々の公務員にとって上司の命令に逆らう事はたとえ教師の身と言えども今や決して容易なことではない。

 森友事件の場合には明白な違法行為を上司から迫られていた。しかし、それでも改竄は行われてしまったのである。社会正義を脅かす危険性は普通のお役所だけではない。公立学校でも村社会化が進んでおり、内部告発がほとんど不可能と思えるほど「他言無用」の同調圧力は強い。たとえ職員会議の決定や校長の判断に何らかの違法性がありそうだと感じても内部告発に強いためらいを覚える教師は決して少なくないだろう。

 たとえば旭川女子中学生凍死事件の場合、報道から見る限りは学校側がイジメの隠蔽という違法行為を組織的に行っていると今のところ推測できる。世間一般からすればこの事件の違法性はほとんど疑う余地がないとさえ感じられるだろう。ところがこれだけマスコミが騒いでいるにもかかわらず、管理職の違法性を告発する動きは未だに当該中学校の職員や関係者からは出ていないかのようである。守秘義務を厳格に課されている学校現場では多くの場合、校長や教頭、さらには教育委員会に背いてまでして一職員がそう易々と内部告発できる状況には置かれていないと言えるだろう。実際、旭川のような案件はこれまでも各地の学校で繰り返し発生してきた。当然イジメ案件以外でも学校や教育委員会の強固な閉鎖性、隠蔽体質を物語る事例には事欠くまい。

 以上のような学校の閉鎖性は時代遅れのブラック校則や体罰、組み体操のような安全性への配慮を欠く伝統行事を長く温存させる土壌ともなり、「チーム学校」などの美名に隠れて教師集団の同調圧力、すなわち隠蔽体質と職員間のイジメ体質を継続させ、強める働きをもたらしてきたと私は考えている。

 教師による内部告発はたとえ告発者側にそれなりの社会的正義や正当性があろうとも、村社会的教師集団においては「裏切り者の卑劣な行為」、「職員間の和を乱す狼藉者」としか受け止められない可能性が極めて高くなっているのだ。神戸の小学校のように教師間のイジメやパワハラが校内で横行してしまうのはベテラン教員の経験からすれば必ずしも不思議ではないのである。内部告発の出来ない旭川の中学校教師を声高に批判できるほどしっかりと外部社会に開かれ、腹の据わった教師は現実にはそれほど多くはない・・・というのがこの事件に対する私の偽らざる印象である。

※学校教師間でのイジメ、学校教師の精神疾患が増えている背景にはまず学校での過労死レベルの激務

 と激しいストレスがあることは「大人のいじめ」(坂倉昇平 講談社現代新書 2021)でも指摘さ

 れている通り。こんな状況下で一教師が管理職や教育委員会を敵に回す覚悟で告発するだけの精神

 的、体力的余裕など持てる訳がない・・・ただの言い訳に聞こえるかもしれないが、これが現場で苦

 悩する教師の真っ正直な実感ではないか。

  なおイジメ自殺などの件に関わる学校の隠蔽体質に関してはこのブログの「§3学校問題編」で参考

 となる動画や記事を数多く紹介している。

 

 社会的公正や信義を守る上で必要とされる市民としての告発義務の方が公務員としての守秘義務を遙かに上回るかもしれない・・・といった悩ましい事態はとりわけ入試などの際においてどの学校でも起こり得る。そうしたケースに直面した教師が自身の良心に照らして学校長の判断や動きにかなりの違和感を覚えたとしても公務員の守秘義務を楯にとって自己保身を図り、結局は問題に目をつむりダンマリを決め込んでしまう・・・といった可能性は必ずしも低くはないだろう。言うまでもなく本来、優先すべきは入学希望者に対する公平、公正な対応なのに、である

 他方で学校の閉鎖性、隠蔽体質は学校が抱えている問題点の本質をマスコミや世間から見えにくくしてきた。そもそも内部告発をほとんど期待できない、すなわち自浄作用の損なわれた閉鎖的村社会と化している学校の場合、外部から十分な理解が得られることはまず期待出来ないだろう。学校を管轄する文科省ですら学校からすれば外部に過ぎず、教育学者の多くもまた学校外部の存在に過ぎない。実際、長く「学校教育村」の現場にいた者からすれば文科省の方針や教育学者の学校教育を巡る言説、マスコミの論調に現場感覚との大きなズレを覚えることは少なくないのである。こうして教師集団は知らず知らずのうちに国家や社会、世間から隔絶して孤立を深めていくことで健全な社会性を喪失していき、やがて世間常識、公序良俗ですら自ら容易に逸脱してしまう可能性を高めていったのかもしれない。

 担当する学級内のことを学級担任が一身で抱え込み、他の教員から介入されたくないと思う古臭い縄張り意識、つまり「学級王国」的発想は教員世界の中から払拭されているとは到底思えない。それどころか、今も色濃く残存しているようである。自分の学年の事は他学年から介入されたくない、自分の部活の事は他の部活顧問から介入されたくない、自分の学校のことを他の学校や地域住民、まして「何も知らない」第三者からは絶対に介入されたくない・・・学校特有の閉鎖的隠蔽体質はこうした奇妙なほど徹底的に外部からの介入を排除しようとするプライドの高い教師集団特有の心理、あるいはストレスフルなブラック職場の重圧下で、外部の誰からもまっとうな理解が得られないことから生じる孤立し、傷つきやすい被害者意識によって強く自閉してしまった少なからぬ数の教師達に見られる極度な内向きの姿勢・・・といったような、長年に及ぶ日本の学校の精神病理的風土が育んできたのかもしれない。

 

 (後編に続く)

 

 

 

その3.カッパの授業観 

 

1.総論

 従来の社会科授業で広く見られた、一方通行になりがちな一斉講義形式中心の授業を見直し、生徒の授業参加度を高める意見表明型の授業への転換を目指す。教科書の内容や重要語句をあたかも唯一の正解であるかのように捉えてただひたすらそれらを理解し、暗記させるだけの硬直化した指導のあり方を徹底的に見直す。

 また現実の社会では今すぐに正解を見いだせない「不良設定問題」が多いことを前提に、敢えて論争を呼びそうな不良設定問題への思い切ったチャレンジを試みる。「VUCA」という用語が注目されてきているように現実の社会問題は学校のテスト問題とは異なり、正解が一つとは限らず、そもそも正解が用意されている訳ではない。まさにVolatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)に満ちているのが現代社会である。そうした中で様々に異なる意見同士の粘り強いすりあわせを通じて、現時点での最適解を追求する討論型、対話型学習を行うとともに、生徒が自ら調べ、自分の考えを深めていくこと、そして各々が納得感の獲得できる個別化、個性化学習へと授業の軸足を移していくことが喫緊の授業目標となっている。

※参考動画

 ◎「ChatGPT」と真逆の概念に世界が注目 モヤモヤ力の可能性 [クロ現] | 

       NHK  2023/09/15 9:43

   【論破ブームの危険性】アベプラ平石アナの「論破上手=優秀はテレビの世界だ

      け」に若新雄純が本領発揮【前編】 

      新R25チャンネル  2023/06/07  29:52 

 ◎【議論で重宝される人】「議論で熱くなってもなぜか愛される人」。アベプラコ

     ンビ・平石アナ×若新雄純がたどり着いた結論 

      新R25チャンネル  2023/06/14 28:38

  討論の進め方、注意点がよく分かる。「ムキにさせる」=「本気にさせる」、「審判を下さない、

   勝敗をつけない」、「多様性尊重」、「論点のズレはすぐに修正」…役立つポイントが多い。

   ◎【心理的安全性】誰もが率直に意見を言える環境とは?組織改革を進めるカギ?

  超重要概念を学ぶ 

  ABEMA 変わる報道番組#アベプラ【公式】2022/05/29 24:20

  多様な意見を引き出すために必要とされる「心理的安全性」とは何か、理解できる。

 ◎【ハーバード大学准教授が語る】社会的に消す「キャンセル社会」の闇【ひろゆ

  きの妻&奥井奈南】 ReHacQリハック【公式】  2023/05/14  34:50

  多様な意見を引き出す上でキャンセルカルチャーの危険性に留意する必要があるだろう。

※参考記事

    ◎「民主主義って何?」にスパッと答えられるか…政治学者が「多数決と民主主義は関

     係がない」と言い切るワケ 

     プレジデントオンライン 岡田 憲治 の意見 2024.2.29

 会議の質は「進行役」で8割決まる…「よい会議」と「悪い会議」で決定的に違う

  5つのポイント 現代ビジネス 野本 理恵 によるストーリー

  5つのポイントは対話的議論の進め方と重なる要素が多く、大いに参考となるだろう。

    ◎波紋よぶ自民党意見書 教育現場の「汚染水」呼称を問題視

      朝日新聞社 によるストーリー 2024.3.16

    授業での討論の題材にも使える記事。風評被害にあえぐ福島の人々からすれば確かに「汚染水」と

  いう言葉には大きな抵抗があるに違いない。したがって福島県民の名のもとに、表現を「処理水」

  に変えていただきたい、という要望が出たならば、教師としてはこれに真摯な対応が必要となるの

  は当然。しかし政治家たちによる抗議には絶対に耳を貸してはならないだろう。教育への政治介入

  は本来ならば出来る限り避けるべきだからである。

   自民党福島県連の意見はたとえ正しくとも、絶対に「自民党福島県連」として公に出すべきもの

  ではないはず。確かに悪質なイジメ隠蔽問題に対しては首長による政治介入がどうしても不可避と

  なるような、あまりにも残念過ぎる教育行政の現状があるだろう。しかしこと教育内容に限っては

  政治家による介入を決して許してはなるまい。それは明らかに教育における政治的中立性を脅かす

  からであり、教育基本法への明白な違反行為となるだろう。議員たるもの、違法行為は厳に慎むべ

  きである。なぜ県漁連の名で抗議しなかったのか、政治家として愚かすぎる行為だろう。自民党福

  島県連の政治家としての良識が根本から疑われる案件なのである。

   こうした議員たちのあるまじき行為の連発を眺めていると、長期政権与党としての驕り高ぶりが

  おそらく自民党議員たちの心理に潜んでいるものと考えられる。つまり裸同然のダンサーを招いた

  懇親会の問題で揺れる自民党和歌山県連などと同じ問題構造が福島にも大いに見られるのではある

  まいか。

 

 これらの学習過程を通じて生徒、教師共に考え方の多様性に気付き、意見の異なる他者を尊重する姿勢を育むと同時に異常なまでに同調圧力の強い日本の硬直化した学校文化を徐々に相対化し、学校教育に一層の奥行きと柔軟性、多様性をもたらすことを目指していく。

 

2.各論

   具体的には以下のような授業内容と授業方法を提案する。

これまでの「教科書を教える」から教科書をも相対化する多様な観点の確立へ

 授業の最初の段階で欧米の教科書制度を紹介し、日本の学校教育における教育内容の特殊性に気付かせることは今後、授業を進めていく上で極めて大切となっていくと考える。教科書では触れられていないが生徒の関心が高くかつ重要なテーマと思われるものを敢えて幾つか授業で取り上げてみる。生徒達の意識を国際化、グローバル化に向けて広く開いていくための意識的働きかけがこれからは一層、必要とされてくるに違いない。密室化し閉塞してしまった日本の学校社会の風通しを良くしていく上でも教科書の神話化を抑え、授業内容と指導方法の相対化、見直し、アップデートを現場目線からダイナミックに進めていくべきである。

※参考動画

楽しく身になる歴史の学び方とは?井沢元彦さんによる歴史講座【続きは概要欄

   へ】堀江貴文 ホリエモン 2023/10/19 12:31

   井沢氏が指摘するように日本史においてですら、教科書に頼る授業がいかに的外れであるか、理解で

   きるだろう。

【天安門事件以来の盛り上がり】中国の言論統制と闘う若者たち 家族や仲間が拘束

   され銀行口座も凍結 [クロ現] | NHK  2023/09/14 9:46

 中国の若者たちの言論の自由を求める命がけの取り組みに対して、まず、どう思うのか、生徒たちに

    問いかけたい。さらに、日本の若者たちに今、言論の自由が本当にあるのか、問いたい。特に李苹さ

    んの「意見を持つことは国への最大の愛情です。希望を抱くからこそ声を上げるんです」という発言

   について深く考えさせたい。

      続けて言論の自由が成立する前提条件に付いていくつか列挙させたい。特に「情 報公開」や「知る

   権利」をキーワードにして一歩踏み込んで深く考えさせたい。例として社会科の教科書で本当に自分

   の意見が持てるようになれるのかどうか、確認させよう。ここで「君が代」について歌詞の意味を問

 うのが良いだろう。

      そしてもう一度、日本の若者に言論の自由があるのかを問いたい。

映画『教育と愛国』予告編

 シネマトゥデイ 2022/04/20 2:16

「危機的な学校教育の今」コネラジ 第365回 特別対談 ゲスト 齊加尚代さん

 ワラしがみ  2022/09/20  35:58

 

重要事項の暗記よりも最適解に迫るための思考力育成重視の授業展開へ

 もちろん教科書を軽視するのではなく、重要事項の理解や暗記もある程度は要求しつつも、多様な意見を引き出し、多様な意見が飛び交う中で最適解を目指して粘り強く思考する対話的な力を養うことをより重視する。必ずしも常に多数派の意見を支持するわけではなく、少数意見にしっかりと耳を傾けることで多様性の持つ豊かさが担保され、すべての生徒が自己の意見表明をしやすくしていく・・・という目指すべき討論型、対話型授業への基本的スタンスを堅持する。

※参考記事

「学校で政治の話はタブーなの?」教育評論家・親野智可等氏に《日本中学生新

 聞》が聞いてみた FRIDAYデジタル の意見 2023.11.8

 「日本では、子どもの頃から自分たちが無力だと教え込まれ、何か言っても無駄、行動しても無駄、

    内申書が悪くなるだけだと刷り込まれ、教育・洗脳されているのだから、大人になって急に選挙権が

    ある・投票しましょうと言われても、投票率なんて上がるわけがないですよね。」との指摘に納得。

来日したフランスの女性議員が衝撃を受けた、日本における「学校と政治のかか

  わり」 ニューズウィーク日本版 によるストーリー 2023.9.29

 日本の若者の投票率の低さの背景には学校教育において論争を呼ぶような政治的話題をできるだけ回

   避する傾向が見られる点がある。また政治家側も表向き政治的中立性を厳守している学校への働きか

   けは無理筋だと感じてしまい、積極的に若者に語り掛けることをしてこなかった。これらが現在、

   「老害政治家」たちをはびこらせ、日本政治の停滞を招いていることは疑いようのない事実だろう。

    まずは学校教育を根本から見直す必要があるのだ。学校教育における政治的中立性とは何なのかを

   含めて深く追及すべき課題は多い。

 

社会問題への関心を高めたい。モデル・長谷川ミラが日本に抱いた危機感 Forbes  JAPAN 編集部 2022/08/23 12:00

乙武洋匡氏 ryuchellさんが「多様性は強要しない」と 「友達なんかじゃな

 かった。」と悔恨 デイリースポーツ によるストーリー 2023.7.15

 「多様性で大事なのは、強要しないことじゃないかな。自分はこう思うからあなたもわかって!では

    なくて、なるほどあなたはそういう意見なのねって、まずは認める姿勢を見せること。相手にも自分

    にもどこまでやわらかくなれるかだと思うんです」

  多様性の尊重とはどういうことなのか、ryuchellさんが遺した言葉に耳を傾けたい。彼が

    討論の場でこのことを常に意識していたからこその、あのソフトな語り口調だったのだ。いつも討論

    する際には心がけたい金言。

 

③電子黒板ないしはプロジェクターとスマホの活用を中心に据えた情報提示へ

 場面によってはYouTubeなどの視聴覚教材を適宜、用いることで生徒達の多様な興味関心を引き出し、各自の所有するスマホ(タブレット等も)などを用いて各自の疑問点などを調べさせることで学習の個別化を進める。板書とその解説ばかりの授業、板書事項をノートに書き写すばかりの画一的一斉授業ではお互いに徒労感を募らせてしまう。授業への参加度と学習の充実感を高める工夫を意図的に授業の随所に散りばめていくべきである。

※参考動画

 ○「オンライン教育は日本を救うのか?」ドワンゴ社長夏野剛、藤原和博らが徹底

  議論 2020/05/13 16:57

 

④一人一人の生徒が自ら考え、自分なりの意見を表明できる機会の充実へ

 授業が十分に活性化しているならともかく、いきなり手を挙げさせて一握りの生徒に意見を言ってもらう展開は出来るだけ避けたい。意見が出尽くすのを待つゆとりが必要である。意見が大体出揃った時にはA~Dどの意見に賛成か・・・などと生徒全員にそれぞれ挙手させて数を数え、その場でクラスの意見のあり様を確認してみたい。その際、マイナーだった意見の持ち主を見捨てない事が肝要。時にはマイナーな意見の背景や根拠を生徒全員で共有できるよう、深掘りしていくべきケースも考えられる。

 またアンケート形式の質問用紙を多用し、口頭では発表できない慎重派や引っ込み思案の生徒の意見表明の機会をしっかりと保障すべきである。アンケート結果の集計と共に意見の一部は次回の授業で紹介する・・・などの工夫を重ねて生徒達の意見を一人でも多く、また少しでも多様な考えを引き出し、共有していくことを重視。アンケートの集計結果を公開する際も少数意見に十分留意し、注目するよう、繰り返し注意喚起しよう。

 なおアンケートへの回答を通じて生徒達が多様な意見の存在理由をしっかりと確認出来るようにしたい。同時に多様な観点によって混乱しがちな頭の中をスッキリと整理出来るような方向性を持たせた質問項目の内容と配列、組立て方を予め工夫しておくと安心。これは相当難しい作業だが、議論の無秩序感を低減するためには事前に必要とされるものだろう。従って当然の事ながら教師側には議論のテーマに関する広い知識、深い理解が備わっているに越したことはない。

 ただし、十分な力が無い状態であっても討論型授業へのチャレンジは果敢にトライすべきである。何事も経験を積み重ねていかなければ前進できないはず。討論がアナーキーな状態のまま終わってしまう事は職員会議の場面ですら、普通に生じている。失敗は成功の糧である。まずはトライあるのみ。

※参考動画

  ◎【実録】本当にあったざんねんなアンケート

      謎解き統計学 | サトマイ  2022/12/30  15:44

    授業中のアンケートでも同じような注意が多少は必要となる。学術的研究ではアンケート対象や質

       問項目の選定、質問文のチェック…等がかなり厳密に定められている。とは言え、授業は学術研究

       ではないのでそれほど厳密に考える必要はない。またアンケートを数多く経験することで結果の分

       析を含めて次第に技術的側面は熟練していく。何よりもアンケートを用いる事の効用は極めて大き

       いので、まずはチャレンジしてみたい。

 ◎【誹謗中傷する人の心理】脳を惑わす3つのバイアス/SNSはロジックのズレだ

     け/ハーバード大学と日本の違い/脳は省エネモードで動く/違和感に向き合え 

     PIVOT 公式チャンネル  2023/05/20  35:51

      討論を通じて「論破」を目指すのではなく、多様な意見の表出と共存を目指すには「論破」や「中

  傷」、「偏見」に対抗するロジックが必要。この動画では認知、認識におけるいくつかのバイアス

  を理解することを通じて討論を分断、対立から共感や統合、多様性の尊重へ導いていくロジックが

  紹介されている。

※参考記事

  ○日本での「不毛な反ポリコレの議論」を超えるために、これから「参照されるべ

     き視点」現代ビジネス ベンジャミン・クリッツァー の意見 2022.12.14

     多様な意見、価値観を尊重する事の意義と討論の在り方が見えてくる。対立する意見同士が感情的

  な罵り合いに発展していかないように、上手く冷静な議論へと導く上で必要とされる観点とは何

  か、考えさせられるだろう。

 

⑤授業の導入時における生徒の集中力を一気に高めるための「心に刺さる」教材の発

 掘と思わず生徒が答えたくなるような質問作り

 授業の冒頭で生徒を惹きつけることに失敗してしまうと流れが作れずにその後の挽回は極めて難しくなる。授業の冒頭でどんな教材を生徒に突きつけ、どんな発問をするのかに関しては面倒だが予め念入りに作戦を練っておくべきである。特に教案は板書案を練るよりもまずは「発問計画」に力点をおいて作ることを勧める。導入と発問の良し悪しこそが授業の成否を左右する、決定的ポイントだと考える。

 もちろん発問の少ない授業は論外であるが、だからといって単純に生徒の知識理解を問うような発問は出来るだけ避けたい。誰であっても自分の無知さを人前でさらけ出したくはないだろう。発問に答えられない生徒に恥をかかせて生徒達の気持ちを萎えさせる事はあなたの授業を嫌いにさせるだけかもしれない。単純な知識や理解を問うのではなく、自分たちが気付かないうちに囚われてきた常識に揺さぶりをかけるような、論争を呼び込むことのできる、深味のある発問を心がけたい。

 普段は意識できていなかった常識の中に潜む自分たちの偏見や差別的言動の存在に気付かせるといった、意表を突く問いかけができれば一気に授業が活性化するだろう。そのためにはまず教師自身が表面的なきれい事を並べて「上から目線」で説教してしまうクセを見直すべきである。教師自ら自分の陥りやすい思考や言動の失敗パターンをしっかりと自覚し、時には教師の身であるにもかかわらず偏見を持ってしまいがちな素の自分を生徒の前にさらけ出す勇気が必要である。

 そもそも学校や教師がこれまでに果たしてきた歴史的役割、社会的機能(選別、配分、社会化・・・)は「人格の完成」などと言ったきれい事では決して済まされない、ある種のダークな側面を持っている。その自覚を持たない教師が社会科を教えることは本来許されない・・・といった学校教師としての厳しい自覚と思い切った自己開示性が求められるだろう。

 自己開示性の低い教師に対しては、生徒は自分の正直な意見を表に出さなくなる傾向があると思われる。きれい事だけでは教師も生徒も授業を通じて自分の中に潜む差別意識、偏見を深掘りできなくなってしまうに違いない。

 差別や偏見を授業で扱う際は決してきれい事の説教で終わらせてはなるまい。

※参考動画

 【知らないとダマされる】SNSで情報収集する人が知るべき3つの真実

  2022/03/12 原貫太・フリーランス国際協力師 16:48

 ◎マスコミ偏向報道の3パターンを業界歴13年の元マスゴミが解説

  元テレビD さっきーチャンネル 2021/04/27 8:58

 ○なぜコロナ報道は役に立たない情報しか流さないのか?

  元テレビD さっきーチャンネル 2021/05/25 6:23

 ◎【メディア洗脳の手口】マスゴミ印象操作テクニック術をマスゴミ歴13年が解説

  元テレビD さっきーチャンネル 2021/02/28 9:37

※参考記事

 「テレビっぽいもの」があればテレビ局は必要ないのか…なぜ"マスゴミ"と呼ばれ

  てしまうのかを考える 

  プレジデントオンライン 稲増 一憲 2022/10/31 11:15

 日本は主要国で大きく見劣り “SNS情報の偏り”への認知度

  FNNプライムオンライン によるストーリー 2023.7.5

 

※参考文献

「捨てられる教師~AIに駆逐される教師、生き残る教師~」

   石川一郎 SB新書   2023

 非常に刺激的で興味深い内容。今後、あるべき教師像、学校像が明確に見えてくるに違いない。個人

 的には学級担任の廃止という改革プランに意表を突かれ、大いに新鮮さを感じた。確かに学級担任ほ

 ど「何でも屋」を強要される職務は他に無いだろう。生徒指導、進路指導、学校行事、各種の事務仕

 事、教室清掃…それらの多くは石川氏が指摘するように将来的にはアウトソーシングするか、AIに

 任せるべきものではあるまいか。この本では部活動指導の問題がイマイチ大きく取り上げられていな

 いが、やはりこれも社会教育分野としてアウトソーシングすべき職務であろう。そうすることで学校

 のブラック化問題は完全に解消し、画一的管理主義からも脱却して、教師たちが児童生徒の考える力

 を養う、個性や多様性を育む魅力的な授業の創造へと専念していくことを可能とするに違いない。

  基本的には北欧に近い教育改革路線だが、思考力養成のための「シンキングツール」という具体策

 が提案されている点には注目したい。ただしこの具体策に関しては多少、網羅的になりすぎて説明不

 足の印象が残る。もう少しシンキングツールを精選し、具体例を入れて説明して欲しかった。また個

 別学習に軸を置き過ぎていて、協働的学習の意義とグループでの討論、意見表明への具体的言及がや

 や不足している感じも否めない。この点は工藤勇一氏の本で補うべきだろう。

  以上、多少の難点は感じたものの、基本的には非常に分かりやすく、知識の伝授から思考力の養成

 へと授業の重点目標を転換していきたい教師にはイチオシの良書である。特に40代、50代の教師たち

 には必読の書と言えるだろう。

※参考記事

探究学習の「指導に課題」8割 福島大が調査

   朝日新聞社 によるストーリー 2024.1.21

   学習指導要領や教科書、大学入試問題の傾向…などの呪縛から教師たちを一度、解放してあげること

 が「探求学習」導入に先立って実施すべき最低限の政策では無かったのか?これまで教師たちの手足

 をがんじがらめに縛り続け、ブルシットジョブばかりの雑務でわずかな教材研究の時間的余裕すら与

 えてこなかった教育行政側が自らを一瞬たりとも省みることなく、教師の工夫不足、準備不足をまた

 もやなじり始めている。日本の教育行政に対しては呆れ果ててものが言えないほどの絶望を感じてし

 まうのだが、いかがだろう。

その2.プロフィールとブログの狙い

 

1.プロフィール

・元高校社会科教師。現在は地元の公民館で郷土史関係の講演や歴史散歩を年に数回程度、行っている。千葉県市原市「鎌倉街道を歩く会」会員。

・大学時代の専門は心理学及び教育社会学。

・勤務校はどちらと言えば教育困難校が多く、三部制の定時制も経験。困難校の生徒達は成績不振と学校や教師への不信とで不登校や怠学傾向が目立ち、ただ漫然と教科書を教える板書中心の古典的手法では授業として全く成立しないことを悟った。このため教職後半の20年近くは科目の枠や教科書に囚われず、生徒達の実態に合わせて次第に自分なりのネタ探し、教材開発に取り組むように。「面白い、分かりやすい、役に立つ」を授業の三大モットーとし、アニメや映画、流行歌、YouTubeなどの視聴覚教材から貨幣や切手などの実物教材を含めて随時教材化を試みた。特定のジャンルや方法に囚われず、貪欲にできるだけ広い視野に立って少しでも生徒を惹きつけられる授業作りをマイペースで追求してきた。「現代社会」という、どんな話題でも授業に取り込むことの出来る懐の深い科目に退職後の今も強い愛着を持っている。

・初任校で生徒達から「エ○カッパ」という有り難いあだ名をいただいた。退職後、初心に戻る為にもあらためてカッパを自分のトレードマークにしてみた(地元の川沿いの村にもカッパ伝説あり)。

 

2.このブログの狙いとご利用の際の注意点

 高校社会科における授業ネタの提供及びネタの情報源紹介(一部は中学校でも利用可能)⇒授業準備の効率化⇒教師の負担軽減と教師及び生徒達の授業における充実感の回復・・・がカッパの主な狙い

 ただし、以下の3点に関してのご理解とご協力をお願いいたします。

・今はやりのシェアリングエコノミーとこのブログとは退職教員の遊休資産の有効活

 用という点で相似形。つまり「授業ネタシェアリング」という互助的性格を有して

 おります。この試みにご賛同いただき、孤軍奮闘している若手教員のために全国の

 同志が他教科を巻き込んでネタシェアリングに追随して下さることを切望いたしま

 す。

・YouTubeやネット記事の教材ネタはまず色分けされて二つに分類されており

 ます。テーマが赤い字のネタは生徒ウケする授業用、緑の字は専ら教師が授業のヒ

 ントにしたり、予習として理解を深めるための教師向けのネタ。さらにそれぞれの

 「推しレベル」がカッパの視点から三段階に評価されています。「」が「イチオ

 シ」、「」が「オシ」、無印が「参考程度」。ただしネタへの最終的な評価は実

 際にネタを用いて授業を試して下さった皆さんと皆さんが教えている生徒達に委ね

 られておりますので、「」印等はあくまで皆さんにとっての選択の目安に過ぎな

 い・・・ということです。

・ネタや参考文献などは随時更新されていきます。これは使えそう!と感じたネタは

 今後も見つけ次第、追加されていきます。乞うご期待。

・ご紹介したネタは自由に利用できますが、ご利用の際は著作権の問題があるのでこ

 のブログに記された参考文献やブログ名、ネット記事名、YouTubeのチャン

 ネル名等は省略せずに付記してください。特に画像や動画には慎重な配慮が必要で

 す。ただし「カッパの高校社会科ネタ探し」ブログより引用etc・・・との付記

 はもちろん不要です。

・一応、ICT教育、GIGAスクール構想への対応を意識してYouTube動画

 を中心とする教材の紹介に徹しております。また学習の個別最適化も図るべく、多

 様な意見を引き出すアンケートの作成、活用と対話型討論形式の授業を念頭にして

 おりますが、具体的なアンケートの中身や授業展開は皆様の創意工夫に委ねられて

 おります。

・「§7.カッパの伝言板」と題して学校教育関連に限らず、私の「独り言」を時折、つ

 ぶやいております。ただし滅多なことではつぶやきません。しかも多くはただの愚

 痴に過ぎない駄文ですが、それでも宜しかったら御一読ください。

・「§8.カッパの授業プリント例」では過去に利用した授業プリントの一部を例示いた

 しました。作成してからすでに10年以上経ってしまったものもあるので、データ等

 は古くなっております。この章ではこうした内容も授業になりうる、ということを

 例示してみただけですので、今、このプリントをそのままの形で利用できるとは限

 らないことをご承知おきください。

※参考記事

ICT教育とは?知っておきたい基礎知識 メリット・デメリットと事例に学ぶ成功の

 秘訣 東洋経済ONLINE 2021/02/01

※参考動画

バカになるな!論破のテクニックで騙されてはいけない!【宇野常寛】

 たかまつななチャンネル 2022.10.10 22:50

・学校の裏側:藤原和博】なぜ学校はウソくさいか/できる子とできない子の二極化

 /鬼門は小学3年の算数/2020年代に教員退職ラッシュ/教員の偏差値低下/校

 長・知事・市長がカギを握る/山梨県の文書0運動

 PIVOT 公式チャンネル  2023/08/31  27:39

・新時代の教育ルール:藤原和博】学校はどう変わるべきか/YouTubeを認めよ/学

 校の支配力は2割/オンラインの3つの活用法/新時代の5つのリテラシー/中学受

 験の是非/10歳までとことん遊ばせる 

 PIVOT 公式チャンネル  2023/09/01  42:29

 討論中心の授業とする場合、ディベートのような論争の勝ち負けにこだわる「ひろゆき」流あるいは「橋本」流の論破ゲームに陥らないような配慮が肝要となってくる。宇野氏の指摘する「スネ夫症候群」に要注意。基本的には討論の過程で多様な意見の創出をまずは目指すべきだろう。そして大勢の意見を聞くことを通じて多様な価値観がこの世に存在することの社会的意義を確認していく・・・それこそが一人でも多くの生徒を巻き込む、討論を用いた授業の最重要目標とされるべきだろう。意見の多様性を熱望する討論の場のあり方の中にこそ、ラディカルに「問いそのものを問い返す」可能性や問題解決に向けたオルタナティブで建設的な意見の創出に向かう可能性が胚胎するに違いない。従って教師は討論において決して議論を一つの結論に導いていくような誘導や断言をしてはなるまい。一つ一つの異なる意見が持つ様々な意味、意義を注意深く見出し、生徒達にもしっかりと気付かせていく事に教師は最大限の労力と工夫を払っていきたい。

 もちろん、議論の方向性が一定せずにあてどなく彷徨ってしまっては論点がぼやけてしまうので、ある程度構造化されたアンケートや発問計画を事前に用意してから討論に望むべきなのは当然の事である。

 

その1.想定している読者層

 

①中学校、高校の社会科教師、とりわけ高校地歴公民科の若手教師

   主に現代社会(⇒公共)、政治経済、倫理、日本史、探求学習の授業で使える面白ネタを紹介しています。心理学や学校問題、差別問題は中学校の公民分野でも使えるネタを含みます。内容によっては道徳や総合の時間、LHRでの利用も考えられるでしょう。授業の導入時に上手く使うと生徒の反応が爆上がりのネタもあるはず。

 

②心理学に興味のある中学生、高校生、一般の方

   錯視という現象を切り口にして明らかにされつつある感覚、知覚、認知の働きや仕組みの一端を探ります。さらには意識の深層にも迫ります。認知心理学、認知行動療法やマインドフルネスなどにも触れていきます。またヒトのサイボーグ化とロボットのアンドロイド化の行方についても簡単に触れます。10年余り前、千葉県立東葛飾高校でのリベラルアーツという授業で行った講演内容を土台としています。

 

③教職にある方、教職志望の大学生、学校教育に関心のある方

   学校教育の諸問題(ブラック校則、防災教育、体罰・虐待、部活動と体育、欧米の学校と日本の学校との違い、イジメと隠蔽、不登校問題、君が代と教育勅語、一斉講義形式の残存、討論の進め方、学校のブラック化、これからの学校教育等)に焦点をあてています。ネット上の記事やYouTube動画の紹介が軸となります。

 

④差別や偏見の問題に興味のある方

   特に性差別、性教育の遅れ、障がい者差別、格差問題に焦点をあてています。「人格の多面性」と「多様性の尊重」との関わりが一つのポイントとなりますので、人格についてもここであらためて考えていく必要があるでしょう。

 

⑤日本の文化に興味のある方

   特に外国人観光客の視点を中心に「日本らしさ」とは何か、YouTube動画のネタを中心に探っていきます。

 

⑥若者と日本の進路に興味のある方

   ブラック企業の問題に加えてGAFAや中国企業の躍進に対してやや出遅れ気味の日本社会が抱える将来への不安と進むべき道を探求していきます。少子高齢化、防災対策、デジタル社会の進展など、とりわけ高校での進路指導に役立つネタをセレクトしていきます。

 

⑦沖縄修学旅行の事前学習に関心のある方

   たとえば成人式の日の光景を切り口に沖縄社会の光と影を探っていきます。沖縄戦の悲劇と戦時中の教育、戦後の基地問題、尖閣諸島を巡る日中の対立、本土復帰を巡る問題、公文書問題、沖縄観光業の明と暗、沖縄の学校教育、「車社会」と言われる沖縄独特の交通事情、ウチナーポップスなどにも触れていきます。内容としてはYouTubeの動画やネット記事の紹介がメインとなります。

 

⑧日本の現代史や現代社会に関心のある方

   特に戦後史まで授業で扱った経験がほとんどなく、新科目「歴史総合」や「公共」の登場に面食らっている地歴公民科の先生向けです。ただしあくまで沖縄ネタを中心に絞り、ごく限られた話題にとどまりますが、討論の題材として論争を呼びそうないくつかのネタを用意しております。これで当面の窮状を脱することは出来るかもしれません。

   とはいえ、時に際どい論争ネタがあり、それなりの「危険物」も含まれます。授業で扱う際にはかなりの慎重さと勇気を要求されますので悪しからず。

   この分野に関してはあくまで自己責任でご利用下さい。

 

⑨千葉県市原市の郷土史に興味のある方

   基本的には高校の授業範囲を超える内容を数多く取り上げます。千葉県市原市における歴史散策の見所案内がメインです。特に身近に見られる江戸時代の石造物を詳しく紹介します。迅速測図などを利用して江戸時代の街道や集落の復元など歴史地理的アプローチも取り入れます。地元の学校ならば中学校や高校の授業でも扱える身近なテーマが含まれます。歴史ネタはすべての生徒を惹きつける事が極めて難しい分野ですので、このブログを一つのきっかけにしてぜひご自分の学校近くの史跡、文化財、出来事を見つけてみてください。

   ここではあくまでカッパの地元の郷土史教材という極めてローカルでマイナーな内容をご紹介いたしますが、他の地域の方は郷土史を教材化する上での私の「目の付け所」、着眼点を参考にしていただければ幸いです。

 

   なお各テーマに関してはそれぞれにおいてYouTubeでのオススメ配信やネット記事を数多く紹介しています。教室で支障なくYouTubeを視聴できる環境にある学校ならば教師の皆さんが授業で使える面白動画を幾つか見つけることが出来るでしょう。YouTubeの膨大な動画から時間を掛けて苦心の末、見つけ出された生徒の反応が爆アガリする可能性を持つ良質な配信を授業で利用出来れば生徒達の授業参加度は格段に向上します。そうした授業を経験した生徒の中から自分にフィットする良質の動画を自らの判断でYouTubeから選び出し、授業以外でも自主的に視聴しようという動きが生まれてくるかもしれません。少なくともネット記事やYouTubeの動画が授業ネタの宝庫である事だけはここで保証しておきます。

※参考記事

 ○私立中学入試に「探究型」登場、資料調べて伝える力を問う…国語・算数などの教科試験は実施せず 

    読売新聞 によるストーリー 2024.2.3

 ○地域の課題と解決策を…高校生が「探究」授業の成果発表 八王子市

 日テレNEWS NNN によるストーリー  2024.2.12

 〇脱・陰謀論 文化人類学者が重視する、「分からない」に耐える力

  毎日新聞 によるストーリー 2024.1.12

 一つしかない正解を理解させ暗記させるだけの授業が児童生徒からどんな力を奪ってしまったのか、

   反省するところから出発したい。多様性、個性の尊重はその先にある目標であろう。

 〇教師が抱える“孤独”「授業について語り合う場面がなかった」、150年続く旧態依

 然とした教育現場の異常 ORICON NEWS によるストーリー 2023.12.7

 ◎日本の高校生、自律学習の「自信」最下位 文科省「国民性が関係か」

   朝日新聞社 によるストーリー  2023.12.5

 文科省はこの結果を国民性の違いによってある程度説明できると匂わせるような解釈をしているらし

   い。責任逃れも甚だしいし、絶望的に的外れな考えだ。そもそも画一的な学習内容と単調な授業の容

   認とによって高校生の自律的学習欲求をすっかり台無しにしてしてきたのは一体、どこのどなただっ

   たのだろう。

      義務教育ならまだしも高校教育レベルでいまだに単調で窮屈な検定教科書の利用を押し付け、加え

   て共通テストを通じて学習内容を厳しく統制してきたお役所こそが、多様であるべき学習を画一化

   し、高校生の自立学習、自律学習の芽を摘んできた最悪の元凶なのだ。そして文科省の見え透いた

   嘘、責任逃れの言い訳に関して一切批判することなく口をつぐんでいるマスコミ側もまたその存在意

   義が問われるはずである。

なぜ日本人は「仕事への熱意」が145カ国で最下位なのか日本人の「生産性」を高めるために必要なこ

   と プレジデントオンライン 田中 道昭 によるストーリー 2024.2.13

 「日本は、“強み”より“弱み”にフォーカスするカルチャーが根強い。会社では組織の弱みを正して、全体の平均点を上げようとし、採用でも「◯◯ができない」と弱みばかりを問題視して強みのほうはあまり評価しない。アメリカのカルチャーでは、明確な強みがある人材の弱みなど、ほとんど気しないのだ。日本人は小学生の頃から「苦手科目を克服して平均点を上げよう」という発想が染みついている。自分についても他人についても、欠点や弱みがすぐに意識される。外国に比べて英語を話せない人が多いのも、「発音や文法が完璧でなければ話せない」という意識が邪魔しているからではないか。」

 引用が長くなってしまったが、こうした日本の残念な企業文化を生み出し、支えてきた主犯格は間違いなく日本の画一的な学校教育であると私は考えるがいかがだろう。

   社会科などで重んじられてきた暗記中心の、正解が一つしかないような知識の記憶ばかり問う授業や試験のあり方が、加点方式ではなく減点方式の評価を企業社会にも定着させてしまったのではあるまいか。多様性や個性を犠牲にして一つの正解、一つのルールへの同調を強要し、多数派への忖度を強いる窮屈な社会を創り出してしまったのではあるまいか。突出した個性を持つ有名人への中傷を煽り、日本ではどの集団,、社会においてもイジメが横行する、足の引っ張り合いを繰り返す、妬み、ヒガミに満ちた非生産的な群集心理を生み出してきてしまったのではあるまいか。

 そして挙句の果てには、幸福度や仕事への熱意、労働者一人当たりの生産性が低い、現在の閉塞した日本社会が形成されてしまったのではないのか。

「先生よりもYouTube」昭和生まれの親が知らない子どもの学習事情

    ASCII 2022/09/02 19:00

 

   動画の視聴後にどんな発問をするのかも生徒達の動きに大きな影響を与えるでしょう。特にエモーショナルな反応が予想される動画の視聴後には生徒達の思いを自由に吐露させる自由記述を含んだアンケート形式のプリント提出が生徒達の多様な意見を引き出す上でもかなり効果的です。逆に重要単語のみを教師が解説しながら穴埋めするプリントの形式は出来るだけ少なくしていきましょう。そもそも教師からの一方的な教え過ぎによって序盤から特定の結論に誘導してしまうような展開、あるいは過剰な情報量によって生徒達の関心や思考が混乱したり麻痺してしまうような展開だけは避けるべきです。議論を活発にしていくためには授業の導入部で強烈に生徒達の心をワシヅカミしてしまうような訴求力のある動画を視聴させることで生徒の思考意欲、表現意欲を最大限、刺激していきたいものです。

 

   様々な手段を講じて生徒達の自己表現欲求を僅かでも満たしていく努力こそが、インプットばかりで一方通行になりがちな授業に風穴をあけていくことにもつながるのではないでしょうか。不毛な単語だらけの授業は生徒を受け身にさせてしまうだけではなく、教室をアッという間に酸欠状態にしてしまいます。聞き慣れない言葉達のシャワーを息つく暇もなく、容赦なく浴びせるだけのマシンガントーク授業で生徒達を窒息させてはなりません。これまで長らく授業の主役だった重要語句の紹介とその解説は今すぐにでも脇役に降格させるべきだと考えます。

 

   繰り返しになりますが、生徒の感性や感情をしっかりと刺激する教材を用いて生徒の興味関心を最大限に引き出し、生徒自らが言葉を紡ぎ出したくなる・・・そんな機会をできるだけ多く作り出すことがこれからの社会科授業では最も大切な目標となると考えます。その流れの中でこそ、生徒はおのずから社会科における重要語句の本当の重要さに気付いていくのではないでしょうか。物事に面白さ、驚き、怒り、悲しみを感じた時こそ、人は物事の仕組み、メカニズムを知りたくなるものです。この順序を逆にしてしまっては折角の素材の面白さが台無しでしょう。それはちょうど手品の種明かしをしてから手品を見せるようなものです。授業の冒頭から重要語句の解説と暗記のための反復学習を強いる展開に生徒達がトキメキを覚えることは決して無いと思います。

 

   そもそも授業の最大の成果は重要語句をいかに多く覚えたか、理解できたか、テストで高得点を挙げたか、ではないと考えます。一年間を通じて生徒達がどれほどあなたの授業を楽しみにしていたのか、あなたの授業科目、授業内容をどれだけ好きになれたのか、社会についてどれだけ生徒達自身の頭で考えられたのかを真っ先に問い直すべきではないでしょうか。授業中、退屈して寝てしまう生徒が多いようならば、今すぐにでも授業の導入部分を見直し、一方通行のインプットばかりでアウトプット無しの授業を変えていくべきなのです。

 

   こうした観点から授業に取り組んで行くには当然、他の教師や教科書に縛られ過ぎない独自の内容と展開の工夫が求められるでしょう。幸い、社会科の場合には同じ科目を担当する教師との共通問題で定期考査を行うとするような規定を持つ高校はかなり稀です。すなわち高校社会科では授業のペースや内容面での共同歩調をあまり意識する必要はありません。社会科という教科は内容面や進度面で他の教科(国語、数学、英語、理科・・・)ほどには教科書等に縛られておらず、教師独自の教材をマイペースで導入できる余地がかなり大きく残されている・・・そうした面では画一的で制約が大きいと言われている日本の学校教育において高校の社会科は特異な性質を備えた、極めて貴重な教科なのです。

 

   他方、国数英理では評価の公正が厳しく問われるため、学年共通問題を用いて定期考査を行うことが圧倒的。そうした教科では内容面だけでなく、授業の進度面でも他のクラスや教師と歩調を合わせる必要が生じてしまいます。つまりこれらの教科では教師個人の独自教材の利用がかなり限定的となってしまうのは教科の性質上、ある程度致し方ない事なのです。

 

   確かに同じ社会科と言っても地歴科の場合には内容面でそれなりの大枠があって他の教師の進度にもある程度合わせていく必要があるなど、制約が大きい側面はあります。しかし公民科の場合にはどの高校でも内容や進度の面で教師個人の裁量がそれなりに認められている場合が多く、フリーな部分が地歴科よりも大きい傾向があります。ならば公民科の場合、この特色を最大限、授業に活かしていくべきでしょう。逆に言えば公民科の授業の出来不出来に関して地歴科以上に生徒側から教師個人の力量が厳しく問われてしまうと考えるべきでしょう。授業がつまらない原因を教科書のつまらなさに転嫁することは、社会科、とりわけ公民科教師の場合、絶対に許されないはずです。

 

 このブログは以上の考え方に共感してくださる方に向けてもっぱら発信されております。したがって授業の素材となるネタの紹介が中心となります。これがあれば授業準備は不要!というものではありませんし、決して綿密に作り込まれた完璧な授業案を提案するつもりなど毛頭ないのです。そもそも授業のあり方に「正解」は無いし、自分の「正解」を一方的に押しつけるつもりもありません。あくまで素材の提供に重点を置いており、素材をどのように調理して味付けするのか、盛り付けはどうするのか、といった教師の一番の腕の見せ所は皆さんの創意工夫に委ねられております。もちろん、ごく稀には私の展開例を示すこともありますが、それは例外に過ぎません。

 

 また著作権への配慮から本来は理解しやすくする上で使うべき画像や動画、図表、ネット記事の多くをここでは紹介できない事もご了承ください。特に授業では必要不可欠な写真や図表の類いの場合、公的な機関のホームページに公開されているものにほぼ限定してしか紹介しておりません。実際の授業ではネットで検索させるか、YouTube上の動画を静止させてグラフの読み取りをさせるなどの工夫をしていただけると良いでしょう(当然、スクリーンショットの画像をこのブログで紹介することも、ほぼ不可能です)。

 

参考動画

「え、YouTubeでは先生と違う説明をしてたんですけど?」教育系YouTuberの

   影響で“ヤバい学生が増えている

   文春オンライン   羽場 雅希 によるストーリー 2023.12.9

【歴史教育】「戦国武将の名前は知ってるのに」近現代史より縄文弥生を重視?な

 ぜ知識・暗記に?今の国際情勢を 理解するための学びとは?|#アベプラ《アベ

 マで放送中》 2021/12/10 ABEMAニュース【公式】 14:03

 「歴史総合」の登場によって課されることになった、世界史や日本史における近現 代史の重点的な取

   り扱い。その意義と課題は非常に大きいと考える。予想される課題としては教科書検定の歴史から見 

   ても分かるように、事実認識や解釈の点で分断と対立を招きかねない近現代史を大々的に扱うがゆえ

   に授業での繊細な配慮が教師側により一層強く要求されてくるに違いない。

    一方で若者の政治離れや近現代史への知識不足、理解不足の背景には高校時代の歴史授業が多くの

   場合、20世紀の出来事にほとんど触れることなく終了していたという残念な事実があったことも否

   めない。従って「現代社会」という科目が消滅するダメージを「歴史総合」がカバーできる部分はか

   なり大きいと期待もしている。

    いずれにせよ、「歴史総合」は教師の力量が今まで以上に問われる科目であり、今後、高校現場で

   の授業がどう展開され、入試問題でどのような出題がなされるのか、非常に興味深い。なおカッパは

   これまでも日本史等では十分に扱えなかった近現代史を「現代社会」や「政治経済」で部分的にフォ

   ローしてきたので「歴史総合」の登場を大歓迎している。

【Z世代】世界を激変させるニュージェネレーション!Z世代の価値観を徹底解説

 2021/12/11 中田敦彦の YouTube大学  32:25

【Z世代】次の時代を制するにはZ世代の心をつかめ! 

 2021/12/12 中田敦彦のYouTube大学  29:29

 「Z世代」に属する生徒達への理解なしに社会科授業は組立てられないだろう。

【心理的安全性】誰もが率直に意見を言える環境とは?組織改革を進めるカギ?超 

 重要概念を学ぶ2022/05/29 ABEMA 変わる報道番組【公式】 24:20

 多様な意見を引き出すために必要とされる心理的安全性とは何か、理解できる。

※参考記事

子どもの幸福度“ほぼ最下位”の日本で、「こう育って」願望より大事なことは?IT

 教育から子どもに寄り添う水野雄介さんの挑戦 

 ハフポスト日本版 によるストーリー  2023.6.27

もう、学校を教員だけで運営するのは無理 正解がない問題へのアプローチを教える

 のは誰か?  AERA dot. 2023.6.30

人生100年「先生だって人生の正解はわからない」 失敗さえも学びにし、自由な発想

   を面白がろう 東洋経済オンライン 住田 昌治,赤司 展子 の意見 2023.10.20

子どもが小学校で使った教科書、処分のタイミングは? 3位「中学にあがったら」2

 位「とっておく」 まいどなニュース の意見 2023.7.1

 学年進行と同時に廃棄されてしまうような、面白みに欠ける教科書に一体どれほどの存在意義、利用

   価値があるのか、極めて疑わしいだろう。むしろ多くの子供たちに忌み嫌われてしまっているのが日

   本の教科書なのではあるまいか。ましてその教科書を解説するだけの授業に児童生徒たちの学習意欲

   をかきたてる力は期待できまい。

政府の「理工系新学部」後押しで大学再編が始まる 名門女子短大&女子大は募集停

 止や統合の流れ(木村誠) 日刊ゲンダイDIGITAL によるストーリー 2023.8.15

 

 

 

・高校社会科の教員に採用されてからまだ日が浅く、毎日の授業に悪戦苦闘中・・・

・転勤したらいきなり専門外の科目を教えることになってしまった・・・

 どうしよう・・・

・社会科の面白動画ネタを一杯手に入れたいのになかなか見つけるヒマがない・・・

 

 

 こんなお悩みを抱えている中学校や高校の社会科教師の皆さん、どうしたらご自分の悩みを解決していけると思いますか?確かに授業開始早々、次々と寝てしまう生徒達を見るのは教える側としても辛いものです。

 この状況、一刻も早く変えたいですよね。

 でも部活動や事務仕事、生徒指導などが忙しくて、授業準備の時間が足りない、生徒達の学習意欲が低い、経験が浅くて自分の授業内容や話術に自信がもてない、職場ではみんな忙しそうで気軽に相談できそうな雰囲気ではない・・・

 私も同じような悩みを抱えて高校教師を続けてきました。教員生活後半の約20年間はいわゆる教育困難校でしたから試行錯誤の連続で一体、何から手を付けていったら良いのか分からず、途方に暮れる毎日・・・

 本当に辛いですよね。

 このブログは主に高校の社会科授業で使えるYouTubeなどの動画教材やネット記事を中心とした面白ネタを紹介することを狙いとしております。時には中学校でも利用可能なネタを含みます。汎用性のある良質のネタの場合は必ずしも特定の学年、教科、科目、単元に限定されるものではないと考えています。皆さんの都合に合わせてご自由にいつでもどの単元でも適宜、ご利用願えればと思っています。

   今後、以下の内容を随時、順不同で配信し、更新していく予定です。

 

§1. 心理学ネタ

§2. 沖縄修学旅行事前学習ネタ

§3. 学校問題ネタ

§4. 差別問題ネタ

§5. 日本らしさの文化と未来ネタ

§6. 千葉県市原市の郷土史ネタ

§7. カッパの伝言板

§8. カッパの授業プリント例

 

   なお、§6の郷土史ネタは一度配信したネタが補足修正されることは稀ですが、それ以外はすべて一度配信した後も、新しい記事や動画の紹介を中心にして随時、補足、追加、修正されますので、今後とも新鮮なネタが加わっていくことをお忘れなく。

   

  以上です。宜しくご利用のほどお願い申し上げます。

 

参考記事

教員が授業で使えるアイデアや教材を共有するWebサイト「せんせい市場」が4月3

 日に正式オープン EdTechZine 2025.3.31

 いよいよ理科で教材バンク的なものをネット上に設ける試みが始まるようだ。まずは中学校の理科からだが、ゆくゆくは小学校の理科も対象とする予定だそうで、じつに喜ばしい限り。社会科でも同様の試みを待ちたい。