#657 ホテルメルパルク仙台 ~郵政公社の産物よ永久に栄光あれ~ | 関東土木保安協会

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宿泊施設も近代遺産。
関東土木保安協会です。
 
ホテル、メルパルク。
「メルパルク」。
どことなくメールとパク(泊)を掛けたような匂いがするこのネーミング。
郵便貯金の福利厚生施設をルーツとする、郵政公社保有の国営宿泊施設です。
 
そんなメルパルクが、2022年3月の発表で、現存する11施設のうち6施設の営業を取りやめることが分かりました(文末リンク参照)。
元々郵政民営化の改革の際に、この施設も整理対象となり、閉鎖になった施設があり、それでも全国の各都市に数えるほどしか残らなくなっていたものが、本当に片手で済むくらいに削減されてしまいます。
 
大組織、ましてや国営組織の宿泊施設。
その匂いが好きな方なら誰しも豪華絢爛の中身を想像することでしょう。
このメルパルクの匂いももうじき味わえる場所自体が大幅に減ってしまいます。
このうち、仙台にあるメルパルク仙台も廃止対象ということですが、先日仙台に行く機会があり、その際に宿泊したのでその記録を載せたいと思います。
あと半年のメルパルク建築、華やかな昭和~平成の頃を思い出すような、質素や合理化とは程遠い郵政組織が生む豪華絢爛な様式美をご堪能ください。
 
 

メルパルクに到着です。

1階のフロントに行きましょう。

豪華なロビー。早速華やかな雰囲気に包まれますが、コロナ禍とあってか人気がありません。
その意匠の豪華さが際立ちます。
 
河北新報の記事(文末)によると、メルパルク仙台は地上11階、地下2階、延べ床面積約2万6千平方メートル、客室122を持つホテルとの事で、レストランや大中小の宴会場は11室、結婚式場も備えます。
元々は1973年に仙台郵便貯金会館として開業し、1997年に現在地に移転したとの事です。
定礎は確認しはぐったのですが、壁面のオブジェなどに1997年とあったのでその年にできたようですね。
 
 
さて車で来たのですが、どこに止めましょうか。
あ、地下駐車場があるんですね。わかりました。
 
地下駐車場は地下1,2階にあります。
空いている方がいいので地下2階へ行きましょう。
 
車を降りてエレベーターホールへ向かいます。
むむむ、いいですね。この雰囲気。
随所に大理石のパネルが奢られ、合わせられるのは艶消しのマットな素材感のメタリック。

こここ、これがメルパルク仙台のお様式でございますか。

 
 
入口自動ドア上には斜字体で「エレベーター」。
英語も併記されて国際的な宿泊施設感もアピってます。
斜字。斜め。
何故斜めにするのか。まっすぐのほうが見やすいではないか。
でも斜めがいい。
バブリー?80年代臭くない?
そんなの関係ない。
斜めがいいのだ。斜めが。
 
 
地下でこれだけ突っ込んでいると、部屋に入る前に日が変わってしまいますね。
しかしメルパルクはエレベーターに乗るまでにもまだまだ郵政公社の威厳を見せつけてきます。
 
ホール左側には建物の案内板と掲示板。
上部にはメルパルクのMをイメージしたのでしょうか。金色の3本のラインの意匠が目立ちます。
 
フロア案内は上側だけ雰囲気が違います。郵政民営化後に事業譲渡されたのちに入居テナントなどに変遷があったようで、その際にいじったのでしょうか。
下側にある駐車場の利用案内は明朝体をお得意の斜字体で表現して、ここも見入ってしまいます。
このプライド高そうな感じ、ほんと好きですね(悪口じゃないんですよこれ)。
 
左上には丸い時計が。四角じゃないんですね。
シルバーの文字盤に黒い針。
役所や郵便局にありそうなデザイン。これも素敵です。
 
そして右には「INFORMATION」という掲示板。
館内のイベントなどを載せていたんでしょうが、今はシックなホテルの広告が載っていました。
 
 
「伊達文化が今も息づく美しき杜の都、仙台」
「welcome to 伊達文化。」
「HOTEL MIELPARQUE SENDAI」
なんですかこれは。激萌え、鬼ヤバです。
 
 
それではエレベーターホールではしゃいでいると警備員さんも来てしまうかもしれないので、さっさと中にウェルカムしちゃいましょう。
 
フロントでルームキーを借り、部屋に行きます。
1階が気になるのでウロウロしてみます。
フロア案内図がありました。
あ、やはり上には3本のラインのオブジェが。
凝ってますね、くーあーっこいい。たまらないです。
奥に郵便局があるんですね。行ってみましょう。
 
 
来ました、郵便局です。
「ゆうびんきょく→」と書かれた、わかりやすくも見苦しい掲示。
色はわかりやすく郵便のイメージカラーの赤にしたんですね。いいと思います。でも、ポップ体のフォントで書かれたのを元のプライド高い斜字体(が後ろにあるであろう)の上に張り付けるのはちょっと安いですよ。なんて。
それにしてもここでも3本ラインが上にあります。
どこでもメルパルクであることを主張してくるんですね。素晴らしい。
 
 
そもそもホテルに郵便局?というところですが、元々移転前のこの地にあったのかはわかりませんが、郵政事業を行う主としてはメルパルクにも置きたかったのでしょうか。
他のメルパルクでも郵便局の併設パターンがあります。
 
郵便局は時間で閉まっていましたが、手前にはATMがありました。
右側が空きスペースですが、はがき切手と上に書いてあり、元々自販機があったのかなと推測できます。
郵便の衰退を感じさせます。
メールと言ったら電子メールですもんね。コンビニでも取り扱いがありますし、わざわざ郵便局の自販機で買うものではなくなってしまいました。
 
 
郵便局に行くところには展示コーナーが設けられていました。
郵便局でも地域の方の作品などを飾ってあることがあったような気がします。
ここでも地域の学生の作品が飾られていました。
この看板でも斜字体で語りかけてきます。
あれ、日本語の下に英語併記の様式だったのでは?
どうでもいいですね。
 
 
1階を満喫したので上に行きましょう。
そして利用するエレベーターの前にはもちろん「エレベーター」と金色の文字で看板が。
勿論斜字体。上には3本のオブジェ。英語も併記。
抜かりがないです。ははー。
 
 
看板系はマットなサテンシルバーといいますか、光沢が抑えられた感じで少し現代的なんですが、それでも金メッキは多用されており、90年代後半のバブリーの余韻が響く時代を感じさせてくれます。
エレベーターも、天井に星のように散りばめられた照明と鏡がキラキラと光を降り注ぎます。
心はもうダンスホール!
 
 
客室に着くとここでもいつもの様式美が畳みかけてきます。
避難経路図ですが、配色、フォント、3本線、全てが調和して語りかけてきます。
斜字体。ああ、美しい郵政建築。
豪華絢爛。
こういうところの整った仕様が、郵政事業の香りがプンプンしてたまらないですね。
誰ですか、3本の線をはがした人は。
私以外にこの線が気になった人もいるんですね(お友達になりましょう)。
 
 
和室だったのですが、畳も張り替えられてモダンな仕上がり。
素敵なお部屋です。
お風呂も広い(そして少しバブリー)。
 
部屋にはタオル掛けもありましたよ。
和室ですからね。基本です。ありがたいですね。
 
、、あれ、あれ。
 
 
3本線!
こんなところまで!!
誰も気にしない!!!
徹底しすぎ!!!様式美!!!
 
ここも金色でも良かったよ!でも赤線なんだ!
それもセンスいい!
 
 
 
さて、こんな感じでおふざけもありつつのメルパルク仙台訪問記ですが、冗談抜きであと半年後には多数のホテルが閉まってしまいます。
別の事業者に委ねられたとしても、同じブランドで営業再開してもリニューアルなどされるでしょうし、恐らく調度品などは多くが一新されてしまうと思います。
それもあって今こうしてメルパルクの貴重な香りが少しでも残るよう、残しています。
どうか、少しでも気になった方、残り僅かな時間ですが、郵政事業が産んだ巨大宿泊施設の雰囲気にどっぷりと飲まれに行ってもいいかと思います。
 
今ある今を、今のうちに。
ではでは。
 
 
 
<参考>